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俺、神様になりました。  作者: 商 秋人
55/61

終わりたくない

「ゼウスだよ……」

「……は?」


 彼が口にしたのは俺と、はじめからずっと一緒にいる少女の名前だった。

 うすうすよそうしていたが……実際に言われると少し堪える。


「おかしいと思わなかったか? 彼女が一部一部記憶を失っている事に」

「記憶を失っている……リアの父親の事か……」

「それもある。だが本質はそこじゃない」

「それ以外? 別におかしな言動は……」


 いや……あった……そうだ。

 彼女はずっとこの世界を知っている口振りだった。ずっと前にいたようないい方だった。

 事実彼女はここにいた。何百年と前にここにいた。

 ……でもなんでリアは……莉愛は……

 

「彼女は日本に居たときの記憶がない。日本に居た事実は知っていても、その時感じた記憶は……ない」

「……リアはどうしてそのときの事を……」

「そこは簡単だぜ……結界のせいだ」

「結界? なんの事だ?」

「お前がゼウスと会った場所だ、俺達はどんなとこか知らん……だが、それが結界……いや、封印ということは知っている」

「あの白い空間が封印……」

「封印してたのは、ゼウスと竜王だってさ、詳しくは知らん」

「……お前は結局なにが言いたいんだ?」


 うん、そうだ。

 確かにこいつの言ったことは正しいと思う。

 これまでの話を繋げると、間違ってないと思う

 だが、こんな事を言ってなんの意味が?


「この世界はな……お前らのせいで壊れかけてんだよ……ゼウス・亮太・オリジンのせいでな」

「は?」


 壊れかけて、いる?

 なにを……言っているんだ……


「この世界はなランキングという要石かなめいしによってギリギリ保つことができていた世界だ。つまりこれがなければこの世界は崩壊する」

「……」

「ゼウスはもともと要石の役目を担っていたが、ランキングの出現により、要らなくなった……むしろ邪魔になったんだよ」

「だから、リアは封印されて……」

「そう、つまりゼウスは死ぬべき神なんだ」


 なんだよそれ……なんだよそれ!!

 

「いらなくなったから捨てる!? リアは物じゃないんだぞ!!!」

「でもそうしなければ世界は終わる」

「っ!!……なにか……なにか方法が……むしろ今のが嘘って事もっ!」

「ねぇよ。それだけはねぇ、なんでマクスウェルがゼウスを守っていたか、これで分かっただろ、ついでにマクスウェルが記憶を戻らなくていいって言っていた理由も」


 ……マクウスさんは、リアに、娘に死んでほしくなかった?

 記憶を戻らなくていいって言っていたのは……リアが傷つくからか? それとも自分の意思で封印されようとするからか?


「ふざけんな……」

「……まぁそうなるわな……」

「俺はリアを守る……世界なんてどうでもいい」

「だろうな、それが主人公としての存在意義だよな」

「っ……」

「お前は自分のヒロインとしてしかゼウスを見ていない、ヒロインを守るのが主人公だもんな」

「……そ、それはっ!!」


 なんだよ、なんで知ってっ!!

 なんでこいつはこんなにも俺の事を知って!!!


「結局人間は自分の為にしか生きられないんだよ。お前はどうしようもなく人間だった、ただそれだけの話なんだよ」


 それは、俺がずっと自分で思っていたことだ。

 俺は神になる資格なんてない。

 たとえ資格があったとしても、俺はその覚悟がない。それが俺は資格だと思う。


 そんな、自分がずっと思ってきた

 言っていたことを相手から言われた。


「だから、お前はもう諦めろ。お前の自己満足なんかの為に世界を壊したくはないだろ?」


 自己満足……

 それはどれの事を言っているのだろう

 俺がこの世界で神になろうとしなかったことか?

 俺がこの世界で嘘をつき続けてきたことか?

 俺がこの世界で……夢を叶えようとしたことか?


「なら……どうすれば良かったんだ?」


 ふと口にしていた。

 自然に自分の気持ちが溢れていた。


「リアを見殺しにしろと? 俺や、その他大勢が生きるために、リアを見殺しにしろと?」

「そうだ。それが主人公、世界を救う者としてやるべき事だ。自己満足でヒロインを助けて主人公と呼ばれるのは終わりだ。分かったか?」

「………っ」


 助ける方法はないのか?

 リアが生きる方法はないのか?

 急に起きた現実に、俺の思考は追い付かない。

 どうにかして主人公になりたい

 みんなを救って、世界を救いたい。

 日常をすごしたい。

 ラブコメをしたい。

 現実と戦いたい。

 ……そんな主人公になりた……


「違うっ!!」

「っ!?」


 俺の、諦めきった耳にカルタ、エルタの姉の声が響く。

 死にかけていた俺の気持ちが脈をうつ。


「お前は本当に主人公を目指してたのかい?」

「……なにを……そんな当たり前の事……」

「違うっ!!!」

「…………」

「お前はただ誰かと一緒に楽しくいきたかっただけだ。それを主人公みたいになることと履き違えた」

「でも、特別に……なにかにならないと……俺に価値なんて……」

「それを決めるのはお前じゃないんじゃないか?」


 ……そんな訳がない。

 自分の事を認められない奴にだれが認めてくれるんだ?

 なら、主人公に、特別ななにかになるしか


「少なくともお前だけで決めることじゃない」

「…………」

「それになぁ、主人公になるなんて大層な言い方しなくてもいんんじゃないか? こんなこと」

「?」

「お前は……ただ認めてもらいたかった……それだけだ」

「……それだけ?」

「あぁ、その気持ちは誰だってもってて、当たり前のような物だ。認められたい、なんて……」

「……それだけ……」

「わかったか? わかったな?」

「え、あ、う……」

「よし、じゃあ戦いに集中しろ、相手を見ろ」


 あ、そっか、戦ってたのか


「あ、終わった? せっかく言葉で説得しようと思ったのに、珍しく考えたんだぜ、色々」

「はいはい、わかったわかった」

「適当だなぁ、この感じあれだな、メイカに似てるな」


 メイカ? 誰だ。聞き覚えがない


「あぁ、メイカって俺のもう一人の仲間な。普段おっとりしてて、ジト目幼女って感じなんだが、残念ながらエルタさんの事となるとたちまち平静が保てなくなる」

「……そういえば、お前変な事言ってたよな」

「なんだ?」

「俺とリアはまだわかる。でも……オリジン、エルタは関係なくないか?」

「……は? え、ちょ、知らないのか?」

「あ?」

「あ、姉のあんたなら知ってるだろ。言ってないのか?」


 なんだ?

 どういうことだ?

 話の内容がうまく掴めない。


「あー、まぁ、言ってもいいが……エルタには黙っとけよ。私から言ったって事は」

「え、あ、う、うん」


 くそ、ようやくひと悶着もんちゃく終わったってのに、またか……


「あいつ、リアとおんなじで、要石なんだよ」

「……うん。あ、うん。まぁ、うん」


 うんうん。なるほど

 つまり、要石は合計3つあるのか……

 うんうん。なるほど


「……。……どんだけぇええええ!!!!」

「壊れるな、亮太。落ち着け」

「いやっ、この世界要石多すぎでしょ!! え、つまりなに、二人ともこの世界で要らない存在ってこと!! つまり、ランキングどうにかしてもどっちか選ばないとって事!! つまりっつまりっ……どんだけぇええええ!!!!」

「壊れるな、亮太、落ち着け」


 ……いや、落ち着いたとしても、これどうにかなんのか? 

 要石が合計3つ、

 一つは概念。

 一つは大事な人・

 一つは大切な人‘


「これは……詰んだな……うん」

「だから、詰まさないよう俺が今てめぇらを殺そうときてんだろ。な?」

「……でも……二人を殺すのは……」

「概念はどうにもならん。なら……するしかないよなぁ。殺すしかよ」

「いや、でも……」

「決めろっ、でないといつのまにか世界が消えているかもしれないからな」


 ……うわ、もうなんなんだよ。

 ……なにか……なにか方法は……


「……あ……」

「ん?」

「…………」


 思い出した……

 そういえば、リアが一番最初に言っていた。

 

「しょ、ショートカット?」

「……それは?」

「り、リアが言ってました。たしか効果は成長促進、物事をショートカットする力」

「……いや、初めて聞いたんだが……」

「わ、私もそんなの知らんないんだけど?」

「え? でもリアが……」


 うん。言っていた。

 神になる理由としての一つとして、これが出来れば神になれると。

 なら、金髪褐色はともかく……なんでカルタさんは知らないんだ? この事実を……


「神様なら誰でも……いや、あれ? 違う。たしか……『神様になる資格が』……これって……」

「その内の一つであって、そうじゃない……けど私はそんな方法は知らんですけども?」

「……カルタさんが知らないだけで実はあったとか……」

「ねぇな」

「ないね」

「お、おぉ、すごい自信」

「神さまっていうのは、成ったじてんでその世界のあらゆる情報が手にはいる。あんたんとこの神さまもそんな時あったんじゃねぇか、例えば始めて来たのに来たことが有るかのようだった、とか」

「……」


 確かに、リアとエルタは時々おかしな言動をしていた。

 封印の前に来たことあるのかなと思っていたが、封印の時期があれだけ長かったなら人の世界も、地形も、なにかしら変化があるだろう。


「じゃあなんでリアはなんであんな事を……」


「ならば!! 私がそれを教えようっ!!!」


「「「っ!?」」」


 その瞬間場違いな大声が場を支配した。

 女性のよく通る声だ。

 ……てかこの声聞き覚えが……


「……り、リアぁぁあっ!!??」


 うん。まぁ。

 ……これ以上話ややこしくしてどうすんの?

 


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