俺は物語でありたい
言い訳は最終回後に……
『この世界について☆』
俺はどこからともなく(実際は時空転移魔術)紙芝居を出現させる。色は細かく塗られており、グラデーションや重ね塗りも完璧である。
表紙には『この世界について☆』の言葉と、今ここにある遺跡の壁画が描かれている。
ペラリ、と表紙をめくる。
「おまえかぁっい!!!」
「エルタ、空気を読め、明らかに物語終盤じゃねーか、空気を読めっ」
「うげっ師匠っ、忘れてました。そうでしたそうでした。……そういえば師匠とはなすのも何年ぶ」
「はっ!?」
エルタが師匠と話そうとした瞬間に、プシュゥーとなっていた亮太(ややこしいので次からは彼と呼ぶ)が復活する。気絶から。
「……うっ……な、なにがあたったんだっけ?」
「お、覚えてないんですか!?」
彼よ、もう少しましな言い訳は無かったのか、分からんくもないけどね。そうしたい気持ち。
あとリアよ。お前は初期設定から変わりすぎだ。
「はいはい、コント終了。続きやルヨー、紙芝居の……真面目な話ちょっと時間ないから」
「……と、とりあえず聞きますか」
うん。リアと違って相変わらずのラミアだな。
初期設定から一番変わってない。
ふと遺跡に風が流れる。少し不気味だが、真面目な話ならもってこいの雰囲気である。
「おほんっ……では始めよう。第一話、昔々のあるところに……」
俺は語る。俺が私になったわけを……
『なんとなく☆』
紙芝居の二枚目にはキラキラとした文字でそう書かれていた。ていうか俺が書いた。
「おまっぁぁぁ!!!???」
「キレるな。静まれエルタよ」
「いやっ!! あれは無いわぁっ!! まじかこいっづ!!!」
「いやぁ、これ別に理由無いんだよね。今もなんとなくで口調心の中で変えてるし」
「お前が時間無いって言っといてそれぇ!?」
「だって伏線回収するって言ったじゃん。ほら回収したー」
「こいっつ物語の伏線なんだとおもってんだっ!!」
「じゃ、次」
俺はそそくさと紙芝居をめくる。次に現れた絵はみんなが楽しく遊んでいる姿だ。懐かしきかな、かの時代よ。正直俺はまだ悔やんでいる。
て、要領を得ない喋りかただったな。
「これはちょっとだけ真剣な話だが……これは始めの歴史だ。一つ目の世界……ただただ楽しかったな」
「一つ目の世界と言うのはどういう意味ですか?」
「いい質問だ、ラミア。どこから説明しようか……あ、そうだね、やっぱりここはアニメに例え」
「分かりにくくなるから普通に言え」
「辛辣だなあ我が側近は……じゃあ普通に……この世界は繰り返しているんだよ」
「繰り返し?」
ラミアから疑問の声が上がる。
てかラミアとナラマ様以外聞いてない。
「そう、繰り返し、いわゆる時間の巻き戻り……」
「……では一つ目の世界とは1回目の、繰り返え始める前の、初期の世界と言うことでしょうか?」
「そう……そしてそれが私の言う初期設定というやつさ……たまに言うだろ、俺」
「なるほど……でもなぜあなたの言う初期設定から私たちはずれるのですか? 先程もリアが初期設定と変わりすぎとおっしゃっていましたが」
「……それは後に話そう……まず、一回目の世界の物語を君たちに話してからの方が分かりやすい」
「わ、分かりました」
ラミアは、緊張の面持ちで頷く。
だがそんなラミアの緊張とは裏腹に周りは少し五月蠅い。正直めんどいので注意するのは止めておく。
「一回目の世界は普通に進んだ。ラミアルア王国ではラミアを連れ出し、カルマニアで暗躍していた組織を倒し、エレス領で神エレスを仲間にした」
「私達とは少し違いますね。カルマニアには行きましたが暗躍とか知りませんし」
「でもそんなもんさ、だってこの世界に因果はないからね。絶対に同じなんて物はないんだよ」
「ふーん。そんなもんですか……」
「分かりにくいならそうだな……ほら、唐突にたこ焼食べたくなったりするだろ? それと同じで、唐突になにかをしたくなるという事は止められない、唐突になにかをしたいという物は全て同じ願い、欲とは限らない……みたいな?」
「分かりにくいっ!!」
「まぁそこはなーなーでいいや……じゃ、次に」
ペラリと紙芝居をめくり……
その瞬間……世界が消えた。
いや、その表現、その例えは間違っている。
目の前が明るくなったのだ。まるで、直接ライトを向けられている様な感覚……
「……おっと、時間かな?」
それぞれが各々対策を練ろうとして、再び一人の声がする。
「大丈夫だよ。ただ夢から覚めるだけだから」
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目が覚めた。
頭がくらくらする。ここは何処だ?
「おーい、どした? 少年」
目をこすり、目の前を見る。
仮面、黒髪、OK大体わかった。
「今どういう状況?」
俺はとっさに自分がどのあたりで眠りについたのかを確認する。
「今は一回戦前、作戦会議中……急に倒れたからビックリしたよ。2秒くらいで起きたけど」
「のび○くんもビックリですね」
「……それよりさ……」
「はい?」
「後ろのそれ……なに?」
「?」
俺は疑問を浮かべながら椅子を引き後ろを向く。そこに有ったのは……あったのは……
「おいーす。ちわちわ、亮太です。かっこいい方の(キラッ)」
「お前はもう少し空気を読め。いや、読んでるけど、あとキャラが変わりすぎだ」
「君もね」
「……これがバグか……キャラが代わるのが代償……安いもんだぜ」
「だねぇー」
いや、あったのはで切ったけど……うーん
まぁこれはあれだ。
これはあったより居ただな。うん。
「で、何でこっちにいるんですか? お二人とも」
「いやー、世界を救うため? みたいな?」
「みたいな?」
「そんなたいそうな理由で来てるのに、なんでそんなに軽いんですか……」
「仕方ないじゃんー、だってこれが代償なんだからぁー」
「だからぁー」
「代償?」
「そうそう、世界の可能性を行ったり来たりする代償。同じ魂、同じキャラは一つの世界に一人しかいることができないからね」
「からね」
「なるほど? なるほど……」
二人がいる理由はよく分からんが、大体分かった。この流れはよくない流れだ。それだけは分かる。
? なにがよくない流れか?
そりゃだって、俺はただこの世界を自分自身の居た証にしたい。だけど、この二人といると、いた証どころか、むしろ元の世界に戻らなきゃいけない。
そんな気がする。
だって俺が理由かも知れないんだろ?
世界の終わり……
「まぁ、そんなわけでシクヨロ」
「シクヨロ」
「……全然話に付いていけないんだけど??」
「大丈夫です。俺もですから」
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ー魔国シャラルダ上空にてー
「なーなー、あれなんだと思う?」
「あれってどれだ?」
「闘技場で起こったやつ、人かな物かな、神かな? どっちだと思う?」
「知るか、俺はむしろずっと隠れてたやつの方が気になる。なんだあれ? 隠してるのか?消してるのか?」
「ふーん、でもいいの? なんかこっちに向かってきてるっぽいけど?」
「……なにがだ?」
水の精霊の雰囲気が、その者を視認した瞬間に即座に変化した。
「っ!! 私の敵だなっ……」
口元は三日月のようににやけながら、目を紅くし、マリンブルーの髪が空をきる。
「速っ、結構距離有るのによく行くなー」
大きな剣を携え、仕事に出た精霊を見る、金髪褐色のクロムゼスに似た聖霊……
「俺は俺で仕事しますかー」
めんどくさいそうにそう言い
闘技場の地に彼は下りた……
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闘技場に爆音が轟いた。
地面が揺れる。
「……もう来たか」
「て、な、なんだ!?」
「もう付いていけんぞ、亮太くん」
「俺もです!!」
「私はまだいけます」
「そりゃあ当事者の一人ですからね!!」
「……で、マジでなんですか、これ? もうそろそろ教えてください」
「……まぁいいか、よし、なら教えよう」
「これは試練なんですよ……もう一人の亮太」
「……お付きの赤い方が言うんですね……」
「チャライと真面目さが抜けるでしょう?」
「ま、まぁ……」
「ひどいゾッ!!ラミアたんっ!」
「ちょっ、おま!! 言うの早いです!!」
??ラミア?
この人が?
どゆこと?
「あぁもう、ややこしくするなお前」
「えぇーでもぉ」
「兎に角黙れ」
「……は、はい」
「よし、ではさっさと説明しよう」
「え、あ、はい」
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