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俺、神様になりました。  作者: 商 秋人
47/61

第45話俺と魔王と???の闘技祭!  その6

すみません。


てへっ







 肩が……外れる……


 俺の体は修行によって、筋肉疲労といっていいのかピクピクしている。そんな状況で、一つずっと考えていた事があった。人権問題じゃないよ?

 それはもちろんさっきまで行われていた非道で非人道的な修行の事だ。

 竜神と言っていい俺の体がついていけない程の修行というのを除けば、とても効果的なものだった。

 それに、武器の使い勝手は大体理解できた。ブーメラン(投刃)は、力任せにやると返ってこない……は、元から分かっていたが、ブーメランの使い道はそれだけではないらしい。投げて返ってくる、それだけならとても使い勝手が悪いのだ。だから、風魔術を使い、方向を操り奇襲する。あと、変則的な動きがしやすいので、銃などの一方向にしか動けない物よりも、相手を殺すには良いのだと……それがブーメランの闘い方らしい。

 いわゆる暗殺向きだな。


 スタッフは基本魔力を流し、殴る。

 それで良いらしい。いやなんで魔術師の基本装備で殴るんだよ? と思ったが、生き物に流れている魔術の基礎を、武器でも発動するための物がスタッフらしい。言っても分からないか、俺自身も理解できたないしな。まぁつまり、魔力を込める為の器みたいな物だ。だがそれは逆に魔力を流し込むしか出来ないということでもある。人間みたいに細胞の細かい穴が無いから放出が出来ないのが理由らしいが、よくわからん。

 とりあえず今は撲殺○使ドク○ちゃんの武器(エスカ○ボルグ)=スタッフ、そう覚えていてくれ。


 あと、ナイフとナックル、ダブルブレード。この3つは、さっきの説明の応用だ。

 ナイフは剣の。ナックルはスタッフ。

 ブレードはブーメラン(投刃)。

 まぁこんなもんだ。

 このようにいろいろ戦い方を教え込まれた訳だが、こういった座学だけならどれ程良かったか……

 よし、考えても仕方がない。

 俺の始めに言った感想で察して。


 あ、いやぁ、俺の考えていることはどうでもいいんだ。今はそこじゃない。

 問題はあれだ。今から帰れるのかということだ。自然治癒が全くもって発動しない。……分からない事は聞くに限るな。

 俺は無理矢理首を動かし、師匠の方へ向き、俺の中にある疑問を口にする。


「師匠……なぜ自然治癒しないのでしょうか?」


 師匠は、印象的な手袋をしている手を、ぐっぱと開いて閉じてしている。

 最後にぐっ、と強く握りしめて俺の疑問に返答する。


「お前はもう殆ど竜の力が抜けている」

「……はい?」


 …………ちょ、ちょっと待て、どういうことだ? 竜の力が抜けている。

 ………なら、もう治癒しないの……か?

 なな、なっ


「なら俺はもう主人公ではないっ!?」

「………は?」

「これで少し弱体化した訳だし、もう俺の物語は終了でいいのでは?」

「……それはお前の気持ちじゃないだろ、おい」

「す、少しテンパっているだけです。すいません」


 ふ、ふぅ、危なかった。殴られすぎて違う方の意識が入っていたようだ。もう大丈夫。うん。いや、それより。


「で、本当になんで治癒しないんですか?」


 俺の疑問に答えたのは、近くに居た師匠ではなく、遠くに居た筈のナラマ様だった。


「いったの? あのこと?」

「……あぁ、まぁな」


 ……は、はい? この意味深な台詞はいったいなに? もしかして重要な事なのか……、なら俺もとりあえずそれっぽい表情しとくか


「(キリッ)」

「………とりあえず……亮太、お前は自分をなんだと思う?」

「最強主人公ですかね?(キリッ)」

「次ふざけたら殺すからな?」

「人ですっ!!」

「……ひと……わかった。ならいい」

「……あれ? もう終わり?」


 おいおい、小説なら6行くらいだぞ。

 まじか、真面目な話もう終わりなんだ。

 そんな俺の思いは、ナラマ様の真面目な顔つきですぐに壊された。

 俺も巫山戯てないで、真面目に問答しようと心の中でしっかりと決意する。


「いや、もう少しある。ほら、さっさと話せナラマ様」

「う……うん。はなす、だいじょうぶ」


 彼女は、少しうつむいたままくらい表情で言葉を紡いでいく。


「このせかい、あなたはどうおもう?」


 この世界のことか……

 この質問の真意は俺には分からない、だが、これだけ思いを込めた言葉をナラマ様から聞いたのは久しぶりかもしれない。

 初めて会った時もそれほど心の機微はなかったと思う。

 それゆえに俺は答えなければならない。この世界が俺にとってどういったものなのか、示さなければならない。


「……俺にとって、俺にとってこの世界は、夢だと思います。幸せで、終わらないで欲しいと願ってしまう、そんな夢なようなものだと……そう思います」


 真面目な話、俺はこの世界を愛している。こんなにも楽しいのは、現実では絶対に無いことだった。だからこそこれは夢なのだ。これがたとえ現実でも、おれは夢だとそう感じる。


「そう、わかった。はなす」

「よしよし、頑張れやナラマ様」


 そあ言うと、師匠はクレーターの外へ行く。その姿をナラマ様はまじまじと見ながら俺に再び疑問をぶつける。


「この世界っておかしいと思わない?」

「ん? まぁ、異世界だし」

「そうじゃない、そうじゃくてさ」


 俺は思う。

 彼女のこの性格はどういった部分なのか……とても汐らしく、女の子らしい。だがそれは、不思議と演技なのだと思えた。この状況を少しでも気にすることなく話したくて、それっぽい女の子を演じる。俺には理解が出来ないのに、不思議と確信してしまう。これは演技だと……だが、それ自体は今関係がない。それに反応するのは野暮というものだ。

 それなら俺から何かを問うことはない。ただ彼女がしっかりと口にしてくれるのを待つ。それが俺の出来ることだ。


 だからこそこの時は思っていた。

 俺にもなにか出来る事があると。


「…………」

「…………そうじゃなくて……私が言いたいのは……もし、もしだよ? この世界が本当に夢で、実際の世界が残酷な世界だったらどうするの? 今わわからないかもだけど……とにかく、そういう……話……なんだよ……」


 詰まりながらゆっくりと繋げる言葉は、最後にいくほど俺は理解することが出来なくなっていた。

 いや、理解も納得もする。

 だがその夢であるという言葉を実際に彼女の口から聞くと、さっきの決意はなんだったのか、少し、いや大きく俺は戸惑う。


「ふー、だいぶきんちょうもほぐれてきたからふつうにはなす、けどさっきいったのはじじつ、いまはまだとどめておくだけでいいけど、それなりにかんがえておいて」


 

 夢? なんだ? どう言うことだ?

 本当に……夢?

 ―この世界は夢である。―

 わからない。意味もない疑問ばかりが浮かんでは消えていく。さっきまでは普通の事ばかりを考えていたのに……あぁっもう俺の頭がついていかない。

 

「ほら、もうおそいじかん。かえろ?」


 そんな言葉をナラマ様が俺に問いかける。だが、彼女の問いに俺は何も返すことが出来ず、長い沈黙だけが横たわった。

 その帰りはとても静かで、少し寂しいものだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後の、修行日も含めた3日間はすぐに過ぎていった。観光もしたし、新しい武器もちゃんと揃えた。俺も余り気にせずに過ごしていたが、そんな日々は直ぐに消えていった。

 理由は言うまでもない。



 3日後、つまり闘技祭当日。

 俺は、あまりにも早く感じる闘いに、少しドキドキさせて、頭の片隅の違うことを出来るだけ気にせず、闘技場内、控え室でルールを確認する。


1#勝敗について

相手の気絶、又は戦闘不能によって勝敗を決っする。だが、相手を死亡させた場合、そのものは敗北となる。


2#試合会場について

試合会場に遅れた者は、その時点で失格とす。試合会場は、地・水・火・風と別れており、その会場によってそれぞれの個性がある。会場はランダムで決まる。


3#武器と魔術、攻撃方法について

武器は一人一つ。どんな武器を持ってきても構わない。魔術はレベル15まで、それ以上の魔術を行使した場合は敵対したと見なし、我が国最強の黒騎士による討伐を行う。


4#優勝者について

優勝者には賞金1000万ルーズ。

準優勝には、賞金100万ルーズ。

それ以下は無いものとす。


以上、この4項目を規定とし、シャラルダ闘技場のルールとする。


5#。捕捉

このルールは不変ではない。だが、この国の王が健在の限り不変である。

故にこの闘技場は……この国の命である。



 これが、この国における闘技場の規則。だが、最後のが少しわからない。

 最後の5は、ルールではないだろう……何かのおまじないだろうか……

 今の俺が気にしても仕方ない。

 一旦保留だ。


 その規則を頭にインプットし、周りの様子を確認する。

 広さは体育館程あるだろう、そこが人、人外で埋め尽くされる。そのさまは、コミケ以下大坂のやや満員電車以上というところだ。

 しかも、それぞれが緊張した面持ちである。中には仮面を付けたりしていて表情が読めないが、その読ませないようにする意図が逆に緊張させる。

 

 ルールには書いていないが、この闘技祭の一回戦は複数のデスマッチだ。まぁ死人はでないが、これが分かりやすい言い方だろう。それぞれの試合会場に移動し、そこで 30人の大乱戦が行われる。

 広さは実際に見てないが、30人が入る程の武台だ。相当広いのが予測される。

 そんな大人数での闘いに俺は本当に勝つことが出来るのだろうか……


 だが、それでも闘わなければならない。そして優勝を目指さなければならない。

 ……ならやることは一つ

 よし……


 俺が決意を固めていると、近くで―ささ―と、物音がする。その音の直ぐ後に、椅子に座ってくつろいでいる俺に、ある大男が声を掛ける。


「おおっ、なんだよぉ~このモヤシ野郎はよぉぉ~そんなんじゃあ直ぐにおわっちまうぜぇぇーー」


 うおっ、酒くせっ。なんだよこのオッサン。どうみてもモブキャラなんですが?

 すぐにやられるタイプじゃん。

 あ、いやいや、モブ容姿のムキムキ野郎でも強いかもしれない。そう師匠も言っていたじゃないか、うん。

 そう思い警戒を全力で起動させ、相対する。


「あぁん。なに睨んでん……だ、よ……」


 なぜか彼の言葉が詰まり詰まりになる。少し驚いたが、それもつかの間。周りがざわざわとしだしたので、俺も気配を探す。


 真後ろで殺気を放つ“女”が居た。


 っ!?


「あっぶねっ!?」


 俺は座った状態から即座に立ちあがり後ろに振り向く。その間に魔術を生成、発動させる。風と水で脚に雷を纏わせ、その脚で振り向く反動を乗せながら左足を軸におもいっきり相手の腹部目掛けて回し蹴りをお見舞いさせる。


「ぇっ!? ちょっま!?」

 

 相手の女性はその一撃を、一瞬だけ消えて避ける。いや避けたと言うと少し語弊がある。そこには何も無かったのだ。当たらないのが当たり前、かのように俺の蹴りは避けられた。


 だが、少し威力が高かったようで……

 そこに大きな風圧がうまれた。真空波と竜巻の間のような音が起き、そこらに居た参加者たちが吹っ飛ぶ。

「くばっ」「がっ」「ちょっ」

 このような言葉が跋扈ばっこし、体育館程の会場の隅に小さなどよめきが出きる。

 風圧はそこまでだったが、それにのっあ雷に問題があり、多くの者が脳をやられ気絶していた。

 

 う、うわ……ど、どうしよう……

 し、失格? 失格かな?


「す、すごーーなにこれ? 私の殺気に気づいた迄ではなく、即座にあんな動きできるとか……うわー、ちょっと申し訳ないことしたなー。なむなむ」

 

 その女性は少し背が高く、不思議な仮面を着けていた。言葉遣いは少し子どもっぽいが、明らかにお姉さんだ。

 彼女は倒れた人達に手をあてていたのを止め、こちらに振り向く。


「と、いうわけでっ! 私とチーム組んでくれっ」


 …………ちーむ?

 ちーむ。チーム。チームっ!?


「あ!? やべっ! 忘れてた。2人チームつくらないといけないのかっ!?」


 俺は忘れていた。完全に忘れていた。

 彼女たちと一緒にいると、これが夢ならいつか覚めるのかな? なんて考えていたら完全に失念していた。


「おいおいー、しっかりしてくれ~青年よー」

「え? あー、なんかすみません」

「てっ! そんな私も忘れてたんだけどねっ! はっはっはっは」

「は、はー」

「おいおい、なんだいそのやる気のなさは? このエヴィ様が一緒に組もうと言ってんだぜー、もっとやる気出せよー」


 ……なんだこの人……

 テンション高いな。こんな人今まで会ったこと無いから接し方が分からない。

 でもこの人、不思議と嫌な感情が浮かばない。なんか良いお姉さんだなーとそんな感じだ。うざっとかは無い。


「で? 私と組む? それとも違う人探す?」


 いきなり結論を迫ってきた。焦りはしたがそりゃそうだ。参加者名簿にもうすぐチェックを書かなければならない。そうなればタッグでなければ恐らく失格だろう。

 あ、失格で思い出したけどそこに倒れてる人達はどうなるのかな?

 まぁいっか

 とにかく時間が無いのだ。それにこの人は他の初対面の人より少し親しみやすい。これはこの人で決定だろう。


「うん。OK。大丈夫」

「ありがとっ、それはともかくそこのきみ

「はい?」


 なんで俺を急に君呼び?

 そう思ったが、違ったらしい。そう呼んだのは、すぐそこに居たムキムキマッチョのモブだ。名前はまだ知らない。


「な、なんでしょう?」

「ダメだよ、闘う前に諦めたら。今私の仮面見て諦めたでしょ? 言い切らせてもらうけど、君は一回戦で負ける」

「はい?」


 彼は呆然としながらも怒りをあらわにするが、彼女のお面を見ると直ぐにその怒りは引いた。


「そ、そうですね。自分なりに頑張ってみます」

「ほいほいー」


 それだけ言うと、彼は去っていった。

 去ったあと、小さな声が隣から聞こえてくる。本当に小さな声で「そんな所がダメなんだよ」と

 それはきっと彼が彼女の顔色を伺っていたからだ。いや、顔色じゃなくて面色か……

 いや、それはどうでもいい。


「なーなっ、もうすぐ受付だけどもう行くっ?」

「え? まぁうん。そうだな」

「無理してその言葉遣いにしなくて良いよ」

「あ、はい。わかりました」


 

 ―初めて心を見透かされた気がした。―

 

 




 



 自分が指を止めるのは、fgoの沖田ガチャだけだぜっ。



すみません。

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