第42話俺と魔王と???の闘技祭! その3
さっきまでの無意味な時間(依頼を見る)を終了した俺達は次の目的地に向かうことにした。
それは武器だ。
防具は要らない。魔力竜化だけで十分だしな。
なにより俺はこの村びと服をそろそろ新調しなければなと思ったのだ。
ほかにも色々話し合った。観光は明日にしよう、とかな。
観光を明日にするのは訳がある。
てか単純に時間がない。
今日は武器の鍛練にすると、“急に”言い出したのだ。
いい迷惑である。
でも武器の鍛練か、武器を使うの初めてだし上手く使えるか……
と、そんな事を考えながら俺は西側の鍛冶ゾーンに向かっている。
のだが…………スッゲー見られてる。うわーこれまたデジャヴ。いつだったか、あー、あれもカルマニアだったかな?
恐らくあのときと同じ理由だろう。両手に花だからこんなことになっている。
いや別に嫌という訳ではない。そりゃ俺だって男だ。嬉しいよ、嬉しいんだよ、嬉しいんだけども……苦しいんだよ。
こう、なんていうの? 視線が刺さる? この空気感? 威圧感? あれが嫌なんだよ。
嫌じゃない。むしろ嬉しい。だがなんとも言えんこの気持ちよ……。
「で? どの武器が好みだ?」
と、リンカ、もとい師匠が声が声をかけてくる。確か元はカンナだったか
とにかく俺はいままで考えていた事を一旦保留にし、話に集中することにした。
「こ、好みか……特にないな」
こっちに来てまだ少ししか経っていないというのもあったが、武器というのに慣れていないし、つい気後れしてしまう。
相手を傷付けるのは……ちょっときつい。拳で相手を傷付けるのは良いのに、武器は駄目なのは偽善だと言われるだろうが、それでも俺は好まない。
「なら全部試すか……」
「お金は大丈夫なのか?」
「それなら全然OKだ。これでも秘書業で
結構もらってる。あんな完璧竜っ子お姫様の秘書やってお金をもらえるなんて始めは詐欺だと思ったよ」
「はぁ、俺が居たときは居なかったよな? お姫様」
「そりゃ今花嫁修行でエレスタルス学園に行ってるもん」
「がくえんっ」
「学校かー、あんまし思い出とかないからこっちで行ってみたいな」
「それかー、また通る機会はあるかもだし寄ってみるのもいいかもな」
「おおっ、ならお姫様に挨拶でもしてみるかな」
「それを言うのはランキング3位の私を倒してからにしろっ!!」
「うえっ!? どうしたんだよ?」
「私は姫の保護者なのでね」
「急に秘書口調になるの止めてくれる。普通に怖いから……あ、そういえばすげー突然なんだけどランキングって誰がいるんだっけ?」
「そっちも急にだが……私も1~3位までしか知らんし」
「ふーん。1位が確かマクスウェルで、5位が師匠なんだよな?」
「あぁ、そうだな」
「なら2位と3位は?」
「……2位オーディン雷の巨神だったか、一つの国を治めてる王でもあるらしい。3位が魔神ラルキ、誰も会ったことも見たこともないらしい。名前だけランキングにあるって感じだな」
「へー、ふーん」
「それだけ?」
「基本そのあたりは気にしない姿勢で行っているので」
「あっそ」
「え?それだけ?」
そうこうしているうちに鍛冶ゾーンの入り口が前方に見えてきた。
「「……うおーーぅっ!」」
「相変わらずだな」
俺とナラマ様は感嘆の声をもらし、師匠だけ違う感想をもらす。
そこに広がっていたのは、一言で言えばー熱気、圧倒的熱気だった。様々な種族があちこちでガンガンと金槌片手、もしくは両手持ちハンマーで火花を散らしている。入り口には看板があり、そこにはいろんな方がごったがえしていた。
「……異世界だな……」
俺は久々にここが異世界だと感じた。
異世界、今どきそんなチープな言葉をしようするのは馬鹿げているのかもしれない。
だが、俺は思う。いや、俺は思い出した。
なにかのライトノベルで、こんな言葉があったのを――面白いもの、有名なゲームや作品はだいたいシンプル、だから面白いし有名だ。
この異世界らしい、チープでシンプルな空間が俺は妙に心地よかった。
「よし、まずどこに行くんだ?」
「うーん、まず剣だな」
「け、剣か……」
どっかの展示で見たな。
なんだったか、刀とかの……あ、社会見学で見たんだ。
「よし、あそこにするか」
師匠が指差したのは、あまり人の居ない、値段もきわめて安かった。視力がよくなってる気がする。
とりあえずその店に行くことにした。
「で? どれがいい?」
「きゅ、急だなっ」と俺はいいつつ物色する「うーん……こ、これかな?」
選んだのは、値段は高くなくむしろ中では安いくらいの物だ。安いというのもあるが、個人的にできるだけ普通なのが良かったというのもある。
「ふーん、普通だな」
「ふつーう」
「い、いいだろなんでも」
俺はぶっきらぼうにそう言いながら、その剣を師匠に渡す。
師匠はそれを受けとると、そそくさと店主の所へ向かった。
少しの時間だが、間が出きる。
武器屋の入り口ーー戸や扉のような物は無く、明け広げだーーにいるナラマ様に声を掛ける。
折角だしこの機会にナマラ様に聞きたかったことを聞いてみることにした。
「なぁ、師匠ってなんで竜族なんだ?」
「……いや、しらないけど?」
「……あぁ、そう」
…………あれ?
早いな、ナラマ様ならなにか知ってると思ったんだけど、そうでもないらしい。
やっぱりこういう事は本人の口から聞くべきなのだろう。
だが、俺が終わったと思った会話は続いた。
「でもあの強さは異常ではある」
少女はさっきまでの舌足らずの言葉遣いから一転、しっかりとした物言いに俺は驚きを感じ、ついそちらを向いてしまう。
「この喋り方は意識しないと出来ないからいつもはしないんだが、真面目なはなしなので」
“はなし”という部分は少しだけ戻っていた事から、意識しないと出来ないというのは本当なんだろう。だが、そんなことより話の続きだ。
ナラマ様は言葉を続ける。
「私は竜族の血が濃く、尚且つ運と努力で強くなった。でも彼女は努力だけ、だから異常なの」
「あー、成る程、確かに俺も神と竜両方持ってるから強いわけだし」
「そう、しかも私がりょうたくんから出た時にりょうたくんの力ちょっと持ってきたけど、そこを努力で乗り越えた」
「あー、あのいじめね」
「うん、あのいじめ」
え? 開き直っちゃうの?
「彼女はあのいじめよりも濃く辛い努力をしたと思う。でもそれだけならあんなに強くはなれない。それに元人間が竜族と呼ばれている理由にもならない」
「確かに……あれ? 言ったっけ? 師匠の過去」
「いやいや、聞いとるがな、あんたの中にいたんですし」
「あ、それで」
プライバシーという言葉を彼女は知っているのだろうか?
ま、それは兎も角……長いな、師匠
そう思い師匠を見てみると、俺の武器は買い終わってはいて、他の武器を物色していた。
「師匠は何をしているんだ? もう俺の武器も買い終わったし次の目的地に行けばいいんじゃないか?」
「他の武器……ごほんっ!もせっかくだしかおうとしているとか?」
「それ凄いな、違和感というか……不自然というか」
「まじめにしゃべると、そのひはまじゅつがつかえない」
「えっ!?」
「もちろんうそ、でものどがいたいのでこじんてきにつかいたくない。」
「ほえー、まぁお大事に、だな」
いや、お大事にの使い道間違ってないか?
「それよりりんかがふつうのふぎをつぎつぎかってるぞ?」
「あ、ほんとだ。あれは……スタッフに両方に刃があるブレード、ブーメランにリスト……なんだこの守る強さを知るRPG的な装備チョイス」
「なにをいっているかわからないけど、いいちょいすだとおもう」
「なんで?」
「遠距離・中距離・近距離をばらんすよくえらんでる」
「なんではじめ集中して言ったの?」
「へんしゅうみすだ」
「え?」
「なんでもない。それよりこっちにきてる、りんか」
「あ、本当だ」
もう一度師匠の方を見ると、装備を入れている袋をがちゃがちゃ言わせながらこちらに来ている。
「……ん? どうした?」
「いや、買いすぎだろと思ったもので」
さっきの話が少し顔に出たかもとビクッとするが、とりあえず他の言い分で乗り切る。
「あっそ、ならさっさと行くぞ」
「はいはい」
「りょうかい」
ナラマ様は、敬礼をしながらそう言う。
俺は前を向き歩きつつ、ナラマ様の敬礼をかわいいなと思いながらも今は彼女との話の内容が頭から離れなかった。
あ、守る強さを知るRPGでは無いよ。
あれだよ、努力というやつだ。
俺はそれ程努力をしたことが無い。だが、皆無というわけでは無い。けれど師匠がしたと思われる努力を考えると……それは努力というには余りにも楽な物だった。
成績を上げようと頑張ったり。
友達との関係性を上手くやろうといろいろ考えながら立ち回ったり。
ゲームを文字どおり四六時中やり、プラチナトロフィーまでゲットしようとしたり。
全て平均で止まった。
どんな努力も平均で。
成績表は全部3。友達とは結局心の底から仲よくはなれず。トロフィーだいたい75%で止まった。
だから、一時期逆になにもしないようにして、普通じゃ無くなればいいと思った。
勉強はしない。友達には自分の好きなことを遠慮無く話す。ゲームはトロフィーを気にしない。
……どれも上手くはいかなかった。
成績表さ下がり両親にどうした?と心配された。友達にはゲームの話をして、だからどうした?と言われ空気が死んだ。ゲームは目的がなければ面白くも何とも無かった。
だが俺はランキング3位の彼女を思いだし。思った。
……いろんな努力をした気になっていただけなのかもしれない。
努力はいつか報われる。
報われない努力は無い。
なら……なら俺の努力は努力では無かったのかもしれない。
……俺もやれば普通という枠から
と、そこまで考えた所で、俺の意識はふと外に向いた。周りの空気が少し変わっていたからだ。
「どうしたのかな?」
「ナラマ様と師匠はここに居てください。ちょっと見てきます」
足早に俺は看板の所へ向かい。いろんな人種を抜けていき。目的地へ到着する。
そこには、こう書かれていた。
『……今年の闘技祭はタッグで行うこととなった。それに際し、ルールを一部変更する。まず、回復魔術、又はアイテムの禁止。自動回復等は可とする。しかし、審判が致死とみなす程のダメージを受けた場合敗退とする――』
さらさらさら、いろんな闘技祭のルールがそこには書かれていた。
正直読む気が起きなくなる。
とりあえず、上部の記述を除けば……混合魔術の使用は可とする。なに混合魔術って? さらに、償金について、賠償金についても書かれていた。残りは以下例年どうりであるとあった。
つまり、俺が魔王さまから聞いたらしい話しと同じと言うことだ。
だからこんなにつらつらとながながに書かれているのだろう。
そして最後に一言
PS、今回は私も参加する運びとなった。魔王より。
そんな言葉が書かれていたいたのだ。
なるほどな、これで住民達はどよどよしていたのか、だがこれは知っていたことだし、案外どうでもいい案件だ。
うーん。
……一番の問題はタッグのことだ。
誰と組むべきか……
その辺りも含めて、一度みんなで話してみるか~
俺はいろいろがやがやしている看板辺りの通りを抜けて、彼女達の元へと戻る。
2人でなにかを話している姿が見えすかさず声を掛ける。
「おっ、いたいた。見てきたぞー」
俺の声に2人は、ん、と反応する。
「で? 今なしてたんだ? 話し合ってるみたいだったけど」
「今はどうでもいい話だな」
「うん、まだいい」
「へー、じゃあいいや」
この2人はときどきこのように話しているように感じる。
竜の里でも、こんな感じだったが、旅に出てからあまりそんなことが無くなった。恐らくは俺がいると話せない話をしているのだろう。
ここからは勝手な想像になるが、俺に言えない様なこと、それは……そう、女子トークというのだろう。
男子の前では話せない類いのものだろうと思い今ではこうして追及しない様にしている。
「あ、それでがやがやしてた理由は、魔王が闘技祭で参加するっていうのを書いてあったからだったぞ」
「ふーん、ならさっさと行くぞ」
「あぁ、了解だ」
さっさと行くのは良いんだけど、魔王さまっていう立場なのにこの人達は全然どうじないな。これが強者の度胸なのだろうか……羨ましいな。
そして俺は修行に行く途中、彼女に出会ったのだ。
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…………うーん、人多いな……
どこに向かってるかわからなくなるな。
ナラマ様と師匠は一応見える位置にいるし大丈夫だろ。
あれ? あ、見えなくなった。
やべーな。
とりあえずこの人混みから出ないとな。
うおっと……満員電車から降りる時ってこんなこんな感じなんだろうな。
……ここどこだー
うーん、あ、壁に文字書いてあった。
『ここに……いるよ……』
「ん? なんだこの文字、見たことないが……」
隣の亜人が言葉を発する。
いや、この文字あきらかに……
……あ、そっか、日本語ってこの世界に無いんだな。
…………うん。うん。
「これっ! 日本語じゃんっ!」
俺の驚きの声が街の通りに響き渡ったのだった。
お久しぶりです。
2週間ぶりですね。
今回は話の内容が6000字程パーとなり少し遅くなりました。
すみません。次からはデータしっかりとコピーしていきます。
前振り(謝罪)はこのぐらいで、新学期が始まりました。
私も2年生になり先輩へと昇格しました。
それで、次に書く小説のテーマは、学園ラブコメになるかなと思います。ありがちですね。これまた。
細かい設定はまだですが、キャラ設定は2人と学園の校則は考えました。ので、次の作品はこれが終わり次第すぐに出せると思います。
なので次回作も見てくれれば幸いです。
では、




