第28話 俺の……居場所
真面目な話は苦手なので下手くそかもです。
意識がいまだに微睡っている、自分が……自分がどこにいるのか分からない……
世界の周りをぐるぐる回っている。
そんな感覚に囚われながら、自分自身の意識を保とうとする。
そこにあるなにかをつかもうともがいてもがいて……
………………
「はっ!?」
…………
“くら……い?”
“つめ…………たい?”
頭の何処かから声がする。
女の子の声だと思う。
たが、それが誰なのか、それは分からない。
初めて聞く声……
だが、どこかなつかしさを感じる。
懐かしい……か?
いや、なんかちがう。
“みずが……おしよせてくる……から”
“きをつけて”
…………
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「ぷはっ!?」
真っ暗な夜空を見上げながら、俺は意識が覚める。
座ったまま手をぐっぱぐっぱと、しながら自分が生きているのか確認する。
「…………」
じょ、情報を整理しよう。
えーと、確かギルドの人に王城に連れていかれたあと、噴水スゲーな、て思ったら石につまずいて……マクウスさんにいろいろ教えて貰って……
それで俺にほとんど説明しないままあの人にここに飛ばされた……と……
そして、今いる場所は不明
分かるのはここが浅瀬の海か湖というだけ………と……
「はっはっはっはっ……石に躓いて、結果変わっちゃってぜ(♡)」
……
…………
………………
「てっ!! どうすんだよーーーーっ!?」
俺の声が砂浜に響き渡るが、反応するものは一人、いや一匹たりともいない。
さざ波の音をただ聞いているだけだ。
ただただ星が流れるのを見つめるだけ、寂しい、寂しいぞ……想像以上に……
「くそっ、とりあえず歩いてみるか……」
海辺をバシャバシャと立ちあがり、この辺りを散策することにした。
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4時間後
「……」
頭がくらくらする……
…………
……………………
くっ
……始めはいいけると思っていた……
いつも通り自分がもらった力を駆使して……でも……でも1時間全力で走ってもなにもない……全力の魔術を出しても気づかない……高く跳んでも先が見えない
もうどうしようもない。あのあとただ意識が朦朧としながら3時間ぐらい歩いているのになんにもない……
森、森、森、森
林、林、林、林
木、木、木、木
ひたすらにこれだけ
しかも、この森が妙に薄暗く、木も紫色で気持ち悪い。進めば進むほど現実味かを薄れていく。
ただ眠いだけと言うのは簡単だが、なんとも言えない不快感を感じる。
眠たいとは違うなにかを、
「ヒントもなにもないまま放り出されて……へんな声が聞こえて、結局これはなにをしないといけないんだ? …………」
……?
……今の言葉違和感……が、ある気が……
も、目的?
ゴール?
正解?
…………
「違う……俺の今の目的は帰ることだろっ……なんで忘れてたんだ……」
自分自身の体じゃないような……俺自身の記憶はどこだ?
はい?
いや。何いってんだ? 俺……
……
とにかく早く帰らないと……
?
……どこにだ?
家?
元の世界?
いや、リアたちの元か?
俺の居場所?
ゴール?
ラミアルア?
カルマニア?
ギルド?
宿屋?
目的?
ない?
ない?
…………ない?
「……俺の戻るべき場所はどこだ?」
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ある村の地下……そのさらに地下。
そこには小さな部屋があった。
その部屋は誰も入ったことがないと言われている。
何千年もの間開けられる事はなく。
いつかは忘れ去られる部屋は……
だかそこは……
ものすごく未来世界と化していた……
パソコン、携帯電話、ゲーム機、コタツ、クーラー等々
明らかに異世界とは思えない完全現代人な部屋。
そこに居たのは……
ーー???ーーーーーーーーーーーーーーーーー
竜の逆鱗……
あるものでは触れれば終わり。
あるものでは弱点で。
あるものでは超レアアイテム。
まあさ、兎に角とにかくいろーんな所で使われるわけだ。
そんな物が村の名前……なんていうのは、現実問題珍しい。……ああ、いや、小説家になろう。では珍しくないかもしれないな。
正直言おう。
縁起が悪い。
だって竜の逆鱗だよ?
触れれば相手は怒られるんだよ?
つまり、ここの村に入ってら怒ります。
そう言ってるもんなんだよ?
まさにそんなもの……縁……つまり縁を切っているもんだ。
まぁ、まぁさ、兎にも角にも私が言いたいのは……こんなにも密閉された村で最強美神の族長娘の秘書? メイド? なんでもいいや、そんな位置にいる私は最強なんじゃない? と言う話だ。
くく、いやーはかどるはかどる。
研究者としての研究がはかどる。
とたんに私はある気配に気づきテンションががた落ちになる。
…………
「やぁ、久しぶりだね、竜族の研究者、君に頼みがあ「断る」……る」
私は彼の物が言葉をいい終える前に答えを口にする。
なんでこんなやつの言うことを聞かなきゃいけないんだい?
バカなの? 死ぬの?
そんな心境ですよ、族長娘の秘書リンカさんは……
「はやい、早すぎだ断るのが……しっかり話を聞かないと後悔す「しない」……る」
彼の物はさすがにイラついたのか、ぶち、というこめかみ音をならせて武力交渉に出ようと……することはなく冷静に一言。
「殺すよ……」
おっと、全然冷静じゃなかったですよ。
「どうせ研究はどこまで進んだ? こういう個体はどうだ? とかそんなことだろう、なら帰ってくれ」
「その悪趣味な服装をやめてくれ、かもしれないよ」
「これは私の個性だ。否定したら殺す。」
「その白衣や、腕の途中から途切れて手首辺りから見えるようにしてるのも、さらに言えば黒い手袋も……なぜそんな服装をするんだい?」
「はっ」
私はこいつの言う質問に鼻で笑って返す。
「何だってお前に言わないといけないんだ?」
……私と彼の物の間に沈黙が走る。
これは心地よいものでも、恥ずかしさによる心地悪いものでもない。
ただの怒りと怒りこぶつかり合い。
それだけだ。
先に折れたのは彼の物のほうだった。
「はー、まぁいい話がそれた。ここから南方……たしか迷いの迷宮か……そこにある魔法使いをおいてきた。助けてやってくれ」
「なぜ?」
「……その者が竜族の王だ。」
……なるほどな……
「だが、それなら俺が行く必要なくないか? 先代が連れてくるだろ。」
先代とは、伝説と言われた竜……ファフニールの事だ。
彼女は早く無くなってしまったが、その力は絶大だった。故に体が消えても力が残った。いや、残ってしまった。
だから封印した。
ある神と共に。
それはまた今度にするとして……
今はこの糞爺の話を聞くことにする。
「あの者の体には神の因子も入ってる。ファフニールちゃんがこっちに戻るのも時間の問題だが……さてはて、後どれくらい掛かることやら」
「そこで私の出番? 確かに私は純粋ではないけれど、どんな竜より強い自信があるんだけど?」
「はは、頑張ってくれ、竜族の科学者よ」
そう言うと彼の物は空へと消えた。
……はー
珍しく疲れてしまった。
あいつが私に物を頼むとは……相当だな……彼か……
私は、無造作に置かれている手鏡をとり自分の顔を覗き込む。
そこにはまさしく美人な女性がいる。
青色の髪に、印象的なつり目、目の色も素で紫とほのかに色気を感じさせる。
胸もそれなりにあるし、肌にだって自信がある。
美少女……か……
私はそんな自分が大嫌いだ。
吐き出すように心の中でそう思うと。
持っていた手鏡を机に放おった。




