第25話 物語の始り(ようやくっ!?)
街は現在喧騒に満ちていた。
喧嘩で”オラッ“と言っている男二人の声
店員、もとい店先に立っている人の“そこのお嬢さん、ここの物はどれも一級品だよっ、ゲヘヘ”と手をサスサスしている方
何処かの教徒の人が、“あなたの全てを肯定します、そしてあなたの全てを許します”と言って少し汚れた茶色のチラシを配っている方
そして……
―りょうたサイド―
(う、嘘だろっ、)
「ま、マジで強すぎだろ……」
街の泉を石で覆いそれを上から吐き出しそれを再び巡らす物、つまり噴水が音を大きくしている。ここはこの国の中央広場だ。それなりの大きさがある。
時間も時間だけあって人はたくさんいる。だが明らかに不自然だった、そこにある空間は……
さまざまな声が、音が舞う中……
たった一つを残して
俺、神野亮太は、灰色と茶色の交互で出来たタイルを這いずる。
「初めに言ったはずだよ、本気で掛かってこいと、ここは結界が張ってあるから、全ての感覚が遮断されている。君に最も適した場所だと思ったんだが……」
喋っているのは、いつも通りの微笑みをたたえている、俺達が壊してしまったバーの店長スウェルさんだ……だが彼の声は明らかな嘲笑と軽蔑が含まれたものだった。
彼は静寂と化している半径10メートルの円の真ん中にある絵札、いや術絵と言うらしい物を指差し下にクイッとする。その瞬間そこを中心に光が灯る。
「これでもう少しやり易くなるだろう」
そこを中心に世界が広がった。
さっきまで半径10メートルそこらの円は学校の運動場と言う程大きくなった。
こちらから歩いている人をみたら瞬間移動しているように見える。
俺は灰色の地面を叩き再び立ち上る。
立ち上がると同時に全てを終わらす一手を打った。
たったひとつの……折衷案を……
「……降参です」
…………
……え? 降参かよっ、て? そりゃ相手が強すぎだからね仕方ないよ……
だって俺は本当に本気で行って、地面に這いつくばってたんだから。
「ほー、降参か、まぁ負けを認めるのは良いことだ、だが負けを認めていいのはなにかを学んだ物だけ……そうは思わないかい?」
……なるほど、確かに何も得ることが出来ないときの負けほど入らない物は無いだろう。
例えば、あるサッカー選手2人がPKの勝負をして、ずっと右端に打っているにも関わらずそんなことを気にせず自分の勘でゴールを守る感じ。
それもいいかもだが、正直それで成功するものは少ないだろうから……
「その前に……ひとつ聞いていいですか?」
俺はふと思ったことを口にする。
「なんだい?」
「…………なんでリアの父親が俺に修業つけてるんですか……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時間は1時間ほど前になる。
俺達、つまり俺とメルが修業をやめ、見るからに荒野のみと言う風景の中、なが~い距離を歩く。
「あれだな、正直な話跳んでさっさと帰りたいんだが」
「跳ぶって、ジャンプのこと? ジャンプしながら帰るのは罰ゲームじゃない?」
「そういう意味じゃないって、うーん……簡単に言うとジャンプで行ったらそのジャンプ一回ですぐに50メートルは行けると言う意味だ」
「へー、なんかもうあんたがなにしてもおどろかなくなってきたわ……」
「はは、全部平仮名になってるけどな……」
「でもあれね、多分だけどあんたもそれやったらきついんじゃないの?」
「まぁ、それなりに……両足が痺れるくらいだな」
「うわー、ケッコーきついじゃない」
改めて考えると、確かに……しかも痛覚が軽減されて痺れてるってことは……相等いたいんじゃないか……
軽い打撲……いや、肉離れもあり得る……
ケッコー自分の中で重要? な話をしていると……
「ん? あれってうちの国の騎士の人達じゃない?」
そうメルが言ったので、俺も彼女が見ている方を見てみる事にする。
彼女が見ているのは俺達が帰っていた方向から左側75メートル? くらいだと思う……それ程の距離に茶色の煙や魔術の詠唱による粒子が舞っていた。
「お、ほんとだ、あの煙が舞ってる辺りの所だよな……でもなんで、あんな傷だらけなんだ?」
「知らないわよ、私に聞かれても」
そう、ボロボロなのだ、正直な話………物凄く酷い有り様だ……
あるものは右足が逆さまになり叫びながらもずっと剣を振っている。
あるものは心臓近く……いや肺をやられたのかキューという甲高い呼吸音が鳴りながら魔法を打とうとしては失敗している。
あるものは……? お!?
「あ、今モンスターこっち見てなかった今……」
「は? なに言ってるの、この距離でそんな細かいこと私に分かるわけないじゃない……あんたはともかく……」
あ、改めて言われると視力が圧倒的に上がってる。……うわ~どんどん人から遠ざかってるんじゃ……
いや、それよりも今はあの騎士の方だ。
おそらくだがあれらの魔物とあの騎士たちは、最近よく聞く強化された魔物たちと、昨日俺が倒した副団長の騎士団だろう。
ちなみに最近よく聞くと言ったが、自分自身がその目にあっているからだが……まだ予想の範囲なのでなんとも言えない。
騎士のほうは言うまでもないな……
「うん、貴方の言った通りのようね……レッドゴブリンがこっちに来てるわね」
「だろ、面倒くさいな、あ……よし、修業だあれを倒してみてくれ」
「……多分負けるわよね、私」
「だろうな、どれだけ才能と努力があってもまだ10歳だしな……」
「はー、分かったわ……その代わり一撃でもくらいそうになったら守ってよね」
「了解、了解」
ま、俺でも倒せるかは分からないが、おっと責任感ないなとか思うなよ、いざとなったら一緒に全力で逃げるし。
それよりちょっと師匠かぜ吹かせすにたな。なんだよ才能と努力があってもて……うぐ、なんかすげー恥ずかしいな、人のこと言えねぇー
そうこうしているうちもうすんでの所まで来ていた。
うなっ、とゴブリンっぽい声をあげる。それと同じくしてメルも戦闘態勢に入る。
戦闘態勢つまり、魔術の詠唱だ。
彼女はハッキリと聞き取れる声音で
「《火魔術、レベル9、マグマ》」
マグマを放つ。
小さいが確かに威力があるだろう。
先程はよくわからなかったが、やはりマグマは操作性がよく相手の当てたい場所に当てやすい。
だが、相手は火耐性があるのかそう簡単には倒せない、だがそれは確認だったようですぐに次にうつる。
「《地魔術、レベル9、ロック》」
その瞬間周りの地形が換わる。
半径10メートル動きにくい状態になる。分かりやすく言うと山登りの足場のようになった。
彼女は休むことなく次にうつる。
「《火魔術、レベル13ニトロクリエイト》っ!」
……
しばらくの静寂ののち、岩がひかりを放ち出した。その光がゴブリンに影をつくる。その影が極限に達したとき
ドバンっっっっ!!!
破裂音と瓦礫がここ一体に広がった。
おそらく彼女が作った魔術によって岩の中にニトロをつくり上げ爆発をまねいたんだろう。
だがどうやって爆発させたんだ?。
そう思い、瓦礫を見ると魔方陣のような物が書いてあった。だが一番驚いたのはどうやって書いたかより何でかかれていた……だ。
その魔方陣はニトロセルロースによって書かれていたのだ。
……あ、何故俺がこれがニトロかわかるかって?
それはこの前俺が発動したからだ。
ほら、来たときの道をふさぐやらなんとか言ってた時におっきい魔術を発動するのはな、と思いニトロからやろうと言うことで練習を道を歩きながらやっていたのだ。
危ないなとかは言わないでね(てへっ)
ちなみにニトロもニトロセルロースも変わらないよ(多分)
ま、俺もあんましらんけど……
いや、それよりこっちだ。
彼女か魔方陣を知っているのもそうだが、これほどの操作性を持っている、いや、これほどの操作を出きるという情報の方が大事だ。
こんなもんが普通なんだろか……
だが、俺が考えている間にも戦いは続いていく
「プラスαっ! 消し飛べっ《火魔術、レベル14、エクスプロード》っ!」
最後のだめ押しと言う感じで、エクスプロードを放つ。
さっきは瓦礫で威力を上げたが、そんな小細工なしの火が俺達の周りを荒れ狂う。
戦争とかのワンシーンにありそうな風景が俺達の目の前に広がった。
クレーターにクレーターにクレーターに白煙、月かっ! てほどにある。
「はー、はー、はーー」
疲れたのか、肺に空気を無理矢理入れ込む。
「よっしゃ、これでどうよっ」
白煙が少しづつ晴れていく、そこにいたのは……
「「……は?」」
圧倒的な大きさがあるレッドゴブリンであった。
…………な、なんだこれ……




