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俺、神様になりました。  作者: 商 秋人
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第23話俺、師匠になりました。





「《火魔術、レベル9、マグマ》」

 

 齢11歳の女の子の声がモンスター渦巻く荒野に散々と咲く。


 俺、神野亮太は、現在師匠だ。

 だいたい朝の9時くらいか……

 昨日いろいろ話し合ったが、とりあえず俺は師匠として教える事は約束していたので、師匠としての仕事に出ている。

 ラミアはあの服のままでは王に姫ではないと言われる可能性を考慮して、礼金で服を買いに行った。

 以下2名も同じ様な感じだ。


 俺が服を買いに行っても意味がないだろうとのことで結局行かなかった。

 少し反論しようとしたかったがマジで何も思い浮かばなかったので素直に引き下がった。

 そのあと俺はスウェルさんの所へ行って、用事があるらしく孫を4時間程預かって欲しいと言われ、すぐ修行に取り掛かることになった。

 で俺たちはカルマニア王国から20分程の時間を要する場所で魔物を狩っていた。



 「普通にスゲーなおい……」

 

 口から素直な感想が漏れる。

 ストレート金髪碧眼の背120㎝前後のヒラヒラフリルスカート+ザ村びと服上を着ている彼女、いや、少女が詠唱、発動した魔術のマグマは花びらのようにはじけ、周りにいた魔物の一部一部を溶かし、戦闘不能にしていた。

 

 「どう? ある程度分かった? 私の強さ」

 「あ、あぁ……ていうか俺が教える意味はあるんでしょうか……」

 「はぁ? あんたこんなんも出来ないって言うの?」

 「いや、そうじゃ無いんだけど……」


 俺が言葉を濁しているのは、無詠唱タイプだからで、しかもこの世界の魔術をあんまりしらない、さらに少女の方が操作性が上……もう教える事なくないか?

 

 「まぁ、と、とにかく俺も魔術撃ってみるよ……」

 「あ、じゃああれ、カラン倒してよ」

 「あ? からん?」

 「え? それも知らないの……」


 あ、なんか師匠の威厳が一瞬でかつ少しづつ消えていっている気がする。


 「はぁー、カランって言うのは、ここの近くに小さいオアシスがあるんだけど、そこに住み着いて離れないでいる魔物なの、魔術抵抗が高くて、骨のみだから防御力も結構あるの……まぁつまり面倒な魔物ってこと、分かった?」

 「うーん、まぁ、だいたいは……」

 「よしっ、じゃあ行くぞ」

 「うし、了解しました」


 どちらが師匠か分からない会話をしつつ今いる地点から移動を始めた。

 移動するついでに分かって無いことを聞いてみることにした。


 「そういえば、なんでお前は魔術覚えようと思ったんだ?」

 「お前じゃない、メルよ」

 「お、おう……で、メルはなんで魔術を?」

 「特に理由は無いわ、強いて言うなら15歳以下で出来る仕事がこれしかなかったからかも」

 「そんなに金に困ってるのか?」

 「いや、別にそういう訳じゃない、お金が欲しい、ただそれだけ」

 

 成る程成る程、いわゆるお金が欲しい中学生みたいなもんか……わからんくもないが、これだけの力があれば大人並みに稼いでるってこと……だよな……

 冒険者スゲー


 「あ、貴方はどんな魔術が得意なの?」

 「ん? 俺か? 俺は多分氷かな……使いやすいし、他のより魔術の威力も高い」

 「ふーん、じゃあ私とは真逆ね、そんなんで教えられるの?」

 「まぁ、やれるだけやるさ」


 今ので会話に一段落ついたようで、俺たちの間に沈黙が横たわる。

 改めて考えると、女子と二人きりの時って毎回こういう時だと思う。

 あ、いや、始めにそれっぽい雰囲気になったか。でも、それくらいか……

 いやいやそれだけあれば充分十分。


 ー


 ―5分後―


 「ねえねえ、あんたたちってなんの集まりなの?」

 「ん? 言っていいのか分からんからノーコメントだ」

 「え? 気になるの分かってて言ってるでしょ、それ」

 「まぁあな、でも、だから? て感じの答えだからあんまし聞いても意味ないぞ」

 「その心は?」

 「のらんぞ、その手には」

 「あっそ、つまんない」


 そう言いながらそっぽを向くメル。

 一応王様にばれたら嫌だからな、嘘をつくにしてもここで無駄にアピールしても意味ないし、だから今は言わないでおこう。

 俺が沈黙しているとメルの方から口を開いた。


 「うーん、じゃあどこまでの魔術遣えるの? おじいちゃんにははぶらかされたから」

 「あー、それならギリギリいいのか……な?」

 「なんで疑問形……」

 「うん、そうだなそれくらいは大丈夫だろ」

 「なに? 言うなら早くして、レベル16? 17?」

 「レベル20だよ」

 

 ……………………


 え? なんでだまんの……こ、怖いんですけども……


 「……! はっ、そんな嘘信じられると思ってるわけ?」

 「いやホントだって、なんならそのカラン倒すときに使ってもいいし」

 「……ま、期待しないでおくわ」


 5分後


 道とも言えない道をひたすらに歩く。


 「ん? あ、あれか……」

 

 荒野を歩いている途中で、一部荒野とは言えない程の木が生い茂っていた。その真中まんなか、中心部にその木々らよりも明らかに高い、骨の腕が見えた、その腕が地面に激突し地面に震動がはしる。

 「ドギュランっ!!!」←腕が地面に当たった音


 …………初めて聞いたな、あんな地面の音……


 “俺たち”は茫然と立ち尽くし、それを眺める。こちらに震動を渡らせるのに約2秒程、距離100m位だろうか……

 


 「ん? 今の中になんかおかしいとこなかったか? ……あ、いやっ、なんでメルまで驚いてんだよ、知ってるはずだろ?」

 「……あ、あんなにでかいとは、噂じゃ5、6m程度って言ってたのに……」

 「5、6mって、どうみても30m越えてんじゃん……とにかくあれを倒せばいいのか?」

 「え? いやいや、あんなの無理に決まってるでしょ……」

 「うーん、5分5分位かな、あれよりでかいの一回だけ退しりぞけたし……」

 「ほ、本当にやる気? わ、私は離れた位置にいるからね……」

 「おう、ま、期待しないで待っててくれ」

 「う、うん」


 寂しそうな声を背に俺は荒野のオアシスを真っ直ぐ軽い足取りで歩き出したのだった。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


 オアシスの木々は周りから見るよりも生い茂ってはおらず、案外小さい造りだった。 なので割りと簡単にカランのどこまでたどり着いた。

 

 周囲に暴力の限りをつくすカランの元に……

 

 ……うーわ周りがボロボロ、オアシスですらなくない?

 オアシス、いや湖があったとされる場所はもはや原形をとどめておらず、水溜まりがポツポツとある程度になっていた。


 「うーん、でも荒野なら普通か……本来ならこうなるのが当たり前な訳で」


 そんな一人言を呟いた瞬間にラカンが巨体をこちらに向けその右腕が俺の方に飛んでくる。

 ビュフンっつ

 耳を貫くような風の音


 それをゆっくりと避け、観察する。

 ……以外と遅い? これなら街で闘ったなんちゃら蓮歩さんの方が速かった気がする。

 ……にしても……

 

 「想像以上に反応速度が速い」


 …………あれ?

 俺ってこんなにも真面目なキャラだっけ?

 一応普通な筈なんだが……

 て、今そんな事考えてる場合じゃない


 っ!

 

 振り抜いた右腕がそのままの勢いで回転しながらこちらに向かってきた。

 暴力と言うには大きく災害と言うには明らかな敵意がある、そんな途方もない威力の殴打。


 指先に魔力、手の内と手のひらに魔力っ!


 「《アブソリュートゼロ》ッ」


 この辺り一帯を凍らす訳にはいかない、氷結力は下がるがやはりレベル19辺りが良いだろう。


 俺が放った魔術は相手の拳を寸前で止めて掌から一気に肘あたりまで凍っている。


 「よしっ、これで片腕が消えたな」


 凍った片腕は力なく項垂れ、力を入れることも出来ないようだ。


 「グゴおおおおおっ!!!!、」

 

 痛みを感じるのか、雄叫びを上げるカラン。

 体全身に響き渡る雄叫び、普通ならそれだけで倒れているだろう、だが竜の宝玉の影響かそんなこともなく平然と立っている。むしろ別の事を考えれるくらいに……


 痛みは感じるんだな……骨なのに、神経通ってないのに……

 

 まぁ、いいか、そんなことは……

 

 相手が痛がっている間に俺は二撃目を打ち込む。


 重力、分散、分解、

 魔力集中、決壊っ!


 「はっっ!」


 俺の言葉を皮切りに敵、カランの体の所々が白く染まり、その1秒後には白は黒へと変わり骨のチリ、いやそれは細か過ぎか、粗大ごみと化していた。


 「ふーー」


 いやー、いい汗かいたー

 おでこの汗を村びと服の袖で拭く。

 やっぱり勝てたか……

 あのときの感覚で魔術使ったらいけたな……

 よしっ、重力魔術を使ったあとに一度消すと一部が残るのか……

 うん覚えておこう。

 

 それにしても今の敵……うーん、なんかいまひとつ……

 確かに強かったけどあんなに地面を揺らす程では……

 

 その時ドサッと小さな音が少し遠くでなった。


 「?」


 それと同時に女の子、少女の声がした。

 

 「ふぇ?」

 「ん?」


 そこにいたのは先程まで話していた仮弟子? メルだ。

 可愛い小さなおしりを下が泥にも関わらずへたりこませている。

 その姿勢のままメルは俺に声をかける。


 「な、なに今の?」

 「え? 闘い?」

 

 つい返事をしたが、まずなんでここに来たのか聞けばよかった。

 いや、それよりも解答これでよかったのか? 質問の意味ちがくね……


 「い、いやっそういう意味じゃなくてっ」


 へたりこむのをやめて立ち上りお尻の泥を払いこちらに走り込む。

 可愛い小さなひとさし指をピンっと顔に向け


 「さっきの魔術よっ! あんなの見たことも聞いたこともないわっ!」

 「え? いや、あれは……重力魔術? だと思うんだが……」

 「じゅ、重力? ……あ、あなた無属性の神域に到達したの?」

 「いやいや、無属性の神域は転移重複魔法だろ?」

 「え? そうなの?」

 「う、うん、多分……」

 「っ………そ、それはともかくっ! それでもそんな魔術知らないわよっ!」

 「あ、あー」


 成る程、つまり俺があのとき使った魔術を少女は見たかとがない、それでその事に聞いていると、理解力がなくて申し訳ない……


 「うーん、俺も発動した当初は焦ってたからな、発動した、というよりたまたま出ただけだけど……」

 「て、それじゃ2回目ってことでいい?」

 「まぁ、そうなるな」

 「分かったっ! それ教えてっ」

 「……べ、別にいいけど……結構難しいと思うぞ……」

 「そんなことはわかってるっての、それでも使いたいのっ!」

 「うーん、まぁいいか……」

 「よしっ」


 メルはそう言いつつ小さくガッツポーズをいれる。


 「明日からその練習よっ!」

 「明日から?」

 「? 聞いてないの? おじいちゃんが……」

 「あ、亮太です、亮太」

 「……言うのめんどいからリョウて呼ぶわね」

 「……べ、別にいいが……?」

 「了解、で、おじいちゃんが夕方からリョウと話したい事があるんだとさ、だから今日はこれまでよ」


 その言葉で、周りを見ると太陽は夕方とは言わないものの、その寸前で、若干肌寒くなってきた。


 「分かった、今日はこれまでだな」


 ……あれ? 修行という修行してなくないか? いや、時間も時間だし仕方ないか……


 「じゃ、さっさと帰るわよ」

 「おう」


 そんな訳で、長い道のりをゆっくりと歩いて帰るのだった。





 

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