マチュアとルーラーの、ツイン・スラッシュキック!!
浮遊大陸から飛び出して来た蝙蝠型の魔物。
それが次々とマチュアとルーラーに対して炎の槍を飛ばしてくるが、その全てがマチュアの指パッチン一つで消滅していく。
――パッチィィィィン
「却下である!! 本当に久しぶりに使ったから感覚忘れていてちょっと出力調整が出来ていない却下だったけれど、まあ、これでよし」
たった一度の却下で、すべての蝙蝠型魔獣が唱えた炎の槍を消滅させた。
これには蝙蝠達も驚いていたのだが、そこに追い打ちをかけるようにルーラーが詠唱を開始する。
「さて……マチュア式魔力強化術式に、儂のオリジナル詠唱といくか……では、本当に久しぶりに、儂も本気を出させてもらうとする……九織の賢者が祝詞を捧ぐ。我が手の前に十織の光を授けたまえ……我はその代償に、魔力12万を献上する……レ-ザー・ブラスターっと!!」
――チュンッ
右手を拳銃に見立てて構うるルーラー。
その指先から超硬圧縮された破壊の魔力が一条の光となって飛んで行き、蝙蝠の一体に突き刺さる。
その刹那、ルーラーは右手を横に振り全ての蝙蝠に向かってレーザーを叩き込んだ。
「んんん……ただのレーザー?」
「まさかじゃろ。神聖魔術と精霊魔術、そして暗黒魔術をセットにして螺旋状に圧縮した破壊の一閃じゃよ……」
そうルーラーが説明した瞬間、蝙蝠達が次々と爆発していく。
それはまるで、地上に向かって打ち込まれたレーザーが可燃性物質もない場所で大爆発を起こしたかの如く。
「ふぁぁぁぁぁ、こ、これって浪漫ビームだよね? くっそぉぉぉぉぉお、この私ですらこの理論はまだ解明していないっていうのに」
「ふっふっふっ。九織の大賢者の称号は伊達ではない。と言いたい所じゃが、元々の儂ではこの魔術は使えなかったからのう。極大魔術を使うには、それを制御できる魔導具が必要、じゃが、マチュア殿に師事して魔力をより鋭く柔軟に制御出来るようになったので、ようやくこの魔術が使えるようになったのじゃよ」
「へぇ、こっちの世界の魔導師って、色々と制約があって面倒臭いのねぇ……と、どうやら本命が来たようですけれど?」
爆風が収まり煙も立ち消えたころ。
浮遊大陸に昼がる亀裂から、巨大な剣を振るった魔神が飛び降りて来た。
漆黒の鎧と鴉のような巨大な翼。
左手にはヒーターシールド、そして右手には禍々しい紋様の浮かんだ両手剣。
それを携えた魔神が一直線にマチュアに向かって降下してくると、力いっぱいの剣の一閃を叩き込んでくる。
――ガッギィィィィン
だが、その一撃はマチュアが空間収納から引き抜いた深紅の大剣により受け止められ、そして刀身が切断されて落下していく。
「こ、この野郎ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、我が剣を一刀の元に切り伏せるとは」
「あ、日本語のような、それでいて近い言語で……んんん、どっかで聞いたことがあるような声だなぁ」
「知らん、だが、ここで俺の相手をしていていいのか? 切り捨てられた刀身には膨大な炎の魔力が眠っている。かの灼熱の迷宮最下層より出土した『炎龍の剣』、そこに蓄積されている焔はこの大地を一瞬で焦土とするであろう……はーーーーっはっはっはっはっはっ」
自身が押されているのにそこの余裕。
そしてマチュアもまた、落下していく剣の先端をじっと眺めているが、その落下先に回り込んだルーラーが刀身をちょいっと指で突きアイテムボックスにしまい込んだのをしっかりと確認。
「あ~、うん、乙。という事で、あんたが何処から流れてきて、そしてこの世界を狙って姿を現わしたのかは知らないけれどさ……ここはあんたの好きにしていい世界じゃないんだよ、という事で退場願うけどいいね、答えは聞いていないから」
深紅の大剣を肩に担ぎ、そのまま全力で魔人に向かって振り落とす。
その刹那、魔神の身体が真っ二つに切り裂かれる。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。まただ、また俺は負けるのかよぉぉぉぉぉぉぉ。せっかく異世界転生したと思って無理難題を吹っ掛けたのに記憶は奪われ、ルフトとかいう訳の分からない魔神に復活させられて……そりゃあ暫くはウハウハハーレム三昧だったけれど、勇者一行に討伐された挙句次元潮流島流し。ようやく手に入れた浮遊大陸で俺が侵略できそうな場所にやって来たっていうのに、またこの顛末かよぉぉぉぉぉ、チェンジだチェンジ、俺をもっと甘やかせてくれる世界にチェ――――ンジだ」
一気にまくしたてるように叫ぶ魔神。
その言葉に耳を貸す事なく、マチュアは魔神目掛けてゆっくりと身構える。
そのタイミングでルーラーも箒の上にびょんと立つと、腰を落としてから。
「異世界の悪魔には退場願おうかのう」
「ん~何だか、どっかで聞いた事あるようなセリフな気もするけれど退場は確定。という事で」
――シュシュンッ
「次元潮流までぶっ飛べ」
「浮遊大陸は儂がいただくのでな……」
「「ツイン・スラッシュキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!」」
マチュアとルーラー、二人がかりのスラッシュキック。
その一撃を受けて、魔神は次元の裂け目に強制送還。
そして翌日からは修行を終えたルーラーとマチュアが一か月を費やして、ようやく次元の裂け目を修復に成功。これで次元潮流から魔人があふれ出して来る事は無くなった……。
後は札幌のオールレント上空にプカプカと浮かべてある浮遊大陸の処分をどうするかという事となったが、マチュアとルーラーはこの一か月で消耗した魔力を回復するので手いっぱい。
暫し、のんびりとした時間を過ごす事となった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






