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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
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マチュアの契約と、魔導ジェネレーターの供与

 マチュアが近所に引っ越してから一か月が経過した。


 マナラインの近くをという彼女の希望により、隣の町内にある大豪邸があった空き地の一角を日本政府が地主より買い上げ、マチュアに貸与された。

 そこに魔術で4階建ての円柱状の塔を作り上げると、マチュアはそこからルーラ―の仕事場である魔導レンタルショップ『オールレント』へと通い始める。

 日本政府が彼女に土地を貸した代価として、毎月、一定量の魔導具を政府に納品する事が義務付けられている。それを作るために、オールレントの工房に通うようにと言われていたのである。


「ふぁぁぁぁぁぁ。ああ、徹夜したわ」

「はっはっ。モーニングセットなら作ってあるから、食べてから一旦帰って眠った方がいいのではないかね?」


 朝の喫茶コーナーで、ルーラーは顔を出したマチュアにモーニングセットを差し出した。

 その横、カウンター席では、朝早くの犬の散歩を終えた飯田と朽木のコンビがテレビを眺めながら朝食をとっている真っ最中。


「おはよう、マチュアさん」

「おお、朝っぱらから変なロボットをいじくりまわしていたようだが、あれは動くのかな?」


 正面玄関横にある庭で、マチュアは昨晩から今朝に掛けて、『魔法鎧(メイガスアーマー)・イーディアスⅣ』の調整を行っていた。

 さすがのルーラーでも、現代科学と魔術の融合については不可能。

 現代科学の代替え案としての魔導具は作れるものの、ここまで複雑怪奇な代物は見たことも聞いたこともない。

 それゆえに、彼女の知識を自身も吸収しようと考えていたのだが、魔導理論の話し合いだけで一晩かかってしまい、ルーラーは早急に魔導科学についての研究については自己流で往く事に決めたのだという。


「ああ、誰かと思ったら朽木さんと飯田さんか、おはようさん。でもさ、変なロボットっていうのはやめてよね。あれは魔法鎧メイガスアーマーっていう名前があるんだからさ」

「メイガス……うん、わからんわ」

「あれはゴーレムみたいなものなのか?」

「そういうこと」


 飯田の的を得た質問に、マチュアはコーヒーを一口、喉に流し込んでから返事を返す。 


「あれはさ、現代科学と魔導を融合させたハイスペックゴーレムだよ。尤もイーディアスⅣは軍用機だから、まともに動かしたらこの国の軍事関係の法律に引っ掛かるのでね。だから、火器管制システムとか大規模レーダー、ジャマーとかは一時的に封印しておかないとならなくてね」

「ふぅん。ちなみにあれが本気を出したら、どれぐらいの戦闘力になるんじゃ?」


 きつね色に焼けたトーストにバターとジャムをごってりと乗せて、マチュアは大口を開けて一口齧る。

 

「うん。このジャムは自作かぁ。おいしいねぇ……と、あいつの戦闘力かぁ」


 パクパクとトーストを食べてから、マチュアは腕を組んで考えている。

 実際、イーディアスⅣの戦闘力は一つの国家相手に単騎で戦える程度の戦闘力は有している。

 

「核ミサイル程度なら、受け止めてバリアを張って封印できるけれど?」

「か、核ミサイル……そりゃあ、凄いわ」

「のうマチュアさんや。その核ミサイルの威力とは、マギカ・バーストと同等の威力と思って間違いはないかな?」

 

 ルーラーの尋ねたマギカ・バーストとは、彼の住む世界でも禁呪と言われていた魔導師最強の術式である。かつて、暗黒大陸にて目覚めた魔王が行使した術式であり、小さな大陸一つが一瞬にして蒸発したという。

 そしてマチュアも、こっそりと右目の中で深淵の書庫アーカイブを起動、マギカ・バーストについてのデータを知識の書庫より入手している真っ最中である。


「あー、あれかぁ。あれなら五分五分じゃないかな?」

「つまり、この世界では最強兵器という事か。よく、日本国政府があれを要求しなかったな?」


 マチュアに求める、土地の代価としての魔導具。 

 日本政府が彼女に最初請求したのは、魔法鎧メイガスアーマーの技術であった。

 出来るならば国産機して量産したいという打診もあったものの、それについては軍事技術の漏洩という事になる為にマチュアは丁寧に断った。

 その代わりの条件として、小型魔導ジェネレーターの実物供与という形で魔導具を提供、日本政府が指定する車両のエンジン部分をマチュア製小型魔導ジェネレーターに組み替えるという事で合意。

 年間契約としては12台、国産車である軍事転用できない車両という条件をマチュアも提案し、それはすぐに認められる事となったのである。


「もう、ここの日本政府からは一番最初に打診されたよ。でもさ、誰も使えないものを貰った所で、どうする事も出来ないでしょう?」

「ははぁ、つまりはあれか。特殊免許が必要だとか、操縦するには訓練が必要とか、そういう事じゃな?」

「ん~、朽木さんは相変わらず勘が鋭いねぇ。まあ、あれを動かすためには最低でも魔力130は必要っていう感じかな。でもさ、この世界の人間って魔力が10もないじゃない。ルーラーさんは動かせたけれど、他じゃ無理なんじゃない?」


 そう告げてから、ズズズとコーヒーを飲む。

 すると朽木と飯田の二人が、懐から一枚のカードを取り出した。


「つまり、わしと飯田は動かせるということじゃな」

「そういうこと。ほら、マチュアさん。これがわしとこいつの『国家認定魔術師』の認定証だよ。朽木と俺は3等魔術師で、マギ・コインもルーラーさんから頂いているからさ」


 ニイッと笑いつつ、朽木と飯田が薄い青色の輝きを放つコインを取り出して見せる。

 するとマチュアもじっとコインを見て。


「へぇ。魔力の金属変換術式かぁ。これで術式使用者の保有魔力量と属性を測れるとは、大したものだよ」

「それをあっさりと見抜くマチュアさんも凄いと思うがのう……」


 そもそも、マギ・コインとはルーラーのオリジナル魔法の一つ。

 弟子を取った魔法使いは、自分の魔力と弟子の魔力を混ぜた魔法金属製のメダル『マギ・コイン』を手渡す事になっており、その為にコインを生み出す術式が『ルーラー・コイン』と呼ばれている。

 マギ・コインの生成は難しく、それを綺麗に作り出す事も師匠としての資質を表しており、うまく混ざり合わせる事が出来れば、品質も色合いも最高のものになるが、失敗するとマーブル状のコインになる。

 薄青い輝きを放つコインは、ルーラーが直接師事したものにのみ発現しているという。


「いやいや、私の場合は鑑定眼が特殊なだけだってば。まあ、それじゃあ二人にも試しに乗って見て貰おうかな? 訓練というよりも、適性があるかどうかっていう事で」

「いや、わしは別にいいわ。こんな爺がロボットを操っているなんて知られたら、曽孫が興奮して眠れなくなるわ」

「同感。わしらは動かせるとしても、それだけじゃからな。それを使って何かを誇示する年齢でもないし、むしろクリーンエネルギーな魔導ジェネレーター製の車の方が興味があるわ」


 ふぅんとマチュアは頭を縦に振っている。

 未知の技術、未知の乗り物。

 そんなものに興味はあっても、それを欲する事なく自分たちの日常を謳歌している。

 二人の生きざまに、マチュアも何となく共感した。

 

「それならさ、ちょっと面白いものがあるんだけれど。これならおもちゃだし、二人の孫や曽孫も遊べると思うよ、どう? 動かせるかどうか、試してみる?」


 そう呟きつつ、マチュアは空間収納チェストから全高30センチほどの鎧騎士を取り出した。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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