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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
NEXT STAGE

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真章その1・異世界ライフをもう一度

『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。

真章はNEXT STORYのひとつであり、マチュアとストームの新しい物語です。

つまり。

不定期ですが、連載再開‼︎

予定では週一連載、毎週月曜日更新予定なう‼︎

 その日。

 村は未曾有の危機に陥っていた。

 村を取り囲む結界の一部が損傷し、魔物の群れが結界を破壊すべく攻撃を開始していたのである。


 村人は皆、自宅に避難し、ただひたすらに神に祈りを捧げる。


 国に捨てられた者達によって作られた村、定期的に国から送られてくるのは、国によって無能という『ラベル』を施された人々のみ。

 選ばれた民こそが国民であり、選ばれなかったものは『奴隷落ち』するか、この『処分場』と呼ばれている村に強制転移させられるか。

 死ぬまでこき使われ、人としての尊厳を失ったまま死ぬか、死んだ方がマシと言えるほど過酷な村で生きる為に戦い続けるか。


  無能者は、この二つを選ぶしか、この国で生きていく事は出来ない。


「こ、これ以上は無理……もう魔力が無くなります」

「俺もだ。なんで、いきなり魔物の群れが襲い掛かって来るんだ‼︎」

「スタンビートだ。森の魔物が急激に増殖し、食料が足らなくなったからこの村を襲いに来たんだ……」

「駄目だ、もう無理なんだ……」


 絶望に強い悩まれる村人たち。

 かろうじて魔力の才に目覚めた者達が、必死に魔物から村を救うべく結界を施していたのだが、それももう限界。


──ビシビシッ

 結界のあちこちに亀裂が走り、カケラが落ちて来る。


「……わ、私が、何とかします‼︎」


 この村にある、ただ一つの教会。

 祀る神などないこの教会のシスターは、急いで教会に向かうと、祭壇のもとで聖印を掲げる。


「偉大なる神よ、神の御子たるミーシャが祈り、請います……我が命と引き換えに、この村を守りたまえ……」


 それは、彼女が生まれたときに受けた神託。

 ただ一つだけ使える、神の御技。

 己の命と引き換えに、神に祈りを捧げる。


「神よ、我が祈りに応えたまえ……サクリファイス‼︎」


 祈りが発動し、彼女の心臓が砕ける。

 一瞬で絶命したミーシャの祈りは、神に届くのだろうか。


………

……


「……なあ、ストームさんや。私はカナン亭のランチタイムの仕込みで忙しかったんだが」

「俺は、急ぎの鍛治仕事をしていたんだがなぁ」

「「始祖たる神カルリマコスの仕業かぁ」」


──ガクッ

 いきなり膝から崩れるマチュアとストーム。

 THE・ONES世界の創造神である【ストーム大御神】と、アルティマ世界の創造神である【破壊神マチュア】を罠にかけられるのは、後にも先にもカルリマコスであろう。

 それ以外の他世界の至上神は、他世界の神に干渉してはならないので、彼以外には思い付かない。


「はぁ。今度は何を押し付けられたんだよ」

「さあな。差し当たり問題なのは、この、目の前の砕けそうな結界なんだが」


 二人の目の前には、今にも砕けそうな結界がある。

 その向こうでは、大量のモンスターの群れ。

 チラリと振り返ると、絶望に打ちひしがれている人々や、結界の維持に必死な魔法使い達の姿しか見えない。


「まあ、私が結界を作り替えるから、ストームはカルリマコスに質問よろしく」

「オーケィ。ウィンドウオープン。神威モードに切り替えて、カルリマコスのチャットチャンネル接続……」

「さーて。鑑定開始……危険度7のモンスタースタンピードと認識。結界の再構築、カウンターバリア生成開始っ」


──シュゥゥゥゥ

 マチュアがすぐさま状況解析し、結界を内部から作り替える。

 外部からの攻撃は全て弾き返し、さらに内部からは攻撃可能というチートバリアを形成。


「ん、これでしばらくは安全だぁね。ストーム、そっちは任せるから、私は事情を聞いてくるよ」

「おっけ」


 そのままマチュアは、結界を維持していた魔法使いに近寄る。

 当然ながら、突然何もないところに姿を現したマチュア達に警戒するのは当たり前。

 魔法使いの近くで武器を構えていた男達が、魔法使いを守るように壁になる。


「あ、あんたは何者だ、いきなり姿を現したと思ったら、何かしやがったな」

「いや、何かも何も、結界を再構築したから大丈夫だよ。という事で魔法使いさんや、詠唱を止めても問題ないからね」

「な、何じゃと‼︎」


 老魔法使いは空を見上げる。

 そこには、彼らが構築した魔法陣は既に存在せず、自立型結界が虹色に輝いていた。


「こ、この魔法は……お主達は何者じゃ、いや、助けてくれたのか?」

「まあね。私らも、何が何だかよくわからないんだけど、この後で説明してくれるか?」

「そ、それは大丈夫じゃ。誰か、シスターを呼んできてくれるか」


 老魔法使いが周りのものに声をかけると、男が一人、教会へと走っていった。


………

……


 一方、ストームは。

 現在はカルリマコスとチャット中。


「説明を頼む」

「いや、まあ、ストームは王位を譲って暇だろ? マチュアはあっちの世界ではレストランのオーナーだけどさ、部下もしっかりしているし。だから、二人に勅命ね。その世界を守ってくれればいいから」


 あっさりと勅命を打ち込むカルリマコス。

 まあ、その程度でストームたちが納得するとは思っていない。


「俺たちが断れない理由は?」

「その世界は、神が存在しない。そして冥府とのリンクも切れている『終末世界』なんだよ。それで、放っておいて自然消滅まで待とうと思ったんだけどさ。そこに流浪の神々が目を付けてね」

「侵略を始めたと。だから、俺達に何とかしろって事か」

「正解。他の世界の神々に頼もうとしたんだけどさ、君達もそれなりの実力があるじゃない?」


 悪びれもなく、カルリマコスはストームに問い掛ける。そして、ストームも考えを巡らせてみる。

 他の神々に頼む事が出来るのにも拘わらず、実力があるからという理由で二人に頼んだという事実。

 

「違うな、俺たちでないと対処出来ない奴らがいるって事だな」

「まあ、正確ではないけど、概ねそのような感じと思ってくれていい。君達クラスの神々でないと不可能。という事で、君達にやってもらいたい事は『世界の再生』だ」

「……はぁ?」


 悪神相手に戦うとか、侵略した堕神の陰謀を阻止するとかではなかった。


「流浪の神々は、この世界のあちこちで国を興していてね。それぞれが対立しあっているんだけど。人間まで巻き込んで、混乱の極みなんだよ。だから、君達が世界を再生してくれればいい」

「俺達は、どこまで力を解放出来る?」

「自分の領域外なので、本来の80%。でも、流浪の神々の力は、君達の10%程度だから、問題はないだろう?」


 難しいかどうかは、やってみないとわからない。

 そもそも、今回のミッションは戦闘ではなく再生。

 実に厄介な事この上ない。


「制限は?」

「君達は英雄や勇者にならない事。この世界の人間に可能な部分は、全て任せる。でも、干渉しても構わない」

「面倒臭い事この上ないわ。まあ、いい。任務遂行時の帰還時間は?」

「君たちの消失時間に戻る。では、健闘を祈るよ」


──プッッ

 それでチャットはおしまい。

 ストームは頭を下げて掻きながら、空を見上げた。


「面倒くせぇ……」


………

……


 一方、マチュアはというと。


「し、死んでます、シスターが死んでいました‼︎」

「何だと……」


 慌てて村人たちが教会に集まる。

 そして礼拝堂の奥、祭壇の手前では、シスターが穏やかな笑みを浮かべて死んでいた。


「うぉぉぉぉ、なぜ、シスターが死なないとならないのだ」

「どうしてこんな事になったんだ……」


 集まった村人たちは嘆き、悲しみ、シスターの死に涙している。

 その中を、マチュアは歩いていく。

 そしてシスターの横に立つと、ゆっくりとしゃがんでその手をそっと握る。


「ま、魔女の方、貴方もシスターに祈りを……」

「うーん。サクリファイスの術式だけど、これはダメだわ。この子に加護を授けたのは、腐敗の神バスドラマ、悪神の一人みたいだね……」


 自らの命を捧げて、奇跡を起こす御技。

 だが、彼女が使ったサクリファイスは、ただ自殺するだけの術式。

 バスドラマは、彼女を騙して魂を刈り取っただけに過ぎない。


「そ、それはどういう事ですか」

「シスターは、自らの信じる神に騙された。自らの命を捧げて、奇跡を起こそうとしたんだけど、バスドラマは魂だけ貰って高笑いしているだけだよ」

「そ、そんな……それじゃあ、シスターは……」

「無駄死にだね、このままだとさ……診断ディアグノーシス……おうおう、心臓破壊かよ。肉体再生リジェネレート……これで心臓は戻ったと……神威祝福ゴッドブレス、か〜ら〜の、死者蘇生リザレクション


──キィィィィィン

 マチュアの蘇生必殺コンボ。

 この世界には、冥府が存在しない。

 死者の魂は世界を漂い、やがて怨霊となる。

 もしくは、悪神などの糧となるだけである。

 だから、心臓を再生して神の加護を与え、蘇生しただけに過ぎない。


 今頃は、ディナーテーブルに並んでいた彼女の魂を食べようとしていたバスドラマの目の前で、魂が消失したであろう。


──ドクン

 シスターの心臓の鼓動が聞こえる。

 真っ白であった顔色に血色が戻り、ゆっくりと呼吸も再開した。

 そしてシスターがゆっくりと瞳を開けると、周りにいた村人が歓声を上げた。


「き、奇跡だ、死んでいたシスターが蘇った‼︎」

「うぉぉぉぉ、アンタすげえよ‼︎」

 

 歓喜の声に包まれながら、目覚めたシスターは何が起こったのか理解出来ていない。


「え、あ、あの、私の祈りは……」


 動揺するシスターに、マチュアが一言。


「あんた、騙されていたんだよ。どこの神様を信じていたのか知らないけれど、サクリファイスの術式は完全ではなかった。信じていた神様に騙されていただけ。よかったね、もう一安心だよ」

「え? 私の信じる神は豊穣神アークライト。私は魂を捧げて、今、目の前の危機を救ってもらうように祈ったのですが」


 そう告げられて、マチュアはこめかみに指を当てて考える。

 

「あ〜、アークライトって、もうこの世界にはいないわ。とっくの昔に滅んでいてね、今は腐敗神バスドラマって言う悪神が、アークライトのフリをしているだけだわ。もうアークライトに祈りを捧げたらダメだよ」

「そ、そんな、どうして貴方は、そのような事がわかるのですか?」

「どうしてって言われても……私は賢者なので、色々と物知りなんだよ。まあ、アンタの命は助かった、それでおしまい。じゃあ、後はどうするのかみんなで話し合っていてね」


 それだけを告げて、マチュアは手をひらひらと振りながら教会から出る。

 そして、ストームの元に合流すると、何が起こっていたのか情報の擦り合わせを行って……。


「オーマイガー。また面倒な仕事を押し付けやがったな、あの神様は」

「全くだ。ちなみにここの世界からは、外世界には転移型術式で戻るのは不可能だ」

「冥府経由って、ここ、冥府がなかったぞ」

「つまりは、やることを終わらせるまでは、帰る事が出来ないって事だな」

「そうか。それじゃあ、全力で行くしかないか」

「手加減無用でやるぞ。いくら時間が戻せるとはいえ、俺達の時間は経過するからな」


 これは老衰という意味ではない。

 向こうの世界では時間が経過していない事になるので、誰にも寂しい思いはさせずに済む。

 ただ、自分たちの時間は進むので、感情的には寂しさが募る事もあるというだけ。

 それだけ、ストームもマチュアも、自分たちの世界に未練が出来てしまっていた。


「よし、それなら」

「やるしかないだろう。世界再生作戦を」


──ガシィィッ

 お互いの拳を打ち鳴らして、マチュアとストーム、久しぶりの共同作戦が始まった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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