幕間・とある冒険者の物語
『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。
NEXT STORYから始まる物語は全て後日談であり、連載されるかどうかは神のみぞ知るです。
世界が崩壊する瞬間を知っていますか。
私達は、その日が突然来るのではなく、事前に知らされていました。
世界を創造した神々にとっても、世界の終わりは苦渋の選択だったでしょう。
それが知らされた日から、私達の住む世界は変わりました。
いつも大勢の人で溢れていた広場から、地下洞窟の先にあるもう一つの都市の中央区画から、犯罪者たちの集まるスラムから、突然大勢の人達の姿がなくなりました。
事情を知るもの達は、皆、新しい世界へと旅立ったとか、世界が終わるのを嘆き、家に閉じこもったとか告げています。
一人、また一人と知っている人達の姿が街から消えていきました。
けれど、私は、残った大勢の人達は世界の終わりが来るのをじっと待つ事にしました。
ここが私達の住む世界なのだから、最後までここに居ようと。
世界の言葉が無慈悲に終わりを告げるまで。
その時まで、私は最後まで必死に生きる事にしました。
そんな辛くも楽しい生活の終わり。
最後の日、12月20日。
町に残っていた大勢の人達が、みんなの広場に集まっていました。
「また、どこかで‼︎」
「楽しかったよ、ありがとう‼︎」
「また世界が蘇ったら、またみんなで冒険に出かけよう」
お互いにそんな言葉を掛けつつ、倉庫から花火を持ち出して馬鹿騒ぎしていました。
「みんな、今までありがとう‼︎」
「私達のこの記録を、何処かで発表するから‼︎」
そして大きな歓声と同時に、世界がカウントダウンを始めました。
10
9
8
泣いてはいけない。
最後まで笑っていよう。
7
6
5
みんな、ありがとぉぉぉぉぉぉ。
君達のことは忘れないヨォォォォ
嗚咽まじりの声が響きます。
4
3
2
1
さようなら。
そして、ありがとう。
0
世界が終わりを告げました。
そして、私達の『二つあった一つの世界、電脳空間』は静かに終わりを迎えました。
私達の中にあった『もう一人の魂』が抜けていきます。
彼らは、彼女たちは電脳世界から離れ、現実世界へと戻って行きました。
ですが、もう一つの世界は創造神の気紛れで残っています。欠けてしまったもう一つの魂、それがなくても私達は生きていけます。
いつか、この世界を作った神々が、私達を新しい世界へと導く日が来ると信じて。
………
……
…
あれからもうすぐ4年。
世界の復興は未だ始まる事がありません。
このまま朽ちていくのもありなのかと、運命を受け入れ始めた時。
異なる世界の冒険者が、私たちの世界を訪れました。
「新しい世界が生まれるまで、この世界に留まるのではなく私達の世界に来ませんか?」
「新しい世界が生まれたら、その時はそこに送ってやるから」
半信半疑の二人の言葉でしたが、彼らもまた、この世界から旅立った人達であることを伝えられました。
それなら、このまま寂れゆく世界よりも新しい世界で待つのもありなのかもしれません。
残った人達との話し合いにより、こちらの世界と彼らの世界と定期的に行き来する事が出来るようにしてくれるのを条件として、残された僅かな人達は新しい世界へ移民する事にしました。
そして、今。
私たちは、新天地で生きています。
決して故郷を忘れたわけではありません。
閉ざされた世界で悲しみに生きるよりも、私達は未来を見つめる為に生きる事を選びました。
神々へお願いです。
願わくば、新しい世界が生み出される事を。
それを待つ人々がいる事を、忘れないでください。
彼女の物語る世界が何処なのか、それはここでは明かしません。
まあ、読まれた方の中には、大凡の予想はできるかと思います。
私も、新しい世界が生まれることを望み、待っているのですから。
その世界で、またマチュアとして生まれ、ストームと楽しく遊ぶ日が来ることを願っています。
なお、この物語はフィクションです。
実際に登場する人物や団体名とは、一切関係はありません。
本当だよ。






