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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
NEXT STAGE

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神々の戯れ・悪党は月夜に吠えたかった

『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。  

NEXT STORYから始まる物語は全て後日談であり、連載されるかどうかは神のみぞ知るです。


 なお、この物語に出てくる個人名、団体名、組織名、Twitterユーザー名やゲーム云々は全て架空の存在であり、実在するオンラインゲームやそれらとは関係ございませんので、あしからず。

 多分、あしからず。

 

 まさか。

 何でこうなった?


 大金をはたいてオネスティーの奴隷商会を動かし、領内の好事家から巻き上げた魔導具を使い、どうにか町の外れにひっそりと住んでいた亜神を隷属させた。

 家族全てが隷属化したので、奴は私に逆らう事など出来ない。


 更に今回の大武闘大会では、隷属術式に更なる拘束力も追加した。

 契約の精霊を使い『呪詛術式』まで組み込み、この戦いで優勝出来なければ命がない事も告げた。

 更にオデッセアが死んだら、隣国のとある好きもの貴族に家族を売り飛ばす事も告げた。にも拘わらず、奴は負けた。


 まあ、負けたなら呪詛術式により無様な死体を晒すだけかと思ったが、何故か生きている。

 それだけではない、牢に閉じ込めていた家族まで何者かに奪われ、隷属術式を解除されている。


 オデッセアの敗北により、自動的に私の王位継承は消滅した。そしてあの忌々しいバッハドが再び王座に就く事が確定したのである。

 ちくせう。


………

……



「引き続き、午後からは決勝戦を行います。なお、現時点で決勝に勝ち残ったズブロッカとストームはバッハド先王の代理人であるため、王位はバッハド王に確定しました‼︎!


 アナウンサーの声が風を震わせ会場全体に広がる。

 この時点でドリントルは敗北し、更に王位を狙う大罪人として手配されたのだが。

 流石は小悪党ドリントルである。


……


「はーっはっはっはっ。まだだ、この私が残っておるではないか‼︎ こんな茶番は無効だ‼︎ いっそこの王国ごと滅んでしまえばいい‼︎」

 

 会場に響くドリントルの声。

 ふと気がつくと、ドリントルは会場の真ん中で大声で叫んでいた。


「ドリントル、もう貴様の負けは確定した‼︎ 速やかに負けを認めるのなら死罪は免れるぞ」

「早く奴を捕らえよ‼︎」


 突然の事にバッハド王が、側近が叫ぶ。

 そして四方にある回廊から次々と騎士たちが会場に雪崩れ込んだ時、ドリントルは懐から真紅に輝く水晶玉を取り出した。


「クククククッ……最初からこうすれば良かったのだ。精霊など糞食らえだ、いかな精霊といえど支配級の竜族には勝つことなどできまい‼︎」


──ゴゥゥゥゥゥゥ

 ドリントルの手の水晶球が輝くと、空に真っ黒な雲が浮かび上がる。

 雷鳴が響き突風が吹き荒れると、その中から巨大な竜がゆっくりと姿を現した。



「……なぁストームさんや。私の記憶が確かなら、あれはザンジバルさんじゃないかね?」

「いや、あれはザンジバルの息子だな。北方大陸で親子共々平伏させて支配していたんだが、またなんで強制召喚されているかなぁ」


 選手席でのんびりとしているマチュアが、アプルパイを食べながら横にいるストームに問い掛ける。

 ストームにとってはよく知っている顔……竜であり、ザンジバルの息子のザラダンというのが一目でわかった。


『我は赤き竜。赤神竜ザンジバルが一子ザラダンなり。古き盟約により、彼の者の命令を遂行する』


 低く重い声が響く。

 その場にいる観客は走り出し、少しでも遠くに逃げようとする。

 騎士たちはバッハド王を守りつつ外に出ようとするが、突然闘技場全てが嵐の壁に包み込まれた。


「ここから逃げられると思っているのか‼︎ さあ、バッハド王、俺に王位を渡せ。そうすれば国民を、この国を救ってやる。だが、逆らうなら国ごと滅べ‼︎」

「むう……」


 素早く足を止めてドリントルの方を向くバッハド。

 良かろう、国民の命が救えるのなら王位など必要ないと決断すると、覚悟を決めてゆっくりと立ち上がった。

 一時的にせよドリントルに国を譲ることになるが、このようなことを精霊王は許す筈がないと考えたのである。


「さぁ、答えを出してもらおうか‼︎」


 高らかに笑いながら叫ぶドリントル。

 だが、ふと気がつくと、彼の前にはストームが立っている。

 

「き、貴様、ここに何しにきた‼︎」

「煩い。貴様は黙っていろ‼︎」


──ギン‼︎

 言葉と視線に神威を込めてドリントルを睨む。

 それだけでドリントルは失禁し、その場に崩れる。


『ほう、そこの小さきものよ、我に歯向かうとでもまだまだまでもえええ? ハゥア、ストーム様ぁぁぉぁ、どうしてここに』


 上空で高らかに笑いつつ厨二病を拗らせていたザラダンがストームを見た、理解した。


「うるせぇザラダン。小さくなって正座だ‼︎」


──ボフッ

 突然人型に変化したザラダンが、ストームの前に慌てて駆け寄り正座した。


「何でこんな古い魔導具に縛られているかなぁ。何で俺の支配を無視して勝手な事しているかなぁ」


 手にしたカリバーンを棍棒状に変化させて自分の肩を叩く。

 その姿に、厳ついおっさんに姿を変えたザラダンは汗を吹き出しながら必死に叫ぶ。


「い、いえ、あれはですね、古き竜族には抵抗出来ない支配の水晶でして。あれに呼び出されるとですね、もう逆らう事は出来なくてですね」

「でも、今はその支配から逃れて俺の足元にいるよなぁ。ザラダン、気合いが足りないんじゃないか? また稽古つけるか?」


 そのままストームはザラダンに説教。

 傍で座り込んだドリントルは騎士達に連れられてその場を後にする事になった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 一連の騒動は無事に終結する。

 ザラダンはストームの説教からどうにか許して貰い北方大陸へと飛んで行く。

 残った水晶玉はマチュアがホクホク顔で空間収納チェストに納め、ストームとズブロッカは翌日に延期された決勝戦に挑んだ。


 それも終わった当日の夕方。

 バッハドは無事に精霊王から引き続き王位を任されることを告げられ、無事にヴィラール精霊王国は元の姿に戻っていった。


………

……



 ヴィラール精霊王国・王城

 応接間では、王家の人々とストーム、マチュアがテーブルを囲んでティータイムを過ごしている。


「今回の件、本当にありがとうございました。ストーム様とマチュア様には、どれ程礼を尽くしても足りませんわ」

「うむ。本当に済まなかった。国の騒動に他国の王家を巻き込んでしまい、本当に申し訳ない」


 ナターシャとバッハドが頭を下げるが、そんな事気にする事なく二人はのんびりとしている。



「あ〜、散々頭下げられたからもういいわ。そんじゃそろそろ帰るとするか」

「そうだねぇ。私もそろそろ帰らないと時間ギリギリだし。あの船ももう一人に渡さないとならないからね」

「何だ? あれは持って帰らないのか?」

「怒られたんだよ。あれは持ち出し禁止だってさ」


 後半はバッハド達には分からない言葉。

 それでも、二人が楽しそうに話しているのをナターシャは寂しそうに見つめていた。



「それで……ストーム殿、頼みがあるのだが」

「何だ? ナターシャと結婚してこの国に留まって欲しいというのなら断るぞ。悪いが妻帯者だ。嫁が二人いるし、子供もいるからな」


 おおっと。

 そう来るのはわかっているからこそ、先に釘を刺しておく。

 流石に妻帯者程度なら共々考えたが、一国の王女が妾と言うのは体裁が悪いらしい。

 しかも子供までいるとなると、ナターシャには勝ち目がない。


「ストームさんや。この流れはハーレムエンドじゃないのかな?」

「こ、と、わ、る。シルヴィーとカレン以外と結婚する気はないし、子供も作る気はしない」

「おーおー、お堅いこと。まあ、それでいんでない?」

「わ、私はそんなつもりでは!」

「はいはい。まあ、ナターシャの気持ちもわかった事ですし、この話はこれでおしまいね」

「ああ。そうしてくれると助かる。それでなくても、異世界イルファー……いや、この話はここじゃあ関係ないか」


 ふと、思い出したかのように呟くストーム。

 始祖神の依頼で向かった異世界を救ったときの話をふと思い出していた。


「それはそれ、これはこれ。逃げ延びた人達も無事に助けたんだからよし。さ、こっちの話の続きと行きましょう」


 そう笑うマチュアに、いつのまにか周りの皆も雰囲気に飲み込まれていった。

 このあとは穏やかに歓談などを交えつつ、途中からズブロッカも参加して現王家の全員がその場に跪いてしまうというおかしな事態も起こったものの、最後には皆笑いながらその場を離れる事になった。


 そして翌日。

 マチュアとストームは、翔鶴に乗ってヴィラール精霊王国を後にした。

 水平線の向こうへと向かう翔鶴の姿を、ナターシャはいつまでも眺めていた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 さて。

 一件落着一段落した二人が、無事に船旅などする筈がない。

 沖合に出てから、マチュアは船ごとサムソンの港町沖合に転移すると、そこからサムソンの波止場に向かった。

 そして上陸してから翔鶴を空間収納チェストに収納すると、そこでストームとはお別れ。

 真っ直ぐにカナン魔導連邦へと向かう事にした。

 マチュアが二人いると色々とややこしくなる為、破壊神マチュアは十六夜厳也マチュアにアバターを変更、そのまま何気に馴染み亭へと向かう。



「誰かと思ったら厳也マチュアかい。クィーンから話は聞いていたけれどさ、私がいない所で楽しそうに遊んだって?」

「そりゃあもうね、久しぶりに出番がなかったよ」

「マジか? そりゃなんでまた?」

「ストームが無双してね。まあ、話すと長いからまずはお土産を二つほど……」


 ブゥンと両手を合わせて、記憶のオーブを作り出してマチュアに手渡す。

 その後で、マチュアの空間収納チェストとリンクして浮遊戦艦・翔鶴をドラックドロップする。


「はぁ、星の裏側かい。そりゃあ楽しそうな……って、あんた馬鹿だろ? 何でこんな戦闘兵器を作ったかなぁ」

「そりゃあ、答えは一つしかないでしょ。楽しそうだったかフベシッ‼︎」


──スパァァァァァン

 力一杯、厳也マチュアの顔面を張り倒すマチュア。

 

「まあ、私だからそうなるよね。持って帰ればいいじゃない」

「持ち込み禁止って言われたんだからしゃーないしょ。それで遊んで来なさいな」


──ピッピッピッピッ

 ふと、厳也マチュアのウインドウからアラーム音が聞こえてくる。


「なんの音?」

「私がこっちにいられるリミッター。いつまでも居られるわけじゃなくてね、私がこっちにいると、この世界の『破壊神の加護』を持った人達が活性化したり能力覚醒する可能性があるのよ」


 これも始祖神からのメッセージでわかった事。

 こっちの世界で消失した破壊神の力だが、マチュアがこっちに遊びに来るとまた再活性化を起こす恐れがある。

 それはそれで危険なため、始祖神が適度に活性化しない時間帯を計算してマチュアに伝えてあった。

 その時間内なら

自由にしていられるが、制限時間を超えると活性化が始まるのでマチュアは自分の世界に戻らなくてはならない。


「と言うことで、後1時間以内に帰らないとならないんよ」

「成程なぁ。それで、次に来るのはいつ?」

「こっちの破壊神の加護持ちの力が減衰を開始したら。だから、暫くは来られないと思うよ。私もアラームが鳴らないと分からないし、いつ鳴るかも教えられていないからね」


 そう告げて厳也マチュアは立ち上がると、外に向かって歩き出す。


「そんじゃ、また来るわ」

「いつでも来なさい。遊び相手にはなってあげよう」

 

 そのまま手をひらひらと振りつつ、厳也マチュアはスッと姿を消した。


「こっちの方が居心地が良いからなぁ。帰りたくないのもわかるが、あんたが選んだ道なんだから、がんがれ」


 その声は届いていない。

 けど、マチュアは旅立った『もう一人の自分』に、そう笑いながら呟いた。



………

……



 一方、ベルナー双王国では。


「……と言うことで、ヴィラール精霊王国絡みの一連の仕事は完了したからな」


 王城執務室で、ストームはシルヴィーとカレンの二人に一連の顛末を報告した。

 まあ、ストームとマチュアが絡んだ時点で何事もなく終わると信じていた二人であり、それ程心配はしていないようである。


「まあ、ストームですからあまり驚きはしませんわ。では、私からはサムソン辺境国の報告です。第二城塞も完成しましたので、本格的に移民の受け入れを開始します。一時的ですが郊外には簡易小屋を建ててありますので、これからは本格的な街づくりを始めたいと思います」


 カレンのいう第二城塞とは、カナン魔導連邦で言うグランドカナンの建設である。

 今まであった城塞から更に500m離れた場所により巨大で強固な城塞を建造、新しく開けた土地に異世界からの避難民を受け入れるという方針の実施を開始したのである。


「のうストームや、話によると妾達の知らぬ種族がいると言うではないか?」

「まあな。大地の精霊族でドワーフの親戚みたいなものだ。頭から羊や山羊のようなツノを生やしていてなぁ……まあ、基本温和な種族だから心配すんな?」

「あ、それでですね、取り敢えずまとめ役としてミサトって言うノームの女性に移民して来た方々の纏め役をお願いしてありますので、都合の良い日に打ち合わせをお願いしますね」


 淡々と説明するカレン。

 その一つ一つを、ストームも楽しそうに聞いている。


「それとですね、ドワーフの鍛治師が店を持ちたいとかで。なんでも、彼方の世界にしかない特殊な武具鍛錬法があるそうで、それで冒険者の武具を強化できるとか」

「あ〜、ドワーフの鍛冶屋って言うとバルバ……いや、まあ、どうすっかなぁ。任せてもいいんだけれどなぁ。こっちの世界であっちのやり方したら、多分夜道で襲撃されるだろうからなぁ……保留」

「わかりました。それと、ノームの雑貨屋さんの女性が恋人募集とかでストームに会わせろと」

「「 却下だ(ぢゃ) 」」


 ああっ、可愛そうなローゼリッテ(ロッテ)ちゃん。


「まあ、後は俺が見てくるから。さて、移民させた以上は責任を取るか……」


 ガタッと立ち上がると、ストームは肩をグルグルと回す。


「どこに向かうのじゃ?」

「その移民先のエリアだな。まず拳で語る必要があるドワーフと話を付けて来る。その後でミサトからも話を聞いて来ないとな」


 そう告げて、ストームは嬉しそうに部屋から出て行く。

 

 一つの冒険が終わり、日常が戻ってくる。

 そしてまた、ストーム達は冒険に出るだろう。

 これもまた、彼にとっては日常であるから。



……To be continue

誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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