神々の戯れ・なんて言うか久しぶりの展開
『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。
NEXT STORYから始まる物語は全て後日談であり、連載されるかどうかは神のみぞ知るです。
まあ、なんかよくわからないけれど週三ぐらいで更新しているのはなんでだろ〜♪
王位継承の儀は、王城の最上階バルコニーで行われる。
眼下に広がる大広場では、王が精霊王によって選ばれるのを直接見る事が出来るから。
そのベランダから一望できる王都を眺めているドリントルは、城下町の先にある湖に浮かぶ、虹色の結界をじっと睨みつけている。
その中で何が起こっているのか、それは分からない。
ただ、目撃者の報告によると、そこの中心には海から飛んできた巨大な魔導船が浮かんでいるらしい。
そして届けられた、地下城塞に幽閉してあった王と王妃が奪回されたと言う事実。
それもたった一人の騎士が、単独で、あの神々の縛鎖を引き千切って。
「侵入者も、縛鎖の鍵を持っていたと言うのか……このタイミングで王達が奪われ、そして湖上に虹色の精霊結界か。あの中に王達が逃げ込んだのは事実のようだな」
「はい。報告では、あの結界を越える為には最低でも四大精霊の加護がなくては不可能ではないかと」
側近の報告に苦虫を噛むような顔をするドリントル。今のヴィラール精霊王国で、四大精霊全ての加護を得ているものなど数える程しかない。
それこそ王家の血筋である公爵家か、先代王である大公家のみ。
今の状態で、それらを神輿として担ぎ上げてあの結界を越える、そして中にいるであろう王家を根絶やしにする。
そんな事が出来る筈がない。
「やはり、殺しておけばよかった……王位継承の儀に影響があると見て、生かしておいたのが間違いであったか……」
「ですが、そのようなことをすれば精霊王はドリントル様を王として認めません……」
現王位を奪う為に、先王達を捕らえて王位の証を奪った時点でダメではと言う意見もあるが、それよりも精霊具を所持していると言う事が王位の証として重要なのである。
過去にはそれを得るために血で血を洗う争いもあったらしく、虐殺王と呼ばれたものも存在した。
だが、虐殺王は王として選ばれる事なく、精霊の鉄槌を受け、王位継承の儀で巨大な雷をその身に受けて黒炭と化した。
それ以降、王位継承の儀を受けるものは、人を殺めてはならないと言う不文律が生まれているのである。
「……ああ、そうだな。止むを得ん、今は儀式の準備に集中しよう。そして当日だ、王城前からこの儀式の祭壇まで、何者も絶対に通すな‼︎ ここを守り切れば、後は精霊王のご機嫌次第だ……」
「かしこまりました。既に裏の者達にも話は通してあります」
恭しく頭を下げると、側近はス〜ッと姿を消した。
「……後一週間だ。それで全ては終わる……」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
その頃の航空母艦・翔鶴さん。
──ジュゥゥゥ
熱々の焼き肉にタレを絡ませ、そのまま口の中に放り込むマチュア。
現在、甲板上の一角で焼き肉パーティーを開催中。
楽しんでいるのはストームとマチュア、そして王妃であるマルガレータの三人だけであり、国王とナターシャ、ブレンダークは食べてはいるもののイマイチ元気がない。
「……このお肉、グランドドラゴンの腿肉とサーロインだよ? イマイチだった?」
「いや、俺は別に気にならないぞ。マチュアが居ればいつでもドラゴンが食べられるからな」
「たまにはストームも狩りしてこいや。何か元気ないなぁ」
「あの、明後日には王位継承の儀があるのですから。もう。何と申してよいか……」
「うむ。何とか祭壇まで向かいたい所ではあるが、神聖なる儀式の間である特設ベランダには、王位を示す者とその側近しか入る事が許されておらぬからな」
へぇ。
それでどうして不安そうな顔なんだ?
俺としては、特に何も問題がないように感じるが。
「まあ、それなら当日の朝に。その祭壇まで向かえば良いだけだな。俺とマチュアが護衛につくから、国王はお姫様から王位の証を預かっておいてくれ……」
「う、うむ。しかし、朝一番で王城に向かった所で、無事に案内してくれるかどうか判らないのう」
「まあ、100%案内なんてしてくれないだろうな。入口あたりで捕まって、王位の証を奪われて終わりだな。ツテやコネを探す時間もあるまい」
淡々と告げつつ、竜タン塩焼きネギ乗せを食べるストーム。
流石に今回ばかりは王族といえど立場が弱い。
何せ、王位の証は精霊の加護を受けていれば誰でも使える代物らしく、それをしっかりと管理するのも王としての務めらしい。
それを半ばクーデター紛いに奪われ、囚われてしまったのだから用心していなかった王の責任でもあるとストームは考える。
「それでは、この国はドリントルのものになってしまいます。あのオネスティーとか言う犯罪組織と手を組んで、私達から王位を奪った者がこの国を統べるなど……」
ガックリと肩を落とす国王だが、マチュアは今の言葉をしっかりと聞いていた。
「何だよ、ここにもオネスティーが来ているのか。大変だなぁ」
あ、それだけなの?
それでおしまいなの?
「マチュア様は、オネスティーの事をご存知でしたか」
「まあね。ヴァンドール大陸でオネスティーとやり合ってね。本気で潰そうかと思ったけれど、うちの大陸に来るなって脅して鎮静化した。他国の犯罪組織を潰すほど私は善人ではないから」
笑いつつホルモンを焼く。
やっぱりホルモンにはイベスビールだよね。
あ〜、ネットスーパースキルが欲しいなぁ。
この前作ったカナン魔導商会オンラインを、フェルドアースバージョンで作ってみるかなぁ。
「そ、その力があるのなら……」
「そこの元宰相、またお姫様に怒られるぞ」
「その通りだ。ストーム殿、折角助けてもらったが、私は王位継承の儀に向かいたい。陸まで送ってもらえないか?」
覚悟を決めた国王。
それならそれで、手伝う事も問題はない。
「まあ、そんなに慌てるな。当日、直接祭壇まで送ってやるから。そこから先は、バッハド、あんたの好きにしろ、俺が手伝えるのはそこまでだからな」
「お〜お優しい事。流石は世界最強の聖騎士フベシッ」
──スパァァァァァァン
「それを言うなら、世界最強の賢者も手伝え」
「あうあう、久しぶりのストームの一撃だわさ。まあ、私は構わないよ。それで何をすれば良い?」
「まあ、それは後でな。今は飯だ」
「同感。という事でストームがやる気出したので、安心してくださいな」
そう言われてもと思う王族だが、腹が減っては戦ができぬ、今は食べて英気を養う事にした。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
王位継承の儀、当日。
王城の周囲およびベランダまでの通路の全てに厳重に騎士が配備されている。
「良いか、ネズミ一匹たりとも通すな‼︎」
ドリントルの命令で、儀式が終わるまでは何者も侵入する事が出来ない状態まで、警備レベルが引き上げられている。
「さて、それでは参るとしようか。我が栄光の第一歩を踏み出すために」
──ガチャツ
壁にかけられている四大精霊の杖を手に、ドリントルは真っ直ぐに最上階ベランダに向かう。
すでに精霊王との交信儀式の準備は終えており、後は魔法陣中央で二つの王位の証を掲げ、宣言するだけ。
眼下の広場では、バッハド王ではなくドリントルがその場に現れたので驚いている人々がいるが、そんなのものは一切無視し、魔法陣の中央に立つ。
「では、始めるとしよう‼︎ 偉大なる精霊王よ、我が前に姿をあらわし『ちょっと待ったぁぁぁぁぁ‼︎』」
ドリントルが宣言を行っている最中、突然上空から声がする。
──キィィィィン
すると、純白の姿勢制御スラスターを広げた、天使装甲を身に纏った魔法鎧・イーディアスⅤがゆっくりと降下してくる。
その右手にはバッハド王が、その左手には聖騎士装備のストームが立っている。
そしてバッハドとストームがベランダに降りると、イーディアスⅤの姿はスッと消えた。
(さ、あとは任せたわ)
透明化の術式を発動して、少し上空で成り行きを見るマチュア。
そして、一連の光景を見てドリントルの背後で待機していた騎士が背中に担いだ大剣に手を掛けるが、ドリントルはそれを制する。
「ほう、これはこれは先王、よくぞいらっしゃった。それに、その、巨大な魔導具は一体なんですか? 今は王位継承の儀の最中です。邪魔しないのでしたら、そこで見ている事を許可しますが」
「では、私も王位継承の儀に参加する事にしよう」
懐から光と闇の宝珠を取り出して掲げると、それは淡く光を放った。
「この通り。私も王位継承の儀を受ける権利がある」
「そ、それでは……どちらが真の王であるか、精霊王に問う事にしましょう」
忌々しそうにドリントルがバッハドを睨み付ける。
この前代未聞の出来事に、広場を埋め尽くす民衆は息を飲んでじっと見ている。
「「偉大なる精霊王よ、今こそその姿を現し、真の王を選んでください」」
バッハドとドリントルの声が響く。
すると、天から七色の光が降り注ぐと、精霊王アウレイオースがゆっくりと姿を現した。
『王位継承の儀を受けることが出来るのは一人のみです。これは絶対不変であり、覆すことはない……然るに、我に二人の候補者を立てて選ばせるとは、人という種は何処まで傲慢なのですか?』
あ、アウレイオースがお怒りの模様。
そりゃあそうだ、二人候補を立てたから、あんたが選べって言っているようなものだからなぁ。
そして時折、チラッチラッと様子を窺うようにこっち見んな。
ついでに天を仰ぐように眺めて、マチュアのイーディアスⅤに問いかけるような視線も送らない事な。
「で、ではどうでしょうか。二つの証を賭けて一対一の勝負をするというのは? それで勝者が二つを得ると、つまり勝者こそが王であるというのは?」
ドリントルが笑顔でアウレイオースに問い掛ける。
まあ、その辺りが落とし所なんだろうなぁ。
(あの、ストーム様、これはよろしいのですか?)
『構わんよ。今、この場ではアウレイオースの言葉が全てだ。誰も覆す事は出来ないだろうさ』
念話で問いかけて来たので、ストームはそう返事を返す。
するとアウレイオースもニッコリと微笑んだ。
『それでは、王位を賭けた大闘技大会を開催します。開始は今から一週間後、参加条件は王位を望む者ならば、国内外構わず参加して構いません。詳細はルクスとレクスによって告知します……それで宜しいですね?』
ドリントルの目論見としては、一対一の決闘で終わらせるつもりだったのだろう。
何しろ奴の後ろには、隷属された亜神がいる。
だが、亜神は隷属された時点で神威を使う事が出来なくなるという事実には、ドリントルも気付いていないいらしい。
「……私はそれで構いません」
「私もです。因みにですが、その大闘技大会には『代理人』を立てる事は可能ですか?」
これが駄目となると、ドリントルの目論見は潰えるだろう。
『それは構いません。良き友、良き仲間を得るのも王の力量です。但し、代理人は三人までとします。それでは、良き王が生まれるのを待っています。それまでは、バッハド王が代王として、この国を導きなさい』
──スーッ
静かにアウレイオースの姿が消える。
それと同時に、二つの王位の証も消失した。
「では、ドリントルよ、一週間後に会おう。それまでは、その命を奪う事は許してやろう」
「ふん。代王如きが何を言うか。せいぜい首を洗って待っていろ」
吐き捨てるように告げると、ドリントルはバルコニーから立ち去る。
それと入れ違いにバッハド王が前に出ると、右手を上げる。
「アウレイオース様のお言葉の通りだ。我こそ王になると言うものは、遠慮なく大会に参加するように‼︎」
──ワーッ
大歓声の中、バッハド王は部屋へと戻る。
そしてソファーにどっかりと腰を落とすと、今更ながら今回の件を受け入れた事を考え始めてしまった。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






