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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
NEXT STAGE

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神々の戯れ・無敵艦隊、起動‼︎

『異世界ライフの楽しみ方』のメインストーリーは完結しています。

 NEXT STORYから始まる物語は全て後日談であり、連載されるかどうかは神のみぞ知るです。

 

「こ、こんな巨大な建物が魔導具なのですか」


 魔導空母・翔鶴さんの艦内を案内されたナターシャ達は、最後に艦橋まで案内された。

 そして日本海軍の軍服を着た女性がマチュア達に挨拶してから、ナターシャは改めてマチュアにそう問い掛けたのである。


「あ、これは建物じゃないから。これ全体が船だから。そんじゃお願いしますね、翔鶴さん」

「イエスマスター・マチュア。魔導空母・翔鶴さん発進します」


 魔導空母・翔鶴さんのコントロールコアである、人型女性ゴーレムの翔鶴さんが、舵輪を手に宣言する。

 船体を固定していた亜空間アンカーが巻き上げられると、翔鶴さんはゆっくりと進み始める。

 これには、ナターシャ達も呆然としてしまう。


「こ、この建物が船だというのですか、そんな馬鹿な‼︎」

「た、確かに船の中から大きな魔力が感じられますけれど……」

「あっはっは。論より証拠、甲板に出てみる?」

「「 はい‼︎ 」」


 艦橋からエレベーターで降りて甲板に出る。

 そこでナターシャは信じられないものを見た。

 今乗っている巨大な建造物が、静かに揺れる事なく海原を進んでいるのである。


「は、ははは。姫様‼︎ この船があれば、反乱分子たちに勝つ事が出来ますぞ‼︎ あの忌々しいドリンドル枢機卿から王国を取り返す事も夢ではありませんぞ」

「いや、これはあんたらを送るためだけだし。ストームは一国の王だから、あんたらの国取り合戦には干渉出来ないよ? そんな事したら内政干渉どころか戦争にもなりかねないし」

「え? 俺は手伝う気満々だったが?」


 マチュアが頼まれていたのは船の調達。

 なので、ナターシャ達を送り届けたらそのままフェルドアースの小野寺さんあたりを冷やかしに行こうかと考えていたのである。


「マジ?」

「おおマジ。因みにマチュアの神威は戦闘には干渉して良いレベルじゃないからな? とっととこっちの世界基準に落とせな」

「はぁ。こりゃあ縛り入れていくしかないか」


 そう呟きつつ、神威をコントロールするために首元にあるハート型のアザに指を添える。


「神威限定封印……亜神モードより上位神威を封じる」


──キィィィィン

 マチュアの全身が輝き、神威が次々と封じられる。

 その光景を、ナターシャたちは意味がわからず眺め絶句している。



「どお?」

「ん〜良いんじゃね? 竜魔戦争後期対バイアス戦あたりの力まで下げたのか。それで何処まで行ける?」

「これでも世界第二位程度じゃないかな。まあ、困ったらストームに任せるよ」


 ドン、とストームの胸あたりに裏拳を入れる。


「あ、あの、あなたは何者ですか?」

「私? 私はラグナ・マリア帝国カナン魔導連邦女王のマチュア・ミナセだよ。ラグナ・マリア帝国では皇帝付きの『真紅の賢者』の称号を与えられているけれどね」


 ラグナマリア帝国で、マチュアだけに新しく作られた地位と称号が真紅の賢者。

 皇帝付となっているのは、マチュアに命じる事が出来るのは皇帝だけであるという市井に対しての宣言でもある。

 まあ、白銀の賢者だった時代を知っている者達にとっては、マントの色が変わっただけと認識されている。

 現時点ではラグナ・マリア帝国王室顧問はミアが二代目・白銀の賢者として就任し、赤城は日本国籍を離れてカナン魔導連邦の国民となった。

 そしてカナン筆頭賢者として、そして異世界大使館の副責任者としてフェルドアースで仕事をしている。


 因みにだが、ルナ・アコンカグヤのカナン森林王国でもマチュアは賢者として有名であり、そちらでは『白銀の賢者』を名乗っている。実にややこしい。



「そ、それでですが、この巨大な魔導船は私達に力を貸してはくれないのですか? 可能ならば、姫様が女王となる為に力添えをお願いしたいのですが」

「あ、それは断る。これは私が作った私の船であり、貴方達を送り届ける為に作っただけなので。まあ、そんなに渋い顔しなさんな、あんた達二人には世界最強の聖騎士と世界ナンバー2の賢者が付いているんだからさ」


 そう励ましてから、マチュアはみんなを個室に案内する。

 そして約半月の長いようで実に短い航海が始まるのであった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 場所は変わってはヴィラール精霊王国。


──ダン‼︎

 苦々しく机を殴り付けていたのは、現ヴィラール精霊王国の国王代理であるドリントル枢機卿。

 財務大臣でもある彼は、ヴィラール精霊王国で10年に一度行われる『王位継承の儀』を前に、現王政に納得のいかない貴族達を纏めて王城を包囲、クーデターを実行した。

 バッハド王は反乱軍に付いた騎士達によって囚われ勾留され、王位の証である『四大精霊の杖』を奪われてしまう。


 王位継承の儀では、二つの王位を示す精霊具を持ち王位を宣言することで、続く10年を精霊の加護を受けて王として君臨する事が出来る。

 

『全ては精霊の思し召し』


 それが、この国の基幹であり、国王は精霊の代弁者として国を良き道へと導く。

 だが、ドリントルの野望は、半分で止まる。

 バッハド王から奪い取った『四大精霊の杖』だけでは、王位を明かす事が出来ない。

 残る一つ『光と闇の宝珠』が無くては、王位を示す事が出来ず、しかもそれは、ナターシャ王女が王城から逃げる際にバッハドから手渡されている。


 それを手に入れるためにドリントルは多くの騎士や兵、冒険者を雇いナターシャ達を追跡した。

 そして王家が所有していた船で内海から外海へと向かう所で発見、脅しとして砲撃を行なったが逃げられてしまったのである。



「……後一か月、それで王位継承の儀が始まる。それまでに宝珠を手に入れられないなら、この国の王位は空位となる……ダメだ、そうなると次の王は精霊王自らが指名する事になる‼︎」



 それだけは避けなくてはならない。

 より多くの精霊と心を通わせる事こそが王としての証、そうなると王位はドリントルの元には降りて来ない。


 ドリントルは火精霊の加護しか得ていないから。


 そうなると最悪は、何処の者ともつかない者が王位につく。

 それならばそれで、また同じ事をして二つの精霊具を手に入れれば良いのだが、最低でも10年は王位は変わる事はない。

 国王に何かあった場合、具体的には病気とかによる死が発生した場合は一時的に直系の血筋のものが代行となる。その後、次代王は精霊王からの指名が行われる。


 つまり、ドリントルの元には正攻法では王位は来ない。その為に、この10年間は国の為に尽くしてきた。

 圧政を行う事のない王の元で、やがて我が国となる日の為に、善政の為に精一杯の助力をしてきた。

 そして、後一か月後に始まる王位継承の儀、そこでバッハドではなくドリントルが精霊具を手に王として名乗れば良いだけ。



「……ドリントル卿、このままでは王位は空位となります。そうなると、恐らくは精霊王はナターシャ姫を指名するでしょう。あの方は四大精霊の加護を得ておりますから」

「分かっている、それぐらいは分かっているのだ……だが、今、この国にはナターシャはいない、先王は地下城塞に幽閉しており、精霊王がそれに気付いたとしても、王をバッハドにする事はない」


 地下城塞の牢は、『精霊封じ』の術式が込められている。これは犯罪者達が『精霊魔法』を唱えられないように、精霊から牢の中が見えなくなっているのである。

 そして中に閉じ込められていると精霊力も外に出る事はないので、バッハドは事実上、精霊達の目に止まる事はないのである。



「では、如何なさるのですか? ここに来て計画が変更になるのですか」

「いや……ナターシャは『王位継承の儀』の為に必ず帰って来る。そこを取り押さえて、宝珠を奪えば良い。それしかないだろうが」

「……了解しました。各都市の港に騎士達を派遣しておきます」


 近衛騎士が部屋から出て行く。

 それをドリントルは見送ってから、壁に掛けられている四大精霊の杖を手に取る。


──ブゥゥゥゥン

 四大精霊を示す赤、青、緑、茶の四色の宝珠。そのうちの火を司る赤い宝珠のみが、静かに輝いている。


「くそっ‼︎ この国の次代王はこの俺だ、残りの精霊よ、何故、俺を認めない‼︎」


 吐き捨てるように叫ぶドリントル。 

 だが、宝珠は何も返答をする事はない。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 ウィル大陸を出発して。

 途中、シーサーペントの群れやグレーターウォータードラゴンの襲撃、地図にない小島群、和国での補給などを行なって、ようやく辿り着いた星の裏側、ヴィラール精霊王国のある大陸近辺の破壊潮流手前まで辿り着いた。

 

「マスター・マチュア、ここから1.2海里先に破壊潮流が発生していますが、どうしますか?」

「停止して。ストームはナターシャ達に詳しい話を聞いてきて、私は機関部の調整してくるから」

「オッケーだ」


 与えられた個室で呆然としているナターシャの元に、ストームはのんびりと向かう。


──コンコン

『俺だが、破壊潮流の手前まで着いたぞ、ここからはどうすれば良い?』


 信じられない。

 何で、たった一週間で破壊潮流まで辿り着くの?

 私が王船でウィル大陸近くまで辿り着くのには二か月ほど掛かった筈なのに、それを僅か一週間で、しかも途中で和国に立ち寄るなんて……。


「鍵は開いていますわ。どうぞ」

「そっか。それじゃあ失礼するわ。それでここからはどうすれば良い? 俺たちは破壊潮流については何の知識もないぞ」

「あれは、水の精霊と地の精霊が荒ぶっている潮流です。その二つの精霊が干渉することで、潮の中に真空の塊が生まれているのです。それにより船体が傷つくので、いくらこの船が頑丈でも、真空による破断は止める事が出来ないかと」


 成程なぁ。

 そりゃあ無理だ。

 しっかし、真空の塊ってどうしてこう、精霊魔術とかは常識を突破してくるのかな。

 まあ、その辺りはマチュアが何か考えているだろうから、そこに期待するとしよう。


「そういうことなら、マチュアに任せるさ。『マチュア、通常突破なら船体が破壊されるから、非常識に頼む』……と、これでよし」

『はいはい、そんじゃ魔導ジェネレーターも漸く慣らし運転が終わったところだから、本気で行くわ……翔鶴さん、航空母艦のモード2に移行して。テステステス、乗客の皆さん、これより航空母艦・翔鶴さんは飛行モードに移行します。安全を確保しておいてください」


 そう言うや否や、翔鶴さんがゆっくりと上昇を開始する。

 まるで何事もなかったかのように、船内が揺れる事なく上昇を開始すると、翔鶴さんは破壊潮流を眼下に一路、精霊王国へと舵を取り直した。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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