閑話のいち・いつもの日常
注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意・注意
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『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。
この閑話は『ネット通販から始める、現代の魔術師』のネタバレをフルパワーで含んでいますので、そちらだけを読んでいる方、及び異世界ライフの楽しみ方を読んでいて、ネタバレを気にしない方以外は読まない事をお勧めします。
読んだからと言って、感想に文句書かないようにw
「ぬぁぁぁぁぁぁぁ、なんじゃこりゃぁぁぁ」
広い執務室に響き渡る絶叫。
大抵の事ではびくともしない、鋼の魂を持つ女王のいきなりの悲鳴に、書類を整理していた宰相のイングリッドも片眼鏡をクイッと上げながら机に向かう。
「あの、何があったのですか?」
「あったわあったわ、とんでもない爆弾が来てたわ。これ見て頂戴よ」
女王の手から渡された報告書、それは王家直轄であるカナン魔導商会からの報告書である。
サインも魔法印も責任者であるアハツェンのものなので、疑う余地はない。
「これは……あの、マチュア様、これはどういう意味ですか?」
「どうもこうもないわよ。勝手に破壊神になって、世界を創造する為にどっかに行ったアホマチュアがやらかしただけよ。その尻拭いというか、何で今更こっちにこういう話を持って来るかなぁ」
「あ、あのですね、彼方もこちらもマチュア様ですが。大体の想像は付きますけど」
マチュアの側近であり宰相であるイングリッドは、此処にいるマチュアが破壊神から分かたれた現・カリス・マレス統合管理神である事は聞いている。
魂の護符を見ると、イングリッドも『統合管理神マチュアの眷属』にレベルアップしたので理解はしている。
それと同時に、マチュアに長く仕えていた事もあり、『面白いからやってみようそうしよう』の精神を理解している。
「はぁ。承認じゃなく報告書だというのが余計に腹立たしいわ……はい、これは見なかった、この件はなかった、それでいいわね」
空間収納に報告書を放り込むと、マチュアはイングリッドにそう告げる。
まあ、そのような結末になるとは予測していたらしく、イングリッドも一礼して席へと戻っていった。
「はぁ。カナン魔導商会のネット通販って、何考えているのやら……」
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場所は変わってカナン魔導商会地下、アハツェン工房。
位相空間に作られたその場所では、アハツェンが厳也の指示で多層結界を構築している。
その傍らでは、厳也がアハツェンの構築した結界を六芒星結界により包み込み、更に28の結界を構築していた。
「……あ、あのですねマチュア様、私はこのような特異型魔法陣を構築した事はないのですが」
「実験よ実験。この空間の時間は全て停止しているから時間はなんぼでもある、何だか何言っているかわからないけどそういう事だから、失敗を恐れずに頑張る‼︎」
「はぁ。これってあれですよね? 時空神・天狼様の空間飛翔と異界接続術式もありますよね?」
「そうよ。そしてこっちが通信販売用の基本システム、対象者のレベルが上がったら随時解放されるシステムも組み込んだから楽しいよ?」
マチュアが何故、このようなものを作っているのか。
元々は自分の世界であるネィル・ウルティマで試したかった『異世界のものを買う事が出来るネットショップシステム』なのだが、肝心な魔導具を作り出すシステムを構築するには更に時間と手間と管理者が必要という結論が出た。
それなら、既存のシステムを使う事にしようと、THE・ONES世界に強制介入したのである。
「まあ、マチュア様が楽しければ構いませんし、我々シスターズとしましても、創造主であるマチュア様のご意向を汲む事が仕事でありますから」
「いいね、そういう建前は。そして本音は?」
「こんな面白いものを、他のシスターズには任せられません。いやぁ、そろそろ魔導具の失敗……新商品の披露場所を探していたのですよ」
部屋の端に理路整然と分別されている『封印された』魔道具。
全て魔導具開発についての認可を得たアハツェンが独自開発し、マチュアからボツを食らったものである。
その中には、わざわざレムリアーナへと赴き捕獲した浮遊大陸シリーズの収められた簡易型空間収納まで置いてある。
「まあ、私の空間収納を固体化して量産化した腕は認めるわよ。ミアが赤城さんと一緒に空間魔法を生み出して、空間収納を魔法化していなかったら売れたでしょうね」
「まさか同じタイミングで空間魔法を編み出すとは思っていませんでしたからなぁ……おや、此方も安定しましたよ」
「おーけーおーけー七つのうーみーを、だよ。そんじゃ深淵の書庫起動、全ての魔法陣を一つの魔法陣として再編集……構築……圧縮……と」
膨大な魔法陣が、一つ一つの塊となる。
10cmの黒い立方体、これが完成した『カナン魔導商会システム』である。
「そんじゃ、これはここに固定して、このシステムと繋がっている『店員ゴーレム』を構築……成功と」
ほんの数秒で新しいゴーレムを構築すると、マチュアは知識のオーブを作り出し、組み込んでいく。
「常識も非常識も吹き飛ばし、無茶で無謀と笑われようと! 意地が支えの魔導道!! 壁があったら殴って壊す! 道がなければこの手で作る!! 心のマグマが炎と燃える!!! 超絶魔導具!カナン魔導商会‼︎
私を!私達を!! 誰だと思っていやがるっ!!!」
起動キーワードをマチュアが叫ぶ。
するとゴーレムも静かに目を開けた。
ザンバラ髪にサンバイザー、燃えるような熱い瞳のゴーレムの誕生である。
「おおお、この俺の中にあるマッドな記憶が、俺を店員に駆り立てる‼︎ 俺の名前は‼︎」
「私の作り出したシスターズナンバーならば、最新型の34だから……」
「あ、あの、いつのまにシスターズの量産を? 私は聞いていませんが」
「ん? セフィロト世界で10個作ったでしょ? その後で破壊神になってあっち行ってから管理用に大量に作ったのよ。ついでにロストナンバーも埋めたけどさ、ゼプツェンはレイファだから空けっ放しだよ?」
あっけらかーんと呟くマチュア。
あの、以前はもう同じシスターズを作るのはやめた筈ですよねと突っ込みたくなるが、それはそれ、これはこれの精神で現在も量産中。
「命名。お前はNOVA。ノヴァという名前を授けます」
──キィィィィン
そう呼ばれた瞬間、生まれたばかりのゴーレムの全身が輝く。
「お、俺の名前はノヴァ‼︎ よし、俺は何と戦えばいい‼︎」
「あ、このカナン魔導商会の管理をお願い。査定システムとかもあるから、買取上限については都度アハツェンと相談してね。あまり高価なものは買いとらない、細かいものは纏めて買い取る、あと、買い取ったものはカナン魔導商会本店と馴染み亭に卸して、新しく魔導具開発の資金にすればいいから」
「え?」
淡々と説明するマチュアに、ノヴァは呆然とする。
彼に組み込まれたシステムは、過去のシスターズに組み込まれたものを全てにおいて凌駕している。
いわばシスターズ最強の一角である。
素手でエンシェントドラゴンすら破壊する事も容易いだろう。
「あ、アハツェン、ついでだからさ、ノヴァに組み込んだシステムは全てのシスターズにも組み込んでバージョンアップしておいて」
「了解しました。ですが、此方のマチュア様の許可は?」
「報告書だけ出しておいて。許可なんて取ろうとしたら却下させるか混ぜろって来るのが目に見えているから。だから、勝手にやって報告書だけ出しておいて」
「はぁ……また私が怒られますが」
「うん、諦めて怒られて。そんじゃシステムを起動するからね」
ス〜ッと息を吸い込むと、マチュアはカナン魔導商会システムに両手を添える。
「我が名は破壊神マチュア……我が名において、私の許した者のみ、このシステムを使う事を許します……よし、これで起動したわ。後は後日にでも、使える人を探してみるわ」
無事にシステムは起動した。
後は、これを誰に使ってもらうか。
扱う商品が魔導具なので、現代文明世界の人間には扱わせるわけにはいかない、あくまでもマチュアが作ったファンタジー世界に魔導具の存在を広める為のシステムでもあるのだから。
「おめでとうございますマチュア様。これで私共も不要な在庫を処理できます」
「まあね。はぁ、一仕事終わったから帰りますか」
──キィィィィン
そう呟くと同時に、完成したシステムがいきなり高速回転を始めた。
「ちょ、おま、なんで勝手に動いているのよ、へ? 使用者登録? はぁ、何でいきなりってちょいまち、登録担当管理神はアーカム? 待て待て、何がどうなってる?」
マチュアが動揺している間に、システムは静かに沈黙した。
『ピッ……カナン魔導商会使用許可の承諾完了。該当者名・乙葉浩介、この者がシステムにより認可されました。なお、登録者の削除には……』
「のぉぉぉぉぉ、いきなり持って行かれたぁぁ」
──キィィィィン
再びシステムが起動すると、その表面に光るラインが次々と生み出された。
カナン魔導商会オンラインが稼働したのである。
「あ、あの、マチュア様……」
「ちょっと待ってて。このままこれは放置しておくから、ちょいとアーカムしめて来る」
──ヒュンッ
一瞬で姿を消すマチュア。
一度冥府に向かえば、冥府からは自分の世界に帰る事が出来るから。
その後数分で、マチュアは清々しい顔で戻ってきた。
「あ、あの、アーカム様はどうなりましたか?」
「ん? 話し合いで解決したよ。という事で、稼働したのは良しなので、データの回収用としてこのまま監視を続けておいて。後は適当に魔導具作って売っていいから」
「まあ、アーカム様がご無事でしたら。それでですねマチュア様。このチャージシステムですが、彼方の世界の現金をチャージされるとですね、彼方の世界の貨幣システムにも弊害がありますが」
「そうだよね。まあ、それで現金がチャージされたらさ、それは私がこっちの世界の金に換金するよ。そしてひっそりと向こうの世界で豪遊して来るわ」
ひっそりと豪遊?
まあ、そこはいつものマチュアだろうと思いつつ、アハツェンは憮然としているノヴァの肩を叩く。
「と言うことですよ。あなたはカナン魔導商会の店員として雇用します。システム担当として頑張ってください」
「お、あれ? 俺って世界最強のゴーレムだよな? 何で商品管理責任者?」
「……マチュア様はそう言う方です。あなたにはわかりづらいかもしれませんが、ウサイン・ボルトがセルアニメのアニメーターをやるようなものとご理解ください」
はい、まったくもって理解出来ない。
その足を生かした仕事に就かせろよと叫びたくなるノヴァであるが、創造主であるマチュアの勅令は絶対。
「は、はぁ……理解しました」
「そんじゃよろしく‼︎ 私は国に戻るよ」
「国?」
思わずアハツェンが問い返すと、マチュアはにぃっと笑った。
「そ。私の作った世界の一つルナ・カグヤ。そこにあるのよ、私の国がね。そこでのんびりとしているのよ、あまり目立たないようにね」
あ〜、またやりやがった。
そうアハツェンとノヴァが呆然とする中、いつの間にかやってきた『天使の回覧板』を受け取り目を通す。
そして最後のページに魔法印を施して手渡すと、マチュアは笑いながら姿を消した。
いつの世でも、場所が変わってもマチュアはマチュアであった。






