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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第14部・古きを越えて新しき世界へ

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微睡みの中で・その32・国境都市ラソーラで、話を聞いていたらねぇ

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

 マチュアはのんびりと商店街を歩いている。


 串焼き屋のおじさんからもいい話を教えてもらったので、そのお礼に焼肉串を40本購入して空間収納チェストに収めておいた。

 当然拡張エクステバッグを仲介して空間収納チェストに収めているのだが、この大陸でも拡張エクステバッグは高額な魔導具であり、持っている者はあまりいないという。

 空間収納チェストスキルを所持しているものは更に少ない為、スキルホルダーは商会や冒険者などに高額で雇われている事が多いらしい。


 まあ、魔導具はあまり出さない方がいいよなぁ。

 魔法も自重して使わないでおくとして、ポーションはどうするかなぁ‥‥。


 そんなことを考えつつウインドウショッピングを続ける。透き通った一枚ガラスなんてないので、俗に言う露店冷やかしと変わらないといえばそうであるが。

 そんな感じでしばらくは町の中を歩いていると、ふと人が大勢集まっている店が二つあるのに気が付いた。


 一つはスキル屋、そしてもう一つは魔導具商会。

 

 市民や冒険者らしい人が集まっているのがスキル屋で、貴族らしい身なりの人が集まっているのが魔導具商会のようで。

 遠くから二つの店をのんびりと眺めていると、ふと、マチュアは自分が誰かに見られている事に気が付いた。


「あれれ? なんで目立っているの? 誰が見ているの?」


 きょろきょろと周囲を見渡すが、特に怪しい人影は見えない。

 おそらくはスキルによって姿を消しているのか、あるいは遠くから見ているのか。いずれにしても、誰かに見られていたという感覚は確かにある。


「スキルかなぁ。まあ、見られているレベルなら気にする事もないけどねぇ」


魔力感知で周囲を見渡すが反応はない。

ならば心力サーチに切り替えると、マチュアの後方50mほどの場所、高さ3mに透き通った目玉が浮いているのに気がついた。


(鑑定眼……スキル・千里眼かぁ。種別はユニークスキル、距離は半径2500m、一度に二つ使用可能だが、使用中は本体の視力を封じられる……凄いなぁ)


そのまま目玉に向かってニッコリと笑い手を振ると、何事もなかったかのように魔導具屋へと入って行った。



………

……


──ビクッ

冒険者ギルドの事務室奥にある部屋。

そこは監視系スキルを持った冒険者たちが集まっており、千里眼や遠視、使い魔召喚などのユニークスキルを持った者たちが日夜、国境沿いの監視をしている場所である。

その中の1人、『千里眼のマクラーレン』はギルドマスターからの命令でマチュアの監視を行なっていたのだが。


「な、何だあの女、俺の千里眼に気が付いたのかよ?」


まさか監視対象がマクラーレンの放った千里眼に気が付くところか、手を振って来るとは思ってもいなかった。


「おいおい、そんな事ある訳ないだろうが」

「俺たちのスキルは他人に見つからないのが特徴だろ?」

「どれ、それなら俺がみてやるよ……このねーちゃんだろ?」


別の男がマチュアの後方に近寄ると、魔導具屋へと入っていったマチュアの監視を続ける事にした。



………

……



「ふむふむ、なかなか見所がある魔導具屋だったなぁ。それに比べてスキル屋はラインナップが今ひとつ、それでも需要があるのが凄いわ」


魔導具屋とスキル屋を冷やかしてから、マチュアは酒場に入ってティータイム。

いつものように自前のものではなく、店のメニューから適当な注文をすると、後はのんびりと食事を楽しむ。


「むほーっ、熱々の腸詰の炙りとマッシュポテト、それと温い蜂蜜酒かぁ。蜂蜜酒がぬるい事以外は文句なしですなぁ」


熱々の腸詰にかぶりつくと、パキッと皮が破れる音。そして中から肉汁が、ジュワーッと溢れて来る。


「うおおおおお、これは凄いぞ、こんなの久しぶりに食べたわ‼︎」


──ドン‼︎

ならば、これに最適な調味料は何か。

それはマスタードでしょ。

いつ出すの?

今でしょ‼︎


拡張エクステバッグからマスタードの入った小さな壺を取り出すと、小さじに二すくい取り出して直接腸詰に乗せてから。


──シャクッ!!

程よい辛さが肉の旨味と複雑に絡み合い相乗効果で味わいが一層深くなる。

あれよあれよという感じで一気に食べ尽くすと、すぐさま手をあげてお代わりを注文する。

やがて熱々の腸詰が再びやってくると、今度は別の壺を取り出す。


某有名肉屋名物、九州人なら誰でも知っているあのスパイスに近い配合で作った特製スパイス『マキシマムmk2』。

それをぱらっと振りかけて再びかぶりつくと。


──カッ!!

目を見開いて蜂蜜酒を喉に流し込み、またかぶりつく。

その光景を、周りの客も喉を鳴らしつつ眺めていると、マチュアも視線を感じたのか、思わず彼らにサムズアップ‼︎


「お、俺にも腸詰をくれ‼︎」

「こっちもだ、こっちは二つ頼む‼︎」

「俺のところもだ、4人いるから四皿頼む‼︎』


次々と腸詰のオーダーが入っていく。

そんな中で、ウエィトレスの1人がマチュアの元にやって来て。


「申し訳ありませんが、その調味料を分けて貰えますか?料理長がどうしても譲って欲しいと……」

「ほほう。では、この使ってるので良かったらタダであげるよ。その代わり次からはちゃんとして買ってくれれば良いよ。イスフィリアのカナン商会から買って来たものだからね」


仕入れ先はイスフィリアのカナン商会。

その言葉を海千山千の商人たちが聞き流す筈がないのだが、いかんせん情報が少ない。

何人もの商人が使いの者を走らせたようで、その光景には思わず苦笑するしかない。


「カナン商会ですね。わかりました」

「あー、でも、あそこは入るのにも伝手とかあるからね……ちょっと待ってて」


拡張エクステバッグから羊皮紙を取り出して、さらさらっと紹介状を書く。

最後にマチュアの魔法印と封蝋を施して完成、それをウエイトレスに手渡す。


「これが紹介状ね。イスフィリア王都のカナン魔導学院の入口受付に見せたらすぐに手配してくれると思うから」

「ありがとうございます‼︎マチュアさんはカナン商会に顔が効くのですね?」

「私は冒険者でね。素材を買い取ってもらったりしてるから……それじゃあね」


ジャラッと支払いを済ませると、マチュアは店から外に出て行った。



◯ ◯ ◯ ◯ ◯



特にやることもなく、観光がてら街を散策。

商業区画から一般区画にやってくると、子供達が木桶を持って走り回っている光景が見えていた。


「あー、子供には子供の仕事がある、だよなぁ。この世界って、子供だからって遊んでいられるのは小さい時ぐらいなんだよなぁ」


などとのんびり眺めている。

普通に滑車を使うタイプの井戸で、子供でも使えるように近くに台座が置いてあるのだが、あれになると危険なような気がする。

少しでも前のめりになったりバランスを崩すと、そのまま真っ逆さまに


──ドッボーーン

ほら落ちた。


「ほら、じゃないわ‼︎」


慌ててマチュアは井戸に駆け寄ると、そのまま中に飛び込む。


(レビテーションで速度減衰、間に合うか‼︎)


騒ぎを聞きつけた人達が井戸に集まってくるので、マチュアは水面に飛び込んで意識を失って浮かんでいる子供を抱えると、立ち泳ぎのふりをして声を上げた‼︎


「早くロープを頂戴‼︎」


声が届いたのかすぐにロープが投げ込まれたので、先に子供を固定して引き上げてもらうと、マチュアもあとからロープを伝って上に上がっていく。


「子供は大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ、あんたのおかげで助かったみたいだよ」


近くて意識を取り戻し泣いている子供に手当てをしている大人達。

その光景を見てマチュアもほっと胸を撫で下ろしているが、井戸の危険性がなくなった訳では無い。


「あの、これってどこの井戸も同じ作りなのですか?はね釣瓶式のやつとかは?」

「あるけど、この辺りは道が狭いので使われてないよ。貴族街には井戸汲み用の奴隷がいるからそんな事気にもしていないし」


はぁ。

この世界が中世レベルの技術レベルなのをすっかり失念していたわ。

そういやカナンも井戸だったよなぁ。

あれもなんとかしないとなぁ、井戸だけに……と考えつつ井戸に近寄って中を覗く。


(深さ……水面までは8mってところか。意外と深いよな。水面下まではかなり深そうだから…10mでギリギリ足りるか)


子供達が安全に作業できるなら、それに越したことはない。

それに手動ポンプ程度の技術なら、一つ作って見せればこの国の鍛冶屋でも簡単に作れる……筈。

ただし、それをここで作るとまた面倒な事になるなぁと言うことで、マチュアは一旦商業ギルドへと向かう事にした。



………

……



「家を借りたい、もしくは土地を買いたいんだけど、ここで良いのかな?」


マチュアは商業ギルドにやってくると、空いているカウンターに向かい気の良さそうな男性職員と話を始めてみる事にした。

今後の活動拠点を作るにも、今までのような馬車改造とかチート技術を見せているとまた大変な事になると思ったので、この国では一から始めてみる事にした。



「土地と建物の管理も商業ギルドの仕事ですよ。どのような物件をお探しで?」

「一戸建て、庭付き、大きめで一つお願いします」

「かしこまりました。では、お客様の身分を証明するものはございますか?ギルドカードなどでも構いませんよ」


この国で手に入れた冒険者ギルドカードが火を吹くときがきた‼︎

堂々とCランクカードを提示すると、受付の男性が思いっきり苦笑している。


「はぁ……フリーランス冒険者ですか。それもまだCランクですか……少々お待ちください」


ギルドカードを確認した直後、受付の顔がどんよりと落ち込んだ感じになる。

そして、近くで彼の声を聞いていたらしい他の受付が苦笑している姿も見え隠れしていた。

そしてすぐに大きな台帳を手に受付が戻ってくると、のんびりとページをめくり始めた。


「何だろ、この嫌な雰囲気……ここも担当がランクわけされているのかよ」

「ええ。国選冒険者やBランク商会担当でしたら、それなりのランクポイントと褒賞が期待できるのですが、フリーランスの、それもCランクですとねぇ……

と、こちらはいかがですか?」


ブツブツと呟くように返事をする受付だが、マチュアに提示したいくつかの物件については、それほど悪くはない。

立地的には中心区画からは外れるものの、周辺はまだ開発中らしく大きな建物もなく、開けた土地が広がっていた。


「へぇ。フリーランスの私にこんないい場所を提供してくれるの?」

「マチュアさんがフリーランスでも、商会ギルドにいらっしゃったお客には変わりありません。私の査定が変化ないだけですから、仕事は仕事としてやらせて貰います」


キッパリと言い切る受付に、マチュアもやや納得。ならば彼に任せるのもありであろう。


「よし、それなら、ここの土地を買い取る‼︎建物は自分で用意するから構わないね?」

「買い取る……と申しましても、この辺りですと……」


ざっと見積もってもらったら、買取金額はとんでもないものである。


「大金貨45枚です。これは土地の税金なども全て含まれてます」

「よし、買った‼︎」


──ドシャッ

勢いよく金貨袋を取り出してカウンターに置くマチュア。

すると、他の受付達もその声に驚いたのか、マチュアの近くに集まって来る。


「あの、マチュア様。大金貨ですよ?金貨ではないので……えええ?」


ーチャッ、チャッ、チャッ

袋から取り出した大金貨を10枚一山にして並べていく。

そして端数5枚を並べ終わると、金貨袋を拡張エクステバッグに放り込んだ。


「さあ、これで問題はないでしょ?登録お願いするわ。ついでに貴方も私の専属担当にしてあげるから光栄に思いなさい。こう見えてもアドラー王国では、Sランク商会の登録冒険者をしていたので金はあるのよ」


──ゴクッ

周囲の受付が喉を鳴らすなか、淡々と手続きが終わる。


「それでは、この地図の一帯がマチュア様の土地となります。遅ればせながら、私がマチュア様の専属担当となりますマードックです、今後ともよろしくお願いします」

「こちらこそ。と言っても、ここは別荘程度にしか考えていないから、何かするでもなくのんびりとさせてもらうからね」


それだけを告げて立ち上がると、マチュアは手をひらひらと振りながら商会ギルドを後にした。


誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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