表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第二部 浮遊大陸ティルナノーグ
60/701

浮遊大陸の章・その5 魔導の深淵と解呪の条件

 昨日は兎に角遊び回った。

 魔導教会に伺って謁見の申込みを行い、更にその足で都市の中央にある元老院にも向かってみた。

 入り口で謁見を申し入れると、翌日の夕方と指定されたので、その前にストーム達は魔導教会へと向かうことにした。

 実に、今朝は心地よい朝である。

「‥‥ここの酒は上質で美味い。帰りに少し買い貯めしていこう‥‥」

 と呟きながら、ストームは食事を摂りに一階の酒場へとやって来た。

「ストームさん遅いっぽい」

「わっはっは。随分とゆっくりだなぁ」

「お先に頂いていますわ」

 とポイホイとワイルドターキー、ズブロッカの三人が先に朝食を摂っていた。

 それ以外にも、数名の商人が食事を摂っているようだ。

 こちらをチラッと見て、軽く会釈をしてくる。

「あ、どうも‥‥と、皆は随分と早いんだなぁ」

「朝の鐘が鳴るまでには食事は摂っておかないとのう」

「そうだよ。鐘が鳴ってから起きるのはお寝坊さんっぽいよ」

「‥‥うん」

 と三人でストームを攻める。

「あーはいはい。俺の朝は鐘の音と共に起きるのでね。食事お願いします」

 と告げて、ストームもちょっと遅い食事を摂る。

 サムソンの街でもよく食べている、簡単な食事である。

「で、みんなは今日はどうするんだ?」

「ワシとズブさんは用事があって、一度ワシの実家に行く事にした。二、三日でまた此処に戻って来るので」

「ええ。そういうことですので、人質としてポイポイを置いていきます。もし私達が戻らなかったら鍛冶の燃料として投下して下さい」

 笑いながらズブロッカが告げる。

「二人共酷いっぽい。ポイポイは燃料じゃないよーう」

 プッと膨れるポイポイを他所に、二人は食事を終えて立ち上がると、荷物を背負って出発するようだ。

「では、暫くは留守にするので」

「それではまた後日じゃ」

「ああ、それじゃあな」

 とワイルドターキーとズブロッカが告げて酒場をあとにした。

 そのまましばし食事を楽しんだ後、ストームとポイポイは、まずは魔導教会へと向かう事にした。 

 早朝の街の風景は、ソロモンや王都ラグナと変わらない。

 ストームは、ここが別空間に存在する都市であるとは到底思えなかったのである。

「全くもって普通じゃないか」

「その通りっぽいよ。でも、違うっぽいよ」

 にこやかに告げるポイポイ。

「一体どっちやねん」

 とつっこむが、ポイポイはただにこやかに笑っているだけであった。

 そのまま真っ直ぐに魔導教会へと向かう二人。

 やがて、大通りの正面に、巨大な魔導教会の建物が見えてきた。


 魔導教会には、水晶の民(エクセリアン)の神である天狼が祀られている。

 早朝という事もあって、大勢の人々が教会を出入りしていた。

 開け放たれた入口を通り抜け、予め謁見を申し込んであった事を近くにいた魔導士に告げる。

「済まない、昨日謁見を申し込んでいたストームだが」

「はい、ストーム様ですね。では此方へどうぞ。カラミテ様がお待ちです」

 と一礼をして、ストームとポイポイは奥にある謁見の間へと案内された。

 質素ながらも、見た目はしっかりとした味のある調度品が彼方此方に飾られている。

 おそらく魔導器なのだろう、魔法の灯りが天井で灯されていた。

(これはマチュアが見たら絶叫ものだな。なんで自分で来なかったんだ?)

 と暫し考えていたとき。

――ギィツ

 と扉が開いて、灰色のローブを着た女性がやってきた。

「これはこれは、遠路はるばるご苦労様です。初めまして、この魔導教会の責任者のカラミテと申します」

「初めまして。サムソンで鍛冶師をやっているストームだ。色々と教えて欲しくてやって来た」

「はいはい。それではまず、何からお教えしましょうか?」 

 と挨拶を交わしてから、ストームはまず単刀直入に話を始める。

「実は、間もなくティルナノーグの封印が解放されそうなので‥‥」

 と単刀直入に話を始める。

 水晶柱に封印されている少女についてはまだ説明をせず、ティルナノーグの封印についての対処方法を尋ねているストーム。

「ティルナノーグは、私達水晶の民(エクセリアン)にとっての聖地です。長い間封印されていましたが、ついに封印が解けてしまうのですか。魔族も共に復活するとなると、『魔封じ』の術式を再度施す必要がありますね」

 と説明するカラミテ。

「魔封じの儀式? それはどのようなものですか?」

 初めて聞く単語に頭を捻るストーム。

「魔封じとはですね。『白竜の社』と呼ばれている場所で行われる儀式です。ティルナノーグの中心にある世界樹、私たち水晶の民にとっての母なる水晶が世界樹と一つになって佇んでいる場所。そこに『白竜の社』があります。魔封じとは、その根本にある『社』にて行う神事です」

 何かを懐かしんでいるカラミテ。

「魔封じとは、元々は魔を退けるという意味合いで行われていた神事です。ティルナノーグと表裏一体、鏡写しに存在する魔族の故郷である『メレスザイーレ』との繋がりを切るための、大切な儀式なのです」

「表裏一体の世界とは、また大変な話だな」

 ストームは差し出された紅茶のようなものを一口飲むと、腕を組んで考えた。

「はい。あのティルナノーグでの魔族侵攻。全ては私たち水晶の民の魔道士『ファウスト』の起こした魔導実験から始まりました」

「まるで見てきたようなもの……まさか?」

「はい。私たち水晶の民は、ある一定の時期から歳を取りません。私も、あの魔族侵攻から逃げた民なのです」

――フゥ

 と溜息を一つ。

 横では、ポイポイさんが真剣に話を聞いている。

「成程な。伝承でしか知らなかったあの戦いの犠牲者が。他にも大勢生き残っているのか?」

「世界各地に繋がっている『月の門』によって、私たち水晶の民は逃げ延びる事が出来ました。ですが殆どの民は逃げ延びることが出来ず、ティルナノーグと共に異空間に封印されてしまったのです」

――ツツッ

 カラミテの瞳から涙が流れる。

「済まないことを聞いた」

「ごめんなさいっぽい」

 と頭を下げるストームとポイポイ。

「いえ、全てを伝えるためには話さなくてはならない事です。話を戻しましょう。ファウストは世界樹の元にある社と同じ力を持つ、巨大な門を作りました。『メレスザイーレ』に漂う膨大な魔障を集め、ティルナノーグを支える水晶の大地に注ぐ為に。彼の魔道士は禁忌と呼ばれる実験を行ったのです」

 此処で言葉が止まった。

 暫し沈黙が訪れる。

「その実験って、何したっぽい?」

 緊張に耐えられなくなったポイポイさんが問いかける。

「新しく作った社と『メレスザイーレ』を繋ぎ、そこから溢れ出す魔障を自らの体で受け止めたのです。自然に存在する魔障程度では何も起こりません。ですが、メレスザイーレから溢れた魔障によってファウストは心身共に変異を起こしたのです」


――カチャッ

 ストームがティーカップを皿に置く。

「済まない、紅茶のお代わりが欲しい。此処までの話で喉がカラカラになった」

「ポイはお茶菓子も欲しいっぽい」

 と笑いながら告げる。

「あら、これは失礼。少々お時間を頂きますね」

「ゆっくりで構いませんよ」

 と告げたら、ストームはカラミテが部屋から出ていくのを確認した後、腕を組む。

「ここまですごい話とはなぁ。ポイポイさんはどう思う?」

 とストームが問いかけると。ポイポイはニィッと笑う。

「ポイポイが体験した事と同じっぽい。あの人の話は嘘じゃないっぽいよ」


――ハァ?

「ち、ちょっとまて、ポイポイが体験した事ってなんだ?」

「ポイポイはティルナノーグに行った事あるっぽいよ。御社に捧げる『魔封じの儀式』も見た事あるっぽい。魔族侵攻の時に逃げた月の門で、ポイポイはこの大陸に逃げてきたっぽいし」

 えーっと、こういう時の諺って確かあったよな。

 あ、あー。

「灯台元暗しか。詳しい話は知っているのか?」

「それは知らないっぽいよ」


――カチャッ

 ゆっくりと扉が開き、カラミテが、紅茶のポットと焼き菓子を持って戻ってきた。

「お待たせしました。私も少し落ち着きましたので、話の続きを始めましょうか」

 と、ティーポットから紅茶を注ぐと、ゆっくりと話を始める。

「えーっと。ファウストの話ですよね。私たち水晶の民は、濃い魔障に身を置くと『魔人化』という現象が起こるのです。なぜ起こるのかまでは分かりませんが、外見が魔族化したり、心だけが魔族化する事もあります。ファウストは心も体も魔族化し、社の力を借りて自らが作り出した『魔門』とティルナノーグ各地にある『月の門』の一部を繋いでしまったのです。其処からは、皆さんの知る魔族侵攻の始まりです」

 其処で一息つくカラミテ。

「月の門から魔族が襲来したのか。再封印、若しくは封印の期間継続は可能なのか?」

「まず、アレキサンドラの齎した封印は時間と空間の魔法です。これは彼女にしか扱うことができません。今可能なことがあるとすれば、封印が解放されたのち、速やかに社に向かって魔封じを行う事です」

 何かを思い出そうと必死なカラミテ。

「つまり、魔族と戦うと?」

「そうです、魔封じでティルナノーグとメレスザイーレの繋がりを分断することで、あの世界から魔族がやって来る事はなくなります。残った魔族を討伐すると、後は大丈夫でしょう。ようやくティルナノーグはこの世界に返ってくる事が出来るのです」

「その魔族の討伐が一番の問題なんだがな。それに、魔族侵攻の張本人である『ファウスト』をどうにかしないといけないし。まずはその辺りの準備を終えてからということか」

 と告げると、カラミテもにこやかに頷く。

「そうですね。では、その時が来た時は、世界各地に残っている水晶の民も力添えをすることでしょう」

「魔封じの儀式とやらは、今でも行える者がいるのか? ここが一番重要だが」

 ストームもホッとして話を続ける事が出来るらしく、落ち着いた表情でそう問い掛ける。

「儀式自体は、私達水晶の民に口伝で伝えられています。急ぎそれを取り行う事の出来る水晶の民を探す事にします」

 と頭を下げるカラミテ。

 ここでようやく、ストームは安心したのか『封印の水晶柱(クリア・コフィン)』について話を始めた。

「カラミテさんは、封印の水晶柱(クリア・コフィン)」というものをご存知ですか?」

「ええ、存じていますよ。私には使えませんが、私も魔族侵攻の際にいち早くその術式を施して頂いたのですから。気が付くと全く知らない森の中で驚きましたけれどね」

と告げて、一息いれる。

「『封印の水晶柱(クリア・コフィン)』は魔導教会の司祭などが使えた封印と転移の儀式魔術です。ティルナノーグに魔族が侵攻してきた時、かなり大勢の水晶の民が封印の水晶柱(クリア・コフィン)によって生き延びたと伝えられています」

 と告げてから、ティーカップを口元に運ぶ。

「その封印の水晶柱(クリア・コフィン)に後付で術式を施したものがいて、封印の水晶柱(クリア・コフィン)を解除出来なくなってしまった者がいるんだ。どうにかして中に眠っている少女を助けたいのだが、何か分からないか?」

 と問い掛ける。

 カラミテはふと頭を捻るが、彼女には分からなかったらしい。

「その術式を知っているものならば可能でしょう。残念なことに、古き術式を知る魔道士は今この都市を出てしまっていまして。ドワーフ氏族の呪術士ならば、判るかもしれません」

「そうか。丁度、今日の夕方には元老院に謁見を申し込んでいる。其処で話してみるか」

とカラミテに返事を返す。

「そうですね。それが宜しいかと思いますよ。では、この後まだ謁見を申し込んでいる方もいますので、本日はこの辺で」

「ああ、色々と済まなかったな。もし何かあったらまた来ると思う」

とストームとポイポイが頭を下げて、その場を後にした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 



 元老院との謁見の時間までは、まぁ余裕があった。

 その為、ストームは魔導協会の隣にある魔導器を扱っている商店にやって来た。

「いらっしゃいませ。どの様な魔導器を御探しで?」

 とドワーフの店員が愛想よくストーム達の方にやって来る。

「どんな物があるのか見に来たのだが、それでも構わないか?」

「どうぞどうぞ。何が気になったものがあったらいつでも仰って下さい。ご説明しますので」

 と言うことで、二人は店内を見渡した。

 空間拡張の加護が施されているバッグや、魔物が入ってこれないように結界を施す結界針、魔力によって矢を生み出す弓など、ストームには気になるものが沢山あった。

「ここにあるもの、全部欲しいっぽい」

「まあ、お金でも貯めて買うしかあるまい」

「成程。と言うことで、この空間拡張のバッグ下さい」

 いきなり買い物を始めるポイポイさん。

「買えるのか?」

「ストームさんから貰った前金と、蓄えていたお金があるっぽいよ」

 と、ほぼ全財産を叩いて空間拡張のバッグを購入した。

(なんか、マチュアあたりなら作れそうだなぁ)

 と苦笑しつつ、ストームとポイポイは店を後にした。

 そしてそろそろ時間だろうと、元老院へと向かって行った。



 ○ ○ ○ ○ ○



「太陽の門を超えて来た者は久しぶりじゃないか?」

 元老院で受付を終えて、二人はそのまま立派な応接間へと案内された。

「そうだな。以前ここを訪れたものは、確か10年以上も昔だ。わざわざこんな辺鄙な場所へようこそ」

「まてまて。まずは挨拶からだろう? 挨拶は大事だと教わったぞ」

 とドワーフの老人と恐らくは古代種であろう男性、そして獅子の頭を持つ獣人が話しかけて来た。

「初めまして、ストーム・フォンゼーンと申します。こちらはポイポイさんです」

 と二人は丁寧に挨拶をする。

「これはこれは丁寧に。この元老院の議会長を務めてあるグレンと言う。見ての通りドワーフじゃ」

「私はワンチェイン。水晶の民です。議会長の補佐を務めています」

「俺はライナス。ライナス・ウゴだ。ウゴの森出身の獣人だ。此処では騎士団長を務めている。ポイポイはターキーと何度か一緒に来た事があるので既知の仲だ」

 とにこやかに話しかける三名。

「さて、本日はどのようなご用件で?」

「実は、まず、これから話すことは全て此処だけの事にして欲しい。迂闊に外に話すと、予想外のパニックが起こる事もあるから」

 とストームが告げると、目の前の三人はお互いを見て、それから頷く。

「宜しいかと」

「まず、今から一年後、ティルナノーグの封印が解除される。それに伴い、魔族侵攻が始まる可能性があります」

 突然の言葉に、三人は驚きの表情を見せる。

 そして、ストームは先ほどカラミテの元で話したことを、ここでもゆっくりと話した。

 自分がマチュアから聞いた話と、カラミテから聞いた話を。

「そんな馬鹿な……いや、時間はあっている、そろそろなのか」

「アレキサンドラの術式が綻び始めたか。再度彼の地に赴き、魔封じを行う必要があるのか?」

 グレンとワンチェインが相談を始める。

「そこでなんだが、ティルナノーグに住んでいた者達としては、どうしたいのか教えて欲しい。アレキサンドラの術式で、もう一度大陸そのものを封印するのか、それとも封印の解除されたあの土地を取り返すのか?」

 カラミテで様々な話を聞き、一方的に大陸の再封印を唱える事が出来ないストーム。

 その為に、このような問いかけをしてみせた。

「ティルナノーグは我らが大地、可能ならばもう一度取り返したいのです。まだあの地には、逃げ遅れて眠りについたままの同胞が大勢います……」

 ワンチェインが拳を握って力説する。

 それにはグレンもライナスも静かに頷いた。

「現在、ラグナ・マリア帝国では、封印が解放された後に襲来するであろう魔族との戦いの準備を行なっています。もし貴方達が同意するのであれば、今一度手を取り合って戦って貰いたいのだが……」

 少しの間、沈黙が訪れる。

「ストーム殿。お言葉は大変嬉しい。じゃが、我々は外の人間を信用できない。外の人間が水晶の民に対して行なった仕打ち、私利私欲によって滅ぼされたエル・カネック。今になって自分達の世界が危険だから手を貸せとは、余りにも勝手な言葉では?」

 グレンの言葉には一理ある。

 この世界の住人ではないストームにも、その怒りはごもっともであった。

「ですか‥‥・‥‥‥」

 言葉を失ったストーム。

 だが、グレンはホッとため息をついて、再び話を始める。

「じゃがストーム殿、貴方はいい人だ。でなければ危険を冒してまで、太陽の門を超えてここには来ない。貴方の言葉は、元老院でも皆に問いかけてみよう」

 グレンがそう告げると、残りの二人も静かに頷いた。

「そ、そうか。それは良かった」

 とストームもホッと一安心。

「うむ。ティルナノーグがアレキサンドラによって封印される際に、元凶であるファウストの仮宿であった肉体も封印されておる。今頃は、封印の中でその命も消滅している事だろう。あとはティルナノーグに残っている魔族をどうにかすれば良いだけの話じゃ」

 それは一安心と、ストームは胸を撫で下ろす。

「水晶の封印と言えば、先日だが、俺が採掘場で偶然発見された水晶の民がいるんだが。古い話と照らし合わせると、どうやらその中に眠っている少女が、どうやら王族の生き残りらしいんだ」

 とストームが告げると、グレンは首を傾げる。

「はて? あの魔族侵攻で逃げられた王族といえば、まだ幼かったサイノス王子だけな筈じゃが? 王子の封印は自然に溶けて、今はアレキサンドラの行なった秘術を安全に解除する術を探して、冒険者として旅に出ているのじゃが」

 グレンがそう告げると、ワンチェインの顔色がサーッと青くなっていく。

「ス、ストーム殿、その少女の入っている水晶、外から術式が施されていませんでしたか?」

「ああ、中の者が分からなくするやつと、水晶に危害を加えられないようにするやつ、そして中の少女から命と記憶を奪うやつ。後確定ではないけれど、水晶が解除されるとティルナノーグの封印が解ける奴ですね」


――ガタッ

 とワンチェインが立ち上がる。

「それは、その中に封印されているのは恐らくはファウストです!!」

 その叫びに、その場に居た全員が驚く!!

「な、何だと?」

「そうか、騎士団に伝えられている、あの時の封印が‥‥それは不味い!!」

 グレンとライナスがそう呟く。

「ちょっと待ってくれ、一体どういう事なんだ?」

 状況を整理するために、ストームが三人に問い掛ける。

「ティルナノーグでの魔族侵攻の話です。当時、アレキサンドラと当時のオアシス近衛騎士団によってファウストの肉体は滅びました。しかし、ファウストは予め施していた転生の秘儀を経て新しい肉体を持つと、アレキサンドラの封印から逃れようとしていました」

 静かに告げるワンチェイン。

「狡猾なファウストは封印の水晶柱(クリア・コフィン)によって自身の肉体を凍結し、そのまま転移して逃げようとしていたのです。運良くドワーフの呪術士がそれを発見した時は、既にアレキサンドラの封印の魔術とファウストの転移魔術が発動していました。やむを得ず、彼らは外から『永続消耗の術式』を施したのです。いずれは、ファウストも力尽き、その命は消滅するであろうと‥‥」

 ガタッとストームは立ち上がる。

「もしですが、水晶の中でファウストが目覚めたら!!」

「恐らくは、ティルナノーグの封印の一部、もしくは全てが解除される可能性が‥‥」

 とワンチェインが告げると、ストームは急ぎバッグから『銀の旗』を取り出し、この場に転移の祭壇を作り出す。

「最悪だ。ティルナノーグが解放されるかも知れない‥‥」

 と告げて、ストームはサムソンへと転移していった。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 2シリーズ絶賛発売中 ▼▼▼  
表紙絵 表紙絵
  ▲▲▲ 2シリーズ絶賛発売中 ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ