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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第14部・古きを越えて新しき世界へ

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剣聖の日常・その11・GOGO WEST~東のさらに東へ

 ストームがハルモニアから戻って来て数日後。


 ストームは六王会議の場に出席する事になっていた。

 いつものように転移門ゲートを越えて王都ラグナの王城に出ると、真っ直ぐ王城最上階にある六王の間に姿を現す。

 そこには既に六王が集まっており、後はストームとマチュア、そしてレックス先帝の参加を待つばかりであったらしいが。


「よっ。マチュアは留守なので俺があいつの分も話聞いておくわ」


 軽く右手を上げつつストームが窓辺の席に着く。

窓辺では、先に来ていたレックスがストームに軽く手をあげると、ストームもやや複雑な顔で手を上げて返事を返した。

 それでマチュアを除く全員が集まったと判断したのか、ケルビム皇帝がすっと手をあげて会議の開催を告げる。

 そこからは各国からの様々な報告があったものの、努めて帝国内は平和なものである。


「マチュア殿がいないので、異世界についての報告はまた後日ということになるか。相変わらず身軽にあちこち動き回っているようだが、ストーム殿は何か聞いていないか?」


 ライオネルが窓辺で暇そうにしているストームに問いかけるが、ストームは手をひらひらと振るだけ。特に異論はないということで。


「マチュアなら全く別の異世界で仕事しているわ。来年春までには戻ってくると聞いているから、異世界関係で聞きたい事あったらカナンのツヴァイに聞いてみるといいさ」

「ふむ、ツヴァイはマチュア殿の影武者だったな。なら、そうさせてもらうか。では諸王よ、次の議題に移ろう……」 


 ここからは近隣諸国の問題など。

 全王が襟を正して姿勢を整えると、ライオネルの方を向く。


「いきなりうちかよ。まあ、隣国ソラリス連邦が自慢の魔導船を使って海外貿易を始めたという報告を聞いてな。報告によると、魔導船で二十日ぐらいの場所に大陸があってだな、確か…… ヴァンドール大陸といったかな?」


 これにはケルビムまで驚きの顔を見せた。

 これまでは、このウィル大陸と北方のグラシェード大陸、東方の和国まではその存在は知られていたし、和国など一部の領地に貿易船がやってきている。

 グラシェード大陸は一時戦争手前まで行ったものの、今はまた双方ともに不可侵の姿勢を保っている状態である。

 これ以外には西方の中観大陸があるが、これはライオネルの側近である孔明の故郷であるとか、南方共和国などが貿易を行っているという話程度しか届いていない。

 そこにまた新たな大陸、ヴァンドール大陸が発見された事は驚愕の事実である。


「なら、急ぎラグナ・マリアも魔導船の建造を行なって、何処よりも早く貿易協定を行った方が良いのではないでしょうか?」

「そうだなぁ‥‥ソラリスとは不可侵条約があるのだが、あそこの現王もそろそろ年、そうなると次代王がいきなり不可侵を取りやめないとも限らない。ヴァンドール大陸の資源がどれ程のものかもわからないのだがな」

「アルスコットやライオネルの意見には賛成ですわ。どれほどのものがあるのか、それらを運び出す手段など、考える必要がありますね」


 ブリュンヒルデも賛成。けれどミストとパルテノは反対意見を出す。


「確かに国外、特に誰の手もついていない土地があるというのは魅力的ですが、既にソラリスが貿易を始めている可能性も否定出来ません。それならは、まずはソラリスを警戒するべきではないでしょうか?」

「ミストさんのおっしゃる通り。我が国には神王が存在しますが、だからといって研鑽を止めるべきではありません」


 この二人の反対に、シルヴィーは腕を組んで考えてしまう。

 シルヴィーはマチュアがヴァンドール大陸に向かった時の報告は受けているし、その結末も全て報告書として受け取っている。

 なので今更ヴァンドールかよという気持ちもなくはないし、何よりマチュアから手出しするなとも言われているので。


「シルヴィーの意見は?」

「陛下の指名とあるなら。妾はヴァンドール帝国との交易については反対ですぢゃ」

「帝国?大陸ではないのか?あの大陸には帝国が存在するというのか?」


 ライオネルがシルヴィーに問いかけるが、シルヴィーはウムと頷く。


「あの大陸は西方に広大な土地を持つヴァンドール帝国が、北方にはアルマロス公国という小国があります。それ以外にも南方と東方には大小さまざまな国家群があるらしくてですね。それでマチュアが単独で調査に向かったとき、ヴァンドール帝国皇帝と公国女王と謁見したとは聞いておりますし……あ、冒険者としてじゃ、そこは問題ないのじゃが……」


 その時点で諸王は頭を抱えそうになる。


「何だ、もうマチュア殿が向かったのか。それで、なぜ反対なのだ?」

「あの大陸には奴隷制度があります。しっかりと法によって定められたものではありますが、わがウィル大陸からも大勢の人が攫われて、奴隷として売られていたと聞いております」

「なら逆に好都合ではないか、すぐにでも魔導船の開発を開始して奴隷解放を宣言し、合法的に……」

「あ、ライオネル殿、奴隷の件についてはマチュアがもう相手先皇帝に向かってウィル大陸からは拐うなと釘を刺したらしいぞ、もしも違反したらヴァンドール帝国が焦土になるとな……それに、魔導船を開発出来るのはマチュアしかおらぬが?」


 このやり取りにはストームも苦笑する。

 一通り聞かされているし、さらにマチュア保有の魔導戦艦ナーヴィス・ロンガはアルマロス公国から発掘されたものである。

 なので、この流れは一度止める必要があるとストームは判断して、軽く手をあげて一言。


「ほい、神王から。この件はマチュア戻るまで差し止めな。と言うことで、次の案件に進めてくれ」

「という事だ。ソラリス連邦の件はこれで一度留め置く。他の国については?」

「でしたら、私のパルテノ領南方から、大勢の亜人たちが庇護を求めてやって来ています。今は近くの村でどうにか生活するようにと物資の援助も行っていますが、報告によれば南方ハルモニアがヴラウヴァルト森林王国に向かって出兵したという噂もありましてですね」


 ここでハルモニアの侵略行為が話題に出るが、ストームがスッと手を挙げて。


「それについては剣聖として報告させてもらおう。先日、ハルモニア女王が何者かによって殺害されたらしくてな、今は暫定王がハルモニアを統治している筈だ。それでえーっと、ハルモニアの大神官に神託が告げられたらしくてな、何でも亜人種討伐は本位にあらず、全ての民には手を取り合って生きて行けとかいうイェリネックの神託があったんだとさ」


 まるで見てきたかのように告げるストーム。

 その嬉々とした話し方に、一同心の中でため息をついてしまう。


「つまり、ハルモニアは統治者が変わったという事ですか? もしそれが事実なら、周辺国家はハルモニアに今までの損失を請求する事になりますが」

「まあ、ぶっちゃけると俺が介入した。そんで上手く丸めて来た。これでいいな?」

「‥‥はぁ。ストーム殿、正体はばれていないだろうな?」

「今の所は大丈夫だ。そもそもあの国で起こっていた事を説明するとだな‥‥」


 そのままかいつまんで説明すると、スキルの売買というところで諸王は食いついてしまった。


「そ、そんなことがあったのか。それでストーム殿、その秘術は回収してきたのか?」

「ライオネル落ちつけ。そんな危険なスキルは俺が回収してきた。ついでに悪いが、スキルが使えるのは亜神以上の存在だけだ、そして俺は使う気はあまりない」

「あまりなのですね?つまり条件が合えば使うとかそういう類なのですか? 本来スキルとは神から与えられるものであり、それを‥‥って、ストームさんが使うのは問題ないのですね?」


途中まで告げてパルテノが理解する。

 

「まあ、どのようなスキルが作られるのかは知らないし、それを知ってしまうと色々と厄介な事に巻き込まれそうなので敢えて聞くまい」

「そ。皇帝のおっしゃる通りです。そんでこれが今作った『健康』っていうスキルだけど、皇帝にあげるわ」


 両手を合わせて『健康』というスキルを作り出すストーム。そしてそれを手に皇帝の下に近寄っていくと、すぐさまケルビムの魂に定着させた。


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ

 

カリス・マレス世界の人間の大半は、自身のステータスやスキルを知るためには魂の護符(プレートを確認する必要がある。

ケルビムもすぐさま魂の護符(プレートを取り出して裏を確認すると、確かに保有スキルの欄に健康の二文字が記されている。


「おお、確かに健康という知らないスキルが増えているが、これはつまり、あれか?」

「あれが何を示すのかは知らないが、病気や毒などに対しての免疫力が強化された筈だ。と言う事で、このスキルのとんでもない能力を理解してもらえたと思うが」


ストームの言葉に、全員が頷く。

こんなとんでもスキルが公表されたら、どれだけのものが大金叩いてストームの元にスキルを乞うのか想像出来てしまう。

だが、シルヴィーだけは冷静に、顎に指を当てたまま思案すると。


「なあストームよ、これはマチュアの作り出す『知識のオーブ』や『記憶のオーブ』と同じように見えるのぢゃが?」

「ああ、シルヴィー正解だ。今作ったのはスキルオーブというものになるのか?ともかく理論は同じなんだが、ゼロから新しいスキルを作り出すという点では違う。マチュアや俺の使う様々なオーブは自身の記憶や体験などから構成するのは理解出来るよな?」


コクコクと頷くシルヴィー。

そして改めて、スキルオーブを作り出すと言う事が危険であるのか理解出来た。


「ね、ねえストーム、私は最近、お肌の荒れがひどいのよ。そういうことに有効なスキルってあるかしら?」

「美容かな?ちょっと待ってろ」


美容のスキルオーブを作り出すと、ストームはミストの魂にそれを定着させる。

すると、ミストの肌が艶を取り戻し瑞々しく変化していく。


「わ、わたしも、わたしもお願いします」

「ストーム殿、出来ればわたしにもお願いしたい。日々訓練の毎日で、あまりそういう事に気を使っていなかったのでな」


パルテノとブリュンヒルデも手をあげて乞うので、すぐさまストームは二人分を作って定着させる。


「シルヴィーは良いのか?」

「日々の鍛錬の賜物ぢゃ」

「そっか。欲しくなったらなんぼでも作ってやるからな」

「さ、さて、この話はここらで終わらせるとしよう。諸王も、ストームにあまりスキルをねだらないようにな」


収拾つかないと判断したケルビムが話を止める。

そしてまた、新しい議題についての話し合いが始まった。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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