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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第14部・古きを越えて新しき世界へ

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剣聖の日常。その9・スキルと封印と

 神界・エーリュシオン。


 階上神殿と呼ばれている八大神と創造神の神殿にストームはやって来ると、すぐさま『神々の書庫(セラエノ)』の管理人である亜神・ラバン・シュルズベリィの下に向かった。


「これはこれはストーム様、今日は一体どのような御用件でしょうか?」

「他者のスキルを封じる、もしくは奪い去るスキルについて。可能なら習得したいのだが」


 フランシスカのやらかした後始末をするのに必要なスキルについて、可能ならばそれを手に入れる為にここまでやって来たストーム。そしてストームの意図を汲み取ったのか、すぐさまラバンは一冊の書物を手にストームの下にやって来た。


「この書物はセフィロト世界の神々が使うスキルが納められている『神威を必要とするスキルの書』です。この128ページには、スキルを自在に作り出す『スキルメーカー』が、223ページにはスキルを自由に取り外しできる『メイキング』について記されています」

「お、それそれ。それはどうやって身に着けるんだ?」

「必要とするスキルのページに手をかざして神威を注ぐだけです。簡易習得でしたら一か月間使用可能となりますが消費神威は少なく、完全習得は必要神威も高くなります。それと、完全習得は制限がありまして‥‥と、ストーム様については制限の範囲外ですな」


 制限とはいかに?


「へぇ。俺って破壊神なので制限なし?」

「そういうことでございます。では、私は書庫の整理がございますので、使い終わった本は近くのテーブルの上に置いておいていただけると助かります」


 軽く頭を下げてラバンが立ち去る。

 そしてストームは椅子に座ってスキルの書のページをめくると、ゆっくりと神威を注ぎ始めた。


――フワッ

 すると、神威を浴びた文字配列が中空に浮かび上がり、丸い立体魔法陣を形成する。

 大きさはゴルフボール大、ストームやマチュアがよく使っているスフィアよりも一回り小さい。


「あー、成程なぁ。後はこれを取り込むだけか」


 中空に浮いている立体魔法陣を手に取ると、すぐさま神威を注いで体内に取り込む。

 すると、ストームの体内を文字配列が駆け抜けて浸透していく。


「これでオッケーと。あと一つだな」


 同じようにもう一つのページをめくってスキルを魔法陣化して取り込むと、ストームは本を閉じてその場に置く。そして書庫から出ていくと、今一度サムソン王城へと戻って行った。


‥‥‥

‥‥


 時間にして1時間程度。

 ストームはサムソン王城執務室に戻って来ると、すぐさまウインドウを展開した。今の姿のままハルモニアに戻ると、ジンブに掛けられた手配書のせいで騎士団に捕らわれる可能性がある。

 ならばとマチュアのようにアバターを追加で作り、それを使ってハルモニアに潜入すればよいと考えたのである。


「さて、種族から切り替えるか‥‥いや、ハルモニアに向かうのなら種族は人間のままがいいか。外見はそうだなぁ‥‥マッチョな鍛冶師で、名前はフランク。これでいいか‥‥」


 すぐさまアバターを切り替えると、同時にフランク用の魂の護符(ソウルプレート)を作り出す。

 続いて商人ギルドカードの登録のためにいったんストームに戻ってサイドチェスト鍛冶工房に向かうと、そこでフランクにアバターを切り替える。

 後はそのまま商人ギルドに向かい、『なじみ亭商会』の役員として登録。更に鍛冶ギルドにはサイドチェスト鍛冶工房の職人としても登録、当然ストームの書いた推薦状も忘れない。


 そんなこんなで3時間程で手続きを終えると、そのまま物陰から精霊の旅路(エレメンタルステップ)でハルモニア王都へと転移した。



 〇 〇 〇 〇 〇



 ハルモニア王都

 

 女王フランシスカの死去により、国内は騒乱状態であった。

 唯一の指導者である女王の突然の死、しかも冒険者による殺害という事実は、全ての国民に悲しみの陰を落としている。

 だが、宰相であるジャーナル・マリアッジがすぐさま騎士団や城内執務官に指示を飛ばし、仮ではあるがジャーナルが暫定国王を務める事になった。

 これについては聖シャザニア教会からも暫定国王は聖女が執り行うべきだとの声が上がったものの、女王の死去後に聖女が休まれている部屋を訪ねてみたが既にシャザニアの姿はどこにもなく、教会側としてもやむなくジャーナルの国王就任を認める事となった。


………

……


「それで、急ぎ騎士団も引き返してきたのかよ。忙しいったらありゃしないなぁ」


 ハルモニア王城前広場。

 ストームはそこでのんびりと食事を取っていた。

王城へと続く街道では、次々と神聖騎士や神官たちがこぞって王城へと向かう姿が見て取れる。

でもストームは全て無視していると、一人の騎士の影が一瞬だけ伸びてストームの影と繋がり、そして千切れた。


『拙者帰還でござるが、やる事がなくて退屈であったでござるよ』

(まあ、十四郎の仕事はこれからだ、それまで身体を休めてくれればいい、ご苦労だったな)

『zzzzzz』

「もう寝たのかよ!!さてと、スキル屋ってのはあの店なんだろうが、まだ開店時間じゃなかったんだよなぁ‥‥」


 聖シャザニア教会と併設しているスキルショップ。その扉が閉じてあったのでストームは開店までのんびりと時間をつぶしている所であった。 

そして1時間程すると店主らしき男が店の扉を開いたので、ストームも重い腰を上げて店に向かって歩き始める。

 だが、ストームと同じように開店を待っていた客たちがドドドッと押し寄せると、一瞬で店内が混雑してしまった。


「店長、長剣術のスキルを買いに来たぞ、この前手付は払っていたから残りを持って来たぜ!!」

「俺は魔術知識を頼む。レベルは1で構わないから!!」

「俺の馬術を買い取ってくれないか、確か高額買取してくれるはずだよな」

「俺の短剣術とこいつの弓術を取り換えてほしい、手数料は払うから!!」


 次々とカウンターに詰め寄っていく客の群れ。

 そして注文を受けた店長は奥の壁から書物を取り出すと、そこに魔力を注いで立体魔法陣を作り出す。それはあたかも、つい数時間前にストームが神々の書庫(セラエノ)でスキルを学んだ方法と全く同じ、違うのは注ぐのが神威ではなく魔力であったという事だけ。


「へぇ。メイキングのスキルを神威無しで使えるように改良してあるのか。それよりもあの書物が曲者のようだな、スキルの効果を書物が補っている感じだな・・・・・・と、書物が魔力を神威変換しているのかよ」


 頭の中でスキルの効果について検索すると、スキルを写し取る書物は特別な錬金術によって作り出したものでなくてはダメらしく、その材料もとてつもなく高価である。

 

(まあ、書物についても回収確定なのは良いとして。見た感じ、スキルを売買できるのは店長だけか‥‥)


 店に貼ってあるスキルの値段表を眺めつつ観察を続けるストーム。

 そしてスキルの売買をしているのは司祭でもある店長だけで、新しく作る事は出来ないらしい。

 新規スキルの販売については、スキルの買い取り価格を上げて補充している模様。本来ならば必要に応じてフランシスカに作り出して貰っていたようだが、そのフランシスカが死去した現在は書物に残っているスキルか買い取ったスキルを売ることしかできないらしい。


(情報収集はこの程度でいいか。狙うは閉店直前の客が少ない時だな)


 可能ならば書物もすべて押さえてしまえばいい。

 なのでストームは一旦店の外に出ると、再び広場に戻って時間をつぶす事にした。


‥‥‥

‥‥


 夕方。

 6時の鐘の音が鳴り響く。

 深夜までやっている酒場や繁華街以外の店舗は、ここでいったん閉店となる。

 ストームは閉店ギリギリに店内に入っていくと、客がいなくなるのをのんびりと待っていた。


「お客様で最後ですよ、何をお求めですか?」

「そうだなぁ……スキルメーカーとメイキングの二つが欲しいんだが、在庫はあるか?」


そう問いかけた瞬間、店長の顔に警戒の色が浮かび上がったので。


神言勅命フェイト。店長、済まないがスキルの書を全て燃やしてくれないか?」

「……仰せのままに……」


警戒したのは一瞬。

そしてストームの神言勅命フェイトにより、店長はストームの命令を素直に遂行する。

背後の本棚に並んでいた書物を全て、そしてカウンターの下に置いてあったらしい、分厚く豪華な装飾の施された書物も取り出すと、店の外に持って行こうとするので。


「まて、その分厚い本は俺が貰う。後は店の外で焼き捨てろ、これで全てだな?」

「……はい。これで全てです……」

「あんた以外にスキルメーカーとメイキングが使える奴は?」

「……ハルモニア大神官のミポリン・ナポリン枢機卿がどちらも使えます……」

「分かった。それじゃあ頼むな」


そう告げて、ストームは店長の額に指を当てる。


能力強奪アビリティプランダー発動!!」


それはフランシスカの能力。

破壊神由来のスキルなら、ストームに使えないという理屈は存在しないという事で、神々の書庫セラエノでついでに修得してきた模様。

すぐさま店長の魂からスキルメーカーとメイキング二つのスキルを奪い取ると、それを自身の神核に定着させる。

そして店長はフラフラと店の外に出ると、抱えていた書物全てを路上に投げ捨てて火を放った!!


轟々と燃え盛る炎にストームが炎の精霊の加護をそっと与えると、一瞬で書物は灰になってしまう。

そして火事の報告を受けた騎士達がやって来ると、店長は漸く自身が行ったとんでもない誤ちに今更ながらに気が付くと、その場に膝をついて絶叫していた。



◯ ◯ ◯ ◯ ◯



同日夜。

ストームは近くの宿に一泊すると、十四郎に大神官ミポリンの居場所を調べるように指示。

すぐさま十四郎が窓から飛び出すと、30分後にはニマニマと笑いながら戻ってきた。


「うわぁ、お前のその笑顔にはドン引きだわ、何があった?」

「大神官ミポリンは、今、自身の屋敷で大勢の信者の娘達とくんずほぐれつ交尾の最中でござったよ、眼福眼福でござったなぁ」


ジュルッと涎を拭く十四郎。


「はぁ、どすけべ大神官か。信者を手ごめにするような男は竿を根本からぶった切ってやるかな」

「い、いや、ストーム殿、ミポリンは女性でござるが?」

「は?」


………

……


一瞬の沈黙。

そしてストームはブンブンと頭を左右に振る。


「つまり、ミポリンはマチュア殿と同じ性癖でござるよ。魔術で意思を操ってハーレム状態でござったが」

「あ、そ、そっちか……いやぁ、どうすっかなぁ。面倒だから、スキルメーカーとメイキングだけ回収して、後は放置するか。この国の事はこの国でなんとかしてもらうのが一番だからな」

「そうでござるな。では、いつ決行するでござ……ストーム殿?なんで鎧を身に着けるでござる?」


音がしないようにドラゴンレザーで作ったレザーアーマー一式を身に着けると、ストームは軽く屈伸する。


「いつって、今でしょ?どうせやる事やったら寝るだけなんだから、そこで仕掛ければいい」

「仕掛けるでござるか?拙者は吹矢も三味線も簪も持ち合わせていないでござるよ?ストーム殿は按摩が使えるから針だけで十分でござるが」

「そっちの仕掛け違うわ。ファーストジョブを先導者ヴァンガードに切り替えて……セカンドジョブは侍のままでいいか」


十四郎のボケに鋭くツッコミを入れると、ストームは宵闇の中にすっと消えて行った。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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