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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第14部・古きを越えて新しき世界へ

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剣聖の日常・その8・種明かしと断罪と

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

――ブルルルルッ

 思わず全身が身震いしてしまう。

 フランシスカの目の前に立っている亜神ジンブ、その体からあふれている神威は、シャザニアの優に数十倍はあろう。


 もしも、この神威を自分のものに出来るとしたら

 シャザニアよりも鋭い神威が手に入るのなら

 自身の老化が収まるどころか、フランシスカが亜神になる事も可能ではないのか?


 ならばフランシスカのやるべき事は一つ。

 能力強奪(アビリティプランダー)で手に入れた、スキル創造により作り出した亜人種絶対隷属スキルで、ジンブに自害させて、神核を手に入れるだけ。


「フランシスカ・ラナ・レディオンが真名にて命ずる、冒険者ジンブよ、おのが体内の神核を抉り出してわれに差し出せ!!」


 嬉しそうに叫ぶフランシスカだが、ストームは耳をほじりつつ周囲を見渡す。


「監視系魔道具も、それらしい感知魔法も設置していないとは。どれだけ守りに自信がある事やら」


 ニイッと笑うストームに、フランシスカは一瞬驚くが。


「そ、そうか、亜神の持つ抵抗力強化だな? ではジンブよ、全ての神威スキルの使用を禁ずる!! そして改めて自身の神核を抉り出せ!!」

「断る!! 自分で抉れって、俺は意味なく自殺する趣味はないぞ」


 手にした聖印からは確かに隷属スキルは発動している。そしてフランシスカの『言霊』で神威スキルも使えない筈。

 にもかかわらず、ジンブはけろっとした表情でフランシスカの前に立っている。


「お、おのれ、そこまで抵抗力が高いというのなら仕方あるまい、近衛騎士たちよ、このジンブの首を刎ねろ」


――ザザザザザッ

 フランシスカの言葉で正面扉が開き、勢いよく騎士達が飛び込んで来る。

 そしてすぐさま抜刀すると、ジンブに向かってじりじりと間合いを詰めて行く。


「はぁ、亜神には普通の武器が通用しないの知らないのか?」

「知っておる。だから、近衛騎士たちはミスリル製の武器を手にしているのだ。それもただの武器ではない、サムソンの名工・大月の打ち出したSランク武器だ!!」

「げっ!!」


 フランシスカの言葉にジンブは驚く。が、その瞬間に騎士たちの姿がスッと消える。


――ガギガギガギガギガギガギガギガギッ

 まるで幻影のように、騎士たちは瞬く間に間合いを詰めては、ジンブに向かってスマッシュやダブルアタックといったコンバットオプションを叩き込んでいく。

 だが、ジンブはその場から一歩も動かず、全ての攻撃を体で受け止めていく。


(5‥‥8‥‥25‥‥12‥‥18‥‥何だかなぁ、表面ダメージだけで内部浸透する威力もないのか。全て体表面の神威装甲で弾いているじゃねーか‥‥大月製の名前が泣くぞ)


 亜神にはミスリル以上の武器でしかダメージは入らない。

 そしてストームの肉体は破壊神、神威こそ亜神モードにまで落としているが、その肉体の抵抗力や神威装甲はこのカリス・マレス世界では傷つけられる者は数少ない。

 ストームの知る限りでも、彼の持つ『神滅の聖槍』と『不動行光』『聖なる光剣(リプロテイン)』がそれにあたり、それ以外でも殆ど見かける事はない。


 やがて騎士達は疲れて来たのか、間合いを外して肩で息を切らせている。

 

「へ、陛下!! この者は一体何者ですか!! 我らの攻撃が一切効かないとは!!」

「ただの亜神よ!! それよりももっと気合を入れなさい!!彼のものの首を取ったものは、神をも殺す騎士、ゴッドスレイヤーの称号を与えるわよ!!」


――ゴクッ

 神殺しの称号。

 その甘いささやきに、騎士たちは持てる力を振り絞る。

 武器に心力を注ぎオーラをまとわせると、更に今までよりも鋭く強い攻撃を仕掛けて来る。

 仕掛けて来た。


「あー、さっきまでは手加減で、これ以上俺に攻撃してくるのなら、こっちも反撃するがいいんだな?」


 空間収納チェストに手を突っ込んで和刀を二振り引き抜くと、それを左右に構えて騎士たちを睨みつける。

 それでも騎士たちは一歩も引く事をしないのは大した忠誠心だと褒めておこう。

 すかさず騎士たちに向かって峰撃ちで攻撃を叩き込んでいくが、ストームの力では一撃で鎧を粉砕し骨を砕いてしまう。

 ストームの攻撃を受けた騎士達は、一体何が起こったのかを理解出来ずに意識が刈り取られていく。

 そしてほんの僅か、ものの数分で騎士たちは全滅しストームは一振りの和刀を空間収納チェストに収めた。


「な、何ですかその強さは、それが亜神だというのですか? 亜神とは人間を超越した存在ではありますが‥‥シャザニアはそこまで強くはなかったですよ」

「あ、俺って戦闘型亜神なものでしてね。ということでフランシスカ・ラナ・レティオン。あんたに神からの判決を言い渡す」

「判決ですって?」


 フランシスカはその場から逃げたい一心で、ゆっくりと後ろに下がっていく。

 後数歩下がれば、玉座の後ろの隠し扉まで走り抜ける事が出来る。

 なら、この場は何とか切り抜けなくてはならないと、ジンブの言葉に問い返した。


「ああ、この世界の八大神じゃねーぞ、破壊神からの判決だ。おのが欲望の為に罪なき亜人を殺害し、あまつさえ異世界の亜神にまで手を掛けた事は万死に値するってな‥‥という事で、死刑だ。あんたは運が悪かったな‥‥ここにいるのがマッチュじゃなくて俺だったという事が、あんたにとっての最悪の結末だよ」


――チン

 残った一振りの和刀を鞘に納める。

 そしてストームはゆっくりと振り向くと、扉に向かって歩き出した。


「な、何よ、私に判決を下すのではないのかしら?」

「あ、悪いけど、あんたもう死んでいるからな‥‥」

「へ?」


 そう告げられて、フランシスカは思わず足元を見る。

 そこには首と胴体が真っ二つにされている自身の死体が転がっている。


「え、あ、あれ‥‥私の死体? でも私はここに‥‥」

「肉体と魂が分断されたんだよ。ここから先は、俺の管轄じゃないんでね」


――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ

 突然フランシスカの足元に魔方陣が広がる。

 そして真っ黒な影の手が無数に出現すると、フランシスカの全身を覆い、そしてゆっくりと魔方陣の中に引きずり込んでいく‥‥。


「いやよ、どうして私が殺されなくちゃならないのよ!! 私はこの世界で神になるのよ、人間だけの世界を作って、そこで私は女王として君臨するのよ‥‥」

「という夢を見た、それで全てはおしまいだよ。さようなら『川原恵』さん、もう一度一からやり直してくれや」


――ガシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 フランシスカの魂は魔方陣の中に引きずり込まれ、そしてゆっくりと冥界への扉が閉じていく。

 その場には、フランシスカの死体と意識を失った騎士達だけが転がっていた。


「まったく、後味が悪いんだよなぁ‥‥後はスキル屋とかいう所の処分なんだが‥‥あー、どうやるかなぁ。手に入れたスキルなんてどうやって外せばいいんだ?」


 ぼりぼりと頭を掻きつつ、ストームは謁見室から外に出る。

 そしてゆっくりと歩きながら、精霊の旅路(エレメンタルステップ)でその場からスッと姿を消していった。



 〇 〇 〇 〇 〇



 ハルモニア女王、フランシスカ・ラナ・レディオンが凶刃に倒れた。

 この噂はハルモニア中に広がっていき、その容疑者でもあるジンブという冒険者が指名手配されるという事態にまでなってしまっていた。

 すぐさま冒険者ギルドに手配書が張り出されるが、ハルモニアの冒険者ギルドマスターは心の中で苦笑するしかなかった。


(冒険者ジンブというと、なじみ亭商会のジンブさんで間違いありませんか。ということはフォンゼーン王が自らフランシスカ先王の狂気を止めてくれたという事ですからなぁ)


 このギルドマスターの考えは、同じく商人ギルドのギルドマスターにも感じ取れていた。

 なので積極的に動く事はなく、いずれは風化して消えていくだろうと両ギルドマスターは考えていた。

 そして当人であるストームはというと。



――サムソン王城・ストームの執務室

「さて、次の一手か。キャスバル、魯粛、人の持つスキルを使えなくする方法を知っているか?」


 ストームMk2改め『キングストーム』は公務で、謁見の間で貴族たちの陳情を聞いている。

 なので執務室にはキャスバルと魯粛の二人しかいない。

 ならばとストームはぶっちゃけたのであるが、さすがのキャスバルと魯粛でもストームに有効な答えを持ってはいない。


「スキルをですか。まあ、私はどちらかというと政務が専門ですので、魯粛さんのほうが詳しいのではないですか?」

「スキルを授けるのなら、ほら、ストーム殿やマチュア殿がよく使っている『知識のオーブ』というのがありますよね?あれの要領で『スキルオーブ』というのを作って相手に定着させるという方法はありますが、その逆となりますと‥‥」

「そうか。そうだよなぁ‥‥この手の奴はマチュアが詳しいんだが‥‥と、ちょっと待てよ? ミア、すまないがサムソン王城まで来てくれるか?」


 耳元のイヤリングでミアに念話を送るストーム。


『はい、ヴィマーナですのですぐに向かいます』


――シュンッ

 まさに刹那。

 ヴィマーナ待機任務のミアが一瞬でストームのいる執務室に転移して来る。

 

「はっはっはっ。さすが賢者の弟子を名乗るだけの事はあるなぁ。単体転移も可能になっていたのかよ」

「はい。赤城さんはまだですけれどね。それでどのような御用でしょうか」


 という事で、ストームはここまでの流れを一通り説明すると、ミアに助言を求めてみた。

 

「うーーん。マチュア様のように深淵の書庫アーカイブが使えたら早いのですが、私の魔力ではまだ不完全でして‥‥少々お待ちください」


 そう告げてから、額に装備している『知識の額冠』に手を添えて、マチュアの記憶から該当するデータがないか探してみる。

 だが、ミアの持つ知識の額冠に収められているのは、セプツェンが残したマチュアの知識、そしてカリス・マレス世界でアップデートされた知識であり、現在の、それもセフィロトにいるマチュアの知識は網羅されていない。

 マチュアがカリス・マレス世界にいたのなら、新しい情報として常にアップデートされているのではあるが、まだあっちの世界知識やスキルについては全くといっていい程情報がないのである。


「あらら、申し訳ありませんが、マチュア様でもこの件は難しいようですね。もともと人の持つスキルというのは生まれつきのものと、知識や訓練で身につけたものの二つ、それと生まれつき所有している固有スキルの合わせて三つしかないのですが‥‥」

「知識だの訓練だののスキルは知識のオーブでどうとでもなるし、魯粛が話していたスキルオーブというのを作り出せばいいだけだ。今回のケースは、それを作り出すスキル持ちがいて、スキルを新しく想像できるという‥‥ちょっと待った」


 そう。

 スキルを作り出すことのできるフランシスカが死んでしまった以上、新しいスキルが作り出されるということはない。

 ならば、スキルを売買している存在を問い詰めて、その者のスキルをどうにかする必要があるだけになる。

 それだけでも仕事は少し楽になるのだが、やはり論点はスキルのやり取り。

 これだけはのさばらしておくわけにはいかない。


「うーむ。ちょっとこの案件だけは、俺一人では無理か、専門家に聞いてくるとするか、ミア、ありがとうな」 

「いえ、あまりお役に立てなくて申し訳ありません。では失礼します」


 ペコリと頭を下げてミアが部屋から出て行く。

 

「そんじゃあ、もう少しだけ離席するので。後は任せたわ」


 それだけを告げてストームは一旦その場を離れると、エーリュシオンへと向かう事にした。



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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