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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第二部 浮遊大陸ティルナノーグ

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幕間その6 夢見る少年鍛治師


 サムソンにある、そこそこ大きい酒場『鋼の煉瓦亭』。

 ここには大勢の常連が訪れている。

 週に一度だけ、この近くに出来た『酒場・馴染み亭』にゴッソリと客を持っていかれるが、馴染み亭の店主もこの店の常連なので、酒場としては見ないフリをしているらしい。

 そして最近は、鍛冶組合の客も多く訪れている。

 更にこの日は、珍しい客が訪れていた。

「ほう、お前さん鍛冶師になるのかい」

「はい。それで、ベテランの皆さんに色々と教えていただきたくて」

 と元気に返事をする少年に、サムソン鍛冶組合の男はウンウンと頷いている。

 先月行われた『技術認定審査』によって、かなりの鍛冶師のランクが下げられているのである。

 何としても来年までには、元のランクを取り戻したいらしく、以前よりも鍛冶場は活気に溢れていた。

 そんな所に、突然、鍛冶師希望の少年がやって来たのである。

 その場に居合わせた鍛冶師としては、自分達が如何に優れた鍛冶師であるかを証明するいい機会なのだろう。すぐさま少年を自分たちの席に招き寄せると、身振り手振りも交えて話を始めた。

「そうか。では、鍛冶師になる為の条件を説明しよう。まず一つ目は、鉱石と金属の目利きだ」

 と呟くと、少年に様々な金属について説明を始めた。


 ○ ○ ○ ○ ○ 


・鉄鉱石・鉄鉱

 鉱山で発掘される鉱石のかなりの部分は、この鉄鉱石である事が多いです。

 普通の火炉にくべる事でも、インゴットとして形成されます。

 大陸共通貨幣に使用されている他、世界中に流通している武具の大半は、この鉱石 で作られています。



・銅鉱石・黄銅鉱おうどうこう)

 全ての鉱石の中で、最も浅い場所で採掘される鉱石です。

 採掘された時はものすごく固い鉱石の中に含まれていますが、火炉にくべて溶かすことて銅のインゴットが作られます。

 防水性と防食性に優れており、食器や多くの建物で屋根葺材として用いられることがあります。

 また、こちらも大陸通貨幣である銅貨に使用されています。



・青銅石・青銅鉱

 本来自然界にはあまり存在しない鉱石です。

 銅鉱石が取れる鉱脈で極稀に発見されるものであり、大抵は銅と錫を混ぜ合わせて作る青銅合金が大半となっています。

 過去には儀式や祭壇などに使われている祭器に使われている事が多かったのですが、現在はそれほどの価値は見込めず、あまり流通していません。

 なお、一部未開の地においては、一般貨幣として扱われているようです。

 


・銀鉱石。自然銀鉱

 採掘地域でも、かなり深い鉱脈に存在する鉱石であり、非常に価値が高いのが特徴です。

 一般的には大陸共通貨幣として流通していますが、『邪を払う』という効果がある為、不死者などに対しての武器として使用されている事も良くあります。

 また装飾品などとしても価値が高く、鏡などにも用いられるため、流通量に対して取引価格が高いのが特徴です。

  


・金鉱石・自然金

 金の鉱脈は非常に稀であり、それを探し出すことは容易ではありません。

 現在流通している金の大半は、各国が所有している『金鉱山』及びその周辺からの採取が殆んどです。

 また柔らかい金属でありますが、合金化することて硬度が増す為、極稀に武具に用いられる事があります。

 一般的には銀と同じく大陸共通貨幣として流通していますが、その美しさや神秘性などから装飾品やインゴットのまま資産として保管されている事もあり、多くの人を魅了する鉱石として知られています。



・白金鉱

 金よりも価値が高く、かなり深い鉱脈などで極稀にしか採掘されません。

 近年は採掘されていた鉱山からの供給が軒並み低下しており、装飾品などで出回っている白金の価値は高まっています。

 大陸流通貨幣として取り扱われている他、様々な装飾品として加工されることが多いのが特徴です。

 またドワーフたちの扱っている『魔法の火炉(パワーフォージ)』の材料として取り扱われている為、その価値は計り知れないものであります。

 現在、これらを採掘できるのは、その鉱脈を的確に調べる事の出来るドワーフ氏族のみでしょう。

 


・ミスリル鉱石

 自然発生することはほとんどなく、銀鉱石や自然銀が長い年月を掛けて高濃度の魔障にさらされていることで生み出されると一般的には伝えられています。

 その為、銀鉱などで発見される事が多いのですが、極稀にミスリルのみが採掘される鉱脈も存在します。

 微弱ながら魔力を有しており、魔法に強く、それでいて魔法伝導率も高いのが特徴です。

 熱を通さず、合金化する事でかなりの硬度を得る事が出来る他、高級な武具の材料として使用されることも多いでしょう。 

 魔法でしか致命傷を与える事ができない魔物に対しては、ミスリルの武器はより効果的であります。

 

 ○ ○ ○ ○ ○ 


「とまあ、この程度が現在サムソンに流通している鉱石と金属だな。大概の鍛冶師は『鍛冶ギルド』で市販されている鉱石や精製済みのインゴットを購入するか、自分で鉱区にいって採掘するのが一般的だ」

「成程、為になります。これは凄いです」

 少年は手にした羊皮紙に、それらの事をメモしている。

「そう言えば、この前に審査の時に幾つか魔法金属という物が出ていたと思いますけれど、それはどのような物なのですか?」

「えーーっと、魔法金属ねぇ。ミスリルもそれに含まれるんだが、他にも色々とあってな‥‥具体的には‥‥」


・オリハルコン

 現在、この金属を一般の採掘師や冒険者が入手するのは不可能と言われています。

 何故ならば、原材料であるクルーラ鉱の鉱脈が発見されていない事と、これを溶かすための炉が存在しない事が原因と言われています。

 オリハルコンは魔法金属の代表であり、硬度と粘度、そして含まれる魔力がとてつもないため、伝説の武具などに用いられている事が多いのです。

 ですが、その加工難易度と鉱石の希少性が、オリハルコンを伝説そのものに格上げしているのです。



火廣金(ヒヒロカネ)/青生生魂アポイタカラ

 はるか東方の地にて精製された、魔法金属です。

 原材料はオリハルコンと同じくクルーラ鉱を用いられています。

 但しオリハルコンとは違い、こちらは精製技術が口伝ではあるが伝えられているため、古いドワーフなどはその精製方法を知っている事があります。

 東の小国である『和の国』に古くから伝えられている『竹内文書』には、この金属の精製方法が記されており、これらを東方より帰ったドワーフたちが、この伝説を実現する事に成功したのです。

 この金属の特徴としては、現存する全ての金属より軽く、如何なる金属よりも硬いと伝えられています。

 腐食にも強く、ミスリルとは真逆に熱伝導率が高いのも特徴です。



・アダマンタイト

アダマンティンとも呼ばれている、自然界で見る事はごく稀な魔法金属です。

 伝承や吟遊詩人の物語に出て来る、『亜神』によってこの世界にもたらされたと伝えられています。

 不思議なことに、アダマンティンは鉄鉱石の中に含有している場合もありますが、その融解温度の高さから、鉄鉱石を鍛造している最中に発生する『不純物』として扱われている事も多いのです。

 しかし精製に成功するならば、如何なる金属よりも固く、それ自体が『魔障』を発していると伝えられています。



・クルーラー

 クルーラ鉱を生成することで出来るのは、オリハルコンやヒヒロガネ、アボイタカラが一般的ですが、古き亜神が伝えた技巧で精製するとクルーラーという金属が精製されます。

 見た目にはミスリルのようですが、光に翳すと僅かに淡赤色に輝くのが特徴です。また精神感応金属とも呼ばれ、魔力や心力の増幅効果があると伝えられています。

 クルーラーの精製技術は『古代種(ローディガント)』のみが知っていると伝えられています。

  


・ダマスカス鋼

 ウーツ鋼と呼ばれている高炭素鋼材を用いて作られる金属です。

 古代魔法王国にしかこの金属を精製する技術は存在せず、弾性と鋼性の二つを持ち合わせています。

 綺麗な縞模様が浮かび上がっているのが特徴で、この金属を使った武器はドラゴンの鱗すら分断すると伝えられています。

 なお、融解温度の異なる複数種類の金属を合成することでも、ダマスカス鋼は作り出すことが出来ます。

 もっとも、融解温度の調整などが普通は難しいので、この技法でダマスカスを作ることが出来るのは極稀にしか存在しません。



・ミスリル鋼

 詳しくはミスリル鉱石を参照して下さい。

 一般的に魔法金属と言えば、このミスリル鋼を指すことが多いです。

 魔法金属の中では最も流通量が多く、冒険者でも入手可能な金属としても知られています。



「なるほど、これはスゴイですね。ここにいるみなさんも、先程の話に出てきた魔法金属を扱ったことがあるのですか?」

 そう問い掛ける少年に対して、酒場の鍛冶師たちは沈黙する。

「そりゃあ、俺達だっていつかは扱ってみたいけれどなぁ」

「サムソンに流通しているのはミスリルまでで、それだって高価で手が出ない代物だ。しかもそれ専用の火炉を借りるとなると、失敗は許されるものではないなぁ」

 ふむふむと、皆の意見を丁寧にメモする少年。

「それでは、明日からお願いします。暫くは鍛冶組合にお世話になって、技術を磨いていきたいと思います!!」

と告げて、少年は酒場から出ていった。

 その後姿を見送った鍛冶師たちは、自分達の昔の姿と少年を重ねて見ていた。

 昔、自分たちも思い描いていた、鍛冶師としての夢を、いつか思い出すのだろう‥‥。 





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