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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第13部 日常どうでしょう・リターンズ

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日々の戯れ・その6・交渉という名の実力行使

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

 波多野議員達が東京へと戻った翌日。

 永田町国会議事堂では壮絶な議論が繰り広げられていた。

 発端となったのは波多野議員の報告書、それによると異世界からやってきたストームとマチュアは日本国に対して一切の交渉テーブルを持たないというものである。

 自分達の仕出かした事は全て隠し通し、一方的に交渉を切られた事を説明する波多野。

 まるで自分達が被害者であり、今回の交渉についても彼らの言い分が大き過ぎたので破談となってしまったという報告がなされていた。


「‥‥では、異世界との交渉はもう不可能という事ですね?」

「我々では対処のしようがありません。逆に言うなら、彼らが我々の世界にやって来るという事自体が危険であると伝えておきましょう。彼らは魔術を用い、我々人間を遥かに凌駕した力を持っています。あの浮遊戦艦を思い出してください、あの存在こそが侵略対象であると思いませんか?」

「だが、アメリカは彼らと好意的であったぞ?」

「それこそが彼らの手なのでしょう。より強大な軍事力を持っている国と手を組む事で、この世界を陰から牛耳ろうとしているのかもしれません。そして彼らと接触した危険分子も早めに拘束した方がいいかと思います」


 言いたい放題の波多野。これには同席している児玉も苦笑するしかない。


(もうあの方達が交渉のテーブルに乗らないと判っているからこその罵詈雑言・詭弁も甚だしいですねぇ。あなたの言葉には真実が一欠片もないし‥‥でも、このまま国民権利党に乗っかるのも手ではありますか。異世界交流はそもそも自民党が推進していたものですし‥‥)


 児玉もそう考えてから手を上げる。


「はい、児玉議員」

「今の波多野さんの報告ですが、更に付け加えると主要各国の諜報員も彼女達と接触すべく活動を行っています。そしてそれは、マチュアさん達の捕獲だけではありません。あの居酒屋には白亜の扉があり、しかも店主とその友人は異世界に自由に行き来しているという報告が行われています」

「な‥‥その報告は一体どこから?」

「統合情報部(J−2)です。既に我が日本国民が異世界に自由に出入りしているという事実を考えますに、その二人については外患誘致罪も視野に入れた監視を行う必要があると進言します」


 それだけを告げて児玉は席に着く。その一瞬だけ、波多野と視線が合ったものの、お互いに何も交わさずに席に戻っていく。

 児玉の所属する党は『日本共進党』、国民権利党ほどの規模は持っていないものの、野党第三党という立場を維持している。

 ここで手を組んで自民党を堕とすのなら、多少の協力体制は必要であろうと考えていたのである。

 そして二人の報告を聞いて、委員会はさらに混迷を極めて来た。

 それまでは異世界からの恩恵を賜り、日本国の世界的立場をより優位にすべきであるという方針であったにも拘わらず、今は異世界をどうにかして排除する必要があるのではないかという方針に変わり、異世界を容認しようとしている自民党に責任追及をどうやって行うかという所まで話が飛躍している。


「取り敢えず、本日の議題についてはここまでにしましょう。このご報告書を精査し、必要ならば公安に表に立ってもらう事も視野に入れる必要があります。それでは次の委員会でまた有意義な話し合いを行おうではありませんか」


 委員長の土井垣の言葉で委員会は閉会する。

 そして一人、また一人と議員が出て行くのを、波多野と児玉は笑いを堪えつつ眺めていた。



 〇 〇 〇 〇 〇 



「‥‥マチュア、地球(ルーンスーペース)についてどうするつもりだ?」


 場所は変わってカナン・馴染み亭ベランダ席。

 マチュアとストームがのんびりとランチタイムを堪能した後、ティータイムを楽しんでいる時。

 ストームがふと思い出したかのようにマチュアに問い掛けて来た。


「どうもしないよ。真央と善には悪いけれど、二人にはあっちで頑張ってもらうしかないでしょ? あのろくに使い物にならない議員と手を組む気は更々ないし、かといって他国の諜報機関に二人を引き渡す気もない。精々二人には自衛手段を身に着けてもらいつつ、自分達でどうやって生きるべきか考えてもらうしかないっしょ?」

「俺達が手を出したら全て終わらんか? それにあの議員たちは裏で何を考えているかわからんぞ? 早めに手を打っておいた方がいいのではないか?」

「まあね。ゴーレムでも作って預けておくというのも考えたが、そのゴーレムが鹵獲されかねないしなぁ‥‥殴り込みに行くのがもっとも早いんだが、それもどうかなぁと‥‥過保護?」


 そう呟くと、ストームも軽く頷いている。

 ぶっちゃけると二人の故郷なのだが、今となってはこのカリス・マレス世界が故郷のようなものである。

 自身の魂が二つに分かたれた時点で、地球(ルーンスーペース)への未練も殆どなくなっていたのであるが、今になって少し気にはなっているようである。


「あっちの神様ズにも頼まれてはいるんだから、多少は手を貸してやるのがいいと思うんだが」

「そうさなぁ‥‥となると、勝手知ったる協力者に助力を仰ぐのが早いか」

「協力者?」

「そ。困った時のマフィア頼みさ。そんじゃ行ってみますか、ストームはこの後は?」

「暇だ。エルコーンが死んだので天海も放置決定、信長の所に顔出すのもいいんだが、あんまり引っ切り無しに行くと蘭丸が困り果ててしまう」

「なら行きますか」


 そう告げて立ち上がると、マチュアは魔法錠を取り出して銀の扉を作り出す。

 それをゆっくりと開くと、地球(ルーンスーペース)の永田町・国会議事堂前に歩いて出ていった。



 〇 〇 〇 〇 〇



──ザワザワザワザワ

 永田町・国会議事堂前は突然のマチュアとストームの来訪に騒めいていた。

 すぐさま警備員が駆けつけてくるが、安倍川総理大臣の指示によりマチュアは基本国賓扱いとされている。そのためすぐに安倍川の秘書官が駆け付けてくると、そのままマチュアとストームを首相官邸まで案内した。

 


 綺麗な室内。

 特別応接室に入るのはマチュアは二度目でありストームは初めて。

 急ぎ追加された椅子に案内されると、二人は静かに椅子に座る。

 反対側の席には安倍川首相と執務官、書記官、秘書らがずらりと待機し、左右の壁際に並んでいる席には朝生副総理らの姿もあった。


「改めて自己紹介させていただきます‥‥」


 まずは安倍川の自己紹介と集まっている主要人物の紹介、そしてマチュアとストームがそれに続いた。


「ラグナ・マリア帝国、カナン魔導連邦女王のマチュアです」

「ラグナ・マリア帝国、ベルナー双王国・サムソン王国国王のストーム・フォンゼーンだ。本日はよろしく頼む」


 そう告げて軽く一礼するマチュアとストーム。すると官僚たちももう一度頭を下げた。


「本日は突然のご来訪ありがとうございます。それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「こちらにいらっしゃる異世界対策委員会の方についてちょっと苦言を申し上げに参りました。もう報告は受けているのでしょう?」


 にっこりとほほ笑みつつ告げるマチュアに、官僚席にいた国民権利党党首である辻宮に一斉に視線が集まる。

 だが、辻宮は季然とした態度で何も反応を示さない。


「いえ、それについてはまだ詳細報告は伺っていませんが、どういった事でしょうか?」

「まあ、口で説明するのもなんだからなぁ。マチュア、あれ出してくれ」

「了解しましたわ。ではこちらをご覧ください‥‥三日程前に私達がお忍びで北海道にいる知人の元を訪れた際の出来事なのですが、一部始終の様子を映像に収めてありましたのでご覧ください」


 空間収納(チェスト)から大型クリアモニターを取り出して設置すると、マチュアは波多野たちとのやり取りのすべてを公開したのである。

 最初は冷ややかな目で見ていた辻宮も、波多野の暴走ぶりを見始めてからはワナワナと震え始めた。

 そして全てが終わってクリアモニターが仕舞われると、辻宮は立ち上がって一言。


「こ、こんな事はあり得ません。どうせこれも作り物の映像に決まっていますわ。私の聞いた報告では、あなたたち異世界の人間の目的はこの世界の侵略、そうではないのですか?」

「辻宮くん、まず座りたまえ‥‥同僚議員の無礼をお許しください」


 すぐさま安倍川が辻宮に注意し謝罪する。が、この程度の反応はストームもマチュアも予想通り。

 なので、マチュアはさらに空間収納(チェスト)から嘘発見水晶球ライアーオーブを取り出して。


「これは私達の世界にあるマジックアイテム、嘘を見抜く道具ですわ。これに手を当てた者の発言について、もしも嘘をついたのなら嘘発見水晶球ライアーオーブが赤く反応しますわ‥‥このように」


 そう説明してマチュアは膝の上に置いた嘘発見水晶球ライアーオーブに手を当てる。


「私達はこの世界に侵略しにやって来たのではありません。良き友として付き合いたくてやってまいりました」


──キィィィィィィィィィン

 すると嘘発見水晶球ライアーオーブは白く輝く。そしてストームも嘘発見水晶球ライアーオーブを受け取って同じことを宣言するが、やはり白く輝いたので。


「それでは、信ぴょう性がないとおっしゃるかたもいらっしゃいますので、そちらで試してみても構いませんわよ‥‥ご遠慮なくどうぞ、辻宮さん」


 いきなりの指名。これには辻宮も驚いたが、堂々とマチュアの元までやって来て。


「これをどうすればいいのかしら?」

「そのまま手に持っていてください。辻宮さん、あなたは波多野議員の報告を全て確認していますわよね?」

「いえ、簡単な報告だけで詳細は聞いていませんわ」


──キィィィィン

 嘘発見水晶球ライアーオーブが赤く輝く。


「では、その報告を元に私達を陥れたり有効利用しようと考えていませんか?」

「そんな事はありません。私達は友好的に付き合いたいと考えています」


──キィィィィン

 そんなことはない、の時点で赤く反応し、そのあとの言葉でさらに輝きを増してしまう。

 これを見て閣僚たちはやれやれと困った顔をしたり、やっぱりかと憐みの目で辻宮を見ている。


「こ、これはイカサマです!! こんな事ありませんわ」

「だけどよぉ、あんたの所の議員だって異世界を食い物にするのに色々と手を回していたじゃないか?」

「そんな事ありませんわ!!」


──キィィィィィン

 またしても赤く輝く。これには辻宮も慌てて嘘発見水晶球ライアーオーブを床に落としてしまうが、その程度で壊れるような代物ではない。


「他の方もどうぞ試してください。私達の説明が嘘でない事をいくらでも証明して見せますわよ」

「い、いや、それなら小野寺君どうぞ」

「いやいや、神田さんこそ、後ろめたい事はないのでしょう?」


 そんなやり取りのなか、朝生が堂々とマチュアのもとにやってきて嘘発見水晶球ライアーオーブを受け取る。


「俺はよ、異世界について友達以上に接したいと思っている。まあ、多少の利益があったほうがいいとは思っているが、それは相手があっての事だと思っているんだがなぁ」


──キィィィィィン

 嘘発見水晶球ライアーオーブが白く輝く。

 こちらの朝生も嘘をついていない。これには他の官僚達も驚いていた。


「あら、朝生さんはずるいですわね」


 そしてマチュアも朝生の言葉にずるさを感じた。嘘をつかないレベルで正直に本音を告げている。

 多少の利益がどれ程なのかという注釈はないのでそこは個人レベルでの判断。これで嘘発見水晶球ライアーオーブは反応していないので、朝生は嘘をついていない事が判る。


「そうかぁ? まあ、これで俺の潔癖性が魔術的にも証明されたよな。書記官と報道官よ、これも包み隠さず全部報道しろよ、編集なんかするんじゃねぇぞ」

「り、了解しました」

 

 慌てて返事を返すKHKの報道官。そこにマチュアも一言だけ。


「まあ、嘘や悪質な編集をした時点で、私たちはKHKとの交渉には応じないと思ってください。あ、カットとかも駄目ですよ、放送するのなら全て、最初から包み隠さずです。この言葉も全てですよ‥‥これを聞いている全国の報道関係者にも、この事は徹底してくださいね」


 コクコクと高速で頷く報道官。

 そしてようやく安倍川が本題に入ろうとした。


「それでは、本日の話を戻すことにしましょう‥‥」

「ええ。そうですわね。まず単刀直入に説明しますが、現時点では私達はこの地球ルーンスーペースと国交を結ぶ気はありません。これは政治的にという点でありまして、個人的な付き合いはあっていいとは考えています」

「例えば、北海道の札幌には俺達のおかげで迷惑を被ったやつがいる。彼らと話をしている内に彼らには悪意を感じない事も判ったので、今はいい友達として接してもらっている」

「YTVの佐藤さんや梅津さんもそうですわね。彼女達は私にとって大切な友達です。そんな彼らや彼女のように友達として接するのでしたら構わないとは思っていますわ」


 そう説明すると、安倍川も冷や汗を流しつつ頷くしかなかった。


「そ、そうですか。では、異世界に私達が向かうというのは現実的には不可能なのですか?」

「先に説明した二人には、既に俺の国に自由に出入りする為のマジックアイテムを与えてある。つまりはそういう事だ」

「佐藤さんと梅津さんには後で同じものを差し上げますよ。お二人は以前カナンにいらして貰って取材をしていただいた事もありますし」

「それ、俺も欲しいよなぁ‥‥」


 ボソッと朝生も呟く。

 するとストームとマチュアもプッ、と吹き出してしまう。


「マチュアよ、こっちの朝生さんとあっちの蒲生さんが出会っても問題ないのか?」

「二つの世界の日本国の副首相同士の会談っていうのも面白いかもね‥‥では朝生さんこちらへどうぞ?」


 そう告げて朝生を呼び出すと、朝生はマチュアの元にやって来る。


「ではお手を」

「こうか?」


 朝生の差し出した手を受けて、マチュアはすぐに朝生の魂の護符(ソウルプレートを発行する。そして30回分の異世界渡航旅券パスカードを取り出すと、朝生の魂の護符ソウルプレートとリンクしてから手渡す。


「こ、これは?」

「あなたの魂の護符ソウルプレートです。私達の世界での公的身分証明であり、本人の魂から抽出された決して偽造出来ないカード。異世界ではそれが身分証明となります。そしてこちらは私達の世界と行き来するためのカード。あなたしか使えないものですわ。後程国会議事堂横にでも転移門ゲートを設置しておきますので、そこからご自由にいらしてください」


──ゴクッ

 官僚達も思わず喉が鳴る。

 それが欲しい、それさえあれば自由に異世界に行く事が出来る‥‥。

 何故朝生だけなのか、それが悔しくて堪らない。


「ありがとうよ。そんじゃあ好きに使わせてもらうが、通貨とかはどうすればいいんだ?」

「それも後程ご説明しますわ。カナンとサムソン、ベルナー王国には異世界ギルドという所がありまして、そこで日本の通貨を私たちの世界の通貨にする事が出来ますので‥‥と、そうですね。では詳しい資料をお見せしましょう。まずはさっと目を通していただけますか?」


 そう告げてマチュアが取り出したのは、異世界大使館と異世界ギルド発行の『異世界旅行パンフレット』である。『一般用』と『自称ベテラン用』『こじらせ用』の三種類が用意してあり、一般用は普通の観光ガイドやカナンの風習、通貨の換算表などもまとめられている。

 これ一冊でほぼ異世界カナンの事を知る事が出来るという優れものである。

 そして『自称ベテラン用』ラノベの知識を持った人や漫画、アニメなどで異世界転移・転生物を読んだことのある人用に説明されている。

 冒険者ギルド商人ギルドの登録方法、初心者冒険者ガイドも付いていて、このパンフレットもそこそこに気のあるものであった。

 そして最後の『こじらせ用』は、見た目は自称ベテラン用として作られているのだが、『自分は選ばれた勇者』だったり『チートスキルを持って生まれた』などと勘違いしている方に対して、現実を知ってもらうためのガイドブックとなっている。


 これらが三種類すべて配布され、官僚たちも改めてそれを読む事で更に異世界について深い知識を得る事が出来る。

 先程まで憤慨しまくっていた辻宮でさえ、今は目をキラキラさせて読み耽っているのだから堪らない。

 マチュアとストームもティーセットを取り出してのんびりし、時折隣の安倍川からの質問に丁寧に答えている。

 そして30分程すると、出席者達の反応も変わっていた。

 特に辻宮などマチュア達の前にやってきて深々と謝罪をしているのだから、異世界の知識ってすげぇなぁと二人は思ってしまう。


「しかし残念です。これほどの資料があるにも関わらず、我々は自由に異世界に行く事が出来ないとは‥‥異世界大使館ですか、これを我が国に作っても構いませんので、どうにか出来ないでしょうか?」


 安倍川が提案するが、マチュアは頭を左右に振る。


「俺達の世界はそれほど柔軟ではない。二つの地球が来るということは、二つの文化が混ざり合う。それは進化として捉えればいいが、地球ルーンスーペース地球(フェルドアース)となるとそうはいかない。どっちも一長一短の文化を持っている、それこそ技術の奪い合いさえ起りえるだろう。そんな危険な事を、俺たちのカリス・マレス世界を挟んで行って欲しくはない」

「まあ、友達同士の付き合いでいいと思いますよ。そうでないと法案の変更なども必要になるでしょうし、一方通行の国交など御免被りたいのですよ。こちらの地球で憲法第九条の改定なんて出来ないでしょう?」


 その問いかけには小野寺らも苦笑するしかない。


「それはどういう事ですか?」

地球(フェルドアース)では、既に憲法9条は廃止されています。自衛隊は正式に日本の所有する戦力であるが、引き続き日本国から他国に対しての侵略行為を行う事はないって宣言しました。これに伴い、私達の世界からは魔法鎧(メイガスアーマー)という魔導力によって動く人型の兵器を‥‥ってこれはこっちの自衛隊も所有していますよね?」

「ええ。未だに解析できませんし、既に一機は塵になってしまいまして‥‥」

「ですから解読してはいけないって伝えましたでしょ? 地球(フェルドアース)では第三帝国が復活して世界規模の戦争に突入しましたわ。その時に自衛隊の戦力化が決定したといっても過言ではありません。その後の平和維持、復旧活動、全てにおいて自衛隊は常に最前線で動いていましたわ」

「でも、それが自衛隊の務めでしょう?」

「でも、こっちの世界じゃ自衛隊は違憲なんだろう? 辻宮さんといったか、俺は地球(フェルドアース)でも同じような事をいっぱい見てきた。同じ地球にいる者同士がいがみ合って異世界の利権を得ようとする世界とは、俺たちは国交を続ける気はない」


 ストームの一言で全てが終わる。

 これこそが二人の本質。

 そして地球(フェルドアース)で経験した事による、地球ルーンスーペースとの国交についての最低条件である。

 そんなことは実質的には不可能である事は十分承知している。事実、地球(フェルドアース)でさえまだまだカリス・マレス世界を食い物にしようと考えている国はたくさんある。

 だが、地球(フェルドアース)はあくまでも実験的、モデルケースである。

 そこで色々と試行錯誤していい方向にもっていくのが異世界大使館と異世界ギルドの仕事である。


「さて、これでお分かりになりましたか? 私達がこちらの世界と国交を続けられない理由が。もしよろしければ、そうですね‥‥私達を受け入れるという意思のある方については、その組織の代表である皆さんにだけ魂の護符(ソウルプレート)を発行してあげますわ」

「ついでに6回程度の異世界渡航旅券パスカードをつけてやればいい。マチュア、それぐらいは構わないだろう?」

「まあ、ストームがいうならね。出先はサムソンの異世界ギルド転移門ゲートでいいなら作るわよ」

「そこ限定で構わん、後はキャスバルとうちの異世界ギルドにも通達しておく。どうする?」


 そう問い掛けられて、じっと座り続けている議員などいない。

 全員がマチュアの前に並び、順次魂の護符ソウルプレート異世界渡航旅券パスカードを受け取る事になった。

 

 帰り際、マチュアは国会議事堂中央棟にある広間の一角に転移門ゲートを固定し、サムソンにある異世界ギルド横観光用転移門ゲートと繋げると、集まっている議員達に最後に一言だけ。


「俺達は喧嘩をしに来た訳ではない。この世界にも俺達の友人は少なからず存在する、もしも彼らに対して危害を加えるような出来事が起きたら、その時は転移門ゲートが消滅すると思ってくれて構わないからな」

「普通に接してくれていればいいのよ。でもね、彼らに対して理不尽な申し出や脅迫まがいの事をしたらどうなるかわかりますわよね‥‥では失礼します」


 最後のストームとマチュアの言葉は、『威圧』『王の威厳』二つのスキルが有効化(アクティベート)してあった。

 なので議員達もブンブンと頭を縦に振るしかなく、その日の夜には自分達の所属している全国の党本部、支部に通達が行われた事は言うまでもない。  



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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