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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第13部 日常どうでしょう・リターンズ

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世界樹騒動・その3・上から貴族とわがまま貴族と

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

 ブラウヴァルト森林王国に到着した翌日。

 マチュアの宿泊してる宿『森の精霊亭』の前に、次々と馬車がやって来る。

 どれも皆四頭立ての大型馬車、豪華な装飾を施し扉には家紋が彫り込まれていた。

 その中の一台は、先日厳也マチュアを捕まえようとしたニコドゥ家のものである。


 ほぼ同時に停車した馬車からは、我先にと次々と貴族たちが駆け下り、宿の中に走り込んで来る。


「おや、これはストリーム公爵とニコドゥ伯爵、それにヨウツベ伯爵ではありませんか? こんな朝早くにうちのようなボロボロな宿にどのような御用で?」


 宿の店主であるモンタナ老人が三人の顔を交互に見ながら問いかける。

 すると、ストリーム公爵と呼ばれた、やや頭頂部が寂しい壮年の男性がゴホンと咳ばらいをして。


「この宿に泊まっている商人に話がある。すぐに呼び出して欲しいのだが」

「ストリーム公爵殿、順序は私が先ですぞ」

「何をいうか。あのゴーレム馬車は先日私が眼をつけたのです。ささ、モンタナよ、厳也殿にニコドゥが話があると伝えてくれぬか」

「ぐぬぬぬぬぬぬ。いいから貴様達は黙っておれ。モンタナよ、その厳也とかいう商人はどこにいる?」


 きつい剣幕で問いかけるストリーム公爵。するとモンタナは食堂でのんびりと蕎麦のようなものをすすっている厳也マチュアを指さした。


「先程から食事を取っていますが‥‥あの、あまり騒がれないようにお願いします」

「それはあいつ次第だ。では邪魔するぞ」


 のっしのっしと食堂に歩いていく大柄なストリーム公爵。その後ろをがりがりのヨウツベ伯爵とニコドゥ伯爵がついていく。

 そして厳也マチュアの前に立つと、上から見下ろすように厳也マチュアに話しかけた。


「朝早く失礼する。私は王国騎士団長を務めているジョルト・ストリームという。厩舎に預けてあるゴーレムホースは貴様のものだな?」


 いかにも権力者ですよといわんばかりの、どすの聞いた上から目線の物言いである。だが、厳也マチュアはチラッとストリームを見ると、そのままどんぶりを両手で持ってズズズズズーーーッとスープを一気飲みした。


「ぷはぁ。早朝からやかましいわ、その公爵殿が一体何の用じゃ」

「ふん、貴族相手に随分と偉そうな口を利くものだな。厳也とか言ったか、貴様のゴーレムホースを買い取ってやる。幾ら欲しい?」

「お、お待ちくださいストリーム公爵。買い取るのでしたら我々も参加します」

「そうです。厳也よ、昨日ぶりだな。訳あって貴様の馬車を買い取ることにした、幾ら欲しいか言ってみろ」


 次々とてんでばらばらに交渉を持ち掛ける貴族たちであるが、厳也マチュアはこの時点ですでに面倒臭そうな顔をしている。

 そもそもこっちは売る気がないというのに、いつのまにか値段をつけろといっている。ならば、ここはきっちりと断る事にしようそうしよう。


「悪いが、ありゃ売れんぞ。という事でお引き取り願おうか」

「ちょっと待て、それでは困る。そもそもゴーレム馬車は、我が国の女王陛下が所望なのだ、それを売ってくれなくては話にならぬのだ」

「その通りです。ぜひともヨウツベ家にお譲りください。白金貨5枚出しますぞ」

「ならばうちは10枚だ。是非ともニコドゥ家にお願いします」

「貴様らいい加減かにせぬか!! ゴーレム馬車はストリーム家が買い取るといっておろうが」

「だーかーら。儂は売らないといっている。さ、とっとと帰れ、飯の後のお茶がまずくなるわ」


 シッシッとうるさい蠅を追い払うように手を振る厳也マチュア。だが、貴族の連中はその程度では引き下がる事はなかった。


「な、何という無礼な‥‥」

「この私を誰だと思っておるのだ、かつてこの地に降り立ったラージドラゴンの軍勢を単独で蹴散らしたブラウヴァルトの英雄・ジョルト・ストリームであるぞ。本来ならば貴様のような民度の低い人間などと対等に話すことなどありえないのだが。その俺に対して、何という無礼な‥‥」 

「そうだそうだ。我がヨウツベ家も、10年戦争の折には要塞戦で勲功をあけた英雄である。どっかの補給部隊を指揮していたニコドゥ家とは違うのだよ」


 その話を聞いても、厳也マチュアは一向に関心を示さない。

 それがどうしたこっちは親玉を倒した英雄だぞと話せば引き下がるか‥‥いや、無理だろうなぁと厳也マチュアは腕を組んでウンウンと頷く。


「その国の英雄さんが、どうしてゴーレム馬車を女王に献上するのかねぇ‥‥全く、この国のルールは難し過ぎて知らんわ」

「それは、あの忌々しいカナンのハイエルフの女王のせいである。あの女、我が国の女王と同じハイエルフのくせに、いまだに女王就任の挨拶をしにやって来る気配も見せぬ。我らが女王、コキリコ・ブラウヴァルト11世陛下こそ全てのハイエルフの頂点である。にも拘わらず‥‥」

「ストリーム卿のおっしゃる通りです。あのマチュアとかいう女王は、未だ我が国に貢物を持って来る気配がない。それどころか、我らが至宝である世界樹を独占し、我らが王国に返還する気配すら見せないではないか」

「それどころか、独自に魔導具を作り出しては勝手に商売を始めている始末。魔導具の販売についても、ブラウヴァルト森林王国の許可なく行ってはいけないというのに‥‥しかも、貴様の持っているゴーレムホースも、あの女王が作り出したものであろう? ならばそれを献上品として差し出すのは当然の義務であろう」


 えらい剣幕で叫ぶ三人。しかし、どこからどう聞いても濡れ衣だらけで心当たりがなさ過ぎである。

 そもそもこの国に挨拶にくる必要がどこにあるのかと、小一時間ほど問い詰めたい心境である。


「あのゴーレムホースは、我が商会主が女王から賜ったものでなぁ。儂が勝手に売買していい代物ではないのじゃよ。という事で引き下がってくれんか?」

「それは無理であろうなぁ。我が女王の命令は、この国では絶対である。まあ、おそらく今頃は門番にも話は通っているであろう、あれを所有する限りこの国からは出られぬと思え‥‥では、また来る、次までに値段を決めておけ」

「その通りだ。では失礼する」

「せいぜい首を洗って待っているがよいさ」


 そう吐き捨てるように告げて、三人の貴族は次々と宿から出て行く。それを見送ってから厳也マチュアはお茶のお代わりを頼むと、のんびりと飲み始めた。


「しっかし、この国は阿呆の集まりでござるか。その女王とやらも、ずいぶんと独善的な性格でござるなぁ‥‥」


 ただ他人事のようにボソッと呟く。すると近くに座っていた冒険者が厳也マチュアに話し掛けた。


「そりゃあそうですよ。うちの女王は、天界人とハイエルフのハーフですからね。下々の事などあまり気にしてはいませんよ‥‥まあ、それでもこの国を取りまとめているのも事実ですからねぇ」

「天界人? 亜神のことか?」

「あ、そうそう、それ。その亜神とハイエルフのハーフでね、不老長寿なんですよ。それで世界樹が魔族によって焼き払われた2000年前の大戦争でも、最前線で勇者と共に戦っていたっていう話ですよ」


 おやまあ、歴史の生き証人でしたか。

 それがなんで傍若無人になってしまったのやら。


「つまり、この国は2000年もの間、一人の女王によって統治されていたのか」

「ええ。10年前のバイアス戦争でも、いち早く結界を強化して外からの侵入を防いでいたらしいですね。ストリーム卿はその時に国内に侵入していたドラゴンを撃退したって言っていますが、どこまで本当やらねぇ」


 肩を竦めて告げる剣士風の冒険者と、その隣でのんびりと食事をしている女性神官。どちらもそれなりにいい装備を着けている所を見ると、そこそこランクの高いパーティーなのだろう。

 しかし、国内情勢がそこまで偏っているとなると、マチュアの当初の予定である『喧嘩』では更に揉める要因となる。

 ならば、内側から少し揺さぶって様子を見た方がいい。

 

「おお、すまないが、この近くに雑貨屋はあるか? そろそろ路銀が乏しいので余った魔法薬ポーションを買い取ってもらいたいのだが」

「それならうちらが買い取ってあげるよ。市販薬なんだろう?」


 そう問われたので、マチュアは拡張エクステバッグから上級魔法薬ポーションを3本取り出す。切断された四肢でさえ再生するという、一般で販売していない高級魔法薬ポーションである。

 ちなみに原液から10倍希釈した物なのだが、それでもここまでの効果を発揮する。


「おうぁ‥‥魔法光が淡く輝いていますね。これって、かなり高級なのでは?」

「さて。最近になってカナンで作られたらしい魔法薬ポーションじゃよ。一本金貨5枚と割高だが、わしの旅仲間も盗賊に襲われて腕を切断されたのだが、これで再生したのじゃよ?」


──ゴクッ

 その説明に、神官の女性が喉を鳴らす。


「も、もしそうでしたら、これは神の奇跡に等しい効果を発揮するという事ですよね? そんな貴重な魔法薬ポーションを金貨5枚ですか?」 

「路銀が足りないし、そもそもカナンでは普通に生産されているのではないかな? 儂が国を出るときにお試しにと買って来た物だからなぁ」

「では、一度、魔術師ギルドで鑑定してもらっていいですか? それでもしもさっきの効果が真実であるなら、三本ともうちらが引き取りますよ」


 ドン、と胸を張る剣士の兄さん。それには厳也マチュアもウンウンと頷いてしまう。


「では行きましょう。あ、俺はアルフォード、彼女はエリーゼ。後二人仲間はいるんだけれど、前の冒険で怪我をしてしまって宿で休んでいるんですよ」


 ブルボン王朝の人かな? 残りの二人はホワイトロリータとルマンドかな? などと厳也マチュアは失礼なことを考えてしまうが、そんなことは口には出さずに立ち上がって。


「十六夜厳也じゃ。カナンのある商家に勤めている者じゃよ」

「では改めまして。イェリネック神官のエリーゼです」


 丁寧に頭を下げるエリーゼ。それではと三人は一度宿から外に出る。

 そして近くにあるという魔術師ギルドまで足を運んで、魔法薬ポーションの鑑定を頼む事にした。


誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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