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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第十二部 ドタバタ諸国漫遊記

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魔王復活・その10・竜人と亜神と人間と

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

 ラマダ王都・王城最上階・儀式の祭壇。

 外に剥きだしになっているバルコニーに作られた巨大な祭壇の上では、未だ諸葛亮孔明が儀式の真っ最中であった。


「マチュアよ、それで、この儀式はどれぐらい続くのだ?」


 傷も癒えたライオネルだが、まだ無理をしないほうがいいとマチュアから告げられた。なので今はどっかりと胡座をかいで、部下の報告を聞きつつ指示を飛ばしていた。


「知らんがな。この術式だって私は初めて見たわ。道教の魔術式なんて学んだ事ないし、深淵の書庫アーカイブにも登録してないのよ……まあ、魔導書には載ってるけど」


 スッ、と右手をかざして魔導書を呼び出すと、その中の道教のページを開く。

 そこにはさまざまな魔術式が記されているが、マチュアはまだ未習得である。


「ほう。白銀の賢者でも知らない術式があるとはな」

「うっさいな。私は秩序の女神ミスティの加護をを受けているんだからウィル大陸の魔術式は網羅しているわよ。けど、中観大陸の魔術式は別の神様の加護になるの、だから改めて習得しないとならないのよ……」


 まあ、今のマチュアなら魔導書を通じて各種神々との契約は可能なので習得できるのだが、それでも時間は掛かる。深淵の書庫アーカイブに取り込んでしまえば簡単に覚えられるのだが、その場合の発動は深淵の書庫アーカイブを通さなくてはならない。

 創造神代行の亜神ではあるが、亜神だからこそ手続きが面倒なのである。


「さて、私の予想では、そろそろ孔明を潰しにボスが来るはずなんだけど、ライオネルがやる?」

「まだ身体が動かぬ。そっちはマチュアに任せる」

「あっそ。なら」


 素早く立ち上がって孔明の正面に回る。

 それと同時に空間から雷を纏った竜人が姿を現すと、両手に構えた雷の槍を孔明に放つ。


──シュシュシュンッ

 高濃度の魔力反応を発する雷の槍。これが一般の冒険者にでも直撃したら瞬時に消し炭になるだろう。

 ランクの高い冒険者でも無事では済まないだろうし、周囲に起こるであろう二次災害も洒落にはならない。


「悪いが、そろそろ死ね」

「アンタがな!!」


──ガシッ

 飛んできた雷の槍を魔神の腕ルシフェロンが受け止める。

 そのまま雷の槍を握りつぶして消滅させると、魔神の腕ルシフェロンで竜人・張角の顔面をガシッと掴む。


──ミシミシッ


「ぐ、グァァァァァ、何だこれは、こんなの聞いていないぞ」

「そうだろうそうだろう。生身の人間ならくしゃっとトマトのように潰れていたわよ。悪いけどそのアイアンクローは中西学じゃないわよ?フリッツ・フォン・エリック直伝だからね?」


 もしも地球人がいたら、それはないだろうと突っ込むところである。が、そんなことを知らない張角は両手で必死に魔神の腕ルシフェロンを掴んで引き離そうとするが、明らかに実力差がありすぎて手も足も出ない。


「はなせ、離せぇぇぇ、貴様、この俺が誰かわかっているのか?魔王エルコーン貴下四天王が一人、猛将董卓の配下で四天王の一人、死霊使いの張角で痛たたたた」

「魔王の四天王じゃなくて、四天王の四天王かよ。折角部長クラスの敵かと思ったのに課長クラスとはなぁ……まあ、どのみちアンタを潰す事に違いはないのでね」


──ミシミシッ

 さらに張角の顔面が歪む。

 激痛で言葉を発することもできなくなり、ただジタバタともがいている。


「ライオネル、これ、どうする?アンタの国の事だからアンタが決断して」

「慈悲なし。やれ」


──クシャッ

 ライオネルの言葉と同時に張角の顔面が砕け散る直前。

魔神の腕ルシフェロンの両腕が突然床に叩きつけられ消滅した。


「うぉう?魔神の腕ルシフェロンが潰されただと!!何者だ」


 マチュアが叫んだ直後、グッタリとした張角の前に現れた董卓。


「悪いが、張角は返してもらう。まだまだ使い道はあるのでな。それに、必要なのはその男の血だけではないので……」


──ヒュッ

 その言葉だけを残して、董卓は姿を消す。

 するとマチュアはその場に崩れて、床を力一杯殴りつけた。


「くっそぉぉぉぉぉ」

「まあ、無理もない。後一息という所で逃げられてはな……」


 ボソッと呟くライオネルだが。

 マチュアにとっての問題点はそこではなかった。


「なんだよ、『何者だ!!』って。あれじゃ私が悪役じゃないか、それもやられキャラだよ。あの場合はニィッと笑ってクックックッだろうが。やり直しだ、私は断固やり直しを要求する」

「……」


 絶叫するマチュアを放置して、ライオネルは孔明の儀式が終わるまで警戒を緩める事はなかった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 少し前、ベルナー王国王都・ベルナー。

 張角の侵攻と同時に、董卓四天王の一人、欺将・徐栄はベルナー王国侵攻を開始。といってもまだ破壊神の封印から目覚めたばかりであり、本調子とは言えない。

 封印の眠っていたベルナー郊外の丘の地下墳墓から出てきた時には、愛用の武器も大切な部下もすべて失っている状態であった。


「おおお、空だ、風だ、光だ水だ。俺は帰ってきた‥‥董卓様、この徐栄、おん自らの命令を忠実に再現するものでございます。何とぞ御声をお聞かせください」


 片膝でしゃがみ、両手を胸の前で組んで胸の前で祈るように頭を下げる。

 すると徐栄の声が届いたのか、董卓が念話で直接話しかけてくる。


『久しいな徐栄。早速だが、貴殿の眠っていた地、勇者の系譜が住まう国なれば‥‥その系譜の血をカナンの封印にささげよ。封印されし我が主の武具を開放するのだ』

「おおお、董卓様、この徐栄、必ずやその任務を成し遂げて見せましょうぞ」


 実に2000年ぶりの董卓の声。それに感極まった徐栄はブワッと涙を溢れさせると、そのままベルナー王都城門へと向けて走り出した。


‥‥‥

‥‥


──ドドドドドドドドドドドドドドドッ

 街道を真っすぐに駆け抜ける徐栄。

 やがて王都ベルナー城門が見えてくるが、徐栄の異常なまでの速さに警備騎士が慌てて城門の前に出て手を広げた。


「止まれ!! この先は王都ベルナーである。ここを通りたくば横の列に並び手続きを取られよ!! それを行わないならば敵対行為と見なして排除ブハッ」


──ブッチィィィィッ

 護衛騎士の横を通り過ぎざまに、徐栄はその顔面に平手打ちを浴びせて首から引き千切る。

 千切れた首から鮮血が吹き出し死体がその場に倒れると、王都に入る為に並んでいた行列から悲鳴があがる。

 すぐに他の騎士が徐栄を囲んで構えるが、徐栄は涼しい顔で一言。


「ここの主の首を貰いたい。誰でも構わないから持ってきてくれると手間が省けるのだが」

「ふ、ふざけるな、貴様どこのだれか知らないが、これ以上敵対意思を取るというのならその首落としてくれるわ」


 叫びつつ徐栄に向かって走り出す騎士。だが、徐栄はそこから振り落とされた一撃をスッと躱し、その腕を掴んで引き千切る。

 ブチブチッと千切れた腕を別の騎士に向かって投げ付けると落ちていたロングソードを靴のつま先でひょいと持ち上げ、手に取る。


「ふむ、俺のいた時代よりもいい精錬度合いの剣だな。ミスリルと鉄、銅がいい具合に混ざっているな‥‥、しかし、俺の先程の言葉を聞いていなかったのか? 俺は、ここの主の首を出せといったんだ。誰でもいいからとっとと持って来い!!」


 周囲に集まりつつある騎士に向かって再び叫ぶ徐栄。その声には魔力が籠っており、言霊のように相手を自在に操る力がある‥‥のだが。

 その効果は全く発揮されていない。


「だ、誰が貴様のいうことを聞くか」

「このベルナー王国はシルヴィー様の国、女王を守るための国である!! 貴様のような無頼漢が入っていい国ではない」

「へ‥‥へぇ。俺の言葉に従わない奴がいるとは。この長い時間に、人間も随分と進化したものだなぁ」


 再び騎士たちが徐栄に向かって襲い掛かろうとする。が、その騎士たちの背後から、ポリポリと髭を撫でつつワイルドターキーが姿を現した。


「おーおー、騎士達よ、そいつはお前達では相手にならんぞ。その魔族は儂の相手じゃな」


 たった一言。それで騎士たちは道を開けてワイルドターキーに道を譲る。そして徐栄もワイルドターキーを見て、先程よりもより一層いやらしい笑みを浮かべた。


「お、お前、その背中の斧は伝承級の武具じゃないか、それを寄越せ、お前なんかには勿体ない」

「ほほう、喜んで断らせて貰うぞ。何が悲しくてストームに作ってもらった斧を貴様なんぞに手渡さないとならんのだ? お前は馬鹿か?」

「……先程からおかしいな。何故、お前やこの国の騎士達には俺の言霊が効かないんだ?まあ、それならそれで構わないが」


──ヒュンッ……バシィィィィ

 そう呟くと同時に、徐栄はワイルドターキーに向かって全力で間合いを詰める。

 そこからワイルドターキーの顔面めがけて必殺の掌底を叩き込むが、ワイルドターキーはビクリともしない。

 ツツーと鼻血が垂れてくるが、その血をペロリと舐めてから右手で血を拭う。


「んんん?まさかとは思うが、今のが貴様の本気なのか?」

「な、何だと?今の一撃で首が吹き飛ばないだと? この俺の噴射拳を顔面で受け止めるだと?」


 素早く間合いを外す徐栄。だが、ワイルドターキーはぐるりと首を回して、右手を構える。


「今のが噴射拳という技なのか。まだまだ改良の余地があるのう。拳の技なら、せめてこれぐらいはやって貰わぬとな」


 のっしのっしと徐栄に向かって歩き出すワイルドターキー。その雰囲気に何か本能的な危険を感じた徐栄は、すぐさま間合いを外す。

 決してワイルドターキーの戦闘エリアには踏み込まないようにしているのだが、ワイルドターキーはそんなの気にもせずに徐栄を殴る。


「ふん、この間合いで素振りとは余裕がフベシッ!!」

「いや、素振りではなく目の前の空気を殴って飛ばしただけだが?」


 空気など殴れるのか、しかもそれを飛ばすのかと徐栄は頭を押さえつつ身構える。

 だが、ワイルドターキーが次々と素振りをするたびに、徐栄に何かが直撃する。


「か、躱せないだと?しかも連射とは。これは一度、撤退させて貰うしかないな」

「撤退などさせぬよ。そらそらそらそら」


──ブンブンブンブン

 ワイルドターキーが四回の素振りをすると、三発の何かが直撃した。

 徐栄は慌てて身構えるが、その構えの隙間めがけて更に何かがぶつかって来る。


「き、貴様……名をなんという?」

「幻影騎士団所属、『百錬のワイルドターキー』とはワシのことだ。またいつでも掛かって来なさい」


──ビシッ

 ワイルドターキーが腕を組んで偉そうに呟くが、その瞬間に徐栄の全身に魔力で組み上げられた鎖が絡まっていく。


「はぁ……まさか私の攻撃に気付いていないとは、貴方は本当に魔王軍の者なのですか?」


 ス〜ッとズブロッカが空間から姿を現す。

 光の精霊により、ズブロッカの周囲の空間の屈折率を調整して姿を消していたのである。

 ワイルドターキーの素振りに合わせて、ズブロッカは無詠唱で『理力弾』を放っていた。

 そのため、途中でワイルドターキーが調子に乗って連打したときは、思わず叫びたくなっていたのだが。


「き、貴様は何者だ? そこのドワーフといい貴様といい、何故魔族の俺を簡単に捕らえる事が出来るのだ?」

「そうですね。簡単に説明しますと、貴方程度の魔力ではお話になりませんわ。この国の騎士ならばいざ知らず、貴方の前に立っているのは幻影騎士団の『精霊姫・ズブロッカ』である事を覚えておきなさい」


 そのまま鎖を強く締めていく。その激痛により、徐栄は意識を失ってしまった。


誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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