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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第十二部 ドタバタ諸国漫遊記

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魔王復活・その6・魔装兵器とは

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

「せめて、戦いが終わったのならレイフェ殿でも援軍で送って欲しかったでござるよ」


 部屋の中でレイフェに軽治療ライトヒールを掛けてもらっている木下藤吉郎秀吉。

 最後まで自分だけが戦い続けていたこと、その結果、明智光秀をどうにか捕縛出来たものの、全身切り傷だらけの重症状態であった。

 這々の体で戻って来たら、縁側でストーム達はのんびりと茶を飲んで休んでいる。

 その光景を見た瞬間、藤吉郎は意識を失ったのである。


「すまんなサル。しかし、あの明智光秀を捕縛できたとは大したものだ、後日褒美を取らせるとしよう。いまは身体を休めるが良い」

「はっ、この藤吉郎、お褒めに預かり光栄です。それでは休ませてイタタタタ」


 いきなり信長に褒められたので頭を下げた藤吉郎。それで痛めた腰がさらにゴキッと鳴った。


「あ、腰やったか。後で俺が揉んでやるから、今は横になっていろ」

「忝いストームどの。では後でお願いするでござるよ」


 そのまま信長と蘭丸が部屋から出ていく。

 そしてレイフェとストームも部屋に戻ると、今日は身体をゆっくりと休める事にした。


………

……


 翌日からは信長のターン。此度の足利、明智、長曾我部の謀反に対して、信長は彼等三家を断罪。

 様々な処分が下される事になった。

 そんな和国の政治には関心がないので、ストームは呂布から魔王エルコーンについての話を聞く事にした。

 なお、レイフェは朝から本多忠勝と共に鍛治工房に引き篭もり、何やらトンテンカンと制作している模様である。基本レイフェは放置しても問題ないとストームは考えていたので、のんびりと縁側で呂布と話をする事にした。


「さて。そんじゃあ魔王エルコーンの話を聞きたいのだが、もう一人の当事者を呼ぶから待っててくれ……マチュア、ちょいと面貸せや」


──シュンッ

 いきなりの呼びつけに、マチュアは瞬時に転移してくる。

 破壊神の半身であるストームの元には、座標指定なしで転移出来るようになったのは楽である。


「はーい。マチュアちゃん参上……って、ここは本能寺か……うは、何だか酷い魔障濃度だなぁ」


 白銀の賢者の姿で転移してきたマチュア。そして本能寺を包む魔障濃度に思わず吐きそうになる。

 義昭の持ってきた魔導具によって境内の魔障濃度は一気に上昇、魔力の高い者はその濃度に圧倒され、体の調子を悪くする者もいた。


「まあ、とんでもない戦いだったからなぁ。という事で紹介します、こちら魔王エルコーンの配下だったリョ・フー。字名は呂布でいいらしい。魔族の武将だ」


 その紹介でマチュアに頭を下げる呂布。するとマチュアも丁寧に頭を下げ返した。


「呂布だ。ストーム殿に敗れて客人となった、宜しく頼む」

「これは丁寧に。ラグナ・マリア帝国カナン魔導連邦女王のマチュアです。今後もご贔屓に」

「何と、女王であったか……頭が高く失礼した」

「いやいや、ストームのダチ公なら私の友達、コンゴトモヨロシク」


 最後の方は召喚された悪魔のようなイントネーション。

 そしてマチュアも縁側に座ると、すぐさまアフタヌーンティーセットを取り出す。

 ハーブティーとスコーン、プチフールといったラインナップが縁側にずらりと並んだ。その甘い香りに、呂布とストームの喉も思わずゴクッと鳴ってしまう程である。

 しばしの間、マチュアの用意したティーセットを堪能した三人だが、適当なタイミングでストームが本題を切り出した。


「さて、それじゃあ教えてもらおうか。魔王が復活して世界の覇権を得ようとしている、ここはいい。勝手にやっても構わないし、俺達の世界に進出しなければ潰す気もない。問題なのは、魔装兵器とやらの事だ」

「いきなり核心から来るか……まあ良いだろう」


 そう返答した呂布の話に、ストームとマチュアは頭を抱えることになった。


「魔装兵器は、そもそも魔王の持つ六つの能力を具現化したものだ。あらゆるものを見通す眼『神魔の瞳』、魔族の肉体を滅ぼす刃『不動行光』、無機物に命を与える筆『創生の硬筆』、逆にあらゆるものから命を奪う『脱魂の軟筆』、全ての竜を従える『宝石竜の勾玉』、最後が全ての次元を越える島『天鳥船』。これがエルコーンの魔装兵器だ。まあ、本人の能力を分割したものだがエルコーンが所有していた時よりも能力的には劣化してはいる。天鳥船は別の存在だがな」

「なるほどな。そのうちの一つ、不動行光は俺が持っているので問題はないとして、残り五つか」

「左様。因みに神魔の瞳は四天王の一人であるリアムが所持、天鳥船は地上侵攻の折に勇者によって破壊され、どこかの湖に浮かんでいると聞く」

「厄介なのは、その筆二つと宝石竜の勾玉なんだけど、勾玉は放置でいいかな? 今更竜を従えるといっても、ラグナロクやクロウカシス、ザンジバル程度なら話し合いで何とでもなるし、そもそも私達には敵対しない筈だから」


 ズズズッと紅茶を啜りカステラを摘まむマチュア。すると呂布がマチュアの方を見て目を丸くする。

 マチュアは竜如き敵にあらずと宣言したようなものである。カリス・マレス世界にとって未だ竜の存在は世界最大の脅威であるのだが、それをあっさりと受け流すマチュアに驚くのは無理もないだろう。


「マチュア殿の底が見えないですな。是非とも一手お相手したいのですが、宜しいですか?」

「へ?私と?無理無理、天下の呂布相手に勝負だなんて、私あっさり負けちゃうよ?」


 そう告げつつストームの方を見ると、ストームはニィッと笑ってサムズアップ。


「呂布の実力はターキーさんと同じぐらいだ。油断しなければ何とでもなる」

「あ、あ、あっそ」

「それに、俺も久しぶりにマッチュの腕を見たいからなぁ。という事でガンガレ」

「お前もガンガレかよ。私はアトランジャー派だっていつも言っているだろうが‥‥まあ良いわさ、それじゃあ軽く一手お願いしますね」


 ポン、と縁側から飛び降りると、マチュアは白銀の賢者装備のまま身構える。

 両手にはフィフスエレメント、左右の肩の上には魔神の腕ルシフェロンが浮かび上がる。

 これにはストームも目を丸くするが、フィフスエレメントはもともとストームがマチュアに作ってやったワイズマンナックルの更なる進化系であるので、それ程驚きはしない。


「よし、いつでもオーケィ」

「では、宜しく頼む」


 そう告げて頭を下げる呂布。そして再生した方天戟を大地から生み出すと、軽く一振りする。


「あー、あんたも武器と一心同体系魔族なのね?そっちの武器か本体のどちらかが残っていたら再生するタイプ? 七使徒ゼフォンと同じ?」

「ゼフォンは俺の弟弟子だからな。行くぞ」


──ヒュンッ……ガギガギガギガギ

 一瞬でマチュアの間合いに飛び込む呂布。素早く三連撃を打ち込んでくるが、全て魔神の腕ルシフェロンが受け止めていく。

 すると、受け止めていた魔神の腕ルシフェロンが徐々に分解され、大気中に散っていった。


「ぬあ、魔力無効化? ほほうほう、これは凄いなぁ」

「それを瞬時に看破るとは大したものですが、貴女はストーム殿ほど恐怖を感じませんね」

「あんなバトルジャンキーと一緒にするなよ。こっちはあんたを解析するのに必死なんだから」


 素早く間合いを取って拳を構えるマチュア。再び魔神の腕ルシフェロンを作り出すと、今度は半身に構え、じっと呂布の出方を待っている。

 マチュアが待ち姿勢を取ったのは誰から見ても明らか。そして呂布はそれでもマチュアの企みに乗るべく、方天戟を構えて間合いを詰めるが。


──ダン!!

一歩踏み込んでの震脚。そこから肩越しに呂布に体当たりをかますと、そのまま後方に吹き飛ばした。

 ご存知マチュアの18番、鉄山靠てつざんこうである。

 しかも、直撃する直前に魔神の腕ルシフェロンが変化し、魔人の肩と背中を実体化させての一撃である。

 呂布の鎧は粉々に砕け散り、そのまま壁に激突した呂布はずるずるとその場に崩れていく。


「うぉあっ、やりすぎた!!」

「まあ、あの程度なら‥‥と思っていた俺が間違っていたわ、ずいぶんと強くなったものだなぁ」

「そんな余裕かましている場合ではないでしょ? 生きているかーい」


 慌てて呂布のもとに駆け寄って中治療(ミドルヒール)を施す。

 これで怪我も癒えて呂布は意識を取り戻すと、頭をぼりぼりと掻きつつ縁側に戻って来た。


「いや、マチュア殿の強さははっきりとわかった、心から感服仕ったわ」

「まあ、それでもマチュアはまだ本気じゃないがな‥‥呂布、じつはマチュアの本業は魔術師だ」


 まさか、魔術師の手慰みの技に負けたというのか?

 そのショックが大きかったのか、呂布は何も言わずに縁側に座ると、遠くを眺めつつアフタヌーンティーを楽しむ事にした。

 

「あ、現実逃避したわ」

「そりゃそうだわ。さて、これからどうする? 俺は今しばらくはこっちでのんびりとする予定だが」

「ストームはそれで構わないが‥‥と、何だありゃ?」


ふとマチュアが気が付く。

 遠くからズドドドドドドドトと一人の少女が駆けてくる。そしてマチュアを目視確認すると、その右足に心力を高めて飛び蹴りを浴びせてきた。


「呂布をいじめるなぁぁぁ、スラッシュキーーーーック!!」

「ほほう、それではこっちも!!」

 

 レイフェ渾身のスラッシュキック。それに対してマチュアも軽くスラッシュキックを叩き込む。


──ドゴォォォォッ

 完全に対空迎撃の角度でレイフェにスラッシュキックを叩き込むマチュア。そのまま空中に浮いているレイフェを魔神の腕ルシフェロンで捕まえると、そのままお手玉のようにポイポイッと廻し始める。


「やーめーろー、目が回るぅぅぅぅぅ」


 既にやる気が削がれたレイフェ。それを眺めつつ、マチュアはストームに一言。


「この子がレイフェか?」

「そ。セプツェンだ」


 ふむふむ。

 ならばとマチュアはレイフェをキャッチして地面に立たせる。

 そしてニイッと笑ってただ一言。


「お帰りセプツェン、初めましてレイフェ!!」

「は、はい、わたくしセプツェン、恥ずかしながら帰ってまいりました。そして初めまして、セプツェンの魂とストーム師父の神威から生まれたレイフェです。マチュアかーさんと呼んでいいですか?」

「ん、断る。他のシスターズと同じようにマチュア様とかマチュアさんでいいわよ。あたしゃまだ子持ちになりたくはないわ」


 そう呟くマチュアに、レイフェはマチュアそっくりの笑顔でニイッと笑った



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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