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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第十二部 ドタバタ諸国漫遊記

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徒然の章・その11・お約束貴族の襲来

 マチュアがアレクトー辺境伯領にやって来て既に20日。

 草原に店舗を構えて実に二週間が経過していた。

ダンジョンの攻略は相変わらず一進一退の攻防を続けている為、マチュアの店は引っ切り無しに忙しい。


「むっはぁ。もうぼろ儲けだぁ」

「その通りっぽい」

「店長、私達は何処までもついていきます」

「ええ。こんないい仕事ありませんよ」


 いつの間にかすっかり店員になってしまっていたマチルダとリーシャンの二人。

今更冒険者に戻っても、危険と隣り合わせの収入よりも、マチュアの店の日当の方が多いと分かったらしい。

 そんな理由でPX13も殆ど二人に任せっきりで、マチュアは銭湯でのんびりしたり、時折ダンジョンの散策に出掛けていた。

 斜め向かいの宿屋はすでに仮営業も開始、その隣の酒場も連日大盛況。

 更に噂が噂を呼んで、大勢の商人達がこの草原に店舗を構えるべく集まり始めている。

 事態を重く見たアレクトー辺境伯はこの草原に村を一つ作ることを提案、超高速で議会を取りまとめると草原を簡易な柵で覆っていく。

 商売は全てその柵の敷地内で行う事とし、それ以外で商売すると罰金が発生するなどの法整備も次々と進められていき、このダンジョン外の草原は今や開発ラッシュが始まっていた。

 こうなると誰にこの村を任せるか、領都の議会では様々な話し合いが続けられていた。


「今、領内にいる貴族の誰かに任せた方が良いですなぁ。幸いな事に、ここには食い詰めた法衣貴族が流れてきていますし」

「全くだ。あの10年戦争でちょいちょいと手を出しただけで爵位を得た者達だ、そろそろ領地を与えて貴族の務めというものを覚えさせた方が良い」

「私としては、最近になって力をつけたガルガント商会筆頭に村を任せてはと思いますが」

「あそこの会頭は女癖が悪いという噂だが」

「ですから領都から離すのですよ。後は、王都のアルバート商会に出入りしている商人がいましたなぁ」

「ああ、偽陛下か。確かにダンジョンの近くに店を出すという着眼点はいいが、それだけだ。事実、今の草原地区の復興には一切手を貸していないと聞くが」

「まあ、自分たちの利益にならないのなら手を出さない。普通の商人ですな。先見の明はあったようですが、気に掛ける事はありませんよ」


などなど。

アレクトーの領地に住まう貴族達によって構成された貴族院議会では、連日のように草原地区の開発についての議論が行われている。

中でもヒートアップしているのは誰が村長になるのかという所である。

どこの貴族も、自分の推薦したものに村長を任せたい。そこから得られる莫大な利益を手に入れたいのである。

アレクトー辺境伯が直接支配すると、あの村から得られる利益は全て辺境伯のものになる。

だが、そうでなければ、村の責任者が利益を集めて所定の税を納めなくてはならない。

逆に考えれば、誰かに村長を任せれば利益の一部は手元に残るが、辺境伯が支配すれば100%徴収される。

村として登録されたなら年間税率も低く、更に商人が出入りするとなれば販売税と買取税も期待できる。

特に、マチュアのPX13の利益を考えたら、かなりの収益も見込める。


結局、その日の話し合いは決着が付かず、村の責任者についての議論は後日に持ち越され、当面はアレクトー辺境伯の関係者から管理官を派遣する事になった。



◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「……という事で、明日以降は販売税と買取税が掛かりますのでご了承ください。こちらが、この村の税率となります」


翌日の午後、早馬でやって来た騎士がマチュアのいるPX13にやって来た。

差し出された書面はアレクトー領の貴族院の発行した正式な書面、それによると村長がまだ赴任しないので、それまでは管理官がこの村に常駐するとの事、明日以降の売り上げから税が発生するので、毎日必ず届ける事というぶっちゃけ命令書のようなものである。


「成程。で、その管理官は貴方ですか?」

「管理官はアレクトー辺境伯の甥に当たる方です。ガルシア・アレクトーという方で、まだ若い青年ですが何事も経験という事でして。まあ、ガルシア殿も騎士爵位を持っていますので、そこの所は宜しくお願いします」

「謹んで承りました。では明日・・からの納税を努めさせていただきます」


丁寧に頭を下げると、騎士はマチュアの前から立ち去る。

そしてカウンターの中で心配そうにしていたマチルダ達に一言。


「本日でPX13は閉店します。明日以降は他の商人に任せて、うちは銭湯の無料開放を行います‼︎ うちの販売はタオルと着替え。石鹸などで儲けを出します」

「あ〜、やっぱりそうなるっぽいね」


マチュアから手渡された書面を見ながらポイポイが呟く。

そこに書かれている税率は45%、1日の売り上げの半分近くを寄こせと言っているのである。

ちなみにポイポイは、この書面が偽造されたものだと瞬時に見切っている。

マチュアに至っては視認サイトの魔術でこれが偽造書面であると鑑定済み。そんなものに従う気はさらさらない。


「では、私達も冒険者に戻る事にします。今日までの給料で装備を整えられますし」

「明日からは街に戻って別の依頼に就こうと思いますので。今日までありがとうございました」

「いえいえ、今日までありがとね。じゃあ今晩はパーッと盛大にパーティーでもしましょう」


その晩、PX13の閉店セールと共に、マチルダとルーシェンの送別会が行われた。

冒険者たちも銀貨一枚で飛び込み参加、食べ飲み放題で朝方までどんちゃん騒ぎをする事になった。


………

……


翌日の昼。

街道をガラガラと馬車がやって来た。

辺境伯の甥であり騎士爵、それはもう絢爛豪華な馬車に乗り、護衛の騎士とお付きの執事、メイドを伴って。


そして街道沿いに作られた停車場に馬車を停めると、その横に停めてあるマチュアのゴーレムホース馬車をじっと見る。


「叔父上が陛下より賜ったゴーレム馬車と同じものか。一介の商人には贅沢なものだな。これも接収したいな」

「では、そのように手配します」

「うむ。この地は莫大な利益を出す。それはアレクトー一族が管理しなくてはならない、そしてこの村の村長は俺だ。全ての民は俺に従わなくてはならない、そうだな」

「仰る通りです」

「それでいい。行くぞ」


満面の笑みを浮かべるガルシアと気弱そうな執事。

そして一行は真っ直ぐに彼の宿泊地である建物へと向かう。

向かう。

向かった……

その途中にある屋敷の前で止まる。


「ほう。これは素晴らしい」


閉店したPX13を改造した平屋造りの建物、マチュアとポイポイが寝泊まりしているべースキャンプ。その正面で何やら値踏みすると、ややポッチャリ体形のガルシアは自分の泊まる宿へと向かう。


──チラッ

その様子を、マチュアとポイポイは応接間に据え置かれた巨大モニターで観察している。

クリアパッドの巨大版、魔力で動くクリアモニターで、屋敷の周囲を常に警戒している。


「あ〜、あれは駄目な貴族っぽい」

「駄目だよなぁ。実にジャイアニズムを守っていらっしゃる。せめて劇場版ならではの男気を見せてほしいものだな」

「ポイポイは海底鬼岩城が好きっぽい」

「あ〜。あれも良いなぁ。という事で、あと何分でここに来ると思う?私は40分」

「後15分っぽい」

「は?それ早過ぎじゃない?」

「あの男は、多分口に出さないタイプっぽい。無言実行、突然やって来て『この屋敷こそ、この私に相応しい』って来るっぽいよ」

「その時は、辺境伯に陳謝するよ、商人としてやっていられないからこの地を去りますって……さて、そんじゃあ銭湯の掃除でも始めますか」


マチュアとポイポイはバケツとモップ片手に屋敷から出る。そして隣接する銭湯に向かうと、のんびりと清掃業務を開始した。

幸い水とお湯は魔法で大量に作る事が出来るので、それ程困る事はない。

ジ・アースで学んだコモン・ローには清潔(クリア)清掃(クリーニング)という掃除洗濯用魔術もある。

この世界には普及していない為、あまり派手には使わないが、人目につかない銭湯の掃除なら構わないだろうと判断。


そして夕方には開店準備の為に一旦屋敷に戻ったのだが、

そのタイミングでガルシアが屋敷までやって来た。


「私がこの村の管理官のガルシアである。早速であるが、半日分の売上税を頂きたい。それと、ゴーレム馬車とこの屋敷は接収、銭湯も俺専用とする」


慇懃無礼な物言い。ならばとマチュアも一言。


「昨日でPX13は閉店したので売り上げはない。ゴーレム馬車と屋敷、銭湯は私個人のものであり、接収される謂れはない。以上だ、カ、エ、レ」


マチュアの目の前で真っ赤な顔になるガルシア。

そして護衛の騎士達がぐるりとマチュアを取り囲んだ。

ポイポイも素早くマチュアの前に立つと、一触即発状態になる。


「貴様、私を誰だと思っている、私の叔父上はこの地を治める辺境伯だぞ」

「だから何?あんたは辺境伯じゃないでしょ?」

「私は騎士爵だ、貴様を不敬罪で捕らえる事も出来るのだぞ……今なら間に合う、速やかに頭を下げるが良い、そうすれば財産没収で許してやらん事もない」

「不敬罪にはならないわよ。騎士爵は貴族じゃない名誉爵位だし……しかも領地を持たない法衣爵位でしょ?騎士としての八徳言える?」

「お、おのれ……その女を捕らえよ!!シルバーホーンにて裁判にかける」


すぐさま騎士たちが前に出ると、それをポイポイが制するが。


「ポイポイ、このまま速やかに捕まるから。後で吠え面かかせてあげるわ」


──シュンッ

一瞬で銭湯も屋敷も、さらにゴーレム馬車も空間収納チェストに収める。


「貴様、今何をした、俺の屋敷をどこに隠した?」

「だーかーらー、あんたのじゃないってば。私の物を私がどうしたって自由でしょ?」

「まあいい、領都に戻ってじっくりと話を聞かせてもらうさ。連れて行け」


両手を木製の手錠で拘束され、ポイポイとマチュアは馬車で領都まで連行されてしまった。

そして領都の騎士団詰所まで護送されると、そのまま地下牢へと投獄されてしまった。



◯ ◯ ◯ ◯ ◯



マチュアとポイポイが投獄されて四日後。

ガルシアは叔父であるジョージの屋敷にやって来た。


「誰かと思ったらガルシアか。監督官の仕事はどうだ?まだ四日しか経っていないが上手く仕事をこなしているか?」

「初日にはちょっと問題がありましたが、その後は概ね上手く行っています。今日、叔父上のもとに来たのは、明後日、貴族院で裁判を行いたいので許可を頂きたいのですが」


騎士爵のガルシアは裁判権を持ってない。

そのため貴族院に裁判開始申請を行わなくてはならないのだが、その為には男爵位以上の貴族の推薦か許可証が必要になる。


「ほう、いきなり裁判とは。何があった?」

「大したことじゃないですよ。俺に反抗的な態度をとった商人がいて、不敬罪としてそいつの財産全てを没収してやろうと思いまして……」

「ふむ、許可証なら構わないが、やり過ぎるなよ……騎士爵が不敬罪だけで市井のものを裁判にかけるなど、本来はあり得ないのだからな。不敬罪を宣言できるのは男爵位以上、それも正当な理由があってこそだ」

「ですから叔父上は甘いのです。折角辺境伯にまで上り詰めたのです、どうせならこの国の王を目指しても良いのでは?」

「それこそ陛下に対して不敬罪……ちょっと待て、捕らえたのはあの草原の商人といったな?」


ここでジョージはガルシアを睨みつける。

まさかこいつやりやがったか?


「ええ。例のゴーレム馬車を持っている商人ですよ。ちょうど赴任初日に色々とありまして。俺もあれが欲しかったのでちょうど良かったですよ。どんな手を使ったら一瞬で屋敷や銭湯が消えるのか、その秘密も聞き出すことにしました。まあ、死罪とまではいきませんが、犯罪奴隷として一生こき使ってやるつもりですよ……どうしました?」


呑気にワインを傾けるガルシアと、顔面蒼白になって席から立ち上がるジョージ。


「……お前は何を考えている?そもそもあの草原で何があった?」

「ですから、あの地の管理官として納税を求めただけですよ。まあ、多少割増してありますが、半月程度で莫大な利益を出した商人です、多少大目に搾り取っても構わないでしょう?」

「税率は?」

「まあ、多少大目に」

「だからどれくらいだ?」

「45%ほど」

「我が領地の最大税率は38%だ、それにもかかわらず……あの地はまだ村長はいない、そのような土地の税率は12%と決まっている。それに管理官の仕事はトラブルの解決だ……何で貴様がトラブルを引き起こす……まあいい、今日の所は帰れ。明日の朝、もう一度ここに来い」


そう叫ぶと、ジョージは問答無用でガルシアを屋敷から叩き出した。

そしてその足で、真っ直ぐに騎士団詰所へと走って行った。



………

……


ゴーレムホースにまたがり、アレクトー辺境伯は騎士団詰所へとやって来る。

そのまま地下牢へと向かい、一つ一つ中を確認して歩いていく。

そして一番奥の牢屋の中で、マチュアとポイポイがフカフカのベッドに座ってティータイムを楽しんでるのを見掛けると、マチュアも辺境伯を見つけて一言。


「はーい、ジョージィ……お元気?」

「今すぐにこの首を差し出したい気分ですよ。誰でもいいから、この牢屋を開けてくれ」


すぐさま騎士が牢屋の扉を開くと、マチュアとポイポイが中から出て来る。


「えーっと、無罪放免っぽい?」

「それとも今から裁判?」

「いえ、今日は私の屋敷にお泊まりください。謝罪は後程行いますので」


「「???」」


その辺境伯の言葉にマチュアとポイポイが首を捻る。


「どうして辺境伯が謝罪を?謝るのはガルシアではないですか?」

「その通りっぽい。ガルシアさんの寄親の貴族はどちら様?その人が責任を取るのならわかるっぽいけど」


貴族同士の付き合いには派閥関係も重要である。

どこの貴族も縦社会の繋がりがあり、それらを寄親・寄子制度と呼んでいる。

侯爵位以上の貴族は、下位貴族を新たに叙爵できる権限を持つ。その際、爵位を与えられる貴族を、誰が責任を持って監督するか決めなくてはならない。

その監督責任を持つ貴族が寄親であり、寄親の下に着く貴族が寄子となる。

ちなみに騎士爵位にはこの制度は当てはまらないため、ポイポイの問いかけは間違いである。


「……という事。この場合は誰も責任を負えないけど、まあ後は辺境伯のお宅でお話聞きましょそうしましょう」


という事で、マチュアとポイポイは辺境伯の屋敷へと向かう事になった。


………

……


それはもう美しい謝罪であった。

角度にして60度、それはもう微動だにしない。


アレクトー辺境伯邸にやって来たマチュアとポイポイ、二人が応接間に通され、椅子に座った直後。

アレクトー辺境伯は無言で頭を下げた。


「あいつは俺の甥にあたる。奴の不敬罪は俺の罪でもある。この首一つで許していただきたい」

「……何で不敬罪? 私は只の商人ですよ〜。それよりも、あの甥っ子の罪は何とかしないとね」

「不敬罪以外の罪があると?」

「身分を盾にしての恐喝まがい、税金の率を勝手に弄って無断徴収、貴族院発行の正式書面の偽造……我がカナン魔導連邦においての公式文書偽造の罰は、はいアレクトーさん」


「最大50年の犯罪奴隷……もしくは死罪」

「そういう事。それでどうするの?私は一介の商人なので彼の罪を裁く事は出来ないんだけれど」

「すぐにガルシアを逮捕拘束します。裁判は……カナン王都にて行ってもらいます。私では、甘くなってしまう」

「う〜ん。何かいい妥協案ないかなぁ。私としては、アレクトー辺境伯の手腕は買っているから失いたくないんだよ……ガルシアの一族と絶縁できる?」

「ガルシアは私の弟の息子にあたるのです。恐らくガルシアを逮捕すると弟が乗り込んでくるでしょう……」

「弟さんって、貴族?」


そう問いかけて、腕を組んでマチュアも考える。

だが、貴族が多すぎて思い浮かばない。


「あー。ちょいと魔法使うわ……深淵の書庫アーカイブ起動」

──シュンッ

一瞬で白銀の賢者モードに換装すると、そのままソファーに座ったままで深淵の書庫アーカイブで検索する。


アレクトーとしても、商人モードから白銀の賢者モードに変わった時点で相手は女王であると理解している。

なので、すぐに跪いて頭を下げる。


「あ、辺境伯、女王の衣装じゃないから頭上げて普通にして……って、言ってもダメか、許可します」

「畏まりました。それで口調などはどのように?」

「面倒いからタメ口でいいわ。ほら、あの船の中みたいに」

「またその話をぶり返しますか。まあそれが望みであれば……」


ようやく椅子に座るアレクトー。

そしてマチュアもようやく検索が完了したのだが。


「あっちゃあ……あんたの弟、ベルナー王国の男爵じゃん。また面倒臭いわ。もういい、全て無かった事にする」

「また大雑把っぽい」

「それは宜しくないです。罪は罪、しっかりと裁かなくてはなりません」


ポイポイとアレクトーの言葉にも一理ある。

なら、本人に猛反省してもらおう。


「明日の朝、ここに呼んで。あとは私が対応してあげるから……」

「了解しました…では早速早馬を送ります」


その後は緊張がほぐれたのか、アレクトーとマチュア、ポイポイは長閑な晩餐を楽しみ、ゆっくりと体を休める事にした。


………

……


そして翌朝。

朝一番にガルシアがやって来る。

家宰がそのままガルシアを応接間に案内すると、その部屋の中を見て絶句していた。

牢屋に捕らえていた筈のマチュアとポイポイが、のんびりとお茶を飲んでいたのである。


「な、何故貴様がここにいる?叔父上、この者こそ先日話した商人なのですよ!!おい商人、お前の前に居るのは、アレクトー辺境伯であるぞ……この無礼者が」


──シュンッ

そのガルシアの言葉をキーワードに、マチュアは元の白銀の賢者モードに姿を変える。

そしてポイポイも幻影騎士団の黒夜叉モードに姿を戻すと、マチュアはガルシアにニィッと笑う。


「貴殿の前に座っているのは、ラグナ・マリア帝国王室顧問の白銀の賢者だが。辺境伯と楽しいお茶会をしていて何か問題あるか?私の護衛が幻影騎士団なのは、何か問題あるか?」


──ヘナヘナ……


あ、ガルシアが腰を抜かして床に座り込んだ。

顔面蒼白+大量の汗=死を覚悟した模様。

その姿を見て、アレクトーはガルシアに向かって彼が捏造した書面を取り出してみせる。


「マチュア殿から預かったものだが。カナン魔導連邦の法により、公式文書偽造の罪で貴様を拘束する……何か言いたい事はないか?」

「あ、ありません……」


そのままガルシアは警備の騎士によって捕らえられ、その場を後にする。

そしてマチュアも元の商人モードに変わると、アレクトーに一言。


「そんじゃあ後は宜しく。彼の罪を暴いたのは私、その報告を受けて貴方は動いただけ。これで何も問題はないでしょ?」

「畏まりまし……ああ、そうですな。それで十分かと。あとは帝国法に基づいてあの者を処分します。もし白銀の賢者殿にお会いする機会があれば、このご恩は忘れないとお伝えください」

「ん……そう伝えておきますわ。そんじゃ、次の領主のとこに行こうかな」


マチュアがゆっくりと腰を挙げると、ポイポイが慌てた顔でマチュアを見る。


「あ!!領地のピンチを忘れていたっぽい」

「何それ?」

「ダンジョンの魔物を間引きしてないっぽい。、もう四日も放置していたし、PX13も銭湯も閉店してたから、あの戦場環境は最悪っぽいよ」


その言葉に、マチュアはゆっくりとアレクトーの方を向いて、満面の笑顔でサムズアップ。


「辺境伯、がんばれ」

「あの、助けてくれないのですか?」

「私がやると、あのダンジョン破壊して終わるよ?あの草原に投資した分を全て赤字にしたいの?」

「では適当に間引きを……」

「いつまでもいるわけじゃないし。なにか良い方法はないかなぁ……まあ、対処方法として、ポイポイさんや、出撃」


──シュンッ

一瞬でポイポイの姿が消える。

そしてマチュアも深淵の書庫アーカイブを起動して、適切な対処方法を探す事にした。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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