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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第11部・神魔戦争

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日常と非日常・その9 賢者の弟子と、幻影騎士団とストームと

『異世界ライフの楽しみ方』の更新は、毎週火曜日、木曜日、土曜日を目安に頑張っています。

 ヴィマーナ・司令室。


 エルサレムから帰還したストームが、イライラしつつ何かを考えている。

 三三矢善から異世界転生してストームとなり、そして魂が昇華して亜神ストーム・フォンゼーンとなる。

 その事実を知っているのは創造神と八柱の神々以外には、マチュアしか知らない。

 だが、エクストラという存在はストームの正体を知っている。

 一体どうして、なぜ?

相手が無貌の神の眷属であり、8つの世界全てを見る事が出来るからなのか?

考えていても埒があかない。


「俺も知らない魔術‥‥聖剣召喚と自動攻撃か。マチュアなら何か知っている‥‥っと、そうか」

 スッと立ち上がるストーム。司令室中央コンソールに繋がっている深淵の書庫アーカイブの中で解析を続けているツヴァイの近くに歩いていくと一言。

「ちょいと大使館いってくるわ。何かあったら連絡くれ」

「はい了解しました。例のエクストラとかいう存在、正体がわかりましたか?」

「判らないという事が分かった。これは大いなる進歩なのだが、どうしても腑に落ちない部分があってねぇ‥‥という事だ」

 そう告げてから、ストームは地上区画にある転移門ゲートを越えて、異世界大使館へと向かって行った


‥‥‥

‥‥


「おや、ストームさんどうしましたか?」

「いや、赤城に用事がある。ちょっと教えて欲しいんだが」

 席について書類のチェックをしている赤城の方を向いて問いかけると、赤城も書類を机の上に戻して頷いている。

「何かあったのですか?」

「ああ、確かお前も『賢者の弟子』だよな? 異世界の聖剣を召喚して自在に操る魔術を知っているか?」

 そう問いかけると、赤城は右手をスッと前に差し出す。


──フワッ

 すると赤城の手の中に真っ赤な魔導書が生み出される。

 それを手に取って静かに目を閉じる。

「サーチ。召喚術の項目から異世界の聖剣を呼び出す魔術‥‥と」

 魔導書がゆっくりと輝き、パラパラと自動的にめくれて行く。

 そしてあるページにたどり着くと、そのまま停止した。


「該当する魔術は一つだけですね。でも、これは参考魔術でして、私は使えない魔術なんですけれど」

「それでいい、教えてくれ」

「はい。術名は『神代聖剣召喚術』といいまして。契約した聖剣、もしくは所有が認められた聖剣を召喚する魔術です。これによって召喚された聖剣名は自我を持つゴーレムとなり、契約者と共に戦うといいます」

 ふむふむ。

 ゴーレム化していない時点で少し違う。

「それは、召喚した聖剣はどんな形になる?」

「人型のゴーレムですよ?」

「人型かぁ。それは違うなぁ‥‥赤城、剣のままの聖剣を自在に、そう、自動追尾攻撃させるような魔術は?」

──ポン

 と手をたたく赤城。

「それでしたら『剣舞』という物体操作系魔術ですね。例えば、先ほどのストームさんのいう魔術でしたら‥‥どこかに置いてある自分の聖剣を『引き寄せ(アポーツ)』して手元に呼び出し、それを剣舞で攻撃させるという方法もありますよ?」

 その説明を聞いてしばし考え込む。

「その二つの魔術を一つにすることは?」

「私には無理ですけれど、マチュアさんでしたら可能ですよ。創成魔術といいまして、幾つかの魔術を一つに組み込む事が出来ますから」

「という事は、相手はマチュアクラスの魔術師かよ‥‥対魔術防御壁でも用意しないとならないなぁ‥‥うーむ。これは参ったぞ」

 腕を組んで考え込むストームだが。

 さすがに三笠も剣聖の困っている姿を見ていられないらしく、ストームを向いて一言。


「精霊魔術でしたら、光の上位精霊であるラスターの魔術『対魔術反射鏡(リフレクトミラー)』で行けるのでは?」

「あ~、それしかないかぁ。しっかし、それには問題があってなぁ」

 そう告げてから、精霊魔術の、特に今の話に出てきた光輝精霊ラスターの魔術について説明を始める。


 全ての魔術について共通な対抗策として『対魔術防御壁(アンチ・マジックシェル)』がある。

 相手の放った魔術とおなじ波長の壁を作り出し、お互いを共鳴干渉させて対消滅をさせようという魔術であるが、この共鳴干渉が曲者である。

 例えばファイアーボールの魔術が『火の10』とすると、この『火の10』と同じ魔力を練り上げて壁を作ればいい。が、これはあくまでも同じ魔術体系での話である。

 一つの世界に存在する魔術には大なり小なり特徴がある。

 先の話ならば、『火の10』で練り上げたファイアーボールを消滅させるのなら、魔術の『対魔術防御壁(アンチ・マジックシェル)』であろうが精霊魔術の『対魔術反射鏡(リフレクトミラー)』であろうが、『火の10』という魔力を使えばどちらでも可能である。

 だが、これが異世界の場合、ファイアーボールの魔力が『ファィアー・10』であっても、ストームたちの世界の魔術『火の10』では消滅させられない。

 要は波長が違うのである。


 そしてエクストラの使うであろう魔術の系譜が、ストームにはまだわかっていない。


 逆にいうなら、八つ全ての世界の光輝精霊ラスターと契約さえしていれば、ストームはどんな世界の魔術でも対消滅させられる。


「カリス・マレス、アヴァロンのある世界、地球フェルドアース、グランアーク‥‥この4つの世界での精霊契約は済ませてあるが、八つの世界の残り4つの契約は出来ていない。その残りの魔術の系譜であった場合、対魔術反射鏡(リフレクトミラー)は効力を発揮せず魔術の直撃を受けてしまう‥‥。まずいよなぁ‥‥」  

 コトッとディビットが持ってきた珈琲を受け取って卓袱台に座る。

 お茶菓子として置いてある歌舞伎揚げを食べつつ珈琲を飲むが、いまいち考えが出て来ない。

「困ったもんだよなぁ」

「あの、ストームさんの神威でこう、波長を切り替えるという事は出来ないのですか?」

 そう十六夜が問いかけると、ストームはさらに腕を組んで天井を見上げる。

「神威でか‥‥って、ちょいまて、何でお前が‥‥あ、そっか」

 慌てて十六夜に問いかける。

 ストームが神威を纏っている事、つまり亜神である事を知っているのは幻影騎士団とシルヴィー、カレン以外にはごく僅か。そして十六夜は幻影騎士団・公儀隠密御庭番衆の一人。知っているのが当たり前である。


「私はポイ師匠の弟子ですわ。幻影騎士団でも情報収集能力については一二を争う程と自負しております」

 嬉しそうにそう告げる十六夜。すると、なぜかストームは赤城を見る。

「わ、私は白銀の賢者の弟子。姉弟子ミアとともに、魔導の深淵を探求する者です」

「そうだよなぁ。ここには幻影騎士団が二人もいるんだよなぁ」

 うんうんと頷くストーム。

 すると、ちょうど決裁書を持ってきていた高島がスッと手を上げて。

「ストームさん、俺も幻影騎士団に入りたいです!!」

 きっぱりと叫ぶ高島。

 すると、ストームは三笠をちらっとみて一言。

「冒険者ランクAが最低条件。それでいていくつかのミッションを受けてもらう。それをクリアしないとなぁ‥‥ 」


──ガクッ  

 思わず項垂れる高島。

「まあ、高島君の場合は、同じ騎士団のミアでしょうけれど」

 やれやれと赤城がつぶやくと、高島がカーッと真っ赤になる。

「そそそそそそんなんちゃうわ、俺もマチュアさん力になりたいのであのその」

 動揺して言葉が続かない。

 すると三笠が受け取っていた決裁書に判子を押して高島に戻す。

「マチュアさんの力になりたいのなら、ここで成すべき事を成しなさい。まず自分に何が出来るかを考えて、その中から自分のするべき事を見つけ出す。最適解をいくつも持たなくては、マチュアさんの右腕にはなれませんよ?」

「りょ、了解っす‥‥とほほほほ」

 とぼとぼと事務局を後にする高島。

 それを見送ってから、ストームはスッと立ち上がって。


「やれやれ、それじゃあ久しぶりに息抜きすっか。マチュアの顔でも見たら何かいい答えが出るだろうさ」

 そう呟いてから、ストームは精霊の散歩道(エレメンタル・ステップ)でスッと姿を消した。

「あ、あの、三笠さん、マチュアさんって、今どんな感じですか?」

「私もそれを教えて欲しいですわ」

 ストームが消えてから、赤城と十六夜が問いかけるが、三笠スッと魂の護符ソウルプレートを取り出してチラッと裏を見る。

 いつもと同じ女王親衛隊の文字がきれいに輝いているので、三笠もニイッと笑ってしまう。

「いつもと同じ。元気そうですよ」

 そう告げると、赤城や十六夜だけでなく、事務局にいる職員もホッと一安心。

 しかし、その容体を見に行ったストームは、信じられない事実を知る事になった。



 〇 〇 〇 〇 〇



 カリスマレス、神界エーリュシオン。

 その中央にある巨大な神殿にストームはやって来た。

 直接神殿内に転移するのではなく、しっかりと正面階段を昇って行き、門番にセルジオとの謁見を頼む。

 すぐさま許可を得られたので、ストームは勝手知ったる神殿内と、マチュアの眠っているプールへとやって来て‥‥。


「いねぇし。いつの間に回復したんだ?」

 ボリボリと頭を掻きつつ呟く。すると、クルーラーとセルジオが奥から歩いてくる。

 ストームがやって来たという報告を受けて、おそらくここに真っ直ぐに来るだろうとやって来たのである。


「やはりここか。久しいなストームよ」

「うむ。我も久しぶりに会うな。以前よりキレが良くなっているではないか」

 武神セルジオの言葉に、思わずモストマスキュラ―。

「それで、マチュアは何処にいるんだ? ここが空っぽという事は、もう回復したんだろう?」

 にこやかに問いかけると、クルーラ―が一言。

「回復はした。だが、マチュアは堕天した‥‥」

「うむ。魔神マチュアとなってからは、彼女の神威の波長を捉えられなくなっている」

 ふーん。

 へーぇ。

 しばしキョトンと考えるストーム。


「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 そのストームの絶叫を聞いて、イェリネックとパスティも慌ててストームの所まで走って来た。

「い、今のはストーム、一体どうしたの?」

「うむ。その様子では、マチュアの事を聞いたのだな?」

 そう問いかけるイェリネックに、ストームはコクリと頷いている。

「そ、そうか‥‥マチュアが堕天したか‥‥それで、あいつは‥‥敵なのか?」

 思わず問いかけるストーム。すると、クルーラ―が事務的に淡々と告げる。

「魔神と化したマチュアの放つ神威、それは無貌の神の系譜である。マチュアの魂は、悪神となりて無貌の神に連なった。もう誰もマチュアを止める事は出来ない‥‥」

 そう告げられて、ふとストームはエクストラを思い出す。

「まさか‥‥エクストラ、あれがマチュアなのか?」

「我らはこの世界の神々ゆえ、他世界での出来事はわからぬ」

地球フェルドアースでストームが会ったエクストラとかいう人から、マチュアの波長は感じたの?」

 そうパスティに問われると、ストームも腕を組んで考えてしまう。

「言われれば確かに。あいつはマチュアとその系譜にしか使えない深淵の書庫アーカイブを使っていた。俺の事を三三矢善とも呼んでいたが‥‥そうか。あれがマチュアだったものなのか‥‥」


 壮大な勘違いをしつつ拳を握るストーム。

 もしもマチュアが暴走したのなら、それを止めるのもマチュアの友人であるストームの仕事。

 ここは覚悟を決める必要がある。

 そして、この事はストーム自身の心に留めなくてはならない。

 こんな事実を、一体誰が受け止められるだろう。


「ありがとうよ。それじゃあ、俺がマチュアを止めてくるわ‥‥」

 少し悲しそうに呟きつつ、ストームは精霊の散歩道(エレメンタル・ステップ)地球(フェルドアース)へと帰還した。 

 そして神々もまた、言葉を発する事なく自身の社へと戻って行った。



誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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