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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第10部・悪魔っ娘大騒動

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エデンの章・その8・送還の魔法陣と勇者の仕組み

 マチュアが名誉ある決闘を終えてから半月後。


 その日、マチュアはペルディータ王国王城・謁見の間に立っていた。

 周囲には、ペルディータ王国の公爵家や三人の侯爵、五人の伯爵、そして召喚勇者の三人が集まっている。


「マチュア殿、少しの間に、よくぞここまでの地位を得ましたな」


 王座に座って話している国王ジョージ。

 本来なら、その場に跪いているべきなのだが、マチュアは凛とした表情を見せて、そこに立っている。

 この態度には、侯爵の一人が激昂しているのだが。


「貴様、伯爵位の者が跪かないとは不敬であるぞ」

「まあ良い。マチュア殿は、他の三人と同じく召喚勇者、私が礼を尽くすことはあっても、私に礼を示す必要はない……そうであろう?」


 勇猛果敢なディファレント侯爵を、国王が嗜める。

 これには、横で笑いをこらえていたカリアッハ侯爵も頷いている。


「そういう事だ。マチュア殿については、地位こそ伯爵位ではあるが、召喚勇者の持つ特権は全て与えられる。彼女が協力を求めて来たならば、それに尽力してくれたまえ」


 王の命令は絶対。

 たかだか伯爵に尽力などしたくはないが、相手が召喚勇者となると話は別。

 勇者を除く、その場の全員が、改めて跪いて頭を下げる。

 この間、マチュアは終始無言。


「さて、マチュア殿に与えられる領地であるが、まだこの世界のことを詳しくわからないマチュア殿の為に、司政官を補佐官として付ける事にした」


 そう話すと、後ろから一人の女性が現れる。

 何処かの令嬢か、はたまた貴婦人か。

 そんな雰囲気を醸し出している女性が、マチュアの横に跪く。


「その者はマルガレーテという。この王城に勤めていた司政官の一人だ、今後わからない事があったら、彼女に聞いてくれ」

「……成程。そういう事なら、マルガレーテさん、色々と教えてくださいね」


 ニコリと笑うマチュア。

 これには、マルガレーテも無言で頭を下げた。


「それでは、これにてマチュア・カナンの伯爵位叙任式を終える。一同、下がってよし……」


 この言葉で、召喚勇者以外の全員が部屋から出る。

 そして室内には、ジョージ国王と召喚勇者の四人だけが残ったいた。


………

……


 少しだけの沈黙。

 そして、それを払拭するように、ジョージはマチュアを見て一言。


「その……無能扱いして城から放り出した事を、まだ怒っているのか?それに、マチュア達に施されている術式もすぐに解除させる……それで許してくれるか?」


──プッ

 これには、マチュアもおもわず吹き出す。

 先ほどまでの威厳の塊のような国王ではなく、今、目の前にいるのは、マチュアたちを召喚した時のあの心優しい国王である。


「術式ねぇ……何となく想像は付くけど、それは自分で外せると思うからいいわ」


 はぁ、とため息をつくマチュア。

 そのやり取りの意味を、マリア達は理解していない。

 だが、この手の召喚で、召喚したもの全てが味方になるとは限らない。

 そのための『保険』の事だろうと、マチュアは理解した。


「さて、話は戻しますけれど、あれは、わざとですよ。自分の能力にフィルターをかけて、都合よく見せていただけです。『フェイクステータス』という能力でして、いきなり本気を出して、うまいこと利用されたりしないようにしていただけですよ」


 その話には、全員がポカーンとしている。


──ピッピッ

『フェイクステータス解除……』


 すぐさまウィンドウで解除すると、マチュアは手のひらに魔力を集める。


「国王様、勇者召喚に必要な魔力量ってわかりますか?」

「おおよそだが、一度の儀式で10万は必要。普通の人間の魔力が10から50ぐらいなので、その量がどのようなものかは想像がつくだろう?勇者召喚魔術師が、媒体となる杖やオーブにその量を蓄えるのには、約千年の時が必要になる」


──シュゥゥッ

 手のひらに集めた魔力が金色に輝く。

「これが、10万の魔力の塊ですね。これでも、まだ、私の魔力は尽きる事はありません……そして、本気も出していません」


──アワワワワ

 この光景には、マリア達も後ろに下がってしまう。

 そして国王も、目の前の現実を受け入れきれずにポカーンとしているだけであった。


──ドダダダダダダッ

 すると、部屋の外から宮廷魔術師のアルク・プラネテスが走ってくると、無礼を承知で部屋に飛び込む。

 そして、目の前のマチュアを見て呆然とする。


「そ、その魔力は……」

──スッ

 全て体内に戻すと、ふたたびフェイクステータスを起動する。

 そして、国王やマリア達もようやく落ち着きを取り戻した。


「陛下、今の魔力はマチュア殿ですか?」

「う、うむ……」

「その魔力があれば、もう一度勇者を召喚できますぞ‼︎どうですマチュア殿。その力をお貸しいただけますか?」

「うん、断る」


 あっさりと切り捨てる。

 これにはアルクも驚いているが、国王は、そうだろうなぁ……と呟いていた。


「断るだと?召喚された勇者が断るとは……」

 すぐさま手にした杖に魔力を込めると、マチュアとマリア、綾奈、疾風の額に隷属紋が浮かび上がる。


「これでどうだ……マチュアよ、すぐに召喚魔法陣を起動させる手伝いをするのだ」


 勝ち誇った顔のアルク。

 だが、マチュアは右手をマリア達に向けると、一言呟く。


却下リジェルト……」


──バジィィィィィッ


 呪いではない魔術なら、マチュアに解除出来ないものはない。

 マチュアを含めて四人の額から、隷属紋が砕け散った。


「こ、こんなバカな……」

「まあ、今のでやり方わかったわ……なら、こっちも本気で行くよ。マチュアが真名にて命ずる。アルク・プラネテス、隷属紋の術式を教えなさい」

──ヒュゥゥゥンッ

 マチュアの言葉が、アルクの脳裏に染み込む。


「そんな言葉……うぁ……」


 抵抗したのは一瞬。

 すぐさまアルクは隷属紋の術式をマチュアに告げると、マチュアはアルクの額に手を当てると、隷属紋を刻み込んだ。


「アルク・プラネテス。我が名はマチュア・ミナセ。我が名に従いなさい……」


 そう呟くと、アルクの額に三つの隷属紋が浮かび上がる。

 カリス・マレス式とジ・アース式、そしてエデン式の三つの隷属紋。

 これにはその場の全員が驚いている。


「さーて、これでいいや……って、どうしたの?」


 キョトンとしている三人。


「い、今。マチュア・ミナセって」

「それに、その魔力量……」

「最初からずっと思っていました」


「「「ミナセ女王の影武者さんでしたか」」」


 うわぁ。

 何て斜め上を走る回答。

 もっとも、この外見なら止むを得ないだろう。


「シッ。私の任務は、マチュア様の命を狙ったり策を弄する者の調伏。だから内緒ね?」

──コクコク

 これには全員が納得する。

 そしてマチュアは、ジョージ国王に軽く会釈する。

「隷属紋の話、よく教えてくれました。私は今後も、国王を信じます……さて、アルク、勇者の送還魔法陣まで案内しろやぁ」


 拳を鳴らしながらニィィィッと笑うマチュア。

 すると、アルクは渋々立ち上がる。

「こんな屈辱……どうぞこちらです」

「うん、まあ、変な命令はしないから安心して……でも、隷属紋で私たちを縛り上げた挙句、強制した事は許さない」

「とほほ……」

 そのままアルクについて行くマチュア達。


「しかし、あんなものが付与されていたなんて」

「それも、かなりの強制力を持ってましたね」

──バーン

「この私に命令できるのは、私の両親と大人のみですわ‼︎後、友達……それと」


 マリア、意外と良い人かも。

 そんなこんなで王城地下に向かうと、アルクは広いホールに出た。


………

……


 王城地下の広い空間。

 勇者送還の魔法陣が設置されている部屋にやってきた一行は、目の前で輝いている巨大な魔法陣を見て驚いていた。

 その魔法陣の四方には、魔力を放つオーブが設置されており、色鮮やかな輝きを放っている。



「ここが勇者を送り返す魔法陣です……まだ、魔力が足りないので、送り出す事はできません」

「理論は?」

「勇者召喚は、召喚目的が達成させると、このオーブに送還に必要な魔力が貯まります。目的は、ここに刻まれている……『長き戦いに終止符を』。これです」

「……何、そのファジーな条件は」

「具体的には、『南方の蛮族国家の侵略を止める』、これですな」


 あら、何か分かりやすい。

「へぇ。なら、それが終わると、この全てのオーブが輝くのですね?」

「その通りです」

「ちょっと調べても良いかしら?」

 そう告げてから、マチュアは魔法陣にそっと触れる。


深淵の書庫アーカイブ起動……魔法陣の解析開始……」


 突然の深淵の書庫アーカイブに、その場の全員が驚く。

 そして解析を終えると、マチュアは魔法陣の中心に立つ。

──スッ

 空間から、カナンの異世界ギルドにいるツヴァイ宛の手紙を取り出すと、それを魔法陣の真ん中に置いた。


「……魔力の凝縮……起動開始」

──ブワン‼︎

 突然、魔法陣が金色に輝くと、手紙が魔力分解して消滅する。

 そして輝きがフッと消えると、マチュアは魔法陣から外に出た。


「マチュアさん、今、何をなさったのですか?」

 マリアがそう問いかけるので、マチュアは一言。

「へ?カリス・マレスの異世界ギルドに手紙を送っただけ。残念だけど、生命体は送れないのよねぇ……」


 送還の魔法陣は、基本的には召喚魔法と同じ。

 ここに魔力を集める事で、神々の結界も穿つ魔力の針を作り出すらしい。

 それにより結界に綻びを作ると、後はランダムの世界に繋げて、対象者を魔力分解してこちらに呼び出す。

 帰りも原理は同じなのだが、ある種のギアスのようなものが働き、目的を遂行するまでは帰る事が出来ないらしい。


「では、私達が手紙を書いて、それを送り届ける事は可能ですか?」

「それが出来るなら、俺たちが異世界で頑張っているっていう手紙を送りたい」

──ビシッ

「お願いしますわ、マチュアさん‼︎」

「送り先は異世界ギルド、そこから配達してもらうので、ちゃんと住所と名前も忘れずに。向こうからは受け取れないから、それは諦める事、なら今すぐに書いてくれるかな?」


 そう話してから、マチュアはふと、首を捻った。

 そしてすぐさま深淵の書庫アーカイブを起動すると、この送還の魔法陣の解析データを再生し、メモリーオーブに取り込む。


──シュンッ


「あ、やっぱり書き終わったら持ってきて。店の三階に、この魔法陣作ってみるから」

「あ、それは助かります。いきなり書けと言われても困るので」

「ええ。では、部屋で書いてから、マチュアさんの所に持っていけば良いのですね?」

「そういう事。そんじゃあ帰りますね」


 傍で呆然としているアルクにそう告げると、アルクも地上に戻って行く。

 そして皆に別れを告げて、マチュアはカナン商会へと戻って行った。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 カナン商会三階奥、従業員区画


 マチュアの部屋から先の廊下は、従業員専用の区画として壁が新たに作られて、一般客が入らないようになっている。

 その奥の一部屋の中身を片付けて、マチュアは王城地下にあった送還の魔法陣を床全体に展開した。


「あのオーブまでは作れないから、召喚時の条件なし。魔力で結界を穿つ、空いた穴からは物品を送れる……さて、実験するか」


──ブン‼︎

 膨大な魔力を注ぎ込み、魔法陣を展開する。

 やがて半円状の立体魔法陣が完成すると、座標を異世界ギルドの、マチュアの執務室に固定。

 そこから細く長く魔力を糸のように伸ばすと、執務室の机に繋げる。


「さてと……永続化パーマネント……魔力の糸をロック……切れるか切れないか?」

──フッ

 やがて魔法陣の輝きが消えて行く。

 すると、魔法陣の中央から、天井に向かって細い魔力回路が残った。


「次に、魔法陣の書き換え……魔力の糸を固定したまま、これを伝って転移門ゲートの展開……」

──シュゥゥッ

 魔法陣の中心に、銀色の扉が生み出される。

 そして扉を開くと、執務室の光景が広がった。


「よっしゃあ、これでこの世界も自由に行き来出来るぞ」

 すぐさま執務室に向かおうとして、一歩踏み込もうとすると。


──ドン

 見えない壁にマチュアはぶつかった。


「痛たたた。空間の接続は出来ているから、問題は生命体の出入りかなぁ?」


 そう呟いて、空間収納チェストから銀貨を一枚取り出す。

 それを転移門ゲートの外に向かって、力一杯投げつけると、スッ、と転移門ゲートを越えて、執務室の壁に直撃した‼︎


──ドゴッ

 その音で、事務室の職員やフィリップ、そしてツヴァイも室内に飛んでくる。


「へろう。聞こえる?」

「……はぁ。無貌の神によって何処かに強制転移されたとは聞いてましたが。帰って来れますか?」


 やれやれと、困った顔で話してくるツヴァイ。

 他の職員は元気そうなマチュアをみて、少しホッとしている。


「いやぁ、この結界がまた……そうか、無貌の神の結界かぁ。すまんが、正攻法でないと帰れない。この転移門ゲートな。繋がったけど生命体は通れないらしいのよ」

「どうりで。突然、手紙が届いてどうしたものかと考えてましたよ」

「そこで済まないが、ウォルトコで買い物してきて。そんで、拡張エクステバッグをこっちに渡して欲しいのよ」

「はぁ、そっちでもなんかしてますか。帰って来れそうですか?」

「勇者召喚の条件がクリアしたら帰れると思うんだけどなぁ。まあ、状況が変わったらここで連絡するわ、何か急ぎの仕事ある?」


 その問いかけには、ツヴァイも腕を組んで考える。


「カルアドの件が滞ってますよ。創造神から、銀の鍵はお借りしてあるので、私でもどうにか出来ますが……どうしますか?」

「はぁ、それだけ?」

「オタカラトミー関係の開発は、アハツェンがサポートしてます。それ以外は、大体私と三笠さんで賄ってますよ」

「カルアドの件、ルシアだろ?北方領土を寄越せって話はどうなっている?」

「国後島で話は付きますが、それで良いのですか?」


 その問いかけには、少し考える。

 もう少し条件を引き出す事は出来るはず。


「色丹島と国後島の二つを合わせて交渉して欲しいと、三笠さんに話しておいて。ゼクスたちの調査報告は来ている?」

「ええ、先日帰還しましたよ。近々、報告書は届くと思いますが、どうしますか?」

「ん〜、結果だけ教えてくれれば良いや。それに合わせて、ルシアと交渉して。北方領土は全てカナンで押さえるって話ししたら、三笠さんはわかるから」

「了解です。この転移門ゲートは開きっぱなしですか?」

「そ。急ぎ必要なのはウォルトコの日用雑貨ね。衣服や下着類、それと薬も一通り宜しく‼︎」

「はぁ。では、明日の朝までに用意しますよ。ここから通せば良いのですね?」

「あ……ちょいと待った、リンク繋がってる?」


 そう問いかけて、マチュアは空間収納チェストの中身を確認する。


「さっきの手紙を空間収納チェストに放り込んでくれよ」

「はいはい……」


 すぐさまツヴァイは事務室から手紙を持ってくると、空間収納チェストに放り込む。

 マチュアも空間収納チェストを開いて中身を確認すると、しっかりと手紙は届いている。


「よし、空間収納チェストは繋がったな。まあ、あとはこっちで色々とやるから、緊急時には手紙ください。後、ここは一旦閉じるから」

「了解です……あの、一ついいですか?」

「ん?」

「ジ・アース、どうなったのですか?」


──ウーム

 思わず腕を組んで考えてしまう。

「何だか、よく分からないのよ。上手くいっているかもしれないし、行ってないかもしれないし。無貌の神の罠から抜けた事だって、結果としてはあの神の作った結界の中なんだから……そこまで私を隔離したいのかなぁ」

「そうですか。ジ・アースには、ゲートは繋がりますか?」

「無理だろうなぁ。あそこには虹の鍵がないと行けなかったし、そもそも、開いたところで生物は出られない。なので、当面は静観する事とする……まあ、勇者は育成したから大丈夫でしょ?」

「はぁ……では、そろそろ執務に戻りますので。買い物は全て空間収納チェストに放り込んでおきますよ」

「はい、そんじゃあ宜しく……」


──カチャーン

 銀色の扉を閉じる。

 魔法陣の上には、閉じられた転移門ゲートが静かに輝いている。


「……何かもう、お腹いっぱいだなぁ……」


 そう呟くと、マチュアは部屋から出ると、魔法鍵マジックロックを扉に仕掛けた。

 気が付くと、既に夕方。

 マチュアは今日の仕事は全て放棄して、酒場でのんびりとする事にした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 勇者召喚によってやってきた異世界人。

 彼らには、かなりの権限が許されている。

 その中の一つが、王宮の外れにある離宮での生活である。

 専属のメイドと護衛騎士がついており、基本的に生活するのに不自由がないようになっている。

 この日も、離宮の外にある庭園のテラスで、三人はのんびりとしたティータイムを楽しんでいる。



「それにしても、この魔術の鍛錬は難しいですわ……」

 人差し指を立てながら、マリアが指先に集まったビー玉大の魔力球を眺めている。


「でも、マリアはもうそこまで達したのよね。私なんて、まだ小豆大の魔力がコロコロしているだけなんだから」

 溜息をつきながら、綾奈が呟く。

 その近くでは、疾風が腕立て伏せを行なっていた。


「ハッハッハッハッ……俺には魔力は関係ないからなぁ。マチュアさんって、拳の戦闘は見れたけど、武器を使った体術はどうなんだろう」

「さあ?明日、Day&Nihgtに行ったら聞いてみたらよろしいのでは?」

「とは言いますけれど、毎日あの店で買い食いしていると、少し洋服がやばい事になってますよ……マリアさん、どうしてあのハイカロリーのオヤツを食べて、その体形を維持できるのですか?」

「ホーッホッホッホッ。固有スキル『威風堂々』の効果で、私の体形は常に一定の状態を保てますわ」


 何それ、そのスキル欲しい。


「……狡い。私のスキルでは、そういうのがないのですよ……まだ使い方も理解出来ていないのに、疾風はどうなの?」

「ん?」

 腕立てを終えて汗をぬぐっている疾風。

「俺のは戦闘用だから、実際に戦いにならないと無理だわ」

「問題は、その戦いなんですよ……」


 綾奈が告げると、マリアも疾風も頷く。


「南方の領土を占拠した蛮族の討伐か。これって、蛮族を殺せって事だよなぁ」

「蛮族といえども、知恵がある者を殺すのは宜しくありませんわ。何かこう、話し合いで解決する道を模索しないといけませんわね」

「幸いな事に、蛮族は人語も理解できるし文明もあります……なら、その道はあるのではないでしょうか」

「でもよ、それが通用するのなら、隣国の騎士を派遣してもらう事もないんじゃないかなぁ。話し合いに応じる意思は、相手は持ち合わせていないと思うぞ」


 疾風の言葉には、マリアたちも黙ってしまう。


「マチュアさんなら、どのような選択肢を選ぶのでしょう……」

「蛮族の脅威を取り除かない限り、わたし達は地球に帰る事は出来ないのですから……」

「そのために、蛮族を殺すというのも……」


 そんな話し合いが延々と続く。

 やがて疾風は騎士団の元に、綾奈とマリアは宮廷魔導師の元に訓練をつけてもらいに向かう。

 毎日同じ訓練。

 だが、基礎はしっかりと身に付きつつある。


 まだ若い高校生達は、どんな結論を導き出すのだろう。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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