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悪魔の章・その10・王都よりの〜使者っ

 マチュアがこの世界に来て三ヶ月。

 神聖アスタ公国はいまだのんびりと発展途上中。


 より戦力を強化する為、騎士団が本格的に訓練を開始。

 それまでは日用雑貨の全てをバスケット商会から購入していたのだが、カナン商会のお陰でその必要もなくなった。

 その分の予算で国が大量の武具を購入し、騎士団の装備が少しだけ向上した。


「‥‥冒険者ギルド?」

 酒場の一階でのんびりと酒を飲んでいるマチュアの元に、元老院の使いがやって来ている。

 話の内容は、冒険者ギルドの復活らしい。


「ええ。そろそろ冒険者ギルドも復活した方が良いのではと話が出ていまして」

「へぇ。何の為に?」

 そう問われると、使者は自信満々に一言。

「野盗や荒くれのファミリーに占拠されている衛星都市の奪還です。その為にはより強い戦力を必要としています」

 確かに、未だに虐げられている人は大勢いる。

 その人たちを救うのには良いのかもしれない。

 だけど、なんで私にその話するの?

「それは構わないと思うけど。何で私に聞きに来るの?勝手にやれば良いじゃない」

「元老院でもそれで揉めてました。わざわざ悪魔マチュアに報告する必要はないと言う方と、マチュア様に教えを乞えと言う意見です」

 成程納得。

 言葉の含みからすると、教えを請うのはあれか、アドバイスを求めているのか。


「勝手にやって。最初に話しした通り、私は技術は教えない。戦闘技術や魔法も含めてね。私が勝手にやっているのを見て研究するのは構わないけど、手取り足取りなんて教える気は無いって」

 すると使者も頭を下げる。

「そう答えるに決まっている、マチュア様に余計な手間をかけるなと怒っている方が大半ですが、若い議員達はマチュア様にすり寄っています。これで少しは自立する事でしょう。有難うございました」

 頭を下げると、使者は急ぎ立ち去って行く。


「あ、そろそろあっちのカナン商会にも顔出しますかぁ」

 そろそろ向こうの宿も出払う必要がある。

 あっちの本拠地をカナン商会に移すのもいいだろう。

 そう考えると、マチュアはとりあえず向こうの宿屋に転移した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 新しい帽子をしっかりと被り、箒に跨ってトロトロと街の中を飛んで行く。

 バスケット商会が来てくれたお陰で、帽子を被ったマチュアが、今までずっとツノオレと見られていたこともわかった。

 商業区に入ると、いちばん手前にあるカナン商会に入る。

 大勢の人が忙しそうに働いている。

 カナン商会はこのワルプルギス屈指の貿易商会、他国や地方都市からの貿易で財を成している。

 その強引なやり方に彼方此方あちこちからの批判も多いが、マチュアが商会代表となってからは優しい商会になりつつあった。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか」

 カウンターの中からマチュアに声をかけるゴブリン嬢。

 すると奥に座って踏ん反りがえっていたフェザーが、真っ青な顔で走って来る。

「こ、こら、この方は今のカナン商会のオーナーです。無礼な事はおやめなさい」

 フェザーが軽く嗜めると、従業員たちが一斉に立ち上がりマチュアに頭を下げる。


「「「お疲れ様です、マチュア様」」」


 すぐに座って仕事を続けるように笑顔で指示すると、カツカツとまっすぐにフェザーの元に向かう。

 マチュアとの距離が縮まるほどに、フェザーは顔色が青くなり汗をかき始める。


――スッ

 すぐに二階に上がる階段を指差すと、マチュアは一言。

「上ってお得意様とかの打ち合わせの部屋?」

「は、はひ、おっしゃる通りです‥‥」

「なら、上で待ってろ‥‥」

 そう呟くと、マチュアは適当な従業員をコイコイと手招きする。

 すぐさま色白のオーク嬢がマチュアの元にやって来る。

「どうなされましたか、マチュア様」


――スッスッ

 肩掛け拡張エクステバッグから大量のマフィンとりんご、オレンジジュースの瓶を取り出すと、それを預ける。

「おやつタイム。手が空いた従業員から順番に休憩して。働きっぱなしは体に悪い、朝と昼の間に一回、昼と夕方の間に一回、ちゃんと休憩するのです」

 そう話して階段に向かうと。

 その途中で

「瓶は洗って返してね」

 と話して行く。


‥‥‥

‥‥


 突然のマチュアの来訪、そして二階に上がれと命じられる。

 フェザーは既に生きた心地がしない。

 個別の商談に用いられる部屋に入ると、外に護衛が待機している。


――カツカツ

 ゆっくりとそこに向かうと、護衛はマチュアに頭を下げて道を開ける。

 その首には、マチュアがもたらした魔術文様が浮かび上がっている。

「頭をあげて」

 そう告げるマチュアに従い、護衛は頭をあげる。

 すると、マチュアはその首筋をスッとなぞる。

 すると文様がフッと消えた。


「マチュアさま、これは」

「今後もフェザー卿とカナン商会を守る事。文様を体内に移したから。でも、頑張っているので、そのうち外してあげるね」

 一人一人を労い、そして文様を消す。

 それには全員が頭を下げる。


 そして部屋に入ると、ソファーに座っていたフェザーも立ち上がる。

「ほ、本日はどのようなご用件で」

 震えながらそう告げると、マチュアはフェザーの首の文様も消す。

「は?」

「消したのじゃないわ。体内に、心臓に移しただけ‥‥それに、私の魔法は第六聖典レジェンド、その辺の魔法では感知不可能よ‥‥それと、頼みがあるのよ」

「は、はい‼︎」

 立ったままマチュアに返事をする。

「冒険者街に酒場を作って。そこを私のこの街での拠点にするから」

「はっ、豪華な店をご用意します」

「いやいや、そんなに大きくなくていいわ。テーブルなら5つぐらい、カウンターと貯蔵庫、後、二階に私の部屋があればいい。目立った事はしたくないのよ」

 そう説明すると、フェザーは顔色が戻って来る。


「そんなものでしたら、冒険者街の、ギルドからは少し離れますが私の倉庫から有りますので。そこを改造しましょう」


――パン

 思わず手を叩く。

「ヒッ‼︎」

「あ、ごめん。もう貴方は私の僕なのだから殺したりはしないわよ。嬉しくてつい、御免なさいね」

 思わず地で謝るマチュア。

「あ、そ、そうですか。私が真祖様の僕‥‥」

「調子に乗らない。貴方のやらなければならない事は、この商会を人に好かれる商会とする事、そして財を成す。従業員もちゃんと休みを与えてね」

「仰せのままに‼︎」

 にこやかに返事を返すと、すぐさまフェザーは部屋から出て行った。


――ピッ

 視界に何かが点滅している。

「なんだこれ?ウィンドウか‥‥」

 すぐさまウィンドウを開くと、そこには新しい表示が増えていた。


『フェザー・マスケットを僕として登録しました、加護を与えますか?』


――ブッ

 思わず吹き出す。

 そして慌てて部屋から出て行ったフェザーを呼びつける。


「お、おいフェザー、ちょっと来い‼︎」

 すぐさまフェザーが戻って来ると、マチュアは外の護衛もまとめて部屋に入れる。

「わ、私がまた何か?」

 そう告げると、マチュアはフェザーに右手を向ける。


――スッ

「ヒッ‼︎」

「いちいち驚かない」

 帽子を脱いでツノを出す。

 するとマチュアは、ゆっくりと口を開く。

「フェザー・マスケット。貴公を悪魔マチュアの僕とする。オークの体を捨て、今日よりハイオークとなれ」


――ブゥゥゥン

 するとフェザーの全身が光り輝く。

 そして光が消えた時、フェザーの姿は。

「な、何も変わりませんよ」

「商人ギルドカードで確認しなさいな」

 そう言われてそっと見てみると、フェザーの種族がハイオークに変化している。

「ウォォォォォォ、マチュア様、このフェザー、誠心誠意支えさせてもらいます」

 ウンウンと頷くと、マチュアは三人の護衛も全て僕とする。

 種族のオーガはオーガロードとなり、身体能力全てが向上している。

「そういえば、お前らの名前は?」

「私はバラギです」

「俺はシュテンだ」

「私はラセツです。宜しくお願いします」


 男二人に女ひとり。

「あ、俺様〇ムル様に並んだ?」

 いえ、まだスタート地点です。

 何か喜んでいるマチュア。

 すぐに四人の僕達をウィンドウで確認するとそれぞれが色々な能力を身に着けたのが見える。

「さて、そんじゃ後は宜しく。仕事に戻って良いよ」

 手をヒラヒラと振りながら、マチュアはカナン商会から外に出て行った。


‥‥‥

‥‥


 外に出た時、ちょうど何処かの商隊がカナン商会の横にやって来る。

「あれ、ここは以前は別の名前だよね?」

「そうだよな。あ、カナン商会だって」

「へ?マチュアさんの?」

 そんな声が聞こえて来るので。

 ひょいとそっちを見てみる。

 すると、バスケット商会の連中が馬車から降りて来るところだった。


「あ、リコットさんか、どもども」

 その聞き覚えのある声に、リコットは思わず走り出す。

「ああ、マチュアさんお久しぶりです‼︎」

 そう話してから、リコットがマチュアの耳元に近づく。

「ここって、あの国の事知ってます?」

「知るわけないしょ。内緒内緒、従業員には、私が旅の最中にお世話になった商会って話ししておくから、しっかりと儲けなさい」

 密談完了。

 そしてマチュアがリコットを連れて店内に入ると、奥のフェザーに向かって一言。

「フェザー、このバスケット商会は私が旅の最中にお世話になった事があるのよ。今後もここで取引する時は便宜を図って‼︎」

 コクコクと頭を縦に降るフェザー。

 するとすぐにフェザーはホールに出てきて、マチュアを呼ぶ。

 そして耳元で一言。

「あの、マチュア様、貴方様の正体は」

「知っているわけないでしょ?向こうに私の事も聞いちゃダメ、商売なんだから詮索無用」

「は、はい‼︎」

 するとフェザーは近くの従業員に指示を出す。

 それを見て、マチュアはリコットにサムズアップすると、お互いに親指を見せ合って別れた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 宿屋に向かい、後一週間で契約を解除する事を伝えると、マチュアはギルドに向かった。

 相変わらず、マチュアの依頼は壁に貼り付けたまま。

 何組かはこの街に来てこれを見たらしく、偽エルフを連れてきて誤魔化そうとしたらしい。


「おう、マチュアか。元気に依頼受けているか?」

「ギルマス、私はまだ5レベルだ‼︎」

 元気に5+レベル表記のギルドカードを見せると。

「そうか、働け」

 あれ?

 またしてもマチュアは掲示板の前に立っている。


「あ、あの、ギルマス?私どんなに頑張っても10レベル超えれないよ?」

「そんな事は、帽子を被っている時点でわかってる。頑張っている事が重要なんだ」

 はぁ。これだから脳筋オーガがギルマスの冒険者ギルドは‥‥。

 そんな事を考えながら、マチュアは一番易しい依頼を探す。

「そういえば、マチュアは魔法使いだよな?」

「この前召喚も覚えました。第二聖典セカンドまでならどのクラスの魔法も使えますよ」

「半魔族は良いよなあ、第二聖典セカンドまでならどんな魔法も覚えられるから。魔法文字読めるか?」

「読み書きは師匠から一通り。どんな仕事?」

 そうカウンターに向かい問い掛けると。

「古代のヒト族の魔術書なんたが、最近になって遺跡から発掘されたんだ。それを読めるものを探しているらしくてな‥‥もうすぐ王都から迎えの者が来るんだが、お前行ってこい」

 そう話してから、ギルマスがマチュアにメモを手渡す。


――ふむふむ

 なんのことはない軽治療ライトヒールの魔術式。

 でも、これは魔族では読めない神代文字。

「何のことない軽治療ライトヒールですよ。もう覚えた」

「そうか読めるか‥‥って覚えた?」

「うん。しっかりと覚えたけど?」

 そう呟くとマチュア。

「‥‥あ、そうか、覚えた、か。使えるわけないよな」

「使えるよ?ほら」

 そう話しながら、さっき戻ってきたばかりの、怪我をしているらしく包帯を巻いているコボルト親父の腕にてをあてる。

軽治療ライトヒール‼︎」


――ボウッ

 すると、包帯の上から傷口が淡く輝き、怪我が癒えていく。

「おいおいまじかよ。俺達は邪神の加護がないから使えないんだぜ?何で使えるんだよ?」

「加護も何も関係ないよ。身体の新陳代謝強化、細胞の活性化と自己修復能力の強化。これが軽治療ライトヒールの魔法文字配列だよ」

 淡々と説明するが、どうやらギルマスや周りの冒険者にはチンプンカンプン。

 だが、マチュアが魔族では使う事の出来ない魔術式を使うという事実は、その場の全員の記憶にはしっかりと焼きついた。


――パンパン

 すると、入り口でマチュアに拍手するものがいる。

 眼鏡をかけた細身のゴブリン。

 それが立派な魔導師のローブを身に纏って、マチュアに対して拍手している。

「ライトニング卿の話の通り。半魔族のマチュアさん、貴方を探していました‥‥是非とも王都へいらして欲しいのです」

 そう告げながら横にずれると、ギルドの外に四頭立ての馬車が待機していた。


‥‥‥

‥‥


「お、おいマチュア、さっき話した依頼主だ。早く依頼を受けて行って来てくれ」

 カウンターから小声で話すギルマスに、マチュアは一言。

「うん、断る」

「そうだよなぁ。王家からの直接の依頼、受けない訳が‥‥今なんつった?」

 ウンウンと唸っているギルマスだが、何かの聞き間違いかと首を捻る。

「こ、と、わ、る」

「お、こんな名誉な事をか?相手は王家の執務官だ、それを断ったりしたら」

 オロオロとするギルマスにニイッと笑う。

 そしてマチュアは執務官の元に向かうと一言。

「栄誉ある事ではありますが、この様な大切な仕事を私ごときが受ける訳には参りません。王都の力ある魔術師にご依頼下さい」

 そう丁寧に頭を下げて告げる。

 すると、目の前の執務官が眼鏡を直しながら一言。


「では、依頼の方は良しとします。ですが、我が国王が、マチュア殿の持つアーティファクトに興味がありまして。是非とも見せて欲しいとの事です」

「強権発動して奪わなければ」

 そう返事を返すと、執務官は口元を緩める。

「それでは馬車にどうぞ。ここから馬車で三日の場所で転移魔法術師が待機しています。そこからは魔法で一瞬ですので」

 ふぁ?

 転移魔法がある。

 それがマチュアには驚きである。


「それならば同行しますが‥‥あの、私、帽子を取れないので」

「ツノオレでしたか。まあ、国王には先に進言しておきますので大丈夫ですよ」

 にこやかにマチュアに告げると、執務官は改めて。

「シャイターン王家執務官のボールマンと申します。マチュアさんを無事に王都へご案内する事をお約束します」

 スッと馬車の扉を開くと、ボールマンはマチュアに馬車に乗るように進める。

 そしてマチュアの頷くと、しばし馬車の旅を堪能した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 三日後には、魔術師たちの待つ『魔力溜まり』と呼ばれる場所に到着する。

 二十人もの魔術師による儀式。

 マチュア達の馬車が到着すると、魔力溜まりを中心とした巨大な魔術が詠唱される。

 ゆっくりと力ある言葉が紡がれていく。

 そして十分の詠唱ののち、マチュア達の目の前に開放型転移門ゲートがゆっくりと開いた。


「うわ、凄いなぁ‥‥」

 驚きの声を上げるマチュアに、ボールマンはフフン顔。

「そうでしょう。この大陸を治める三大王家の一つシャイターン王家秘伝の空間魔法です」

 へぇ。

 大したことない。

 でも、食いつくところは別。

「シャイターン王家以外にも王家はあるのですか?」

「え?あ、そうでしたか、ライトニング卿の報告にありましたね。この大陸には三つの魔人族による王家がありまして」


 ボールマンの話によると、シャイターン王家は大陸の北、北西、北東を支配している。

 グラントリ王家は南、南東、南西を統治、サンマルチノ王家が西、南西、北西を支配している。


「あれ?東は?」

「東方は未開拓地域です。あのヒト族の結界で東方は手をつけることができないのです。大陸中央部のロビンソン山脈は大陸を治める皇王ベルファスト様のお住まい。何人も踏み入ることの許されない聖域です」

 淡々と説明するが、どうも力関係はわからない。


 ゲートを越えて市街地に入ると、馬車は真っ直ぐに目の前の王城へと向かった。

 なので、まだ時間があるかとマチュアが話しかける。

「ベルファスト様が世界の天秤を持っているのですか?」

「ほう、その名前が出るとは、君はなかなかの勉強家ですね。勇者の齎した世界の天秤は、後世で争いになるということで四つに分割されました」

 ふぁ?

 クエストのクリア難易度上がったぞ?


「そしてベルファスト様がお持ちなのは『世界の右皿』。全てが揃わないと力を発揮しません。単体では全く力を持たない、魔力の塊のようなものです」

 人差し指を振りながら、ご機嫌なボールマン。

 このような話をするのが実に楽しそうである。

「三王家では、何処の王家が一番強いのですか?」

 ーピクッ

 すると、ボールマンの耳がピクピクと動く。

 これは聞いてはいけなかったのか?

 やばいことになったのか?

 そう不安になるマチュアだが。


「よくぞ聞いてくれました。この大陸の三王家、どの家系も強い魔力を持っています。サンマルチノ家は武の王家、強大なワイバーンライダーと恐竜の陸戦騎士団を配備しています。武術というのなら、サンマルチノ家は強大な力を持っているでしょう」

 身振り手振りも交えて、ボールマンが話し始める。

「そしてグラントリ王家。比類なき魔術国家、女王グラントリを中心とする魔術国家です。古の第五聖典ザ・フィフスまでも解読し、それを自在に操ることができる魔術兵団を持っています」

 あ、このパターンは読めた。

 俺様最強パターンだ。

「そして我がシャイターン王家。武力ではサンマルチノ王家をも凌ぎ、魔術ではグラントリ王家をも超える事が出来ます。保有魔力量も強大、正に大陸一の王家といっても過言ではありません‼︎」


――ハァハァハァハァ

 汗を流し息を切らせているボールマン。

 そこにマチュアはシュワーっと爽やかSUZAKUレモンを開けて差し出した。


――プシュッ

「ささ、喉を潤してください。シュワーっとする爽快な飲み物です」

 そう説明して差し出すと、マチュアは自分も同じものを開けてのんびりと飲む。


――ゴクッゴクッゴクッ

 喉を鳴らしながら美味しそうに飲んでいると、ボールマンも軽く一口。

「どれ、それでは‥‥ゴクッ‥‥ん?」

 カッと目を見開くと、そのまんま一気に飲み干す。

「これは何処から手にゲェップ‥‥大変失礼しました」

 思わず下を向くボールマン。

「改めて。これはどのようにして手に入れたのですか?」

 そう問いかけるが、マチュアは一言。

「申し訳ございません。私の持っているアーティファクトなどの出所は教える事は出来ません。でも、食べ物でしたらどうぞ」

 今度はホットドックを取り出して手渡す。

 ウォルトコのフードコートで売っているものを、材料だけを買ってきて自分で作ったものである。

 すぐさまウェットティッシュも取り出して手渡すと、マチュアもホットドックを取り出して美味しそうに食べる。


――モグッ‥‥ハフハフ

 熱々の茹でたてソーセージ。

 柔らかいコッペパン。

 酸っぱいザワークラウトと微塵切りのピクルス。

 そしてマスタードとケチャップ。

 そのどれもが、ボールマンの知らない味である。


「こ、これは‥‥モグモグッ」

 二口ほど食べると、ボールマンはマチュアの方を見て一言。

「この料理は、先ほどのシュワシュワしたものと一緒に食べるのがよろしいのか?」


――グッ‼︎

 思わずボールマンにサムズアップするマチュア。

「さすがはボールマンさん、そこでこれです。世界最強のシュワシュワ、コーラです」

 どっちかなんて聞くな。

 その答えはみんなの心の中にある。

 素早く缶コーラを手渡すと、ボールマンは器用に開けて一口。


――ゴクッゴクッゴクッ

「ぷっは〜っ、あ、マチュア殿、私がこんな食べ方をしている事は城内では御内密に」

「分かりますわ。ではのんびりと」

 到着まで今しばらくの間、マチュアたちは馬車の中で楽しいひと時を過ごしていた。

 途中から御者にもホットドッグと缶コーラを手渡すと、御者も器用に馬を操りながら片手でホットドッグを食べている。



 やがて王城前の跳ね橋を越えて正門を通ると、王城城塞内部へと馬車は入っていく。

 広い王城前庭園を走り、やがて正門までたどり着く。

 そこには武装したオーガの騎士団も待機していた。


――ガチャッ

 馬車の扉が開くと、マチュアはいよいよシャイターン城へと入って行った。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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