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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第9部 三つの世界の物語
239/701

変革の章・その12 平和と混沌の線引き

 ゲルマニア内戦に国連軍が介入して一ヶ月。

 二週間前のサードストライクで統合第三帝国司令部は壊滅し、ヒトラー以下幹部の消息は未だ掴めていない。

 ベルリン郊外に広がる戦線には、未だ大量のアンデットが徘徊し、国連軍の定時爆撃は未だ続いている。


「ゾンビを吹き飛ばしたらスケルトン、その次はレイス。全くキリがありませんよ。しかもレイスには爆撃は効果がありませんから」

 未だ活動を続けている国連軍。

 そのゲルマニア本部でクリスティン・アールベックは偵察部隊からの報告を受けている。

 最初の報告から、かなりの数の爆撃を続けてきた。

 都市部に対しては爆撃はやめて欲しいという市民やゲルマニア首相の進言で、戦場域でのみの爆撃を行い、都市部まで流れてきたアンデットはゲルマニア陸軍によって制圧してきた。

 だが、未だアンデットは数を減らす事なく、生者を求めて徘徊している。

「わかっている。レイスには銀や聖別された武器、もしくは魔法しか効かない。それらの準備が出来るまで待て!!」

 そう説明しているものの、クリスティンは不安であった。

 頼みの綱であった聖別された武器。

 ゲルマニアの教会が用意した聖別された剣は全く効果を発揮せず、むしろ銀の武器の方が頼りになった。

 普段から権威を振りかざしていた教会勢は勢いを失い、自らの信心の弱さを嘆いている。

 そんなある日。


「ベルリン近郊、マクデブルク市のレイスが次々と殲滅されているという報告がありました」

「助かった‥‥どこの軍だ!!所属は?」

 そのクリスティンの問いかけに、通信兵は笑みを浮かべる。

「国境なき国、マルタ騎士団と地球の冒険者です!!」


‥‥‥

‥‥


 同時刻、マクデブルク市

――ズザァァァァッ

 市街を徘徊するレイスを、正面から一撃で真っ二つにする騎士。

 馬上から巨大なハルバートを振り落とし、魔法しか効かないレイスを次々と浄化している。

「むう。これ程までに凄いとは‥‥」

 ガチャッとハルバードを構え直すと、傍で待機していたローブ姿の男性ご近寄ってくる。

「そろそろ付与魔術が切れますよ‥‥光の精霊ルクスよ、かの武具に光の加護を与え給え」

 右手をハルバードにかざす精霊魔術師。

――ブゥゥゥン

 すると、ハルバードが淡い光に包まれた。

「カリス・マレスの冒険者というのは、本当に魔術が使えるものなのだなぁ」

「俺程度の精霊魔術師ならいくらでも居ますよ。山田くんと山本さんもこっちに来て下さい」

 地球産冒険者チームのマルタ騎士団参戦。


 ゲルマニアでアンデットが徘徊しているという噂を聞いて、精霊魔術師の和泉とフェンサーの山田、重装騎士に転職した山本は急ぎゲルマニア近郊の都市に飛んで来た。

 そこから国連軍に合流し、マルタ騎士団へと辿り着いたらしい。


「市街地東方にレイスの群れがあるそうです。急ぎましょう」

 巨大なツーハンドソードを肩に担いで、山本笑美が二人に告げる。

「はいはい。風の精霊シルフよ、我らが足に集いて疾風と成せ!」

 両手を開いて突き出し、シルフを召喚する和泉。

 すると三人の足にシルフが纏い、速度向上の加護を与えた。

「お、流石は和泉さん。では行きますか」

 すぐさま走り出す山田。

 それに遅れて山本もダッシュで駆け出すと、和泉はフワッと風に乗って地面から浮かび上がる。

「マルタ騎士団は西側から回り込んで下さい。お願いします」

「了解です。皆さんに神の加護があらんことを」

 馬上で十字を切り、神に祈る騎士。

 そして隊長以下12名のマルタ騎士団は西側の街道を抜けて、東にある住宅街へと向かう。

「和泉さん、まだMP残ってますか?」

「ええ、大丈夫ですよ。地球で精霊を使役した時に比べたら、この程度の付与魔術は大した事ありませんよ」

 心配そうに問いかける山本にそう説明してから、和泉は前方から歩いてくる死骸の群れに狙いを定めた。

――スッ

 ローブのポケットからZIPPOのオイルライターを取り出して点火すると、すぐさま立ち止まって詠唱を開始した。

「火の精霊サラマンダーよ、我が呼び出しに応えて、汝の敵を滅ぼしたまえ!」

 ――ゴゥゥゥゥゥッ

 すると、ライターの炎から全長2mほどの炎のトカゲが飛び出すと、素早くゾンビ達に向かって襲いかかった。

 一気にゾンビの正面まで間合いを詰めると、大きく口を開いてゾンビの上半身を一撃で噛み砕く。

 ――ゴギッ、ボキッ

 骨が砕ける音が響いたかと思うと、次の獲物に飛びかかる。

 サラマンダーの取り残したゾンビやスケルトンには、山田と山本が接敵して破壊する。

 20分もすると、この区画のアンデットは全滅した。

 三人の攻撃で破壊されたアンデットは、もう動き出す事はない。

 魔法攻撃と魔法付与武器によって、封じられていた怨霊は全て消滅した。

「さて、東地区まであと少し。そこが終われば休憩しますか」

 パーティーリーダーの和泉の言葉に山田と山本も無言で頷くと、再び走り出した。


‥‥‥

‥‥


「マルタ騎士団から連絡ありました。日本人冒険者は有志で戦闘に参加したらしいです。彼らは魔術によって武具を強化して戦闘しているとの事」

 国連軍司令本部で、追加報告を受けているクリスティン。

 ならば、彼らにも見返りは出す必要はあると考えた。

「国連事務局に緊急要請を。アンデットを撃破している冒険者に正当な代価を払う必要があると、そして正式に日本に要請をお願いして下さいと」

 すぐさま事務局に連絡を始める。

「要請内容はカナンの冒険者を派遣してほしいですか?」

「違う、全ての冒険者だ。アンデット退治の依頼を国連から日本を通じて発令してもらう。急げ!」

「は、はいっ」

 すぐさま国連事務局に通されたこの案件は、国連安保理からの依頼の一つとして日本に要請が入った。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 



 日本国・国際連合国際防災戦略事務局(UNISDR)駐日事務所。

 その事務室では、事務局代表と蒲生副総理が会談を行っている。

 国連安保理からの連絡で、事は急を要する。

 国連軍のクリスティンからの報告を信じ、今は冒険者に助けを求めるしかない。

「どうだろう。現在は、カナンに行く事ができる日本人でなくては冒険者になれない。つまり彼らしかアンデットの軍勢を退治する事が出来ない。引き受けてもらえないか?」

 駐日事務所代表の松岡洋三は、手元の資料をさっと差し出して問いかける。

 それを受け取って内容を確認すると、蒲生は目頭を押さえた。

 現在の世界情勢、第三帝国が現れたことによるヨーロッパの経済危機、そしてゲルマニアからの避難民の他国流出。

 戦後処理でゲルマニアに戻った人々を、さらにアンデットが群れをなして待っていた。

「綺麗なことをツラツラと書いているが、早い話が日本人を、それも国家公務員でない一般の民間人を戦地に送れだろう?そりゃあ無理だよ」

「何故ですか?今は世界の有事、国連平和活動の一環として参加して欲しいのですよ」

 やや声がきつくなる松岡。

 だが、蒲生もここは引かない。

「まず、ここに書かれているものを実践するにはシステムを新しく作らなければならない。それも法案やら何やら色々と必要だ。それが通過しても人事などの配置、事務局をどこに作るかなど問題はある」

 一つ一つを説明するも、松岡も頭を左右に振る。

「それで、もしここに書かれている事を日本が行うとしたら」

「早くても半年。これが日本国の譲歩ラインだ。裏技でもない限りは無理だな」

 そう話して、書類全てを松岡に突っ返す。

 それを受け取って側に置くと、松岡は溜息をついた。


「何でこの国は、システムを最優先する国になってしまったのですかなぁ」

「まあ、俺たち政治屋の責任でもあるな。それでだ、この国連平和維持活動とやらに金はいくら出る?」

「ありません。協力各国の負担となりますと先程書いてありましたよね?」

「そうじゃない。国連はいくらまで金を出せるんだと聞いてみろ。『冒険者に仕事の依頼をするんだ、報酬と依頼内容を明確にしろ』ってな」

 その蒲生の言葉に、松岡は狼狽する。

「人の命がかかっているのに、仕事の依頼だなんて‥‥」

「それがカリス・マレスでは当たり前だ。野盗に村が襲われた、助けてほしい。では冒険者に依頼すりゃあ解決だよ。報酬はいらないっていうボランティアで動くのはほんの僅かだよ。そいつらは勇者で冒険者じゃない」

 マム・マチュアのやり方にすっかり慣れた蒲生。

「蒲生さん、冒険者に依頼を出す方法はどうするんですか?」

「後で聞いてきてやるよ。それじゃあいい返事を期待するよ」

 マチュアのように手をヒラヒラと振ると、蒲生はその足で国会議事堂へと向かった。

 今日は、結界制御球プロテクトオーブが外される日だから。



  ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 十月中旬。

 結界制御球プロテクトオーブのレンタル期限最終日。

 深夜0時でこの結界は回収される。

 今はちょうど正午、結界のある光景を瞳に焼き付ける為、大勢の人々や報道関係者が集まっている。


「これで仕事はおしまい。長い出張でしたね」

 自活車の外で古屋がミナとポイポイに話しかけている。

 だが、その言葉には、ミアもポイポイも頭を捻ってしまう。

「ポイポイとミアはここに残るっぽい」

「あれを放置しておくわけにはいきませんので。すでに小野寺さんから許可はもらっていますよ」

 そう古屋に話しかけながら、ごそごそと書類を取り出す。

 それは自活車のレンタル期間延長と、議事堂施設内での活動許可書。

 すでに運転席の窓には新しい許可証が貼り付けられている。

「うわ、行動早いですね」

「ツヴァイさん達は業務に戻るけど、ポイポイたちはここから離れないっぽい。古屋さんは気を付けて帰ってくださいね」

 にこりと微笑むポイポイ。

 すると、一台の車がやってきて自活車の前に止まる。


――ガチャッ

 後部ドアが開くと、中から蒲生副総理が降りてきた。

「ポイポイさんや、ツヴァイさんは皇居か?」

「用事ならすぐ呼ぶっぽいよ」

――シュンッ

 その言葉の直後に、ツヴァイが転移してやってきた。

「おや蒲生さん、何かありましたか?」

 作業服を着ているツヴァイが、蒲生に問いかけると。

「今の全権大使はツヴァイさんしかいない。なので、単刀直入に教えてほしいのだが。冒険者ギルドに依頼を出したい」

――ほう

 ツヴァイかニイッと笑う。

「一体何があったのですか?詳しく教えてください」

 自活車外のテーブルに向かい、そこで話を聞く。

 すると、蒲生はUNISDR駐日事務所でのやり取りを全て説明した。

「はあ、なるほどねぇ‥‥少しお待ちを」

 すぐさま深淵の書庫アーカイブを発動する。

 そして現行までの全ての法と照らし合わせて、最適な回答を探し始める。

 そして弾き出された結論は一つ。


「異世界大使館の敷地内に、冒険者ギルドを作りますか。そこで依頼の受付を行いましょう。システム構築に時間が掛かりますがよろしいですね?」

 あっさりと切り出す。

 すると、蒲生が一言補足を付け加える。

「大使館敷地外でどうだ?建物ならこっちで用意する」

「日本のシステムになる気はありませんよ。すぐに王都ラグナのギルドマスターに新しい冒険者ギルドの設営手続きをしてきますので」

 コクリと頭を下げると、ツヴァイはスッと転移した。

 それを見送ってから、蒲生はポリポリと頭を掻いている。

「中々したたかだなぁ。主導権はこっちにはくれないか」

――プッ

 思わず吹き出すミナとポイポイ。

「それは無理ですよ。ギルドシステムはカリス・マレス世界全てを統べるのですから。それを日本だから日本に任せるなんていうのは無理ですよ」

「その通りっぽい。ギルドシステムの骨格を作ったのは2代目英雄のアレキサンドラと彼女の仲間たち。なのでおいそれとは変更なんて出来ないっぽいよ?」

 成程。

 それなら仕方がない。

「ふうん。そのアレキなんとかさんは2代目英雄なのか。何年まえだ?」

 蒲生が好奇心から問いかける。

「ポイポイと一緒に旅していた時だから、1000年ぐらい前?」


――プッ

 今度はミアが噴き出した。

「ポイポイさん、それってどういう事ですか?」

「ん?えーっと、2代目英雄の静御前さん、初代賢者のカレン・スターリング、剣豪・滝沢誠一郎、銀の癒し手ラスティ・レナーテ、拳聖ダグ・ダグラス。そしてレンジャーのポイポイがパーティーっぽいよ?」

 堂々たる名前の最後がレンジャーって。

 知らない人が聞いたら思わず苦笑するレベルであるが、ミアは口を開いたまま黙ってしまう。

「まあ、ポイポイは遊んでばっかりで‥‥ミア、どうしたっぽい?」

「あ、えーっと。冒険者訓練所で聞いた名前とも違うので。2代目はアレキサンドラさんでは?」

「そーだよ。最初にポイポイと冒険した時は静御前さん。こっちの世界の名前にするからって、名前を変えたっぽい。さっきの人たちも、みんな名前を変えたんだよ?」

 道理で。

 歴史に出てきている名前ではない。

「なら、ポイポイさんは辛い思いをしたのですね。大切な仲間と別れて‥‥」

「ん?確かにエストと滝沢師範は故郷に戻って亡くなったけど。賢者さんは子供を預けて何処かに行っちゃって消息不明、ラスティさんはラグナ・マリア家の誰かと結婚したから。アレキサンドラさんならこの前久しぶりに会って、元気そうだったよ?」

――はぁ?

 思わず耳を疑うレベル。

 ラグナ・マリアのケルビム家が賢者と繋がっているのは聞いているので疑う余地はない。

 それに白銀の癒し手は多分パルテノ家に仕えていた司祭一族であろう。

 だが。

「勇者アレキサンドラが生きているのですか?」

「うん。今は吟遊詩人のカサンドラって言うんだよ。でも内緒ね?」

 ニコッと笑うポイポイ。

「しっかし。ポイポイさんの口調のポイ、外す事もあるんだなぁ。普通の口調なら、日本ではモテモテだったのに惜しいなぁ」

 腕を組んでウンウンと頷きながら、蒲生がなんとなく納得している。

 すると。

「あ、あわわ。ポイポイがポイって言う口調にするのは、たまたまポイポイがポイって冗談でつけた時に、みんなが楽しく笑ってくれたから。だから‥‥」

 カ〜ッと真っ赤になって、慌てて告げるポイポイ。

 あくまでもポイポイはみんなの為のムードメイカーであろうとしている。

 だから、本気で怒ったり悲しい時は、ポイはつけていない。

「まあ、とりあえずは今日の仕事が終わるまで待ちましょう。それからどうするかですね?」

「その通りっぽい。まーちゅーあーさーん、早く帰って来て欲しいっぽいよ」


‥‥‥

‥‥


 白熱している結界球。

 その中で、マチュアはアハツェンが作ってくれたらしい魔力回復ポーションを飲んでいた。

「ゴクッゴクッゴクッ‥‥ぷはー、少し酸っぱい、これはなんだろ?」

――キィィィン

 すぐさま全身に魔力が循環する。

「ふむふむ。一本でCランク冒険者の魔力全快程度かぁ。なら、これと、これの効果の半分のやつを作って大量生産して‥‥」

 サラサラッと指示書を書き出すと、すぐさま空間収納チェストに放り込む。

「私の予想が間違ってなければ。今日が結界制御球プロテクトオーブを外す日か。それならば‥‥」

 結界内でマチュアは静かに詠唱を始める。

 両手で印をゆっくりと紡ぎ、周囲にいくつもの魔法陣を生み出す。

 半分はカリス・マレスの魔法文字、そしてもう半分は天使ラジエルの書による魔術式。

 それらを合わせた二つの魔法陣は、やがて一つに重なり新しい魔法式を生み出した。

――パーン

 両手を合わせて最後の祝詞を紡ぐ。

 すぐさま深淵の書庫アーカイブを起動すると、マチュアは今までの自分の魔術式を新しい魔法式に変換する。

「おおう。これは楽しいぞ?孫さんの言葉なら、なんかおら、ワクワクすっぞってやつ?」

 全ての魔術式を書き換えるまで、のんびりとマチュアは昼寝を楽しむ。

 やがて、結界球の外が騒がしくなると、マチュアも意識を取り戻した。


‥‥‥

‥‥


 深夜0時。

 結界制御球プロテクトオーブの契約が終わる。

 取り外しの立会いに三笠執務官もやって来ると、いよいよ回収が始まる。

「‥‥では時間です。0時を持って結界制御球プロテクトオーブのレンタル期間を終了します」

 三笠が目の前で待機していた防衛省副大臣にそう告げると、ミアとポイポイが箒に跨って空に昇っていく。

「よいしょ‥‥と。結界制御球プロテクトオーブの魔力を停止。回収します」

 ミアが叫ぶと同時に、結界制御球プロテクトオーブから魔力を回収する。

 青い輝きがスッと消えると、ミアはそれをバッグに仕舞い込む。

 地上や上空の報道ヘリからは望遠カメラのフラッシュが輝き、生放送で撤去の瞬間が映されている。

 そしてミアとポイポイがスーッと絨毯で降りてくると、報道陣に向かって頭を下げた。

「これで作業は終了です。それでは」

 三笠が最後に締めると、ミアとポイポイは自活車へと戻ろうとして‥‥。

「すいません、あの上空の核、あれは撤去しないのですか?」

 KHKが三笠に問いかける。

 すると三笠も足を止めて、カメラに向かって一言。

「うちの管轄ではないので。処分は日本国にお任せしますよ」

「それは無責任では?マム・マチュアが核を閉じ込めたのですよね?なら最後まで責任を持ってですね」

「核を封じ込めたのはサービスです。もし封じ込めていなかったら、ここと皇居の結界内部以外は、東京は無くなってますが。どうしても処分して欲しければ、改めて見積もりでも出しますので。では失礼」

 毅然とした態度の三笠。

 結界球の中の核など、処理できるのはマチュアのみ。

 それを知っていて、敢えて三笠は無理難題を話している。

 そのまま自活車に向かうと、ミアにカードを差し出した。


「これは?」

「駐在防衛騎士の証明っぽい。発行されたの?」

「ええ。ツヴァイさんから頼まれてましたよ。ポイポイさんは持ってますよね?」

 その問いに、ポイポイはスッと駐在防衛騎士のカードを見せる。

「結構。二人はこの後はマチュアさんの見張りですね?」

 なっ‼︎!

 三笠の言葉に絶句する二人。

 すぐさま三笠の目をみて、慌てて目をそらすが手遅れ。

「どどどどどうして知ってるっぽい?」

「ツヴァイさんからですか?そうですよね?」

 すぐさま問いかけるが、三笠は頭を左右に振る。

「生きているかも‥‥というのは、マチュアさんの張り巡らした結界が残っているので証明されます。ツヴァイさんは外にいるだろうと言ってましたが、最近の動向でマチュアさんが動かない筈がない」

 淡々と説明する三笠。

 これにはミアとポイポイは驚くばかり。

「なら簡単。内部に残って結界を維持しているか、何らかの要因で出られないか。だから、結界に何かあっても困らないように二人は残るのですよね?」

 唖然。

 どうしてそこまで考えられるのか。

 ミアは三笠に恐怖を覚える。

「三笠さんはどうしてそこまで判るのでしょうか?」

 恐る恐るといかけると、歯を見せてニィッと笑う。

「私の冒険者クラスはトリックスター。策士家ですよ?同じトリックスターのマチュアさんの考えるパターンなら、一年付き合っていれば3割は予測できます」

 それでも3割予測する事が怖い。

 驚いているミアの横では、ポイポイが腕を組んでウンウンと納得している。

「ならいいや。三笠さん、内緒っぽいよ」

「はいはい。では、私も用事を終わらせたのでこれで失礼しますね。明日の朝一で北海道に帰らないとならないので」

 そう話して、三笠はホテルへと戻って行った。

 そしてミアとポイポイも自活車の中に入ると、取り敢えずゆっくりと休む事にした。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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