変革の章・その9 セカンドストライク発動
第三帝国との交戦が始まって2週間後。
その日の早朝、国連平和維持軍とアメリゴ合衆国、そしてルシア連邦はセカンドストライクという大規模作戦を発令した。
ゲルマニア首都ベルリン、第三帝国中枢機関および秦朝共和国首都郊外のミサイル関連施設に対しての精密爆撃。
それと同じタイミングでの特殊徹甲弾を装備した戦車隊が突入、機動兵器群を殲滅する。
海上では空母機動部隊および戦艦が待機、必要ならば都市部への対地砲撃も行う。
同タイミングでアメリゴと日本の魔法鎧部隊二個小隊が秦朝首都郊外の軍事施設に侵入し、システムを占拠する。
大規模作戦であり、各々の連携が大切である。
だが、ルシア連邦と中国は今回の作戦にも不参加を表明。
独自の作戦進行準備を行なっていると思われる。
‥‥‥
‥‥
‥
「ふぅん。後一時間ですか」
朝食後のティータイムを楽しんでいるミアが、夜勤明けのマチュアからセカンドストライク作戦についての説明を受けている。
「国連からは、私達の魔法鎧の出動要請もあったんだけれど、日本国との契約があるので無理って断ったのよ」
「それは正しいっぽい。日本がポイポイたちを雇ったのだがら、契約以上の事はしない方がいいっぽいよ」
「わかってますよ‥‥と、朝っぱらからお客さんだね」
ふと気がつくと、議事堂に黒塗りの車が三台やって来る。
それはマチュアたちの自活車の前に停車すると、中から小野寺防衛大臣が出て来る。
いつものような雰囲気ではない。
何か切羽詰まったような、そんな雰囲気である。
「これは小野寺さん。何か急用ですか?」
「ええ。非常に厄介な件です。マム・マチュア、貴方の騎士団に国連軍に合流して欲しいとの通達がありまして‥‥大使館を通すよりも、直接話した方がいいと思いまして」
成程。
おそらくは、今頃国連安保理からの要請が来ているのだろう。
「まあ、無理です。今から用意して何とかして欲しいなんて。それに、幻影騎士団を動かせるのは私ではない、ミナセ女王にお伺いを立てなくてはならない」
「ええ、それは承知。なので折衝案として、大使館員の魔法鎧部隊を‥‥」
「ふ、ざ、け、る、な。うちの大使館員に戦争やらせる気?ごめん被ります」
流石のマチュアでもキレる案件。
「あの子達は、所属している仕事場こそカナンですけど歴とした日本国民です。貴方、今、自分で何を話しているのかお分かりですか?」
「委細承知だ。それでも、ここは折れて欲しい」
「イヤです。どうしてもと言うのならば、私達が出ます。その代わり、ここの結界制御球の維持は諦めてください」
「いや、それは困る、色々と困るのだよ‥‥」
流れているのは冷や汗であろう。
それを拭いながら、必死に体裁を取り繕おうとしている。
「そもそも、何の理由で私たちが出撃しなくてはならないと?国連安保理からの要請なら一度断っているのですよ?それを今更どうして」
「常任理事国からの要請だ。全会一致ではなく、とある国からの要請。今現状の戦力で全てを終わらせることは難しいと判断、そうなると、アメリゴはサードストライク作戦に移行する。その際の被害は大きいからな‥‥」
――ゴクッ
思わずマチュアも息を呑む。
秦朝共和国の近郊の国で、今回の戦争の被害を抑えて欲しいから、カナンにも鎮圧に参加して欲しいと言う要請。
そしてサードストライク作戦。
「小野寺防衛大臣。まさかとは思いますが、サードストライク作戦は核兵器ですね?」
それには一切返答しない。
それが小野寺からの答えである。
「核による拠点制圧、その代償は周辺国家に対しての環境汚染と、避難民の保護。戦争は終わっても、その後の後始末が面倒だと。中国、なかなかやるなぁ」
国の名前を敢えて出す。
すると小野寺の目が泳いだ。
「それで、私達が出ない場合の外交圧力もかなりのものがあると‥‥ならば、小野寺さんにも選択してください。私達が出るなら契約は破棄して、結界制御球は回収します。どっちもと言う選択肢はありません、回答は24時間後までで結構」
ニッコリと笑うマチュア。
答えは簡単、外交圧力に負けて、国の象徴を棄てるか。
それとも国を護るために、他国からの圧力とも戦う覚悟を身に付けるか。
「一度戻って検討する‥‥申し訳なかった」
軽く頭を下げて、小野寺は防衛省へと戻って行く。
それを見送ってから、マチュアも自活車外のテーブルに戻った。
「ミア、ポイポイさん、魔法鎧の機動、いつでも転移できるように準備。古屋くんは大使館の三笠さんに連絡して、国連からの要請書と関連書類をファックスで‥‥いいわ、後で行くから用意してと伝えてください」
「はい」
「いつでも動けますよ。座標さえ判れば単騎転移も可能です」
おう、流石はミア。
いつのまにか転移まで可能とは。
「ポイポイさんは転移出来ないよね?」
「ないっぽいよ。でも、マチュアさんはこれからど〜するの?」
首をカクンと横に倒して問いかけて来る。
すると、マチュアは渋い顔をして腕を組む。
「う〜ん。どうしよう。戦力を分けると言う方法もある。結界制御球の制御には二人は必要、これはズブロッカとミアなので、動かせないし」
「護衛も二人は欲しいですよ。一人ずつ、結界制御球の制御時に狙われたらひとたまりもありませんから」
「そうなると、マチュアさんが動くので代理のツヴァイさんは置いておかないとダメっぽい。戦闘力ならターキーさん、なのでポイポイとマチュアさんしか動けないっぽいよ?」
「待て待て、大使館の緊急時対応で私、その護衛でポイポイが必要なのよ?手数がいっぱいなのよ」
完全に手詰まり。
ベルナー城に残っているのはウォルフラムと斑目のツートップ。
ストームとロットは西方大陸。
一人一人の名前を挙げながら指折り数えるが、やはり無理なものは無理。
「はい、小野寺さんの結論が出るのを待ちましょう。それしか方法はない‼︎」
パン、と手を叩くマチュア。
その瞬間、イーディアスの無線に、防衛省本部からの入電がある。
――ピッピッ
『ベースワンよりメイガスワン。セカンドストライク作戦開始、同時に秦朝共和国からミサイル群確認。こんごうによる迎撃は完了だが、二射目も来る可能性あり、核を搭載している可能性がある。弾頭部分のみの除去は可能か?』
「こちらメイガスワン。ミサイルの図面とデータを下さい」
『ベースワン了解。至急送る』
――ピッピッ
「ん?」
ふと考える。
核ミサイルの破壊力を全て無力化できるかどうか。
「ん〜。飛んでくるミサイルを球形結界で包んで、その中で爆発させる。核兵器の威力全てを外に漏らさない結界ねぇ‥‥」
心当たりは一つ。
対クロウカシス戦の時に使った球形結界。
神威を解放して張れば難しくはないが、作れるのはマチュアのみ。
しかも大量に飛んでくるとなると、日本は確実にあの忌まわしき記憶を掘り起こす事となる。
「真っ直ぐにここの結界に飛んで来ても、爆発半径でアウト。迎撃は出来ているから良いけれど、もし失敗したらどうするかなぁ」
頭の後ろで腕を組み、考え事をしているマチュアだが。
その後ろではミアもポイポイもクスクスと笑っている。
「助けるのですよね?」
「その為にスタンバイしているっぽい。マーチューアさん、いつでも命令していいっぽいよ。私達幻影騎士団は、マチュアさんの命令には絶対っぽい」
「ええ。一言おっしゃって下さい」
そう笑っている二人に、マチュアは頭をパリパリと掻く。
「全く。なんでまあ、考えている事バレているかなぁ‥‥それじゃあ理屈抜きで、各自の判断で全力防衛宜しく」
そう話すと、マチュア達は魔法鎧に搭乗した。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「マスターコントロール。こちらウィザード1、間も無くターゲットエリアに到達」
『了解。マスターコントロールよりウィザード各機に。0010後にベールイ・レーベチも合流。定刻通りに作戦開始』
「了解。アメリゴに神の加護のあらん事を」
横須賀米軍基地を飛び立った三機のステルス戦略爆撃機・B3アストラム。
ウィザードのコードネームを与えられた機体は、間も無くルシア連邦の戦略爆撃機ベールイ・レーチェと合流。
衛星軌道から確認した、極秘軍事施設への精密爆撃の準備に入る。
既に秦朝共和国からは先制攻撃として日本に向かってテポドン2か発射されたが、こんごう型ミサイルイージス艦の迎撃により失敗。
続いて第二射の準備が始まっていた。
――ピッピッ‥‥
「第七艦隊から入電。アメリゴ・ルシア連邦の爆撃機は間も無く指定座標に到達‥‥オペレーション・セカンドストライク発動‥‥緊急アラート、秦朝国の第二波攻撃を確認‼︎」
日本海海洋上で待機していた展開していたミサイル護衛艦こんごう、同きりしま、みょうこう、ちょうかいの四隻のイージスシステムが、複数の弾道軌道を描くミサイル群を確認。
「迎撃開始、可能な限り撃ち落とせ!!」
「了解‥‥イージスシステムによりターゲット補足。ミサイルを捉えました。三段階高度のミサイル群確認‥‥八発迎撃開始、残り二軌道は迎撃不可能です」
「こんごうとみょうこうは中高度迎撃、きりしまは高高度の八発を‼︎ちょうかいは警戒モードに移行、残りは沿岸部のPAC3で迎撃せよ‼︎」
「了解。転送完了‥‥PAC3の発射を確認‼︎」
すぐさま迎撃命令が出ると、すぐさまこんごう、きりしま、みょうこうの三艦からSM3艦対空ミサイルが発射された。
迎撃不能なディプレスト軌道のミサイル群は沿岸部と市街地に追加されたPAC3により迎撃を開始したのだが、今回は範囲が広すぎた。
――ドッゴォォォォォォッ
迎撃失敗したミサイル群は日本の各地に直撃、これにより6都市12市町村がミサイルにより被害を受けた。
そして、国会議事堂周辺にも、再びミサイル群がやってくるのだが。
「やらせませんっ‼︎」
「その手はもう見えているっぽい‼︎」
すぐさま高高度まで転移したミアが、結界上空で飛来してきたミサイルに向かって迎撃を開始する。
――ヒュンッ
すぐさま真空の刃を生み出して、弾道を切断するミア。
同じくポイポイもクナイを投げて弾頭を破壊したのだが、二つとも破裂することはなく、銀色に輝く粉を吹き出し、広範囲にばら撒いた。
「な、なんですか?」
真下で空を見上げていたマチュアは、その粉が結界制御球による結界に触れた瞬間、バチッと弾けて行くのに気がついた。
「チャフ?でもなんでそんなものを?」
ふと頭をひねった刹那、東京の上空に魔法陣が浮かび上がる。
「結界破壊チャフか‼︎それはマズイっ」
そう叫んだ刹那、魔法陣の中から爆弾が落ちてくるのを見ると、マチュアはすぐさまイーディアスで上空に転移した!!
全長7m、重量20tの爆弾。
そんなものが地表に落ちたらどうなるかわからない。
そして、その爆弾が何者か、マチュアは直感で理解した。
「ミア、結界を強化。その粉は結界中和兵器だよっ‼︎」
――ガシィッ
落下中の爆弾をどうにか抱えたイーディアスだが、その大きさと雰囲気に、マチュアはすぐさまイーディアスを中心に結界を発動した‼︎
「神威解放っ、間に合えっ」
――カッ‼︎
マチュアのイーディアスを中心に直径10mの球状結界。
その内部が真っ赤に光り輝く。
内部からは光と煙が見え隠れし、内部が超超高温に包まれているのがわかる。
もし、結界が中和された議事堂上空で爆発していたら、その被害はとんでもないものになっていた。
爆発から発生する一次放射線の致死領域は半径4.5km、爆風による人員殺傷範囲は20kmにも及んでいる。
そう。
第三帝国は、魔法陣を通して日本国に『核爆弾』を落として来たのである。
「ま、マチュアさん‼︎」
上空で燃え盛る球状結界。
その中にはどれだけの熱量が吹き荒れているのだろう。
神威解放による結界で、マチュアは核爆発の全てを閉じ込めたのである。
そこが限界。
瞬時に逃げることなどできなかった。
「‥‥イーディアス表面装甲融解か‥‥体表面結界維持‥‥ミア、ポイポイさん、この結界の維持魔力を二人に切り替えるから‥‥」
そう呟くものの、すでに熱でブレスレットも溶け始めている。
「神威解放で亜神モード。でも、この火力は駄目か‥‥」
結界内は逃げ場のない爆風と破壊力により超高温状態。
そしてマチュアの結界は、外部から空気だけは取り入れられる。
可燃可能な状態が続き、更に逃げ場のない爆熱が集まると、結界の中ではプラズマ放電も始まる。
やがて、この内部では核融合レベルの状態が発生するだろう。
そうなると、結界を破壊することはできない。
「‥‥転移‥‥駄目か、結界維持を最優先‥‥」
やがてイーディアスが完全に消滅すると、マチュアは結界の中心で膝を抱えて浮かんでいる状態となる。
周囲には小さな球形結界、そこで静かに対処方法を考え始めた。
‥‥‥
‥‥
‥
「ミア‼︎第二波が来るっぽい」
飛んで来るテポドン2。
その弾頭には『結界無力化チャフ』が仕込まれているものと、通常弾頭が混ざりあっていた。
――ドッゴォォォォォォ
前方からツヴァイとワイルドターキーの魔法鎧も到着すると、すぐさま迎撃を開始。
残りのミサイルを全て破壊する。
「ミア、状況を報告して」
「マチュアさんが結界の中で爆発に巻き込まれて‥‥まだ燃えているんです、急いで結界を解除しないと‼︎」
そう叫びながら燃え盛る結界に向かおうとするのを、ツヴァイが止めた。
「行ってはダメです。結界を解除すると、内部の熱エネルギーが周囲に広がります‥‥自然に治まるのを待つしかないし、あの結界は破壊してはいけない」
「どうしてですか‼︎」
「あれは核爆発でしょう。水爆かと推定されますが、いま結界を解除すると、熱線と爆風が広がるのは目に見えている。しかも、あの結界の中に圧縮されているので、もう解除も不可能‥‥」
「そんな‥‥そんな事って‥‥じゃあ、マチュアさんはあの中から出られないのですか?」
ワナワナと震えるミア。
その言葉には、誰も返事を返さない。ゆっくりと地上に降りるミアとポイポイ、そしてツヴァイとワイルドターキーはそれぞれが持ち場に戻る。
自活車の横に着地すると、ミアとポイポイはすぐに魔法鎧から出た。
「ぷっはぁ‼︎」
「ふう‥‥しかし、これからどうしよう」
「マチュアさんの命令は絶対っぽい。後2週間は、結界の維持を続けるしかないっぽいよ?後、あの結界の維持魔力がポイポイとミアに切り替わっているっぽい」
「そんな‥‥本当だ、ならマチュアさんは?」
そう話していると、古屋がミア達の元にやって来る。
「モニターで確認してました、マチュアさんは何処ですか?」
叫ぶように問いかける古屋。
すると、ポイポイが遙か上空の結界球を指差す。
「あの中っぽい」
皆が悲痛な顔をしているのに、ポイポイだけはいつも通り。
「あ、あの中って、さっき政府広報がミサイルを撃破したって、安全ですって話していましたけど、あれって‥‥核爆発ですよね?」
震える古屋に、ミアは泣きそうな顔でコクリと頷く。
「ツヴァイさんが話していました。あれは解除できない、熱と放射性物質の塊だって‥‥」
――ゴクッ
鳥肌と、喉の渇き。
古屋は目の前の事態をどうやって理解するか考えていた。
やがて、自衛隊員が特殊車両で駆けつけると、この付近一帯を進入禁止区域として封鎖し始める。
「大使館の方も、自活車でそこまで移動してください。この付近一帯は侵入禁止区域となります」
隊長格の人がミア達に移動するように促すと、今度はあちこちから報道陣もやって来る。
カメラを回して撮影を開始すると、ミアやポイポイの元に走って来るのだが。
――スコーン
駆けて来る報道陣の足元にクナイを飛ばす。
「何の用?くだらない事するのなら蹴散らすっぽいよ」
殺気立つポイポイだが、報道陣はマイクを向ける。
「あ、あれは核兵器ですよね?何なのか教えてください」
「マム・マチュアが核爆発の影響を抑えていると聞きましたが、あれが爆発すると危険ではないのですか?」
「この後もまた核攻撃があると予想されますが、その場合はどうするのですか?」
次々と問いかけて来る報道陣。
「うるさい。あの中ではマチュアさんが頑張っているんだ、好奇心で来るなんて最低だ‼︎次に核がきても、もう助けてあげないんだから‼︎」
「とにかく下がってください。私達はみなさんにお話しする事なんてありません」
ポイポイとミアが叫ぶ。
すると、慌てて小野寺防衛大臣も駆けつける。
「マム・マチュアがあそこにいるって聞きました。助かりそうですか?」
心配そうに問いかける小野寺。
するとポイポイは頭を捻るだけ。
「外から結界を破壊すれば助けられるかもしれないっぽいよ?」
あっさりと一言告げるポイポイだが、それには小野寺防衛大臣も真っ青になる。
「そ、そんな事をしたら東京は死の街になる‥‥それだけはダメだ」
「でも、そうしないとマチュアさんは助けられないっぽい」
すぐさまブレスレットで通信を入れるが、全く反応しない。
「あれは動かさないのか?何処か公海上で解除するとか出来ないのか?」
「それは無理ですね。発動したのがマチュアさんである以上、解除や移動はマチュアさん本人しか出来ません。外部からはディスペルで破壊する事しか出来ないのですよ」
淡々とミアが説明する。
結界の維持魔力は二人から供給されているので、発動者のマチュアが解除するか二人が魔力供給を止めれば消滅する。
だが、二人が魔力供給対象にされているということは、マチュアは自力で脱出しようとしている。
そうポイポイほ感じ取った。
そしてミアの説明を聞いて、小野寺もう〜んと困り果ててしまう。
「小野寺防衛大臣、今回のミサイル防衛失敗の件について一言お願いします」
「しっかりと防衛出来ていれば、こんな悲劇は起こらなかったのですよね?」
「やはり指揮系統に何か問題があったのですか?」
次々と質問責めにする報道陣だが、小野寺はきっぱりと一言。
「こっちは限られた予算でやりくりしていてるのです。散々違憲だ無駄金だと話して予算を削って、いざ有事にはそれですか。全く、貴方達は責任問題を追求するばかりで、何が楽しいのですか‼︎」
報道陣に向かって一喝すると、その迫力に押されてしまう。
「し、しかし、もし次に核が空から落ちてきたら、どう対処するのですか?」
「突然魔法陣から降って来る核爆弾から身を守る術があるのなら教えてくださいよ。次に同じ攻撃がきたらおしまいと思って結構ですよ‥‥この地球で、あの攻撃を受け止められたのはマム・マチュアのみ。それも依頼ではない、善意でです‥‥もう下がってください」
喚くように叫ぶ。
すると報道陣もゆっくりと撤退を開始した。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
マチュアが核爆弾を結界に閉じ込めてから六時間後。
ミアとポイポイにはマチュアからの命令を遂行するようにと伝えると、ツヴァイは宮内庁前のテントで考えていた。
いくらマチュアが亜神でも、あれだけの熱量に耐えられるはずがない。
もし耐えられたとしても、放射線による影響は計り知れない。
そう考えると、最悪の事態を考える必要があるのだが。
「まあ、マチュアさまが心配なのは分かる。じゃが、あの方を信じて待つしかあるまい。奇跡を信じるのぢゃ」
「そうですわ。あの方に限って、死んでしまうとか無いと思いますが‥‥ツヴァイさま、どうして笑っているのですか?」
ワイルドターキーとズブロッカがツヴァイを勇気付けようと話しかけていたのだが、ツヴァイは不敵な笑みを浮かべていたのである。
「ああ、これは失礼。心配はあまりしていませんが、むしろこの後の展開を彼の方がどう考えているのかと思いましてねぇ」
「「?????」」
近くのテーブルでは、マチュアが死んだと疑わない吉成がようやく泣き止んだ所である。
その彼女でさえ、今のツヴァイの言葉には耳を疑った。
「いえ、核の嵐の中で生きているなんてありえませんよ。どこに証拠があるのですか?」
そうツヴァイに問いかけると、マチュアの生み出した結界球を指差す。
「魔術師の結界は、ロックしない限り魔術師の死をもって消滅するのが道理。未だ残っているのが理由の一つ。そして二つ目、あの人がいつまでもあそこにいるとは思いませんよ。転移で外に逃げて維持しているのではと思っています」
人差し指を左右に振るツヴァイ。
「そ、その事はミアとポイポイには?」
「ポイポイはすぐに理解したそうですし、何か知っているようです。その上で煩い報道陣の前で演技していたらしいですよ。まあ、ミアはポイポイの演技に騙されて一緒に叫んでいましたのでね」
愕然とする三人。
しかし、それならばどこにいるのか。
「さあ。でも、この事は極秘で。あの方としては死んだ事にするのが都合いいんでしょうからねぇ」
そう呟くと、テントの中の無線機で幕僚本部に連絡を入れる。
――ピッピッ
「異世界大使館のツヴァイです。指揮官をマチュアさんから私に移行します、以後のベースは皇居前に切り替えますので」
『ベースワン了解。現在、セカンドストライク作戦は最終ステージに移行。秦朝共和国は完全に沈黙‥‥』
「了解。今後は結界維持を最優先、ミサイルの迎撃に対しては期待しないようにお願いします」
『残念ですが、仕方ありませんね。了解しました』
――ピッピッ
「さて、ここからはさっきの魔法陣からの爆弾に対してのみ、魔法鎧で出撃とします。次の指示まで待機という事で」
そう話してから、ツヴァイは一旦テーブルにつく。
そして深淵の書庫を発動すると、その中でマチュアが考えそうな作戦をじっと調べ始める事にした。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






