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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第9部 三つの世界の物語
232/701

変革の章・その5 オペレーション発動

 ガヤガヤガヤガヤ

 大勢の報道陣が詰め寄っている。

 少し遠くから、結界制御球プロテクトオーブを報道している最中である。

 そこにのんびりとマチュアとミア、ポイポイが戻って来たので、報道陣は一斉にマチュア達に詰め寄って来た。


「下がりなさいっ‼︎」

 駆け寄る報道陣に向かって一喝するマチュア。

 それで全員の足が止まった。

――ツツー

 マチュアは報道陣の前に魔力で光る線を一本引いた。

「ここから前に出たら話はしません。という事で、色々と聞きたいのでしょう?」

「是非お願いします」

「うちもです。質問いいですか?」

「宜しければ生放送でコメントをお願いします」

 次々と話しかけてくるので、マチュアは両手を前に差し出して制する。

「後ろで質問内容をまとめて来なさい。個々になんて答えないわよ、生放送のコメントもお断り。では十分でまとめて来なさい」

 慌てて報道陣が後ろに下がる。

 その光景を見て、ミアは口を開けてポカーンとしていた。

「あ、あの、マチュアさん、これは何ですか?」

「えーっと、報道って言って、様々な情報を伝達する人々よ。私達が何をしているのか興味があって聞きに来ているの。ミアも任務が終わったら、少しのんびりとこの世界を学びなさい」

「はい‼︎」

 瞳をキラキラさせて返事をするミア。

 ちなみにポイポイさんは、国会議事堂の中の売店までおやつを買いに行った模様。


「マチュアさん、質問まとまりましたのでお願いします」

 記者団を代表して、FTVの大川アナウンサーがラインの前に立った。

 ならばと、マチュアはラインの中にコイコイと手招きする。

「さて。どんな質問かな」

「まず、あの上空の絨毯の丸い物体はなんですか?」

「あれは結界制御球プロテクトオーブですよ。半径2km圏内を魔法の防御結界で守るものです」

 ふむふむと記者たちは録音機を回して頷いている。

「その効果は?」

「対ABC兵器中和能力、加えて実体弾に対しての防御力も備えています」

「持続時間は」

「それは秘密。教えるとまずいでしょう?」

 そこで一同笑い始める。

「カナンは今回の件については無関係という話でしたが、どうして協力する気になったのですか?」

 ほほう。

 そこに来ますか。

 ならばとマチュアは一言。

「日本国から正式な依頼がありましたので、国会議事堂と皇居に結界制御球プロテクトオーブを施しました」

「札幌のは?」

「自分の大使館守るぐらいはいいでしょう?それに頼まれたから近所も守るわ」

 そこで一旦アナウンサーは下がっていく。

 再び質問の打ち合わせを始めている。


「マチュアさま、何か楽しそうですね?」

 ミアが笑いながら問いかけるので、マチュアは魔力で二つの椅子を作りだすと、ミアと二人で座った。

 そして空間からティーセットを取り出すと、のんびりとおやつタイムに突入する。

――テクテクテクテク

 大量のお菓子をかかえて、ポイポイも戻ってくる。

「大量に買い込んだっぽーい」

 すぐさまマチュアが椅子を一つ作ると、ポイポイは座ってまずはチョコレートを開ける。

「キノコっぽい‼︎ ミアも食べるっぽいよ」


――ポリポリポリポリ

 山のようなキノコの形のチョコレート。

 それをミアとマチュアとポイポイが無言でぽりぽりと食べている光景は、前方で相談している報道陣にも不思議な光景に見えたのだろう。

「あ、あの、地球のお菓子美味しいですか?」

 おずおずと問いかける記者に、ミアとポイポイがコクコクと頷いている。

 ならばと記者は荷物置き場に走ってもどると、すぐさまお菓子の箱を持ってきた。

「良かったらどうぞ。北海道の菓子ですけど‥‥」

 札幌の大使館職員に札幌の土産とはこれいかに。

 だが、受け取ったミアとポイポイは嬉しそうに食べ始める。

 ポテトチップスの表面にチョコレートがコーティングされているそれを、楽しそうに食べ始めている。

「ルイズのチョコレートチップスとは‥‥食べ物で釣るつもりかな?」

 マチュアが笑いながら問いかけるが、記者は頭をブンブンと振る。

「取材相手に楽しんでもらうのも記者の仕事ですよ。では失礼します」

 手を振りながら下がっていく記者に、ミアとポイポイも手を振る。

 その光景に気がついた他局の記者も、荷物から次々と菓子やおつまみなどを持ってくる。

――ゴソゴソッ

 気がつくと、ミアとポイポイの前に大量の食べ物がお供えのように置いてある。


「あっちゃあ‥‥あのね、記者の皆さん、いくらおやつをお供えしてもですね‥‥って、ポイポイとミア、嬉しそうに食べない‼︎」

「モグモグ‥‥ふぁ?美味しいですよ?」

「せっかくくれたのに食べないと勿体無いっぽい。みんな優しいっぽいよ?」

 パチンと自分の額に手を当てるマチュア。

「ありゃあ‥‥わかったわよ。一社十五分、それで良いでしょ?」

 そのマチュアの言葉に記者団はガッツポーズ。

 そこから対面式で記者会見を始めるマチュアたち。

 全てが終わる頃には、既に日が傾いていた。


‥‥‥

‥‥


「ポイポイとミアは正座っ‼︎」

 記者会館に戻ってきたマチュアは、まずミアとポイポイを正座させた。

「ふぁ?」

「マチュアさーん、ポイポイ何かしたっぽい?」

「えーっと説明します。先程のように記者団の質問は終わる事はありません。そのため、時間や質問の数などはこちらがイニシアティブを取らないとならないのよ」

 ふむふむ。

 二人は静かに頷いている。

「そこで色々と物を貰ったりしたら、断りにくくなるじゃないのよ。わ、か、る?」

――ハッ‼︎

 ようやく理解した二人。

 反省の色を浮かべてシュンとしている。

「ごめんなさい」

「申し訳ないっぽい‥‥」

「よし、分かれば良い。でも一時間正座ね」

 ポン、とポイポイの肩を叩く。

 ポイポイの闘気による義足には痛覚はないので、マチュアが擬似的に神経感覚を生み出したのである。

「ポッ‥‥ポィィィィィ‼︎」

 その瞬間に絶叫するポイポイ。


 その二人を放置して、マチュアは古屋の前に座る。

「こっちは?」

「あちこちの議員からの質問攻めですよ。結界制御球プロテクトオーブを量産出来ないかとか、もっと増やせとか。もう勝手気儘ですよ」

「それで?」

「一つのレンタル料二十億と話ししたら黙りましたよ。まさかタダで助けろと言わないですよね?今から冒険者ギルドに依頼出しますかってね」

 その古屋の回答にサムズアップするマチュア。

「ナイスだよ古屋くん。さて、あと十八時間。今から出来る事は?」

 そう三人に問いかけると、一行は頭を捻った。

「休憩?」

「栄養補給?」

「作戦タイム?」

 そう三人が答えると、マチュアはコクコクと頷いた。

「それ全部。まあ、作戦なんてないので、相手の出方待ち。明日の朝九時まで自由時間とします‼︎」

 とんでもない事を話したマチュア。

 それには全員驚いた。

「宿を取って休みましょう。古屋くん、三人分の宿を取って、明日の朝にみんなでここに集合。私はイーディアスのメンテナンスでここに居るのでよろしくお願いね」

「は。はい。それじゃあポイポイさんとミアさんはこちらへどうぞ、では失礼します」

 古屋が頭を下げて部屋から出ていく。

「じゃあ、まあ明日お願いします」

「お休みっぽい‼︎」

 そのまま二人も、古屋の後ろについていく。

 それを確認してから、マチュアは外に置いてあるイーディアスの元へと向かうと、胸部ハッチを開いて乗り込んだ。


――ピッピッ

 機体を起動させると、マチュアは空間からイーディアス用の装備を取り出す。

 左腕にはパイルシューター搭載型ヒーターシールド、右腕には30mm魔導バルカン。

 腰にはフォトンセイバーとロングソード。

 そして空間にはバスターランチャーを収納している。

「これじゃあ足りないよなぁ‥‥」

 一通りの調整を終えると、マチュアは足元に大きめの魔法陣を発動する。

「アニメイト発動‥‥ええっと‥‥」

 チェストに収納されている大型兵器の中でも、ストームが放り込んだ戦車用の弾薬を引っ張り出す。

 外部搭載型ロケットランチャーも取り出すと、それらをイーディアス搭載用に作り変えている。


「‥‥よう。こんな時間まで大変だなぁ。何やっているんだ?」

 すっかり日も暮れて、月が中天にさしかかる。

 そんな夜中に、持ち帰り用の牛丼の入っている袋をぶら下げた蒲生が、光球を灯して作業しているマチュアの元にやって来た。

「おや、誰かと思ったら蒲生さん。今はミサイルランチャーとロケットランチャーパック作ってますよ」

――ブッ

 その言葉に吐き出す蒲生。

「おいおい、こんな所でかよ。爆発しないだろうな?」

「しても、魔法陣の外には爆風も飛びませんよ‥‥と、これでよし」

 パン、と魔法陣を消すと、完成した装備も空間に収めていく。

「色々と大変だなぁ。それと、三笠から連絡来ていたぞ、異世界移民の話だが、進めていいのか?」

 蒲生の話しているのは、カルアドの移民計画のことであろう。

 それなら全く問題はない。

「お好きにどうぞ、私自身も詳しく知らない世界です、安全面は保証できませんので、全て自己責任です。自衛隊などの護衛をつける事をお勧めします。それに、廃棄されたドーム都市をみなさんに明け渡すのですから、技術者や研究者も必要でしょうね」

 淡々と話しながら、マチュアはもう一度イーディアスに乗り込む。

「まあ、話を進めたいが、まずは今日だな。午後三時まであと十五時間切ってるし、マム・マチュアとしては、ヒトラーはどう動く?」

「さあねぇ。ゲルマニアは徹底抗戦でしょうから、先ずはゲルマニアで戦闘が勃発。それに伴ってアメリゴ第七艦隊が動くでしょうから、必然的に日本海沖で戦闘になるのは避けられません、かなりの数のミサイルが第七艦隊と日本に飛んでくるでしょうねぇ」

 淡々と話をしながら、イーディアスの中で調整をしている。


「そこまで分かっていて、随分と余裕だなぁ」

「私たちカナンには基本関係ないですからねぇ。日本の迎撃システムとイージス艦の性能に期待していますよ」

「議員の中には、カリス・マレスとの国交が始まってから世界がおかしくなったという者も存在する。魔法が世界に伝播して、今まで作れなかった物が作れるようになる。それを悪用された例だとな」

 はぁ。

 勘違いも甚だしい。

「あのですねぇ。カリス・マレスから日本に来てまだそんなに時間経ってませんよ?地球人アーシアンの冒険者だって、殆ど日本人しかいないじゃないですか。何処に魔法が伝わる道筋があると言うのですか?」

「だよなぁ。明らかにカリス・マレスを悪く言っているだけだからなぁ」

「どうせ椎名さんでしょう?」

「いや、小野寺ん所の若い奴らだ。椎名のと事はまた違う、異世界否定派だからなぁ」

「別に否定していて構いませんよ。明日の三時にどんな顔しているか見物みものですから‥‥それよりも、シェルターとかの準備は出来ているのですか?ミサイルは確実に飛んで来ますよ」

「ある程度はな。イージス艦の性能を信じるしかない。どのみち戦争になっても、逃げる場所なんてないからなぁ」

 葉巻を咥えながら、蒲生が空を見上げる。

「綺麗な夜だよ。何でヒトラーなんて復活しやがったんだろうなあ。こんな21世紀の平和な時代に」

「ヒトラーの生い立ちは調べたのですか?」

「いや。それはゲルマニアとアメリゴの管轄だ、日本からは手も足も出ない。それがわかれば、対処方法も分かったかもしれないな」

「そうですね‥‥さて、それじゃあ私もそろそろ寝ますね。明日の朝にはまた来ますので」

 バン‼︎とイーディアスを軽く叩いて魔法陣の中に収納する。

「ああ。俺も部屋に戻って寝るとするか‥‥じゃあな」

 蒲生もすぐに議員会館に戻っていくと、マチュアも議員会館の割り当てられた部屋に戻っていった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 



 朝九時。

 タイムリミットまで、あと六時間。

 結界制御球プロテクトオーブの真下には古屋とマチュア、ポイポイ、ミアが集まっている。

 昨日の報道を見た大勢の人々も、少しでも結界制御球プロテクトオーブの恩恵に預かりたいのか集まっている。


「さて、あと六時間なら、これを使うかな」

――ブゥゥゥン

 足元に魔法陣を開くと、マチュアは二騎の魔法鎧メイガスアーマーを召喚した。

 共に幻影騎士団タイプの最新騎、それをミアとポイポイ用に登録してある。

「こっ、これは?」

「まさか私とポイポイさんのですか?」

「ええ。基本装備は全て同じだけど、ポイポイさんのは手裏剣とツインダガー装備、ミアのは魔力増幅用の杖が付いているのでね‥‥」

 すぐさま記憶のスフィアを作り出して二人に手渡す。

「昼までに完全に使いこなせるように。あっちの広場で練習して来なさい」

「「はい‼︎」」

 急いで魔法鎧メイガスアーマーに乗り込むと、胸部ハッチを開いたままガチャガチャと歩いていく二人。

「古屋くんも、緊急時には召喚して乗り込むこと。君の『蒼月』と高嶋くんの『朧月』は災害時支援型なんだからね」

 そう話しかけると、すぐさま古屋も自騎を召喚した。

 ゼロスリーカスタム、魔法によるセンサー強化型。

 胸部ハッチを開いていつでも乗り込めるようにしておくと、古屋はグッと右腕の力こぶを叩く。

「ランクが低いのは仕方ないですからねぇ。その分頑張りますよ」

「それでいいわ。私はワイルドターキーさん達の所にも届けてくるから。一時間で戻ります」

 そう話して、マチュアはツヴァイのいる座標に転移した。


‥‥‥

‥‥


「いよ〜う。こっちの調子はどんなもんだい?」

 皇居内部。

 宮内庁の上空に結界制御球プロテクトオーブは設置してあった。

 その真下では、用意してあった仮設テントの中でワイルドターキー達が朝食を食べている所である。


「全て完了。今は待機状態ですよ。結界制御球プロテクトオーブはあの通り‥‥」

 ツヴァイが指差した先は、巨大な樹木の上。

 ズブロッカが大地の精霊に呼びかけて、高さ120mの杉の木を生み出したのである。

「ふぁぁ。こういうのは出来ないんだよなぁ。流石は精霊魔術師だよね‥‥これ、宜しく」

 すぐさまズブロッカとワイルドターキーにも記憶のスフィアを手渡す。

 そして足元から二騎のカスタマイズされたゼロスリーを召喚した。

「おう、ウォルフラムと斑目の持っているやつと同じか。これであいつらの自慢にうんざりする事はなくなったなぁ」

 すぐさまワイルドターキーは胸部ハッチを開いて乗り込む。

「ターキーさんの機体はウェポンラック装備。空間直結で、さまざまな武器が収めてあるので。ズブロッカのはミアのと同じ魔力増幅杖を装備。そういう事ですので、昼までに使いこなしてくださいね」

 そう説明すると、マチュアはテントで座って緊張している吉成の元に向かう。

 その隣では、宮内庁長官の山内浩一郎が打ち合わせをしていた。

「はい、初めまして、異世界大使館のマチュアです」

「あなたが。お噂はかねがね、本日はありがとうございました」

 お互いに会釈すると、椅子に戻って打ち合わせを続けている。

 これは邪魔してはダメだと、マチュアはツヴァイの元に向かう。

「こっちはあれか?皇居外に人が集まってるの?」

「ええ。門を開くことはできませんが、少しでも安全な場所にって大勢の避難民が集まっていますね。結界制御球プロテクトオーブをうまく設置すれば、山手線の内側だけでも守り切れますよ?」

 そのツヴァイの説明を聞くが、マチュアは頭を左右に振る。

「肝心の魔導師が足りないのよ。魔力係数200以上の魔導師がこっちの世界に来たら、すぐに魔障酔い起こして倒れるわよ。それこそ使い物にならないわ」

「ズブロッカとミアは?あの二人も200超えてますよね?」

「ありゃ特別。ミアは私の知識の額冠つけてるでしょ?ズブさんは精霊魔術師で、地球の精霊の加護を受けられるから安全。他に精霊魔術師で魔力係数200持っている人なんて、南方聖域のハイエルフぐらいよ」

 つまり現状では、これ以上の増加は無理。

「メレアがもう少し育ってくれたら助かったんだけれど、まだ少し足りない。カナンの冒険者ギルドでも、いない事はないんだが‥‥魔障酔いだけは克服出来ないからなぁ‥‥」

 頭を抱えるマチュア。

 ここに来て人材不足が足を引っ張ることになるとは、思ってもいなかった。


「後進の育成をもっとするべきですね。まあ、今回の事が終わったら考えるとしましょう。では、私はワイルドターキーたちの訓練を見て来ますね」

――ブゥゥゥン

 ツヴァイも足元から魔法鎧メイガスアーマーを取り出す。

 シスターズ用のイーディアス量産型。

 その一番騎である。

 コツコツと暇な時に作ってあったのが、ようやくお披露目という所であろう。

「そんじゃあ、私は札幌見てから戻るわ。後宜しく」

 そう話してから、今度は札幌に転移した。


‥‥‥

‥‥


 異世界大使館のロビーにダイレクトに転移する。

 そこでは、領事部職員が数台のモニターを繋げている最中であった。

「おや?情報収集用?」

「あ、マチュアさんおはようござます。三笠執務官の指示で設置しています」

 うんうん。

 満足そうに返事をして、マチュアは事務室に入る。

 そこは正に戦場、数少ない職員たちが大量のファックスを確認し、必要なものには連絡を入れている所である。


「おや、忘れ物ですか?」

 お茶を飲みながら三笠が問いかける。

 すると高島や池田もマチュアに頭を下げた。

「んにゃ、陣中見舞い。高畑さんは?」

「二階ですよ。在札幌アメリゴ大使館の方がいらっしゃって、例の未開の土地についての話をしています。これから戦争になる可能性があるのに、次のステップの準備もするのですから。中々にしたたかですよ」

 ニコニコと笑う三笠。

 すると、池田がマチュアにクリアパットを持ってくる。

「アメリゴの艦隊がヨーロッパと日本海に集まってます。ヒトラーの宣言後に一斉砲撃があるかと思われますが」

「まあ、それはやらせておいていいわよ。いくら私でも、飛んでくるミサイルの全てを迎撃なんて出来ないんだから。こっちは安全そうだから戻るわね。ヒトラーの宣言とゲルマニアの判断、どう動くか見る事にしましょう」

 そう話してから、マチュアは大使館の中庭に出る。

 そこには、大勢の子供達が集まっていた。


「‥‥おやまあ。みんな逃げて来たの?」

「ここと自然公園にいっぱいいます。後、そこのキタエーテにも、少し遠くの小学校が集まってます」

結界制御球プロテクトオーブの範囲外かぁ。札幌全域を守っているわけじゃないからねぇ。まあ、ここにいれば安全だからね‥‥」

 そう話して、守衛室に向かう。

 そこではいつもと違いガッチリとした装備を用意した白川一佐と黒川三曹、久居二曹が待機している。

 マチュアの姿を見て軽く敬礼すると、マチュアも釣られて敬礼を返した。

「マム・マチュアは国会議事堂に向かったと聞きましたが」

「ええ、様子見ですよ。そもそも皇居に結界制御球プロテクトオーブを設置してあるので、自動的に国会議事堂も結界範囲内なんですけれどねぇ」

 半径2kmなら、確実に皇居も国会議事堂も範囲内に収まる。

 重ねがけする必要などないのだが、ある程度の強度を求めてのことなのだろう。

「有事の際には、大使館に大勢の人が詰め寄ることも考えられますが。その場合の対処は?」

 そう問いかける白川一佐。

 だが、マチュアの言葉はいつも通り。

「子供と老人、妊婦、怪我人を最優先で。医療スタッフが大使館にはいないので、その場合の要請はするかもしれませんので」

「了解しました。では今の内にスタッフの手配をしておきます」

「お願いしますね。では‥‥」

 大使館正門から外を見る。

 あちこちの路上には、避難して来たらしい家族の乗っている車が停車している。

 商店街はこの日は全店が臨時休業、人気が全くなくなっている。

 札幌市から郊外に避難した人達がいるという話は聞いていない。

 まだ、戦争になるかもという考えだけで、あまり実感がないのだろう。

 まもなく、その答えが出る。


 ヒトラーの宣言まで、後二時間。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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