日常の章・その15 神出鬼没な敵性存在
島松駐屯地での襲撃事件から一週間後。
先週末は島松駐屯地だったので、この土日はマチュアは休みである。
のんびりと馴染み亭でランチを食べながら、今後の対策を考えようとして‥‥止めた。
「そもそも、依頼でも何でもない。私がわざわざ出しゃばる事はないんだよ」
そう考えながらも、トントンと羊皮紙を指で叩く。
わかってはいるものの、自慢の魔法鎧が押されそうになったのは納得がいかない。
「出力系統と武器。私の30mm魔導機関砲は通用したから量産するとして。近接武器だよなぁ」
腕を組んで考えるが、思うような武器が見つからない。
カリス・マレスでの近接武器など、人間の武器の延長で考えるしかない。
そしてそれは現代でも同じ。
「あかんなぁ。行き詰まってるなぁ‥‥」
ポリポリと頭を掻くが、そんな事では何も思いつかない。
「店長、なかなかに詰まってますねぇ」
メアリーがシードルと腸詰めを持って来てくれる。
なので、とりあえず喉を潤して腸詰めを齧る。
「ねえメアリー、騎士の武器ってなんだと思う?」
思わす問いかけると、メアリーは間髪入れずに一言。
「騎士道ですよ。礼節と慈愛、慈悲。あとは勇気。この四つは絶対に必要です」
「むう。哲学で本質かぁ」
「ええ。武器といっても、どんな武器でも構わないですよ。闘気で武具を強化しますから」
「闘気ねぇ‥‥お?」
何か閃いた。
それを忘れないように次々とメモを取ると、マチュアはすぐさま自室へと走っていった。
‥‥‥
‥‥
‥
夕方になって、おおよその図面は出来上がる。
あとはこれを作るだけ。
ならばとマチュアは、ベルナー城に転移すると、真っ直ぐに円卓の間へと走っていく。
――ガチャッ
「ウォルフラム頼みがあるのだが‥‥って、誰もいないし」
静かな室内。
いつもなら待機している騎士がいるはずだが。
「あっれ?どういう事だ?」
仕方なく部屋から出て階段を降りていく。
そして城内の食堂に向かうと、マチュアはようやくウォルフラムと斑目の二人を見つけた。
のんびりと食事をしている二人の前に、マチュアもゆっくりと座るとエールを頼んだ。
「どうしました?また何か事件ですか?」
「緊急事態なら、いつでも地球に行くが。何かあったのか?」
二人して心配そうに問いかけるので。
ならばとマチュアは島松駐屯地での出来事を説明した。
「‥‥それで私達の出番ですか?」
「そうなんだ。すまないが稽古をつけてくれ」
???
一瞬耳を疑うウォルフラムと斑目。
「あ、あのですねマチュア様。私たちがマチュア様につけられる稽古などないと思いますが」
「いや、私はミスティックでは闘気を込められるけれど、暗黒騎士では闘気を纏えない。あれ、正確には暗黒闘気なのでちょっと違う。済まないが二人とも本気で、闘気を使ってかかって来てくれ」
成程納得。
ならばと昼食後の腹ごなしにと、三人は騎士詰所の横の訓練場にやって来る。
突然幻影騎士団のメンバーがやって来たので、待機騎士たちも興味津々で覗いている。
――シュンッ
装備を白銀の賢者モードにすると、マチュアは素手で構える。
「 闘気ベースで頼む。本気で殺しに来てくれ」
「まあ、死なないとは思いますが、行かせてもらいます」
「マチュア様とは一度本気で試したかったからのう。済まんが本気で行かせてもらうぞ」
二人同時に柄に手を当てると、全身と武器に闘気を注ぎ込む。
――ブゥゥゥゥゥン
全身が淡く輝くと、斑目もウォルフラムも必殺の一撃を繰り出した。
――ガギィィィィン‥‥チンッ
一撃で24の軌跡で斬りかかるウォルフラムのインフィニティブレイク。
そして斑目の居合・黄泉送り。
それぞれがマチュアに直撃する直前に、全て無力化された。
インフィニティブレイクは全てを間一髪で躱され
黄泉送りは命中する直前に刃を受け流された。
「‥‥当たらないんですが」
「うむ。拙者の一撃も受け流された。まさかここまで実力差があるとは‥‥」
そう呟いている二人だが、白銀のローブはズタズタに切り裂かれ、斑目の攻撃を受け流したマチュアの両腕は毛細血管が破裂して真っ赤になっている。
「いやいや、二人とも立派に化け物だよ。このローブ、ミスリル繊維で作り直したんだぞ。それにこの手を見ろ。闘気の対応が不十分だからこんなになったわ」
ゆっくりと両手に魔力を循環し、傷を癒す。
「それでも幻影騎士団のトップの自覚はあったのですよ。また鍛え直しますか」
「拙者もだな。抜刀の速度を更に上げなくてはならぬ」
そう話すと、マチュアも何とか動けるようになった。
「そんじゃ、もう一度お願いね。何か見えそうで見えないのよ」
ではもう一度。
次々と技を繰り出して行くが、マチュアにとっての致命傷にはならなかった。
神威を解放していないとはいえ、マチュアの肉体は亜神。
強力無比な魔道具やマジックウェポン、強度A以上の魔術でなくては傷すらつかない。
それでも、闘気の施された二人の攻撃は掠めるだけで血が吹き出す。
その域にまで二人の剣術は高まっているのである。
「ハァハァハァハァ‥‥やはりマチュア様には届かないですね」
「うむ。拙者も心力が途切れそうである。マチュア様、何か見えたか?」
「そりゃあもう。少なくとも二人は亜神クラスの化け物と戦っても問題なく戦える事はわかった。他の幻影騎士団もここまで高めてあげてね。それに‥‥」
二人に範囲型の治療魔術を施し、失った心力も回復する。
「すごくヒントになったよ。流石幻影騎士団の双璧だねぇ」
「その双璧二人をここまで追い込む人は誰ですか」
「しかも、そんな軽装で体術だけで。魔法も組み込んでいたら、拙者たちは死んでいたでござるよ」
カチッと刀を納める斑目とウォルフラム。
「まあまあ。お礼に良いものあげるからさぁ」
そう話してから、マチュアは足元から魔法鎧・ゼロスリーを二騎呼び出す。
大使館仕様の実戦型、しかも塗装は白銀。
胸部と右肩には幻影騎士団の紋章、背中の飾りマントにも同じものを施してある。
「これで、話にあった化け物と戦ったのでござるか‥‥」
「ええ。これに乗ったファイズで互角、つまり相手はそこそこの化け物だよ‥‥よし、登録完了。使い方は追々覚えてね」
そう話してから、簡単な操作方法を説明すると。
――ピッピッ
『十六夜です。例の未確認機が出現しました。急ぎ大使館まで』
――ピッピッ
「うわぁ、間に合ってない‼︎ウォル、斑目、こいつの取り扱いはファイズに聞いておいて」
そう叫ぶと、マチュアはすぐに大使館まで戻った。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「‥‥」
大使館ロビーでは、シフト出勤している職員達がテレビを見ていた。
そこはアメリゴのニューヨーク。
ニューヨーク州とニュージャージー州の境界線となるローワー湾上空に、島松駐屯地で姿を現した未確認機が姿を現していた。
すぐさまアメリゴ国防省の命令で次世代型戦闘機・F39が緊急出撃し、防衛戦を展開している。
「アメリゴからの出撃要請は?」
「ありません‥‥マチュアさんに呼び出しがあるかと思っていたのですがそれもなくて」
「‥‥どうする。動く‥‥動かない‥‥」
画面では、F39が未確認機に向かって両翼に固定されている35mm口径5砲身のガトリングガンを斉射している。
それは未確認機のボディを次々と貫通しているが、未だ致命傷には届いていない。
それどころか、未確認機は以前は持ってなかった手持ちのガンポットを構えると、飛来してくるF39に狙いを定めて反撃してくる。
今度の機体の大きさは全長で13m程。
おおよそ魔法鎧の倍の大きさの人型未確認機が放つガンポットは、F39には掠りもしない。
それどころかF39の反撃を受けて、やがてローワー湾に不時着すると、ゆっくりと沈没していった‥‥。
「これ、被害はなかったの?」
「出現した時に、足元を通っていた船舶が二隻沈められました。その後はニューヨーク市に向かってゆっくりと飛んでいたのですが、直後にF39がやってきて」
そして先程の映像である。
――プルルルルッ‥‥プルルルルッ
政治部の直通回線が鳴り響く。
「私が出ます。小野寺さんでしょうから」
すぐさま机に向かうと、受話器を取る。
――ガチャッ
「はい、異世界大使館のマチュアです」
『小野寺です。アメリゴが未確認機に襲撃されましたが、見ましたか?』
「さっき報告を受けて。今日は騎士団の訓練があってベルナーにいたんですよ」
『そうか。今頃アメリゴ国防省は大慌てだろう。日本の持つ未確認機についての情報開示を求めてきたのでね。安保理があるので公開するが、当事国の一つでもあるカナンも異存はないですね?』
「うちは当事国ですか?」
『実戦経験のある、という意味ですよ』
「成程納得。問題ありませんので開示してください」
『了解しました。その確認だけなので、それでは失礼します』
――ガチャッ
「うーん。どうするかなぁ」
ソファーに戻ってライブ中継を見る。
海底に沈んだ機体のサルベージは明日以降だろうと予測はつくが、アメリゴとしては例の未確認機は自国でも開発したいだろう。
「‥‥よし、カナンは関係ない、関わらない。このスタンスでいけばいい。実に問題のない大人の対応だ」
――プルルルルッ‥‥プルルルルル
再び鳴り響く電話。
次は予想がついている。
――ガチャッ
「蒲生さんだなと‥‥はい、異世界大使館のマチュアです」
『おはようかな?時差が14時間もあると日本がいつなのかわからなくてね?』
突然のアメリゴ大統領からの電話である。
「あら、これはロナルド大統領。テレビで観てましたわよ。被害状況はどうですか?」
『あの未確認機に潰された船の被害者に対しての見舞いとか大変だが。小野寺氏から聞いた話では、カナンは無関係なのだな?』
「ロナルド大統領まで私を怒らせる気ですか?本気で喧嘩します?」
『その言葉を笑いながら言えるという事は無関係だな。恐らくは近日中に国連安全保障理事会が開催される。例の未確認機についての話で、今後の対応についての取り組みなどが話し合いになるが』
「それは大変結構で。まさかうちが関係しているから今から絞めあげようと?」
『そういう話をして来そうな国があるからなぁ。アメリゴはカナンとは友好国として付き合いたいからどんな提案も否決してやる。まあ、ギブ&テイクでいきたいがね』
「ふぁ?見返りは何が欲しいんですか?」
『未確認機の引き上げを手伝って欲しい。魔法鎧でね。横須賀配備のうちの4騎のアメリゴへの搬出許可もだ。今日来れるかな?』
「‥‥良いですよ。すぐにでもアメリゴに送って構いませんよ。ではすぐに、ホワイトハウスの玄関でお待ちしてますので」
――ガチャッ
「はぁ‥‥誤解は解けたが便利屋になってしまった。ちょいとアメリゴ行ってくる、議員関係から私に電話あったら、そう伝えておいて」
「はい。ではお気をつけて」
――シュンッ
すぐさまホワイトハウスの正面玄関に転移するマチュア。
すぐさま予備のローブに換装すると、慌てて駆けつけたSPにNASの身分証明を提示した。
「異世界大使館のマチュアだ。ロナルド大統領の招集に応じて来た‼︎」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
室内には芳醇な香りの紅茶と、綺麗に飾り付けられたショートケーキ。
グリーンルームと呼ばれている執務室に案内されると、マチュアは椅子に座って溜息をつく。
「問答無用で撃たれそうになるとは思いませんでしたよ」
「ハッハッハッ。彼らは優秀なSPだからね、今後は大丈夫だろうさ。全員に言い含めておいたから」
「まあ、せめて敷地の外に転移してくださいと言われたので、今後はそうしますよ。今日は私のミスですから」
――ズズズッ
そう伝えてから、マチュアは紅茶を一口。
「ぷは〜。やっぱり大統領はお金ありますねぇ。こんなにいい紅茶は久しぶりですよ」
「セイロンから取り寄せたやつだな。さて、そろそろ来たか」
――コンコン
部屋の扉がノックされる。
すると、二人の軍人が室内にやってくる。
「紹介しようジェームス・アダムスピーク海兵隊大将と、マイク・エバンス海兵隊准将だ」
「宜しくマム・マチュア。ジェームスです」
「同じくマイクです。お会い出来て光栄です」
そう挨拶をして握手する二人。
「カナンのマチュアです。サルベージの担当ですか?」
「ええ。UMMの回収作戦はマイク准将が担当します」
Unidentified Mysterious Machines
『未確認機械群』の総称であり、今回の未確認機に対してのアメリゴの正式な呼び方らしい。
「では、急ぎ作業を開始しましょう。今日は私、休暇でしたので」
「では大統領、これより任務に当たります」
「宜しく。マム・マチュアも気をつけてな。任務は海兵隊だが、いかんせん荒くれが多くて」
困り果てた顔のロナルド大統領。
だが、マチュアも負けじとニイッと笑った。
「海兵隊の訓練なら参加したいですねぇ。伊達にカナンでも魔導騎士団員を務めていませんからね。では失礼します」
バッと敬礼をすると、二人は部屋から退室する。
「では私も失礼しますね」
「済まないが頼む」
――バタン
‥‥‥
‥‥
‥
ニューヨーク市沖合のローワー湾。
現在は海上は全て封鎖、危険回避の名目で上空も侵入禁止となっている。
コニーアイランドのボードウォーク区画、ニューヨーク水族館のエリアは未確認機が水没した場所から最も近いため、現在その周辺は封鎖され、海兵隊の特殊部隊が待機している。
「おおう。これはこれは、本物の特殊部隊ですかぁ」
のんびりと歩きながら仮設のサルベージ部隊本部にやってきたマチュア。
一通りの挨拶が終わると、さっそくマイク准将が本題に入る。
「さて、現在、海上から未確認機の存在を確認している。水中ソナーと無人潜水機は間もなく到着するので、それを使用して状況を確認、その後にサルベージの手段を考えることになる」
淡々と説明するマイク。
集まっている各部隊の部隊長も一つ一つの指示を確認して本部から出て行く。
「さて、マム・マチュア。外で魔法鎧を出して貰えるか?」
「構いませんわよ。ではこちらへ」
外に出ると、マチュアは自分の魔法鎧・イーディアスを召喚する。
その横には、魔法鎧・ゼロツーが4騎召喚された。
「こちらは私のものですのでお貸しできません。横須賀の機体が届いたら、その時はそっちに乗り換えてくださいね。このゼロツーは作戦上必要かもしれませんので貸し出します」
すぐにでも潜りたいのならばということで、マチュアは予備機を貸し出すことにした。
「ではマイク准将、早速ですが、搭乗員の選抜をお願いできますか?」
イーディアスの胸部ハッチを開いて見せると、マチュアはマイク准将にそう話した。
「選抜条件は?」
「そうですねぇ‥‥これが青く光る人優先。最低でも赤く光る人でお願いします」
魔力感知球を二つ取り出してマイクに手渡すと、使い方もレクチャーする。
「では、各部隊を順番に回って見ます。使い方は難しくないのですか?」
「半日もあれば、ある程度自由には動くと思いますよ。まあ、私の出番が来たら教えてください」
本当ならすぐにでもイーディアスで海中の調査をしたいところだが、ここはアメリゴである。
彼らが主導権を持っているので、余計な事はしない。
ならばと、マチュアは今のうちに例の試作武器を製造することにした。
魔法陣を発動して材料を入れる。
真横で深淵の書庫を起動し、最後の調整を行うと、パンパンと手を叩いて深淵の書庫がら出る。
「‥‥マム・マチュア、これはなんですか?」
ひとりの海兵隊員がマチュアに問いかける。
警戒しているのではなく、単純に好奇心のようである。
「あ、これ?ちょいとした魔法実験と思って。私の予測では、貴方達にとっても夢の武器だと思うよ」
ニコニコと笑いながら説明する。
やがて魔法陣が消滅すると、そこには銀色の金属製の筒が浮かんでいる。
グリップ部分とスイッチ、円筒の上下には穴が開いてあり、どう見てもスターウォーズのライトセーバーである。
それを手に取ると、マチュアは海兵隊員に問いかけて見た。
「これ、知ってる?」
「知っているも何も、映画ギャラクティック・アークのフォトンサーバーですよね?」
――ヴゥゥゥゥゥン
スイッチを押すと、マチュアの魔力を感知して光る刀身を生み出した。
「ほ、本物だ‥‥映画の世界ですか」
「まあ、試作なんでね」
シュゥゥッと刀身を消すと、ローブの前を開いて腰のベルトにフォトンサーバーを下げる。
「スターウォーズも世界が変わるとそんな名前か。刀身が真っ赤なのは納得しないが、まあいいでしょう」
そんな事を話していると、本部からマイク准将が三名の海兵隊員を連れてやって来た。
「マム・マチュア、彼らが現時点での選抜者です」
「へえ、お名前は?」
マチュアが三人に問いかけると、全員が一斉に敬礼した。
「ジョニー・ティンバレン曹長です」
「ゲリィ・ブラウン一等軍曹です」
「ユミ・ツクモ専任曹長です」
各方面からのエリートであろう。
マイク准将もニコニコと笑っている。
「では、三人には魔法鎧の乗り方を説明します。今日は午後5時まで起動訓練、明日は水上訓練に入りますか。マイク准将、センサーやカメラはいつ頃届きますか?」
「明日の午後には。それまでは訓練をお願いします」
頼まれたならやるしか無い。
日本の自衛隊にも教えたのだから、アメリゴにも教えないと公平では無い。
「それじゃあ始めますか。まずは乗り込むところから‥‥」
一から順に説明する。
そしてどうにか夕方までは、歩きの動作までは進むことができた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
翌日。
朝一から訓練の開始。
午後までにはなんとか通常起動できるようにしたい。
まずは魔法鎧をつけてのランニング。
「お、サルベージ班頑張れよー」
「頑張れエースパイロット‼︎」
「魔法鎧のトップガン目指せよ」
などなど、走っている最中に次々と声が掛けられる。
冷やかしではなく本気で応援しているのがすごい。
「期待されてますねぇ。頑張ってね」
マイク准将に渡されたインカムで、他の搭乗員と話をする。
『足を動かすことに集中して‥‥』
『同じくです。陸自の連中、よくこんなの動かせるなぁ』
『あ、頭がこんがらがります‥‥』
「まあ、陸自もそうだったからなぁ。でも、彼らは二日で乗りこなしたわよ?海兵隊の根性って弱いなぁ」
ムッ‼︎
突然走る速度を上げる三人。
ならばとマチュアも少しだけ速度を上げた。
『私たちは海兵隊です』
『一度海兵隊員となったものは、常に海兵隊員である‥‥海兵隊魂を舐めないでください‼︎』
『負けるかぁぁぁぁぁぁ』
この日本人顔負けの根性理論。
何はともあれ、朝食前には普通に走れるようになり、昼前には腕の操作も慣れ始めてくると、いよいよ水中カメラなどの設置が始まる。
「えーっと、内部バッテリーなどは一切ありませんので、首の横に水中カメラを設置しますね?」
「お願いする。溶接や接着剤ではなく、魔法で固定できるのだよね?」
運び込まれたカメラを確認して、マチュアはその場所が一番安全と理解した。
「魔法による接合ですよ。バッテリーは内臓ですよね?」
「ええ。映像は電波で受け取って、海上で待機する母艦が解析します。マチュアさんたちは、まずは海底に沈んでいる未確認機まで接近してください」
一つ一つの手順を説明するマイク准将。
そのあとは作業用母船の上に魔法鎧を積み込むと、ゆっくりと未確認機の沈んでいるエリアの海上へと向かっていった。
「マム・マチュア、魔法鎧の水中活動時間はどれぐらいですか?」
「さあ?測ったことはないから分からないわ」
マチュアにとってもはじめての水中活動。
これはいいデータが取れるとマチュアも満足である。
「酸素タンクの待ち時間は?」
「そんなもの無いわよ。皆んなにはブレッシングの魔法を付与するから、大体8時間は活動できるわよ」
「水圧は?」
「さぁ?多分この辺りの海底までは大丈夫よ」
「‥‥本当に水中活動は初めてなのですね?」
ユミ専任曹長がマチュアに問いかけるので。
「万が一、未確認機が襲ってきたら全力で海上まで逃げてね。私がなんとか囮になるから」
「「「イエス、マム」」」
ザッ、とマチュアに敬礼する三人。
そしてポイントに到着したことが告げられると、マチュア達は魔法鎧に乗り込んだ。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






