日常の章・その1 子供とデュエルと
サブタイトルが変わりましたが、ストーリーが一段落したので変更しただけですので。
6月10日。
この日、全世界のカードゲーマーに激震が走った。
ネコネコ動画とユーツーブで、キングオブデュエリスト世界大会の試合が中継された。
いつもなら、各テーブルに設置されているライブカメラでデュエルスペースだけを配信しているのだが、この大会は違う。
巨大なステージで司会が自己紹介すると、一回戦第一試合のデュエリストが左右から現れた。
そして二人の説明をすると、突然デュエリストは両腕に漫画でおなじみのデュエルアームレスト『デュエルレスト』を展開した。
そしてデュエルスタートの叫びと同時に、まるでアニメが現実になったかのように素早くデッキからカードを引き抜く。
「先行は貰う。俺のターン、ドローっ‼︎」
右のデュエリストがカードを引き抜くと、手札から一枚のカードを取り出す。
「手札から、突撃するオークを召喚っ」
シュッとカードを目の前に飛ばすと、カードに魔法陣が展開し、リアルな『突撃するオーク』が召喚された。
まるでそこに本物がいるような。
しかもリアルに動いている。
「スペルエリアにカードを二枚セットしてターンエンド‥‥」
すると今度は左のデュエリストもカードを引き抜いた。
‥‥‥
‥‥
‥
「お、おう。本当にアニメの世界だ」
異世界大使館では、政治部と領事部の全員がロビーのテレビを観戦している。
生放送なので、世界大会会場のニューヨークとは時差が十四時間。
大会の中継が午前十時。
つまり、現在深夜0時。
それでも、マチュアが構築したマジックリアリティを使った初めての映像に、一同驚いている。
「これが、マチュアさんがロビーで作っていたやつですかぁ」
「本当に凄い人なんですねぇ」
「私は、ここで勤務しているのをみんなに自慢しているんですよ?」
などなど、領事部の職員は楽しそうである。
だが、政治部職員はというと、朝から始まるであろう地獄のファックス対応に憂鬱な顔。
「また、取材とか来ますよう‥‥」
「マチュアさんも大変だなぁ」
高嶋・古屋組はそう呟いているが。
「何言ってるのよ。あんた達が国内広報でしょ?頑張ってね」
「そうそう。二人足りない分、頑張れ」
吉成と十六夜が笑いながら告げる。
「そうなんだよ。なんで同行者がカードに興味のない赤城さんと高畑さんなのかなぁ」
「俺たちが行けば、もっと盛り上がるのになぁ」
「あの二人はアメリゴ担当一等書記官。国連本部での仕事もあるんですよ?」
三笠がそう話しながら、のんびりと画面に集中する。
やがて第一試合が終わると、入れ替わりに第二試合の選手がステージに上がった。
「あれ?マチュアさん、デュエルレストいくつ作ったんだろう?」
「全部で24組48個ですね。今後のイベントの貸し出しなども考えて、多目に作ってあるそうですよ」
「なら、ここで使わせてもらえるかなぁ」
「休憩時間に‥‥いいねぇ」
その言葉をのんびりと聞いている三笠。
実は、三笠は子供用デュエルレストを一組、マチュアから貰っている。
子供でも使えるようにと作った試作型は、三笠の子供達がテストしてくれたのである。
そのお礼に、テストが終わったデュエルレストは、子供達にプレゼントしてあげた。
盗難防止に子供達の魂の護符とも同期し、更に友達にも貸し出せるように設定してある。
「さて、一回戦は終わったので、私はこれで失礼しますね。皆さんも適当なところで切り上げてくださいね」
三笠はそう話してから帰宅する。
既に地下鉄はないので、残った職員はカナンの大使館寮に泊まるらしい。
結局その日は、残った全員が深夜三時までテレビにかじりついていたらしい。
翌日の勤務状況が見ものである。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
その頃のニューヨーク。
「デュエルレストの11番から20番まで回収して下さい。スレッドのデッキは返却してね。明日は1番から10番までを使いますから、随時持ってきてください‼︎」
マチュアの指示でスタッフが走り回る。
契約書にある紛失時の賠償額は、一つ12億。
そりゃあMINACOのスタッフも必死になる。
「20番まで回収終わりました。テーブルに並べてあります」
「はいご苦労さん。それじゃあ始めますか」
深淵の書庫でテーブルごと魔法陣に取り込む。
そして全てのチェックをしていると、マチュアはすぐさま14番のデュエルレストを引っ張り出す。
「これ偽物だよ、担当者とっとと探してこい‼︎」
近くのテーブルに置くと、担当のスタッフが真っ青になって慌てて飛び出す。
それを見てから、マチュアは深淵の書庫に入ると、紛失した14番をサーチする。
(ふむ‥‥動いていない。この場所はどこじゃらほい?)
建物の地図を見て、サーチポイントと照らし合わせる。
それは観光客が使うロッカールームである。
(まあいいわ。どうせリンクしてるからすぐに回収できるけど‥‥少し緊張感を持ってもらいましょう)
全てマチュアとリンクしているので、どこに行っても回収可能。
だけど、あえて放置する。
――ドタドタドタドタッ
「ま、マチュアさん。この度は誠に申し訳ない」
MINACOの大会責任者が血相を変えて走ってくる。
「謝らなくてもいいわよ。大会終了までに回収できなかったら12億払ってもらいますから」
「そ。それは‥‥」
「契約書に記載されているでしょ?しかもちゃんと割り印も全て行った正式なやつね。貴方のするべき事はここで私に謝る事ではないわよね?」
コクコクと頷くと、手の空いているスタッフを掻き集めている。
「さてと。予備の31番を使ってメンテナンス開始。魔力の注入‥‥と」
一つ一つチェックする。
紛失した一機以外は問題なし。
なので深淵の書庫から外に出ると、結界をロックしてマチュア以外は入れなくする。
「午後の試合は十三時から?」
「はい。選手の会場入りが十三時で、試合開始は十三時三十分です」
「なら、私はご飯食べてくるね。それじゃあ」
手をヒラヒラさせながら、マチュアはその場を後にする。
「こ、これ、大丈夫ですか?」
「私の結界を解除できる魔術師がいたら、私はその人に弟子入りするわよ。この辺りで美味しい店は?」
「すぐそこのグリル・リコですね、ボリューム満点ですよ」
おおう。
そこなら行ったことある。
「そうか、通りが一つ違うだけかぁ。では行ってきますね」
手をヒラヒラとしながら、マチュアはグリル・リコに向かった。
昼下がりのグリル・リコは満席。
外でも観光客がのんびりと待っている。
「やれやれ。ここで並ぶのも嫌だしなぁ‥‥どうするかな」
周囲をキョロキョロと見渡すマチュア。
すると。
「はい、ミスエルフ。また何かお困りかい?」
近くのホットドックワゴンから、マチュアを呼ぶ声が聞こえてくる。
「はぁ‥‥おや?誰かと思ったらボビーかい。ちょうどよかった、最高のホットドックを下さいな」
「了解さ。うちのホットドックは最高だよ。ドリンクはコーラでいい?」
「当然Lでね‥‥ポテトもあると嬉しいわ。サンキュー」
代金を支払ってホットドックワゴンの横に椅子を出して腰掛けると、のんびりと食事を楽しむ。
「マチュアは今日も仕事?」
「ええ。明後日まで、そこのビルでキングオブデュエリストの世界大会があってね」
「へぇ。忙しそうだねぇ」
「ボビーは今日は仕事なのね?」
「俺は今月はワゴンのホットドック売りさ。来月はわからないなぁ」
傍のラジカセからノリのいい曲を流して盛り上がっているボビー。
「この曲良いなあ。誰の歌?」
そうボビーに問いかけると。
「それは俺の歌だよ、個人でCD作って売ってるんだ。まあ、売れ行きはこんな感じ」
右手で波を表現するボビー。
「なら一枚頂戴。気に入ったわよ」
「フレンドからはお金は取れないよ。プレゼントするから」
ワゴンの下から自作CDを取り出すと、それをマチュアに手渡した。
「あら。なら私も良いものあげるわよ」
ボビーと軽く握手すると、彼の魂の護符を作り出して手渡す。
「ヒュー。ニュースで見た魂の護符かぁ。これはご機嫌だな」
「パスポートの代わりにもなるわよ。世界が認める異世界の身分証明。このアメリゴではボビーは3番目かな?」
「凄いなぁ。ちなみに1番と2番は?」
「トップはプレジデント。セカンドは国連事務総長かな?」
その言葉に、ボビーも大笑い。
すると、マチュアに気がついた周りの人が、マチュアに握手を求めてきた。
「ハイ、ミス・エルフ、握手してくれる?」
「構わないわよ」
ボビーの横で突然の握手会。
ついでにホットドックも売れていく。
しばらくすると時間になったので、マチュアは仕事に戻ることにした。
「じゃあねボビー。また会いましょう」
「明日も明後日も、ここらでホットドック売ってるからな。じゃあ」
手を振ってボビーと別れると、マチュアは会場へと戻って行った。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
会場に戻ったマチュア。
真っ直ぐ深淵の書庫まで戻ると、周りをスタッフがガッチリとガードしている。
「あら?何かあったの?」
「恐らくはゲームのファンなんでしょうけれど、この中のデュエルレストを盗もうとして、結界に引っかかってました」
「まあ、中には入れないからなぁ。ありがとう」
「では、会場に向かいますね」
スタッフが会場に戻ると、マチュアはテーブルの上のデュエルレストを箱にしまって空間に収める。
すると、一人の子供がトコトコと歩いてくる。
まだ小学校ぐらいかな?
そんな子供が両親と一緒にやってくる。
「ハイ、ミスエルフ。このデュエルレストは貴方が開発したのですか?」
「ええ。そうですよ」
「それは良かった。息子のデュエルレストにサインして貰えますか?」
「ありゃ、そのパターンですか。ではそれを貸してもらえる?」
マチュアは少年のデュエルレストを受け取ると、それにサインした。
「ありがとう。僕のは会場のやつみたいにカードが出ないんだ。いつか大きくなったら、お金を貯めて買うから、必ず販売してね」
「そうね。もう少し、この世界が異世界に優しくなったら、その時は販売するからね」
そう告げて子供と握手すると、嬉しそうに会場に走って行った。
「ありがとうございます。これで息子も元気になります」
父親が嬉しそうに頭を下げる。
「お子さん、病気ですか?」
「ええ。普段は病院から出られないのですが、どうしてもこの大会を見にきたいと言うので。今日一日だけ、なんとか許可をもらいました」
「成程ねぇ。そんなに重い病気なのですか?」
「いえいえ、大した病気ではないんですよ。病院も近くですし。こうやって薬も持ち歩いてますから」
ポケットからピルケースとインスリン注射の収められたケースを見せる。
「あら。そう言うことでしたか」
「体内にインスリンポンプもインプラントしてます。まあ、基本運動もできますからそれほど心配ではないのですが、やはり一緒についてあげないとね」
ニコリと笑う父親。
魔法で治るとは思う。
が、アメリゴの法をマチュアは知らない。
しかし、カナンに行くことができたなら、向こうで治療師を見つければ治る。
「アメリゴが異世界と手をとる日が来るのを待ってください。私の故郷のカナンでなら、あの子の病気は魔法で治ります」
その言葉に驚く父親。
「ほ、本当ですか?」
「はい。私は異世界では司祭という、人を癒す魔術を使うことができます。ですが、アメリゴの法では、まだ魔術による医療行為を認めていません。ですので、それまで待って下さい」
――タッタッ
会場から子供が戻って来る。
「ダディ。まだエルフさんと話していたの?」
「ああ。ルーカス、いつか君を異世界に連れて行ってあげるよ。ミスエルフが教えてくれたんだ、君の病気は異世界で治るって‥‥」
「そうなの‼︎」
ルーカス少年も驚いてマチュアを見る。
「信じてね。約束よ」
ルーカスと握手するマチュア。
すると、その手の中にルーカスの魂の護符を生み出した。
「これは君のカード。異世界の身分証明ね。挫けそうになったら、それを取り出して思い出して」
受け取ったカードを眺めるルーカス。
そして出したり消したりを繰り返している。
「大丈夫。いつかお金を貯めて、必ず行くよ」
「あら?でもそうしたら、これは買えないわねぇ」
シュツと右手に、子供用のデュエルレストを取り出す。
「そ、それは‥‥先に病気を治してから‼︎」
「オッケー。ならこれはプレゼントよ」
ルーカスの魂の護符とデュエルレストをリンクする。
そしてそれを手渡した。
「いいの?」
「約束ね。お父さんの言う事を聞く事、病気に立ち向かう事。そして、お金を貯めて、異世界に来る事」
「約束するよ。ありがとう」
カチッと右腕にデュエルレストをつける。
「アニメみたいに出したり消したり出来るわよ。では、いつか転移門がアメリゴに開いた時、また会いましょう」
「貴方は本物の魔法使いだ‥‥ありがとう」
ガッチリと握手する父親。
ならばと、マチュアは父親の魂の護符を作り出して、それを手渡す。
「今日はサービスし過ぎかなぁ。またいつか、このアメリゴで」
「ええ。それでは‥‥」
ルーカスとお父さんを見送るマチュア。
それと入れ違いに、責任者が走って来る。
「ま、マチュアさん‥‥まことにその‥‥」
「また見つかってないの?本社は何て?」
「管理をしっかりしていない私達のミスです。責任は取りますと」
ふぅん。
マチュアは深淵の書庫の中に戻ると、14番をサーチする。
「まだ動いてないかぁ‥‥」
マチュアは無言で建物の地図を開くと、トントンとあちこちのロッカールームを示す。
「こう言う所は調べたかしら?スタッフや関係者が盗んだとしたら、多分外には持ち出していないわよ。カメラがあるのなら警備室に協力して貰いなさい」
「は、はいっ‼︎」
再び走り出すスタッフ。
そしてマチュアは会場に戻ると、ステージ袖で深淵の書庫を起動して14番デュエルレストを追尾しながら大会を観ていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
初日が終わり、観客も退場する。
購買エリアも明日の準備を始めると、そこの責任者がステージでデュエルレストの調整をしているマチュアに話しかける。
「ハイ、マム・マチュア。本日はお疲れ様」
「あら、お疲れ様。どうしたの?」
「今日、購買で市販のデュエルレストを買った客に怒られたよ。どうしてうちの子のデュエルレストはモンスターを召喚出来ないのかってね。誰かに本物をプレゼントした?」
あ〜。
ルーカスのを見た子供がいたのかぁ。
「私のちっちゃいボーイフレンドにプレゼントしたわよ。それと勘違いしたのかなぁ」
「オッケー。理由がわかればいいよ。明日は購買に看板を一つ追加するから。『会場販売のデュエルレストでは、モンスターは召喚出来ません』ってね」
「よろしく。さて‥‥大体問題は無いわねぇ」
システムの確認をすると、マチュアはステージから降りる。
すると入り口から、デュエルレストを手にしたスタッフが走ってきた。
「あった、有りましたよ‼︎スタッフの一人がロッカールームに隠してました。監視カメラの録画に残ってましたよ」
「それは良かったわ。どれ、本物かな?」
内部の魔力を確認する。
リンクも正常、14番に間違いはない。
「責任者の方は?」
「大喜びで本社に電話してますよ。これでクビが繋がったってね」
――プッ
思わず笑ってしまうマチュア。
そのマチュアの笑い声につられて、スタッフも笑い始める。
そんなこんなで翌日も無事に終わり、いよいよ大会最終日である。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
最終日は、デュエルレストの体験会も行う。
これはマチュアの提案で、レンタル料は無料。
最後の表彰式ののち、入場チケットの半券で抽選会も行われる。
体験会が終わると、いよいよ十二時から決勝戦。
そして表彰式と閉会式へ繋がる。
熱いバトルののち、優勝したのはカナダの代表。
涙を流しながら喜んでいる。
「それでは表彰式に移ります。第三位、アメリゴ代表のミッキーさん。第二位は日本代表の風間さん。そして一位は、カナダのフーバーさんです‼︎」
名前を呼ばれると、三人がステージに上がる。
この日は本社から開発責任者の衣笠もやってきて、トロフィーと賞状、記念品を手渡すのだが。
「これも三位から渡してね」
マチュアがポン、とデュエルレストを取り出して並べた。
「い、いや、それは‥‥」
MINACO本社が、喉から手が出るほど欲しいオリジナルのデュエルレスト。
それをあっさりと賞品として渡す。
「う。うちが欲しいですよぉ〜」
衣笠が泣きそうな声でマチュアに訴えるが。
「では私が‼︎」
マチュアがデュエルレストを手にステージにあがる。
この日の為に用意した、紅の賢者カーラルのコスプレをつけて、一人ずつ握手をしてからデュエルレストを手渡した。
そして魂の護符も一緒に手渡すと、最後に一言。
「それは貴方だけの、貴方しか使えないデュエルレストです。対戦相手はいないけど、そのうち使えるかもしれないから頑張って下さいね」
表彰台でデュエルレストを瞬時に装着して構えるチャンピオンたち。
そして抽選会が始まると、マチュアはさらに商品の所にデュエルレストを三つ並べる。
慌てて開発の衣笠がマチュアの元にやってくるが、マチュアは席に座って笑っている。
「あ、あれ、一台12億ですよね?なんでそうポンポンとあげちゃうんですか?」
「いいのいいの。オモチャなんで遊んでなんぼでしょ?」
「でも、一応うちの商品の権利もありますよね?」
そう告げるので、マチュアは契約書を取り出して見せる。
そこには、大会当日のデュエルレストの取り扱いの補足に、しっかりと書いてある。
『当日、デュエルレストを賞品として取り扱う場合、最大10個までは無償で提供しても構わない。それ以上提供する場合は、一つにつきライセンス料として二万円を支払う事』
これは高嶋が契約日に取り付けた追加部分。
実は本人が大会に関係者として参加し、あとからマチュアから貰っても文句を言わせないという保険らしい。
「な‥‥あ‥‥あれぇ?」
「本社の人は笑ってたわよ。一台12億、ポンポンとあげる筈ないってね。だが甘い‥‥このマチュア、面白いと思ったら魔法鎧でさえあげる事もある。」
――ババーン
紅の賢者カーラルの構えで叫ぶ。
「もう好きにしてくださいよ」
「おっけ。でもあれでお終いね」
そんなことを関係者席で笑っていると、やがてデュエルレストを当てた子がステージにやってくる。
「では私から‥‥おめでとう。でも、大きいわよね。子供用欲しい?」
「はい。本物の子供用が欲しいです」
「ではこちらを‥‥はい握手ね」
握手して魂の護符を生成すると、子供用デュエルレストと一緒に手渡した。
そして席に戻ると、衣笠がマチュアに問いかける。
「あの、いくつ作ったのですか?」
「大会用と趣味合わせて24組48個。販売しないで趣味で使っても文句は言うまい。はっはっ」
「あ〜もう。報告するの俺なんですよ?」
そう頭を抱えている衣笠に、マチュアは手を差し出す。
「お疲れ様」
「はいはい。またお願いしますね‥‥」
握手してすぐに、マチュアは衣笠の魂の護符を作り出して手渡す。
さらに一組のデュエルレストを取り出すと、どちらも衣笠にリンクした。
権限も貸し出しフリーに設定すると、それをあっさりと手渡す。
「ほらお土産。これで怒られないでしょ?」
「‥‥おおう、何が起こったのか理解出来ませんでしたよ。良いのですか?」
「会社内で研究に使ったり、個人的に使うなら文句は言わない。大会やイベントで宣伝に使ったり雑誌で使ってるの見たら、すぐに魔力の供給回路をカットして使えなくするから。イベントで使うのならレンタルでよろしく」
「だよなぁ‥‥でも。ありがとうございます」
「どういたしまして。金にうるさい上司は嫌いだけど、こうやって子供が楽しんでいるのを見るのは良いわ」
そんなこんなで抽選会も終わると、無事に閉会式も終わり、観客も退場していった。
「さて。これで全て終了です。それでは期日までに料金を振り込んでください」
「はい。今回はありがとうございました。マチュアさんは帰りは飛行機ですか?」
「魔法で。転移門であっという間に帰りますよ」
あっさりと説明する。
「へ?あ、いや、パスポートとか入国審査とかは?」
「外交特権。私、アメリゴでも外交大使登録されてますし。それでは、またの機会によろしくお願いします」
丁寧に頭を下げると、マチュアは皆に挨拶をして会場を後にした。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。