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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第八部 異世界の地球で色々と
202/701

地球の章・その20 政治家と政治屋の線引き

 商店街を後にして。

 後ろからついて来る人達から離れるために、一旦転移して国会議事堂前に飛ぶマチュア。


――シュンッ

 突然マチュアが箒に跨って姿を現したので、観光にやって来ていた人達は驚いている。

「うわっ‼︎ハイエルフの人だ」

「異世界のエルフさんだ」

 彼方此方あちこちから声が聞こえて来ると、議事堂の敷地内からスーツ姿の女性が走って来る。

「ま、マチュアさんですよね?ちょっとお願いと言いますか、お話があるのですが」

 見たことのない女性。

 議員バッチをつけてないということは

 誰かの書記官か秘書官かな?

「はて?どちらの秘書さんかな?」

「社共党の椎名です。マチュアさんにお話があるそうで、議員会館まで来て頂きたいのです」

 はあ?

 それまた突然。

「んんん?いきなり何ですかねぇ。まあ、話程度でしたら」

「ではこちらにお願いします」

 スタスタと案内されて、マチュアは議員会館へとやって来る。


 入り口右手の受け付けでセキュリティチェックを受けると、面会証に必要事項を書いて提出する。

 するとすぐさま、ICカードが発行された。

「ふぅん。私がいつ来てもいいように用意されている感じね」

「ではこちらへ。他の議員室には入れませんので」

 そう説明を受けて、マチュアはエレベーターで6階へ向かう。

 そしてとある部屋の前まで来ると、秘書官が扉を開いてマチュアを中に招き入れた。

 入ってすぐに応接間に案内されると、すぐさま椎名議員が部屋の中にやって来る。

「先日は楽しい時間をありがとう」

 やややつれた顔で、椎名はマチュアに話しかける。

「こちらとしては楽しくも何もありませんでしたけど。一体何の用ですか?」

「まあ、あの場ではああいうしかない事は理解してほしい。わたしにも色々と立場があってだな。社共党としてもカナンが日本にやって来る事を望んではいない。それは侵略行為であり、敗戦から立ち直って現在の日本を築きあげた我々としても、戦争を感じさせる事には反対の意思を持っていかねはならん」

 いつもの議会場での話ではあるが、攻撃的な言い方ではなく、相手に理解を求めるような口調で話をしている。

「何で攻撃的に話しますかねぇ。一番最初に話ししましたよね?喧嘩なら買いますと」

 マチュアも淡々と話をするが、椎名も楽しそうに話を続ける。

「攻撃的に話をしないと悪役にはなれない。今の日本の国会では、与党が最も強い発言力を持っている。だからこそ、敵対する意見をぶつけなくては、国会中継を見ている国民に不信感を与えかねない。一党の独占だと、国の政治は滅びるよ‥‥」

「まあ、何となく理解はしていますけどね。それで、秦朝とは繋がっているのですか?」

「まさか。こう見えても日本人でね。仮想敵国と繋がっているとか色々と言われてるけどなぁ」


――ズズズッ

 ゆっくりとお茶を飲む椎名。

 不思議と、ここまで嘘をつかれた気分にはなれない。

「お嬢ちゃんは、日本の事をよく知っている異世界人だ。そんな奴がいきなりやって来て、侵略ではありません手を繋ぎましょうといっても、国民全てが信じる事はない」

 その意見にはマチュアも同意。

「だからわたしは、質問に答えて、少しでも前に進もうと」

「それは強者の理屈だ。そんな事ぐらいは、うちの国の役者に台本を見せて、この通り出来るかと指示したら百人中九十人は出来る。相手の本音を引っ張り出すのは、褒めておだてる事じゃない、怒らせる事だ」

「へぇ。意外としたたかなんですね」

「下手くそなだけだ。さっきも言ったが、社共党は異世界の受け入れは反対だ。その理由は簡単、異世界が来る事で、生活が脅かされる人達を知っているから」

 気がつくと、マチュアは椎名の言葉をじっと聞いている。

「だったら、その人達を説得するのが仕事では?」

「違う。その人達を守るのが仕事だ。説得するという事は、その人達の信頼を裏切ることになる。だから、俺達は、俺達を信じる人達を守る為にケンカを売る」

 ニイツと笑う椎名。

「異世界が来る事によって、日本が潤うのは判っている。転移門ゲートは新しい観光資源だ、油や鉄じゃない、誰の心にも届く資源。だからこそ、諸外国は転移門ゲートを、異世界を欲する」


 そう説明して、椎名はマチュアをじっと見る。

「だから宣戦布告だ。俺達は、異世界をずっと否定する。俺達を信じている人がいる限りはな。今の支持率は5.5%、国民2億1千万の5%を守るのが俺達の仕事なんでな」

「はぁ。全く‥‥これだから政治家は嫌いなんですよ」

「俺達は政治家じゃないな。寧ろ政治屋といってもいいかもな。まあ、今日の話はそんな所だ。また近々国会で話しさせてもらうぞ」

「まだあるんですか?」

「これだよこれ。異世界関連法の魔法等関連法案、危険な魔法の行使についてだ。これが脅しなのは理解しているから、思う存分叩かせてもらうぞ」

 右手の魔法陣を見せながら、高らかに笑う椎名。

 成程、蒲生副総理が毛嫌いするのはよく判る。

「勝手にしてください。ではまた国会で」

 ゆっくりと立ち上がって握手を求めるマチュアたが。

「馴れ合いはせんよ。まあ、左手なら握手してやる‥‥異世界のあんたにはわからないだろうがな」

 そう呟きながら左手を差し出す椎名に、マチュアもガッチリと握手を交わした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 ふう。

 議員会館を後にするマチュア。

 幸いなことに報道関係者の姿はない。

 マチュアが中で誰と会っているかなど、判る筈もない。


――ピッ

『三笠です。今大丈夫ですか?』

「はいはい、問題ありませんよ。何かありましたか?」

『フジミ放送からの苦情ですね。昼の番組で堂々と偏向報道だなんて大声で叫ぶものですから、公式に謝罪しろとファックスで届いていますよ』

「却下だね。偏向報道を偏向報道と言って何が悪いのかを説明して欲しいわ」

『まあ、気持ちは判りますし、何分あの放送局はしょっちゅう問題を起こしていますからねぇ』

「まあ、いいかぁ。わたしも今、色々と勉強させてもらったからなぁ‥‥フジミ放送行って来るわ」

『穏便にどうぞ』

「そうだなぁ。楽しんで来るよ」

――ピッピッ


 通信を切ると、マチュアはクリアパットを取り出してフジミ放送を探す。

 そして住所を確認すると、一路港区の大台場へと箒で飛んでいった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯




「はてさて。これは楽しいかもしれないぞ?」

 高度を上げて飛んでいるマチュア。

 大台場のフジミ放送本社近くまで来ると、ふとフジミ放送のホームページに定点カメラがあるのを思い出した。

 そこで、ゆっくりと高度を取ってカメラの前に出ると、呑気にカメラに向かって手を振ってみる。

「ふむふむ。カメラは3分おきに更新されるのだな?」

 クリアパットの映像を確認しながら、自分が映し出されるのをのんびりと待ってみる。

 すると、カメラの映像が更新された時、マチュアが手を振っている映像に切り替わった。

「はっは〜。次は‥‥と‥‥おや?」

 足元を軽く見下ろす。

 どうやらマチュアがここで遊んでいるのに気が付いたらしく、下からマチュアを呼ぶ声がする。


「マチュアさん、ちょっと降りてきてください」

「はぁ?わたしに何か御用ですか?私はのんびりと空の散歩を楽しんでいる所ですよ」

 スーツと高度を下げて、マチュアを呼んでいる人々の近くに降りて行く。

 途中でメモリーオーブを取り出すと、箒の先に設置して起動する。

 眼下では、スーツ姿の男性と放送用のカメラを担いだカメラマン、そして女子アナが一人立っていた。

 マチュアは箒の高度を1mで固定すると、男性に声を掛けてみる。

「わたしに何か御用で?」

「こんな所で何をしているのですか?」

「散歩ですが。まだこの世界は知らない事ばかりなので、のんびりとあちこち飛び回っているだけですよ」

 にこやかにそう話すマチュア。

「わたしはフジミ放送の稲垣と申します。是非、マチュアさんに生放送に出て欲しいのですが」

 稲垣も名刺を取り出すと、軽く会釈してからマチュアに名刺を手渡す。

「企画書を大使館に送ってください。その後検討しますので」

「い、いえ、この後すぐの番組なんですよ。先程うちの定点カメラでマチュアさんを見かけた方からの問い合わせがありまして。マチュアさんが番組に出るのかと」

「そこで交渉に来たのですが、如何でしょうか?」

 腕を組んで考える。

 暫し考える。

 椎名の言葉を思い出す。

――ポン

「出ても構わないけど、条件付きで」

「それはありがたいです。その条件とは?」

「昼間やってたニュースバラエティで、異世界の事めちゃくちゃ言ってた自称学者とへっぽこ教授が詫び入れるなら」

 きっぱりと言うマチュア。

「あ、え、えーっと‥‥どの辺が問題ありましたか?」

「異世界来た事もない人が、まるで見て来たかのように話をして、自分達の推論でありもしないデマをばらまいたから」

 きっぱりと告げるマチュア。

 それには稲垣も動揺している。

「あの方々は、査察団の報告書に見て目を通した後、あのような意見を出したに過ぎませんが」

「でも、報告書に書かれている事とは違う見解も話していますよね?あれは個人の意見?」

「そ、そうです。個人的見解ですよ」

「それを楽しそうに煽るアナウンサーは?番組をあげて、あの推論を推しまくっていましたよね?それでいて私に生放送に出ろと?わたしも叩かれるの?」

 そう問いかけると言葉に詰まる稲垣。

「そ、そんな事はないですよ」

「なら、わたしに出て欲しいって言う番組はどんな番組?」

「バラエティですよ。スーパーサンデーというスクープニュースについて、各界の著名人にさまざまなコメントを貰う番組です」

 ふむふむ。

 その番組ならマチュアも知っている。

 世界中のさまざまなニュースを題材に、専門家がコメントをして盛り上げるバラエティである。

 かなり辛辣なコメンテーターも出て来るので賛否両論な意見もあるが、マチュアは面白いからたまに見ている。

「へぇ。台本見せてもらえるかな?」

「え、あ、いや、まだ用意していなくて」

「なら、やっぱり企画書提出してくださいな。その番組なら私も大使館で夜に見ていますけど、自分が出演するとなると色々と準備が必要ですからねぇ」

「そ、そうですか。では急ぎ企画書を提出しますので、その際はご一考くださいね」

「自称学者とへっぽこ教授が番組の中で頭下げるならね‥‥あ、今日の生放送、何か見学出来るものありますか?」

 突然話を振るマチュア。

「な、生放送ですか?夕方の『まとめてニュース』でしたら、一般のお客さんも観覧出来ますが、今日はもう席が埋まってまして」

「あらら、これは残念。ではまた今度の機会に伺いますので」

 軽く頭を下げると、マチュアは一気に高度を上げると、大台場から離れた。


「椎名議員の手法難しいわぁ。煽って喧嘩売るのは後が面倒いからなぁ。今日ぐらいがちょうど良いのかもしれないか‥‥」

 国会議員はさまざまな交渉手段を持っている。

 それも十人十色、マチュアもまた、自分なりの交渉手段を身につける必要があるのかと考え始めた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 出張から戻った翌日。

 朝一で事務所に向かうと、マチュアはいつも通りにファックスの確認をする。

「今日は15件かぁ‥‥何処の局も飽きないものだなぁ」

 一枚一枚を確認して、急ぎの案件は自分の手元に置く。

 そうなると、如何しても国会がらみや放送局がらみのものが多くなっていく。

「あたしゃ海外コメンテーターでも何でもないんだけどねぇ。何でこんなにテレビに出したがるかなぁ」

 やれやれと頭を抱えていると、三笠がお茶を片手に事務室にやってくる。

「おや、おはようございます。今日はまた随分と早いですねぇ」

「おはようさん。あたしゃ最近人間不信だよ。何でこっちの人間って、気楽に生きられないのかなぁ」

「はっはっ。勤勉こそ美徳。今の日本はそんな感じですよ。それ故に、大衆は刺激を求めていますから。それ故に異世界は国民にとってはまたとないスパイスなのですよ」ふむ。

 それはわかっているのだが、異世界生活に慣れると、どうしても比較してしまう。

「まあ、わからなくもないけどね。ちょいとカナン行ってくるわ」

「何かありましたか?」

「カナンに作る日本大使館の件だよ。面倒いから大きめの建物作って、各国の駐在大使をまとめて管理するわ」

「それはまた、随分と大雑把な。納得しますかねぇ」

「させるさ。グランドカナンには、まだ土地も豊富にあるからね。これで少しは私も楽ができるよ、国会でギャーギャー言うのは疲れるのよ」

 笑いながら説明すると、高嶋と古屋もやってくる。

「おはようございます‥‥ありゃ、マチュアさん出張は?」

「これからまた行くけど?」

「同行しますか?」

「いや、今日明日には集現社から契約についての話がくると思うので、その対応任せる。絶対に権利を手渡す気がないので、そこの所をしっかりと念押ししてね」

 すぐさまメモを取る高嶋。

「では、私の権限で契約していいのですね?」

「構わないよ。昨日あれだけ脅したんだから、もう何もして来ないだろうさ。じゃあカナン行ってくるよ」

 にこやかに転移門ゲートに向かうと、マチュアはスッと扉の中に消えて行った。


 ‥‥‥

 ‥‥

 ‥


 転移門ゲートを通過してギルドのロビーに出ると、いつものように渡航許可を求める人と、日本からやって来た観光客で溢れている。

 現在のカナンは、査察団の報告書を確認して適切な人員を送るようにしている。

 日本からは個人で観光に来るものは全て許可が下りているので、普通に町の中を散策している人々の姿が見える。

「何か変わった事ある?」

 カウンターの中に入ってツヴァイに問いかけるマチュア。

「ギルドに登録したいという問い合わせは多いですねぇ。そろそろ許可を出せるようにしては?」

 ふむふむ。

 各ギルドから届いた書簡を眺める。

「日本で言う四月から許可を出します。ただし全て自己管理自己責任、ギルドに登録した場合は日本国にも登録者名簿を提出する事も説明してください。各ギルドにもこの事を通達して、名簿を異世界ギルドに提出する義務を説明‥‥」

 淡々と説明するマチュアだが。

 ちょうど今到着した日本人団体が、そーっと手を挙げる。

「あ、あの‥‥私達は登録出来ないのですか?」

 少し悲しそうに問いかけて来るので。

「はあ〜。ツヴァイ、日付を本日正午からにして、急ぎ各ギルドに伝令走らせて‥‥本日の午後からでしたら、登録を許可します。ですが冒険に出るのはお勧めしませんので」

 ニコリと微笑むマチュア。

 それに安心したのか、観光客は手続きを終えるとロビーの外へと走って行く。

「あ〜あ。やっちまった。悪い癖だよねぇ‥‥」

 カウンターの席に座ると、日本に提出する書類を探す。

 ギルドの登録開始日についてはカナンに一任されているものの、開始した場合の書類の提出を求められていたのである。

「まあ、宜しいのでは?少し魔法について日本国で管理させればいいのですよ」

「まあね。それとツヴァイ‥‥私の代わりに日本の異世界大使館に就任するとしたら、誰が無難だと思う?」

「そりゃまた突然?何かあったのですか」

 突拍子も無い事を尋ねられて、ツヴァイも驚くが。

――ブウンッ

 手の中に記憶のスフィアを作り出すと、それをツヴァイに放り投げる。

「これは‥‥ははぁ。成程ね」

 手渡した記憶は、先日の天狼や精霊王との会話。

 それ故、そちらが始まるとマチュアはそっちに懸かりっ放しになってしまう。

「私が行きますよ。それが一番安全でしょう?」

「ここの人材は?」

「任期の明けたドライが適切。全て引き継ぎますので何も変わりません」

 なら問題なし。

「私もサポートしますので、問題はありません。マチュア様は、ご自身のなさりたいようにどうぞ」

 奥からフィリップもフォローしてくれるので、ならば安心して任せられる。

「それじゃあ‥‥って、まだまだ先だからな、最低でも数年後だ、それまではのんびりとやりますので」


 書類をじっくりと読み直し、日本提出用の書類を作成。

 そのあとは王城に向かうと、グランドカナンに建設する地球大使館の建設と勤務する職員などの打ち合わせを行う。

 淡々と指示を出してから、マチュアは再び日本に戻って行った。



「‥‥あらら。とうとう登録が始まりましたか」

 カナンで作った提出書類に目を通すと、三笠はにこやかに話していた。

「ええ。そういう事です。古屋君、済まないけどこれの清書と関係各所に通達をお願いします。高嶋君は?」

「ついさっき、MINACO札幌支社へ向かいましたよ。朝一で担当から連絡があったそうで、札幌で契約をしたいと」

「流石。昨日の今日でもう動いたかぁ。フットワーク早いな」

 驚いた表情のマチュアだが。

「自社の占有技術に出来ないのなら、何処よりも早く発表したいのでしょう。恐らくは契約してすぐにプロモーション撮影したいのではないかと思います。なので高嶋君に走ってもらいました」

「システムを持っているのは私だからなぁ。この後はオタカラトミーとの契約もあるから、どっちが早く映像付きで公開するのか勝負だぁね」

 うんうんと頷きながら、マチュアは厨房からティーセットを持って来る。

「これで、私たち地球の民も本格的に魔法に触れ合う機会ができましたねぇ」

「大使館職員は誰か彼かは使えるけどね。一般人が使えるようになったので、関係各省は大変だよ」

 ずずずっとお茶を飲みながら一息いれる。

「テレビ局からの出演依頼はどうしますか?」

「企画による。水曜どうだろうは許可していいよ、後は?」

「バラエティ番組ばかりですねぇ。カナンでの取材申請もありますが」

「それについては、基準を作るよ。偏向報道している放送局は全て却下だ、悪口言う奴らを喜んで迎える程、私は懐が大きくは無い」

 その言葉で、三笠は殆どの書類や企画書を廃棄書類の箱に放り込んだ。

「‥‥マジか」

「二つ残りましたよ。これはテレビ大江戸で、異世界カナンの魅力を伝えるって言う番組です。カナンで取材の後、それを流しながらコメントするって言うやつですね」

「三笠さんから見てどう?」

「コメンテーターの指定はありませんから、うちの職員で問題なし。という事です」

「なら許可。あと一つは?」

「札幌のTVS、テレビ札幌ですけど、カナン食べ歩き探訪。異世界の食事を紹介する番組ですが、カナン取材のみです」

「こう言うのが良いんだよなあ。許可して良いわよ。異世界ギルドの担当に回して。後はそっちで動いてもらうわ」

 そのマチュアの言葉で、三笠も何となく理解。

「今後の企画は、私が判断して異世界ギルドに振る感じですか?」

「取材はね。私の方針わかるでしょ?」

「ええ。では今後はそのように。国内の方はこちらである程度の処理はしておきます。来週はバチカンですよ?準備は終わってますか?」

 そう問われても、随伴者の赤城がいない。

「赤城さんはいつ戻るかな?」

「バチカンに向かうのと研修が重なりましたからねぇ。こっちも手狭ですし、最悪一人でと」

「はいはい。呑気なひとり旅行ってきますよ」


――ガチャッ

「高嶋戻りました‥‥ありゃ、マチュアさん居たんですか」

「さっき戻った所だけど、何かあった?」

「まあ少しだけ。こちら契約書です。俺の方で全て処理しました」

 どれどれと確認する。

 今回の世界大会イベントでのシステムの貸し出し、取り扱いはマチュアが行うなど、先日の契約時に後から見せられたものである。

「これはこれでおっけ、問題は?」

「先方は本日すぐにでもプロモーション撮影をしたかったらしいです。ですがマチュアさんがシステムを持っているので出来ないと伝えると、結構動揺して居ましたね」

 同業他社よりも早く公開したいのだろう。

「へぇ。なら、次はオタカラトミー社に連絡して、契約書持って来いと伝えてください。内容を確認して検討すると」

「了解しました」

 すぐさま高嶋は席に戻る。

 古屋も清書が終わり三笠の許可も貰ったらしく、すぐさまファックスを送り出している。

「はぁ。気持ちが楽だ‥‥」


 のんびりとお茶を飲みながら、マチュアは炬燵の中でうとうととしていた。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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