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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第八部 異世界の地球で色々と
194/701

地球の章・その13 マチュアと幻影騎士団

 ベルナー王国領・王都ベルナー。

 その王城にある円卓の間に、幻影騎士団は集まっていた。

 ワイルドターキーからの非常呼集、これによってマチュアとストームを除く全員が席に着いている。


「成程。では明日はその護衛に就けばいいのですね?」

「うむ。詳細はこの高畑さんに聞くと良かろう」

 そう説明すると、マチュアの座っていた席に座らされている高畑がゆっくりと立ち上がる。

「あ、あの〜。実はですねぁ」

 淡々と起こったことを説明する高畑。

 ターキーと共にカナンに来ただけなのに、そのままカナンの転移門ゲートからベルナーまで連れてこられたのである。

 つまり、巻き込まれた。

 明日以降のスケジュールをクリアパットを開いて説明すると、そこからはワイルドターキーのターンである。


「という事じゃ。明日以降手の空いているメンバーは?」

 ガバッと立ち上がるロット。

「マチュア様が招集しているのなら、おいらは行くよ。それが幻影騎士団のフベシッ」

――スパァァァァン

 ロットの顔面にハリセンを入れるワイルドターキー。

「ロットとミアは留守番じゃ」

「何でだよ?参謀のマチュア様がムグムムグ‥‥」

 瞬時にロットの背後に回るポイポイ。

「少し黙るっぽい。ロットはまだ任務の最中っぽいよ」

「ほう、そうじゃったか?」

 ポイポイの言葉にワイルドターキーがウォルフラムに問いかける。

「ああ、先日から王城シフトだ。後一ヶ月程ミアとロットとズブロッカはそれで動けない」

「残念ですけれど、こればっかりはねぇ」

 やれやれと言う顔のズブロッカ。

「ぷはっ。なんでだよ、今、王城にはシルヴィー様もいないじゃないか‼︎それなのに王城勤務って‥‥え」

 ウォルフラムが冷静にロットを睨みつける。

「シルヴィー様を守るのも大切だがな。このベルナーの有事にも動けなくてはならない。ロットはまだ任務の重大性に気付いていないのか?」

「だ、だってよぉ‥‥おいらも異世界行きたいんだよ」

「それは次回だ。ロットが幻影騎士団の団員として、外に出しても恥ずかしくないレベルになったらシルヴィー様に進言しよう。それまでは、マチュア様の決定事項を破る事は許さない。これは幻影騎士団団長としての命令だ」

 現在の団長であるウォルフラム。

 副団長は斑目が務め、作戦参謀にはズブロッカが配置されている。

 ストームとマチュアは剣聖と賢者として、幻影騎士団に登録はされている。


「では、手が空いているのはワシとウォルフラム、斑目、ポイポイか」

「準騎士団のサイノスとフィリア、メレア達はまだ無理ですね。ランクがまだ届きませんし」

「では、四名は明日の朝、鐘の音が鳴るまでにカナンの異世界ギルドに集合という事で。高畑さん、急ぎギルドで登録をお願いしたいのぢゃが」

 ワイルドターキーが座ってメモを取っている高畑に頼み込む。

「分かりました。後ほどリストを作って持っていきますので、仮登録は先に済ませておきますね」

「うむ‥‥すこし小腹が空いたのう。ワシ、ばいきんぐとやらを食べ損ねたわ。ちと食堂に行ってくるので、先に聞き取りしておいてくれぬか?」

 そう高畑に後を任せると、ワイルドターキーは部屋を出て食堂へと向かった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「で!では、早速リストを作りますので」

 バッグからメモを取り出して準備する高畑。

 クリアパットも起動して、詳細を擦り合わせなくてはならない。

「はぁ。行きたかったなぁ」

「もう少しよ。私もロットも頑張っているのは、マチュア様もちゃんと見てくれているって」

 そうミアがロットを励ます。

「そうだな。今回の話も急遽決まったことだ。なら、マチュア様の指示には従わないとな」

 淡々と話している横で、斑目とポイポイが高畑の隣に立っている。


(さっきからマチュア様って言うけど、うちのマチュアさんの事みたいですよねぇ?何で?)


 ふと首を捻る高畑。

 すると、早速斑目が自己紹介を始めた。

「拙者は斑目と申す。倭国の侍で、文字はこう書く」

 メモに名前を綴る斑目。

 草書体に近い文字だが、高畑には何となく理解出来た。

「斑目さんですね。年齢は?」

「さて。50から先は数えたことないなぁ‥‥」

 そう呟いてから魂の護符(プレートを取り出して確認する。

「51じゃな」

「ありがとうございます。あなたはええっと」

 斑目と入れ替わりに、ズイッとポイポイが前に出た。


「ポイポイっぽいよ」

「ぽ、ポイポイッポィさんですか?」

「ち〜が〜う〜。ポイポイっぽい」

「ポイポイッ?」

 首を捻る高畑に。

「ポイポイさんの名前はポイポイ。ロリエッタの民ですわ」

 ズブロッカが助け舟を出してくれる。

「ポイポイさんですね?」

「そうっぽい」

「年齢はお幾つですか?」

「ちょっと待つっぽいよ‥‥1224歳っぽい」

 魂の護符(プレートを見ながらそう話す。

「せ、せんにひゃく?」

 突然のカミングアウトだが、高畑以外は驚かない。

「まあ、そんな感じでしょ?」

「ロリエッタだからな。もう少し生きていたとも思ったがなぁ」

「ポイポイと一緒だったパーティーの人はもういなくなったっぽいけどね」

「そりゃそうだ‥‥って、ポイポイパーティー組んでたの?」

「むかーし昔っぽい。静御前っていう、し、白拍子?そんな感じの人っぽい。その人達のパーティーにいたっぽいよ?」

 高畑もポイポイたちの話をじっと聞いていたが、そう促されて慌ててペンをとる。


「成程。私の世界にも似たような人がいたんですよ。次はウルフラムさん?」

「ウォルフラムです。年齢は36歳、聖騎士です」

 ふむふむ。

 これで四人分揃った。

「では、これで仮登録の書類を作っておきますので。明日正式な手続きと異世界渡航旅券も発行します」

 そう説明すると、ふと先程の疑問が頭を掠める。


「あの、ウォルフラムさんは幻影騎士団の団長ですよね?」

「ああ、そうだが?」

「私がターキーさんとここに来たのは、マチュアさんに頼まれたのですが、うちのマチュアさんは幻影騎士団とどんな関係ですか?」

 確かに。

 ロットが色々と余計なことを話していたおかげで、高畑まで疑問を感じる。

 だが、ウォルフラムは今の質問でピン、と来た。


(成程。マチュア様、大使館ではまだ正体明かしていないのか)


「幻影騎士団所属のマチュア様はラグナ・マリアの賢者でカナン魔導連邦の女王ですよ」

「更に異世界ギルドのギルドマスターもマチュア様だよね?」

 ウォルフラムの言葉にロットが余計な一言を付ける。

「あれ?異世界ギルドのマチュアさんは幻影騎士団のマチュアさんと別人ぽいよ?」

「まあ、そっくりだから無理もないがな。ハイエルフの種族は、住まう環境や氏族の名前を使うものが多い。うちのマチュア様も、異世界ギルドのマチュアさんも恐らくは北東のハイエルフの里出身ではないのか?カナンには人間のマチュア女男爵もいらしたからなぁ」

 ポイポイと斑目はすぐに理解した。

 そしてミアとズブロッカも、二人の会話でピンと来た。

「私もたまにカナン行きますけど、馴染み亭でミナセ女王とマチュアさんが一緒のところを見て驚いたぐらいですから」

 ナイスですミア。

「あら?異世界ギルドには行ったことないかしら?うちの賢者様‥‥あと、ロイシィ男爵家の長女もマチュア様ですし。そういう同じような名前って、そちらには無いのですか?」


 そうズブロッカに言われると、ふと思い出す。

 確かに異世界ギルドのマチュアとミナセ女王が立ち話しているのを何度か見たことがある。


「あ〜、では、幻影騎士団のマチュア様がミナセ女王なのですね?成程成程」

 コクコクと頷きながら、高畑は理解した。

 だが、ロットだけは首を捻っている。

「では、私は一旦カナンに戻りますので。ターキーさんにギルドで待ってますと伝えてください」

 メモをバッグにしまい込むと、高畑は頭を下げて部屋から出て行った。


「あのねーちゃん、マチュア様の事勘違いしているなぁ。今度はっきりと教えてあげないと」

――プッ

 そのロットの言葉にミアが吹き出す。

「ロット、この件には関わるなよ。どうしてロットが異世界に行けないか、その理由でもあるからな」

「そうそう。ロットはマチュア様の事判っていないわねぇ。そんな事では、いつまでも待機任務になるわよ?」

 ウォルフラムとズブロッカがそう話しかけるが、ロットは未だ理解していない。

「なあ、ミアは分かるか?」

「そりゃあもう。でも教えてあげない。私が教えたらズルになるから」

「何だよそれ? よくわからないなぁ」

 頭を抱えて呟くロット。

 暫くしてワイルドターキーも戻って来ると、ワイルドターキーは真っ直ぐにカナンへと戻って行った。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 翌日。

 早朝から幻影騎士団はマチュアのいるロイヤルパークホテルに集まった。

 高畑が一行を引率してきたので、何事もなくスムーズにホテルに到着する。


――ガチャッ

「お待たせしました。高畑みのり、幻影騎士団のみなさんをお連れしました」

 金髪美形のウォルフラムを筆頭に、着物姿の渋い斑目、美少女忍者っぽい服装のポイポイが室内にやってくる。

『あら、ウォルフラム騎士団長自らお出ましとは、お疲れ様です』

 丁寧に頭を下げるマチュア。

『では、早速ですが、こちらのブレスレットと指輪をお付けください。異世界渡航旅券パスカードはお持ちですよね?』

『ええ。連絡用の腕輪と‥‥こちらは?』

『異世界の言語を大陸語に変換する双方向翻訳指輪です。今後も護衛をお願いする事がありますので差し上げますわ』

 そう説明すると、ウォルフラムはニッコリと笑みを浮かべる。

『お心遣い感謝します』

 早速ポイポイと斑目も装着する。

「成程。これは凄いものだなぁ。異世界の人よ。拙者は斑目と申す。よしなに頼むぞ」

「私の名前はポイポイ。幻影騎士団では情報収集や諜報活動を担当しています。どうぞ宜しくお願いします‥‥っぽい」

 頑張った。

 ポイポイさん頑張ったが、最後に口調がでた。


「では、せっかくですのでみなさんで朝食を食べながら今後の打ち合わせなどいかがですか?」

「うむ。ウォルフラム達は知らないが、この異世界の食事は美味ぢゃぞ?」

――グググゥゥゥゥゥ‥‥

 パルテノとシルヴィーがそう話すと、突然ワイルドターキーの腹が鳴り響いた。

「ぶっ‥‥では早速食事にしよう。幻影騎士団の方々と一緒に食事を取れるとはな」

 ケリーがそう促すと、全員がレストランへと向かう。


――ピッピッ

『ウォルフラム、その腕輪の説明だが‥‥』

『はい‥‥ああ、成程。換装ですか。では私達の持っている『換装の腕輪』からこっちに切り替えるのですね?』

『そうそう。さすが早いなぁ。ポイポイさんと斑目にも説明しておいて』

『了解です。しかし、マチュア様は大使館では身分バラしてないのですね?』

『成り行きで赤城さん、今、私の隣にいる子は知ってるよ』

『高畑さんは注意ですよ。まあ、ロットがマチュア様と連呼したお陰で、危なくバレそうになりましたから。それでも彼女は洞察力が高いですね』

『ロットかぁ。なんだかんだ言ってもまだ子供なんだよなぁ。幻影騎士団の準騎士団に出向させて、鍛え直すか』

『戻り次第そのように』

――ピッピッ


 耳につけている水晶での念話。

 それで状況を確認するマチュアとウォルフラム。

 ならばとマチュアは赤城に念話を送る。


――ピッ

『赤城さん聞こえる?聞こえたら声出さないで軽く振り向いて』

 その脳裏に響く声に、赤城はマチュアを振り向く。

『声を出さない会話。念話って言ってね、ブレスレットを使う会話の一つなのよ。この機能、まだみんなには説明してないけど、試しに話しかけてみて?』

『こ、こうですか?』

『はいおっけ。それで、事は急務なんだけど、高畑さんが私の事を感づきそうになった。ウォルフラム達がうまく誤魔化してくれたけど、今後の事もあるので、後でばらす。赤城さんも同席して手伝って』

『そうですね。三笠執務官には?』

『あの人にはとっくにバレてると思うよ。まあ戻ったら話してみるけど』

『了解です』

『ではまた』

――ピッ


 そんな話をしている最中、斑目たちも装備を解除して私服に切り替える。

 レストランに向かい大きめのテーブルをいくつか押さえると、赤城が幻影騎士団一行に食べ方の説明をした。

 そして食事が始まったのだが。

「くぅぅぅぅ。倭国を旅立って10年余。まさか卵かけご飯が食べられるとは思ってもござらんかった。この焼き海苔も、塩っぱい焼き鮭も‥‥」

「こんなに柔らかいパンズがあるとは?これは干し肉?いや、塩漬けの肉か?卵も柔らかくで最高だ」

「馴染み亭の味付けっぽい。よく食べるっぽいけど、この卵焼き甘くて美味しーい」

 全員がツボに入ったらしい。

 その光景を、二日前に体験したワイルドターキーはニヤニヤと笑ってみている。

「それじゃあ、スケジュールの確認ね。幻影騎士団の四名は護衛、ツーマンセルで別れて。それぞれに私とゼクスがサポート。赤城さんと高畑さんは‥‥」

「はいはーい、私はゼクス様と」


――ガシッ

「今日も道場破りだ。シルヴィーも来るか?」

 高畑の後頭部を掴むストーム。

「ふぁい。宜しくお願いします」

「うむ。散々買い物したので、今日は妾もついていこう」

「そっちは護衛いらないな。では残ったメンバーで‥‥」

 そのままチーム編成と行きたい所を確認して、まずは一段落。

 その後、荷物を取りにスィートルームに戻った時。

「高畑さんや、ちょいと話があるのだが」

 マチュアがそう高畑を呼ぶ。

 すると赤城も一緒に来たのだが。

「あの、マチュアさんって女王さまと一緒の人ですか?お忍び?」

 そう耳元で囁く高畑。


――ブッ

「さ。察しが良いわねぇ。同一人物よ。ミナセ女王は私の部下、代行でずっと女王をしているのだけれど、どうしてわかったの?」

「ロットっていう子が話してまして。騎士団の皆さんが必死に否定していたので何となく。騎士団程の方達が知らない訳ないのに、あんなに必死になっていたので、そうなのかなぁって思ってましたけど」

 ふむふむ。

「さっきのチーム編成の時のみんなの表情でね。大丈夫ですよ、誰にも言いませんから」


――ポンポン

 そう告げる高畑の頭をポンポンと叩く。

「本当に察しが良いわ。これで冒険者の腕もあったら幻影騎士団に欲しい所だわ」

 その言葉はウォルフラムには聞こえたらしい。

「では、鬼教官にでも預けますか?」

「ハートマン教官かぁ‥‥そうだね。ダンジョン研修の手伝いもお願いしますか。ディードとハートマンに話通しておいて」

 そう説明するマチュアだが、これが後程とんでもない事に繋がる。

 そんなこんなで後半は特に襲撃などなく。

 楽しい査察を終えて一行はカナンへと帰って行った。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 再びやって来る日常。いつものような様々な申請は職員に回して、マチュアは炬燵でのんびりと情報収集。

 三笠も炬燵に斜向かいに座ると、急ぐ必要のない書類を弾いている。

――スッ

 マチュアは人差し指で炬燵に魔法陣を書くと、炬燵の範囲を結界で包んだ。

 外部に音が漏れない『音域遮断結界』である。

「三笠さん、つかぬ事をお尋ねしますが、何処まで知って理解していますか?」

 突然問いかけるマチュア。

 このタイミングなら、三笠の本音も聞くことができると判断した。

「さて、何のお話ですか?」

「私とミナセ女王の関係ですよ。知らないわけないでしょう?」

「私の上司は異世界ギルドのマチュアさんですよ。ミナセ女王の顔を持っていても、それは変わりませんから」

 ニコニコと笑う三笠。


「ふぅ。いつから気づいていたのよ?」

「ツヴァイさんとフィリップさんが教えてくれました。今後、貴方の副官として仕事をするのならという事で。私にとっては、何も変わりませんよ。女王の時は恭しく振舞いますし、ここで居眠りしている時はお茶でも入れて起こすだけですから」

「本当に策士だなぁ。ここの職員で知っているものは?」

 さらに突っ込む。

「タイミングを見計らって一人ずつ。赤城さんと高畑さんにはまだですが、十六夜さん、吉成さん、桜木くん、あと領事部職員は全員知ってますよ」

 ありゃ。

 随分と手回しの早い。

「政治部の三人と領事部長の一ノ瀬さんには、異世界ギルドのフィリップさんと一緒に説明してあります。領事部は一ノ瀬さんと私で順次行いました」

「そう。赤城さんと高畑さんは必要ないわよ。私が話したので‥‥問題は、あのお調子者二人組かぁ」

「そこなんですが、あの二人には教えない方がいいですよ。もう少し様子を見ましょう」


――ズズズッ

「タイミングは任せるわ。全員に説明したら教えて下さいね」

「はいはい。さて、仕事の話です。軍事メーカーが魔法鎧メイガスアーマーに目をつけました。サウスアラビアのサラディーンは一度細かく調べようとしたそうですが、皇太子が反対して出来ません。ルシアと中国、秦朝、ゲルマニア、後いくつかの国の兵器開発に関与している企業が動いてます」


――パチン

 結界を解除するマチュア。

「誰か、私にケーキと紅茶下さいな」

「あ、今お持ちしますね」

 十六夜が返事をして厨房に向かう。

「そうなると、本気で魔法技術狙ってくるわねぇ。日本は?」

「高槻重工と菱井インダストリー。魔法は動力源になるという事で、自動車メーカーの全てが情報公開を求めてます」

「何だろうなぁ‥‥」

 サッサっと魔力炉の図面を起こす。

 そこに付与する魔力量と種類を全て書き起こして、更に必要な材質の説明。

 起動するための魔法と維持する魔法。

 それらを次々と書き込む。

「これは、良いのですか?」

「この世界で作れる?」

「わたしにはどうとも‥‥」

 ならば。

「誰かこれ清書してくれるかな?」


――カチャツ

 ちょうど十六夜がティーセットを持ってきたので。

「では私が。急ぎますか?」

「夕方までで良いわよ。よろしくね」

 そう説明すると、マチュアは予備の魔力炉を空間から取り出す。

「乗っている人の魔力で動く。公害も何もないクリーンエネルギー。だから、この世界の人にはあげない」

 あっさりと呟く。

 これが量産されると、次は軍事利用されるのが目に見えている。

「ふむ。では今量産しているゼロツーは何故ですか?」

「威嚇。示威行為。喧嘩売るなら潰しに行くぞってね。この世界は、ようやく個人が魔法を覚える段階が始まったところよ、国や政治が魔法を取り込む時期ではないと思うわ」

 コツコツとテーブルを指で叩くマチュア。

 すると。


「あの、マチュアさん、ちょっと良いですか?」

 高嶋が炬燵エリアにやってくる。

「仕事?」

「はい。まずこれを見て下さい」

 高嶋が持ってきたのは企画書である。

「へぇ。どれどれ‥‥『ソリッドビューバトルシステム』???」

「この前貸した漫画ですよ。キンデュエのやつ。あの漫画に出ていたカードバトルシステムなんですけど、これ、作れませんか?」

「これと仕事の何処が?」

「集現社からの依頼です。カードバトルシステムを世界大会の本戦から使いたいと。その企画書は赤城さんの力も借りました、ご一考ください」

 ほほう。

 赤城が手を貸すということは、それなりの事なのか。

「よし。目を通してわからなくなったら声かけるわ」

 手渡された企画書を横に置くと、高嶋がポカーンとしている。

 まるで鳩が豆鉄砲を食ったように。

「あれ?却下じゃないのですか?」

「仕事として同僚のアドバイスを貰ったものを却下するとでも?趣味なら却下するよ。これは仕事としてまじめに作ったのでしょう?」

「はい」

「なら一考します。下がってよし」

 褒められた感でワクワクしながら席に戻る高嶋。

「それじゃあ、企画書読みますか」

「では、私は先程の件を調べてみますね」

「宜しくお願いします。って、これ大使館の仕事なのかなぁ」

「他国にはまだカナン大使館ありませんから。世界中の仕事が集まるのですし、私の方で仕事は割り振ってますから」

「はいはい。ではお願いします」

 ペコッと頭を下げると、三笠もクリアパットを取り出して調べ始めた。


誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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