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【本編完結】異世界ライフの楽しみ方・原典  作者: 呑兵衛和尚
第八部 異世界の地球で色々と

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地球の章・その5 雪まつりと納品と

 札幌雪まつり。

 北海道最大の祭りの一つ。

 この時期の千歳空港の乗客率は、世界ランキングの上位に食い込む程である。


 異世界大使館の出展した『魔法鎧メイガスアーマーと冒険者』の像は大盛況。

 初参加にしてはなかなかの出来であった。

 そしてこの時期、札幌を大寒波が襲った。

 札幌の最高気温がマイナス十度、最低気温はマイナス二十度に達した。


「う〜寒いよう」

 大使館事務室の中にある応接間には、マチュアが作った炬燵が置いてある。

 その中に入ると、みかんを食べなら仕事をしているマチュア。

 これが日本なら、とっくにクビになっている程の体たらくである。

「熱々のお茶淹れますか?」

「お願い。カナンでは考えられない。北方大陸のカムイでもこんなに寒くなかったわ」

「今日は雪まつり最終日ですよ。仕事終わったらみんなで行きますけど、マチュアさんはどうします?」

 赤城が番茶を炬燵に乗せながら問いかける。

「期間中一度も行ってないですよね?せめて最終日ぐらいは行かないと」

「ええ。是非も行きましょうよ」

「‥‥転移門ゲート開いて良い?」

 ふざけた事を抜かすマチュア。

「地下鉄ですよ。なんでこんな距離に転移門ゲート開くんですか?」

「寒いのは嫌なのよ。なら、帰りに飲み屋で奢ってくれるなら考える」

「えーっと。マチュアさんの方が給料高いでしょう?」

 そう反論する十六夜だが。

「外交官としての給料なんてないわよ。異世界ギルドの給料は月に金貨30枚ですよ」

「え?そうなの?」

 これには一同驚く。

「私はカナンで宿屋兼酒場も経営してるから、ギルドからの給料なんてそんなものよ?」

「でも、酒場の収益はあるんですよね?」

「まあ。あと冒険者としての仕事と錬金術師の仕事、魔道具のライセンス料とかで蓄えはあるけど‥‥そんなものよ?」

「はいはい。では今日は高級取りの私達が奢りますから、定時には仕事終わらせてくださいね?」

 吉成もマチュアにそう話すと、机で仕事を再開する。


「そもそも、マチュアさんの今の仕事はなんですか?」

「はぁ。ムハンマド皇太子から送られてきた設定の鎧騎士パンッァーナイト魔法鎧メイガスアーマーの作成。これはもう直ぐ終わる。後は、国際連合に召集されているのと、バチカン市国からの招待もあるよ」

 指を折りながら説明する。

 真面目に仕事しているので一同納得。

「で、今は?」

「皇太子の機体の、コクピットの中の魔力回路の設定だよ。これが仕上がると全身組み立てて仕上げの魔法処理だからね」

「あの‥‥滅茶苦茶仕事多過ぎませんか?」

「雑務は任せてあるでしょ?そっちの方が嫌だ。という事で、誰か国連行くの付き合え。国連言われてもよく分からない」

 そう話すと、マチュアは職員の顔をじっと見渡す。

 全員が顔を伏せるが、高畑がキョトンとして顔でマチュアを見ている。

「高畑さん、一緒にジェネーブいく?」

「はぁ、仕事なら別に構いませんけど。いつですか?」

「明後日に皇太子が魔法鎧メイガスアーマー取りに来るから、それを引き渡してから。ジェネーブには一週間滞在だから、のんびりとしてきましょう?」

「はいはい、了解ですよ」

 ニッコリと笑う高畑。

 そんな会話をしていると、勤務終了の鐘が鳴る。


――ゴォォオォォン、ゴォォオォォン

 領事館も仕事が終わったらしく、事務室から出ていく。

 そして大使館組も、こたつから出て来ないマチュアを無理矢理引きずり出すと、そのまま大通公園へと移動を開始した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 気温マイナス十五度、天気・雪。

 大通公園の雪まつり会場では、大勢の観光客が押し合いへし合いしながら雪像を眺めていた。

――ブルブル

 モコモコのダウンジャケットを着込み、毛糸の帽子とマフラー、手袋という姿のマチュア。

 自慢の長い耳も帽子の中。

「本当に寒い‥‥シャレにならない」

 ゆっくりと歩きながらそう呟いている。


(私がいた地球でも、こんなに寒くなかったぞ?)


 そう考えていると、あちこちの観光客がマチュアを見て写真を頼んでくる。

「は、はーい。写真ですね」

 手を振って対応するが、皆、耳を帽子から出して欲しいと頼んで来る。

 それでも外交官である以上は仕事。

 ならばと耐冷結界を薄く貼り、耳を出して撮影に応じる。

「やっぱりエルフさんには北海道は寒いですか?」

「いえいえ、魔法で寒さを止めれますので大丈夫ですよ?」

 モコモコのダウンジャケットも外してローブ姿になると、一つずつ丁寧に応じる。


「ぷ、プロだ‥‥プロのエルフだ‥‥」

「高嶋、プロのエルフってなんだよ?」

 そう笑いながら高嶋にツッコミを入れる。

 やがて異世界大使館の雪像前に到着すると、そこは大勢の観光客であふれている。

「マチュアさん、あれですよ。人が多くて近寄れませんね」

 赤城が楽しそうに雪像を指差す。

「そうだね。ならみんなこっちに来て」

 人の少ない歩道に出ると、マチュアは絨毯を二枚取り出す。

「えーっと。魔力コントロールの一番うまい子は誰?」

「何故かわかりませんが、一番うまいのは吉成さんです」

 古屋がそう説明する。

 何故?

 魔法使い系の赤城よりうまいとはこれいかに?

「へぇ。ならサブ権限を吉成に。これに半分乗って。残りは私と一緒ね」

 外交団ナンバーをぶら下げた魔法の絨毯に乗るマチュア。

 そのまま十六夜からスマホを借りると、北海道警察の交通課と雪まつり実行委員会に電話する。

 大通公園上空を絨毯で飛行するので、通報が入らないように予め連絡したのである。

 普段なら必要はないのだが、今日のように人混みの上を飛ぶ場合は一報入れてもらえると助かると言われていた。


――ピッ

「よし、許可はとったわ。上昇して上からのんびりと見ましょう。高度は魔力で3mで維持、あとは意識で。出来るかな?」

――フワッ

 マチュアの指示で浮かび上がると、ゆっくりと雪まつり会場の上空に向かう。

「こ、これは。マチュアさん、大使館員にこれを配布する予定は?」

「ないわ。絨毯と箒はカナンの国家機密。個人所有している人なんて十人もいないわよ。子供以外は」

「子供?なんで子供が国家機密を持っているのですか?」

「欲しがったからあげただけよ?ちなみに日本では『魔法等関連法』があるから、無登録で魔法による飛行を行ったら罰金だよ」

 にこやかに話す。


 この法案で、空飛ぶ箒や絨毯などは『特殊飛行対象』という新しい区分に分けられた。

 地表から高度120mまで、速度は法令速度もしくは80kmまで、国土交通省もしくは異世界大使館発行の許可証を所持することなと、細かい決まりがあったのである。

 なお、マチュアは外交団ナンバーと外交官カード所持、異世界大使館の飛行等許可証も取得しているため、飛行には全く問題ない。

 しかも外交官許可証もあるため、高度と速度は無制限、ただし航空法による規制で飛行高度は150m以下であるが。

 これがあるおかげで、海外にも独自で移動する事が可能になっているのだが、海外ではまだまだ制限が多い。


「おおう、一躍有名人ですよ。これがマチュアさんの視界なんですね」

 路上でスマホを構えて撮影している人が大勢見える。

「マチュアさん、自家用絨毯販売しましょうよ?」

「それと箒も。絶対に儲かりますよ?」

 男衆はすぐ儲けにつなげる。

 だが、そんな事は考えてもいないマチュア。

「嫌だね。一般販売するなら『道路安全保安基準』っていうのがあるの。それに合格しないと一般販売は認めないって言われたのよ。ほとんど関係ないけど、市販モデルには 『灯火器及び反射器並びに指示装置の取付装置の技術基準』っていうのを守らないとならないのよ」

「それで、この絨毯も右折左折や停止の時は魔法でチカチカ光るんですね?」

「そういう風に設定し直したのよ。新しく魔法を付与して、移動時にリンクするようにね。絨毯なんて中東の偉い人から売って欲しいって連絡来てるでしょ?」

 そう問いかけるマチュア。

「サウスアラビアからだけでも100件以上。一人で10枚っていう発注も来てますよ。全て保留ですが。これ、売るとしたら幾らなんですか?」

 そんな話をしながらも、のんびりと歩道区画上空をのんびりと飛ぶ一行。

「面倒いから一枚一八億。カナンでも大体それぐらいの価値よ」

 白金貨二千枚の価値。

 それを気に入ったらぽん、と金貨一枚で売るのがマチュア。

「そっ、そんな価値なんですか?原価は?」

「似鳥で適当な絨毯買って来て付与するだけよ。一枚いくら?」

「大きさによってですが、一枚九百八十円とか」

「お、値段以上の価値になるなぁ」

 笑いながら飛んでるマチュア。


――ブルブルッ

 すると、十六夜のスマホに連絡が入る。

「はい、十六夜ですが‥‥え?少々お待ちください。マチュアさん、雪まつり実行委員会から電話です」

「はいはい、変わって」

「スマホぐらい買ってくださいよ〜」

「日本の住民票ないから無理。変わりましたマチュアです‥‥へ?今ですか?」

 何やら不穏当な連絡が来たらしい。

「ええ、そうですねぇ。請求書は後で送りますよ?時間は一時間。それで宜しければ‥‥はぁ?わかりました」

――プチっ

 スマホを十六夜に戻すマチュア。

「どうしたのですか?」

「あ〜、仕事入ったわぁ。雪まつり実行委員会から、今年の巨大雪像の前で、空飛ぶ絨毯に乗っての記念撮影会をしたいんだってさ‥‥移動するよ。一人スタッフで私に同行」

 絨毯をもう一枚広げると、外交団ナンバーをぶら下げて飛び乗る。

「なら今日は僕が行きますよ。皆さんは楽しんできてください」

 職員の中でも最も若手で、カナン生活が最も長いベネット・桜木が手を挙げる。

「いいのか?」

「HAHAHA。気にする事はありませんよ。後から合流しますから」

「よし、ならこっちに。そっちの絨毯のサブ権限を赤城に移行、吉成さんと赤城さんは絨毯の管理、責任を持ってね。盗まれても権限者以外使えないから問題ないといえばないけど」


「「はい」」


 ふわっとマチュアとベネットを乗せて絨毯が飛び上がる。

 そして指定された場所へと移動した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 



「あ〜成程、これは納得だわ」

 指定された場所では、急遽撮影会の準備が行われていた。

 一枚千円のポラロイド撮影会、お金を払ったら自前のスマホでの撮影も可能であるという事で、かなりの数の人が列を成して並んでいた。

 そして目の前の雪像。

 説明では、この雪像はアメリゴのウォルニィという有名な作家の作品らしく、『サラディンと魔法のランプ』という映画をモチーフにしているらしい。

 アメリゴを始め、世界各地にウォルニィランドという巨大アミューズメントを設営、子供達にとっては正に夢の国である。

「へぇ、ディズ‥‥やめとこ」

 そうしてください怒られます。

 すると実行委員会の人がマチュアの元にやってくる。

「初めまして。突然の申し込みを受けて頂きありがとうございます」

「いえいえ、これも仕事ですよ。あと、この巨大雪像のランプの精霊、映像ありますか?」

「ええ、ありますが。これですね?」

 スマホで映像を見せて貰う。

 するとマチュアは魔法陣を起動して、同じ姿のランプの精霊を呼び出した。

「これ、一緒に撮影したらウォルニィさんに怒られる?」

「こ!これは勘弁してください。あそこは洒落にならないのですから」

「あっそ。ならオリジナルの精霊ならいいでしょ?」


――ブゥン

 風の精霊エアリアルを召喚するマチュア。

 それを絨毯の近くで待機するように告げると、エアリアルはコクリと頷いて絨毯の上で待機する。

「これは本物だから著作権ないわ。という事で始めましよ。ベネットは受付終わった人達をこっちに誘導して」

「わかりました。では1番の方から」

 ゆっくりとマチュアの元に向かうように誘導する。

 するとマチュアが靴を脱いで絨毯の上に座るように説明すると、ポン、と絨毯を浮かび上がらせる。

「それでは写しますよー、はい、なんだっけ?」

「チーズですよ」

「はい、チーズ‼︎」

――パシャッ

 一組3分以内、目標二十組。

 一時間ならそれが精一杯。

 次々と撮影は続けられ、最後の一組になった。

「さて、では最後なので盛大に行きましょう‼︎」

 絨毯の背後に魔法鎧メイガスアーマーを召喚する。

 浮遊の魔術を施して浮かび上がらせると、さらに絨毯の周囲に地水火風の四大精霊も呼び出す。

 頭上には竜の幻影も発動し、最高の一枚を撮影した。

「ではこれで、撮影会を終了します。異世界大使館のマチュアさんベネットさん、ご協力ありがとうございました」

 MCのアナウンサーがそう告げると、会場から盛大な拍手が届けられた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「‥‥そしていつもの銀富士なのね?」

 飲み屋も確保したという赤城からの連絡を受けて、マチュアは銀富士にやってきた。

 既に一行は飲み始めていたらしく、そこそこに盛り上がっている。

「よぉ、遅かったなマチュア」

「遅かったのぢゃ、仕事は大事ぢゃが、根を詰めるとフベシッ」

 カウンターで並んで飲んでいるストームとシルヴィーの顔面にハリセンを叩き込む。

「何であんたらもいるんだ?」

「何でも何も、妾達が先に来ていたのぢゃよ。カレンもいるぞ」


――ガラッ

 するとカレンもやってくる。

「あら?マチュアさんもいらしたのですか」

「えーっと。まさかとは思うが、三人とも観光?」

「いえいえ、ストームが異世界酒場に案内してくれるというので。お言葉に甘えたのですわ」

 ふぅん。

 ならいいか。

「まあ、それなら大いに楽しんでね。それじゃあ私はあっちなので」

 その言葉でちらっとマチュアのいる団体を見る。

 どの人も異世界ギルドで見たことある人たちばかり。

「へぇ、仕事場の人でしたか」

「そうよ、じゃあね〜」

「わ、妾は突っ込まれ損ではないか‼︎」

 そう叫ぶシルヴィーに、店内は爆笑していた。

 そしてマチュアが席に着くと、もう一度全員で雪まつりの成功を祝しての乾杯が行われた。


――ウズウズ

「ま、マチュア、妾も混ぜてたもれ、みんなでワイワイしたいのぢゃ」

「なら私も。異世界大使館の皆さんですわよね?サムソンのアルバート商会責任者のカレン・アルバートと申します。いつも鎧騎士パンッァーナイトをお買い上げ頂きありがとうございます」

 その挨拶に古屋と高嶋が噴き出す。

――ブッ

「ば、バラさないでください」

「あら、これは失礼」

 暫くはストームもカウンターで主人と話しながら飲んでいたが、やがてマチュアたちの元に合流した。

 更なる盛り上がりは留まる事を知らず、二次会のカラオケの後、ストームたちは異世界大使館にある仮眠室に泊まる事になった。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 早朝。

 ストームは大使館の庭でいつものようにトレーニング。

 守衛室にいた金町三曹と大越二曹も何故か参加させられ、全身汗まみれになっている。

「いょう‥‥なんで三曹達まで巻き込んだ?」

「いや。朝、気持ちが良かったんで庭で身体を動かしていたら身分証明を求められたので‥以前発行してもらった外交官カードと魂の護符(プレートを出したら敬礼されたんでな」

「それでストームブートキャンプかよ‥‥しかし、三曹達もタフやなぁ。あれに耐えられるのかよ」

 呆気にとられてそう告げるマチュア。

「まあ、本隊での訓練と似たようなものですから」

「そこでだ、マチュア、そこに俺の鍛冶場作っていいか?」

「お前バカなの?」

「この日本に、俺の作った武具を流通したい。まあ、包丁とかでいいんだが」


 なんか壮大なような、優しい野望のような。

「構わないわ。どうやって建てるんだよ」

「それはこれから考えるさ。じゃあ許可は出たし、飯だ飯」

 笑いながら大使館に向かうストーム。

「はぁ、哲学する獅子はいつから脳筋になったのやら。三曹、交代で大使館のシャワー室の使用許可します。ついでにご飯食べてください」

「はい。いつもありがとうございます」

 そとの守衛室勤務者には、大使館の出入りを許している。

 ついでに休憩室と食堂での自由な食事も許可しているのだが、守りがガラ空きになると問題なのでシフトで休んで貰っている。

 その待遇のせいか、異世界大使館勤務希望者は結構多いらしい。

 今は一日三交代で三人ずつ勤務している。


 マチュアも朝食を取りに大使館に戻ると、ロビーに置いてあった魔法鎧メイガスアーマーの前でシルヴィーが頭を捻っていた。


(しまった‼︎)


 そう思った時はすでに時遅し。

 マチュアがやって来たのに気がついたシルヴィー。

「マ〜チュ〜ア〜、これ妾にも」

「あのね、これが何か分かるの?」

「わからぬ。新型の巨大ゴーレムぢゃな。まだ動かぬのか?」

「はぁ。作りますよ。これ見て下さいね」

――プシュゥ

 搭乗状態にして胸部装甲を開く。

 そこにコクピットが見えると、シルヴィーはワクワクしていた。

「な、なんぢゃこれは?まさか乗り物なのか?」

「ええ。こうですね」

 マチュアが乗り込んで起動させると、魔法鎧メイガスアーマーゼロツーという試作量産型が立ち上がる。


 これの改良型が、皇太子に送られるゼロスリー、機体コードは『サラディーン』である。

 特注で仕上げた純白のサラディーンは、すでに梱包の最中である。

 後は引き取りに来た時に初期登録するのを待つばかり。


「騎士か、ゴーレム鎧か?」

「へぇ、とうとうロボまで作ったか。俺にも一騎頼むわ」

 食事中にもかかわらず、シルヴィーの声でストームやカレンまでやって来る始末。

――プシュゥ

 立ち姿のまま胸部装甲を跳ね上げる。

「簡単にいうなや‥‥あ、訂正、ストームとシルヴィーの分だな?」

 するとカレンも手を振っている。

「はいはい。カレンのもね。ならストーム、ミスリルとアダマンタイト、クルーラー、アイアンのインゴット寄越せ。大量にな」

「500ずつ?」

「アイアンなら3000、ミスリル2000、アダマンタイトとクルーラーは200ずつ」

「ほらよ。ここ置いとくぞ」

 ウインドウのチェストコマンドで位置指定、放出個数をセットすると、ストームはロビーの一角にインゴットの山を形成した。

「す、ストーム、それなんだ?そんなコマンドあるのか?」

「知らんかったのか?亜神になってコマンド増えとるだろが。相変わらず見てないな?」

 そう言われてウィンドゥを見る。

 知らないコマンドがずらりと並んでいた。

「一年間放ったらかしにしてたわ‥‥」

「そりゃ迂闊だわ。インゴット足りなくなったらいつでもサムソン来いや。アーシュに話つけとくから」

「随分と羽振りいいなぁ。どうした?」

 そう問いかけるマチュア。

「ドゥーサ鉱区の二つの坑道買い取った。というか、ドゥーサ鉱区全体を王家採掘指定にして、一般流通価格よりも高めに買い取っている。アダマンタイトとクルーラーはアルバート商会に採掘委任したからなんぼでもあるぞ」

 ありゃあ。

 サムソンが大きくなっていく。

 というか、ストームが普通に王様している。

 相変わらずの暴れん坊キングだろうが。

「まあ、三人分出来たら持ってくよ」

「これ、強いのか?」

「知らんわ。こっちでは実戦なんて出来ないんだよ、比較する相手がいないわ」

 そう説明してから、ゼロツーを立て膝の昇降状態にして降りる。

 手のひらに知識のスフィアを三つ作ると、ストームとシルヴィー、カレンに手渡す。

「それ操縦マニュアルだから。そこのゼロツーはロビー展示だけど外に出して遊んでいいよ」

「こっちのは?」

 ストームがゼロワンをポンポンと叩く。

「それは初期型、今は実験機だな。内部をゼロスリーに換装して、最新技術を組み込んでいるよ」

「動くのか?」

「スペックがピーキーだからね。そっちのサラディーンは安定しているけど量産機より少しいいぐらいさ」


――ブウンッ

 瞬時にストームが聖騎士モードになる。

「なら、手合わせするか?」

「いいねぇ。ストームと本気の手合わせなんて初めてじゃないか?」

「データは必要だろ?」

 そう告げるとストームは外に出る。

 マチュアもゼロワンを影に格納すると、外に出てゼロワンを呼び出した。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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