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異世界の章・その9 国会で言葉の殴り合い

 さて。

 異世界ギルドの仕事やら、北海道の異世界政策局やら、色々と忙しいマチュア。

 それでも北海道にはツヴァイとアルフィンを常駐する事も出来、異世界ギルドも最初の視察団の受け入れも完了。

 まだまだ課題はあるものの、粗筋は見えて来た。

 マチュアもこれで堂々と、札幌の街並みを楽しむ事が出来る。


 その日、朝一番で転移門ゲートを越えて来たマチュアと護衛のゼクス、異世界ギルドの検疫官ミヌエットと手荷物検査員のナタリーを伴って、一行は政府のチャーター便で東京に向かった。

 空港では資料と称して様々な本を購入。

 代金はマチュアたちを迎えに来た五所川原という議員が経費として落としてくれると言うことで、大量に購入したのだが。

「ミナセ女王は、日本の歴史書に興味があるのですね?」

 マチュアが購入した本の中に、日本や世界の歴史に関するもの、江戸時代についての文献、侍に関するものなどをいくつも混ぜている。

 それを飛行機の中でのんびりと読んでいたのを、五所川原議員は見逃していなかった。

「ええ。少しでも知識として入れておきたいのですよ」

 そう告げると、マチュアは次々と本を読んでいく。


『大体の歴史は同じだが‥‥織田幕府が出来ているのが凄いわ』


 歴史部分では、本能寺の変で織田信長が明智光秀を返り討ちにしている。

 ここで歴史が少しずれるのだが、流れは江戸幕府の人材が織田に変わったぐらい。

 明治維新など、結果としての流れは殆んどマチュアの知っている地球と差異はない。

 そして世界の歴史についても、あちこちで年代のズレや名前が違うのだが、結果として世界も地球と同じ。

 ならばマチュアの知っている知識を使う事が出来ると少し安心していた。


「ミナセ女王、こちらにサインをお願いします。護衛の方や使節団の方もどうぞ」

 そう話しながら手渡されたのは、政府が発行する『外交官等身分証明票』の申請書類。

「私達は外交旅券を持っていないのに、よく発行できましたね?」

 マチュアが書類を持ってきた政府担当官に問いかけると、担当官は静かに一言。

「何事にも特例があります。聡明なミナセ女王ならご理解頂けると思いますが」

「でしたら、あと二通。今日は同伴していませんがツヴァイとアルフィンの二名分お願いします。彼女達の方が、私よりもちょくちょくこちらに来るものでして」

「了解しました。お二人が来た時にでもお渡ししますので。その際はどこでお渡しすれば宜しいですか?」

転移門ゲートのある地区の首長がいる場所でお願いします」

 そう話してから、マチュアは書類にざっと目を通す。

 不備や自身に不利益がない事を確認すると、ゆっくりと魔法文字でサインした。

 そしてミヌエットやゼクス、ナタリーもそれに習って魔法文字でサインする。

「ではお預かりします。一週間もすれば発行されますので、どこでお渡しすれば宜しいですかな?」

「先程の首長のいる所でお願いします」

「分かりました。さて、もう暫くは掛かりますので、それまではごゆっくりとおくつろぎください」

 そう話してから、担当官はマチュア達のいるところから離れる。

 そしてマチュアも、全ての書物を手に取ると、それを魔力分解して知識として取り込む。


『段々と人間離れしてきましたねぇ』

 ゼクスがウィル大陸共通語で話しかける。

『まあね。実際にはこうして手の中に深淵の書庫アーカイブを起動して、それで解析しているだけなんだ。今までの魔術の応用だよ』

『まあ、それでもいいですが。私はともかく、ナタリーとミヌエットの言葉は?』

『これを二人に手渡して。日本語を大陸語に変換するイヤリング。但し、発音は変更できないのでそこは自力でね』

『なんだって色々と便利なものを作っていますかねぇ』

『用意周到といってくれい。では、私は昼寝する。ここは魔障が薄すぎてキツイ』


――スヤア

 その瞬間に寝落ちするマチュア。

『やれやれ。ではナタリーとミヌエットも、このイヤリングを付けてくださいね。使い方は‥‥』

 淡々と説明するゼクス。

 そして自分たちの耳にそれを付けて魔力を注ぐと、それまでは雑音に聞こえてきた日本語が、綺麗に耳に届いてくる。


『それにしても、この飛行機というものはとんでもありませんね』

『空飛んでますよ?マチュア様の箒や絨毯と、どっちが速いですかねぇ?』

『単純に速度だけなら、マチュア様の箒は幾らでも速く出来ますね。要は魔力を注ぎ込んで加速するのですから。ただ、ウィルではそれはしないようにしているそうですよ』

『それはまたどうして?』

 ミヌエットが頭を撚る。

『うーん。具体的にいうとですね、音の壁というものがありまして。それに対抗する防御フィールドの強度計算をしていないそうですよ』

『ありゃあ。マチュア様でも怖いものがあるのですか』

『あるでしょうねぇ‥‥と、ナタリーは何をしているのですか?』

 先程からミヌエットと話をしていたのだが、いつの間にかナタリーが沈黙しているのに気がついた。

 ゼクスが後ろの席をひょいと見ると、ナタリーは黙々とサービスのアイスクリームを食べている。

『モグムグッ。ゼクス様、これ美味しいです。マチュア様はこれ作れますか?』

『はぁ。作れるとは思いますけれど、作ったのを見たことはありませんねぇ。ギルドの皆さんにお土産でも買っていきましょうか?』

『『はいっ‼︎』』


 そんな話をしていると、飛行機は空港にゆっくりと着陸する。

 そこからは厳重警備の中、車での移動となった。

 そしていよいよ、国会議事堂に到着した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 控室に通されたマチュア達。

 そこに据え置かれていたお茶をズズズッと飲むマチュア。

 堂々としているように見えるが、内心はかなり緊張している。

 やがて異世界担当官の池田恵(いけだ・けい)という女性が部屋にやってくると、今日の質問についての詳細な打ち合わせが始まる。

 マチュアは細かい部分まで説明すると、池田担当官はすぐさま準備のために部屋から出て行っては、また戻って来てを繰り返していた。


――ガチャッ

「失礼します。お時間ですので、こちらへどうぞ」

「はい。では参りましょうか」

 マチュアに促されて、一行はいよいよ議会へと向かう。

 やがて通された部屋は、本議場ではなく大きめの第一委員会室。

 名目は『異世界特別政策委員会』。

 まず委員長の開会宣言の後、マチュア達が上座に案内される。


――パチパチパチパチパチパチッ

 大量のフラッシュに囲まれて、ナタリーとミヌエットは少し下がってしまう。

 だが、マチュアとゼクスは堂々と席の前に立つと、横で待機していた池田担当官の説明通りに挨拶をして席に着く。

「それでは、まず最初に異世界から来訪されたマチュア・ミナセ女王をご紹介します」

 委員長の言葉にマチュアは立ち上がると、池田担当官の説明を受けて壇上に向かう。

「初めまして。カリス・マレスの地よりやって参りましたマチュア・ミナセです。本日はご招待頂きありがとうございます」

 流暢な日本語で挨拶をすると、軽く一礼して席に戻る。

 すると、すでに用意してあったらしい質問がまとめられていた質問状がマチュアに手渡された。

「日本語が堪能と伺っています。これが本日の質問ですので、宜しくお願いします」

 マチュアの斜め後ろにしゃがんで説明する池田担当官。

「あら、予め決まっていたのですか?」

「誠に申し訳ありません。諸般の事情で手渡すのがギリギリになってしまいました」

「構いませんわ。有難うございます」

 それを膝の上に置くと、マチュアはパラパラと軽く流す。


『ありきたりの無難な質問かぁ‥‥これで終わるはずないよなぁ』


「では最初の質問からお願いします」

 委員長がそう告げると、一人の議員が挙手する。

 そして壇上に向かうと、マチュアに軽く頭を下げる。


「民権党の山根です。有り体の質問は与党がするでしょうから。早速ですが、私たち日本人が異世界に行く事は可能でしょうか?」


 質問書の最初のページをめくる。

 そんな質問はない。

 最後の方の質問をいきなりぶつけてきたのである。

 これには与党議員もざわつき始めたが。


『成程。いきなり出鼻を挫いて来る戦法ですか』


 口元に悪い笑みを浮かべるマチュア。

 ならばと、ゆっくり立ち上がるとマチュアは目の前に手を差し出す。

――ヒュウンッ

 空間から魔力感知球を取り出して演台の上に置く。

「私達の世界に来る為には、まず転移門ゲートを通らなくてはなりません。ですが、あれは魔力がある程度ないとお話になりません」

 わざと耳をピクピクさせて議員に向かって返答する。

「その魔力について質問です。私たちは電気文明社会に生きています。簡単に魔力と言われても、目に見えないものを告げられても信用出来ないのですが」

「日本人は目に見えないものは信じないのですか?」

「具体的に証拠を示していただければ」

「そうですか。では、この中で魔力の高い人に証明していただきましょう」

 そう告げると、後ろに座っていた菅野官房長官を見る。

「菅野さんご協力お願いしますわ。この壇上で、この水晶球に触れていただきたいのです」

 まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったらしい。

 思わず自分自身を指差すと、すぐに立ち上がって壇上に上る。

「これですか?」

「ええ!お願いします」

 マチュアの言葉に促されて、そっと触れる菅野。


――ヒュゥゥゥゥゥツ

 すると、水晶球の中心が赤く輝くと、水晶全体が真っ赤になる。

「おおう。これは安全なのかな?」

「まったく無害です。ご協力ありがとうございました」

 菅野に軽く頭を下げると、菅野も下げ返してから席に戻った。


「ただいま見ていただいた通り、この魔力感知水晶は、触れたものの魔力を算出する事ができます。後ほど皆さんにも触れていただいて構いませんが、反応がなかった方は残念ですが私たちの世界に来るだけの魔力を持っていません。万が一やって来た場合、魔障酔いという状態に陥り、意識を失ってしまいます」

 そのタイミングで、傍らにいた池田担当官がボードを演台の横に立てる。

 マチュアはそれをチラッと見て、一つ一つの項目を指差しながら話を続けた。


「赤く輝いた方は魔力係数が30〜50。私達の世界に来ても害がありませんが、来る為には私達のように転移門ゲートを開ける者が代わりに開かなくてはなりません」

 その説明で菅野官房長官も苦笑する。

「菅野さんは私たちの世界に来る事が出来る魔力を持っていますね」

――オオオオオッ

 そのマチュアの言葉にざわつく委員会室。


「黄色く輝いた方は魔力係数51〜80。問題なく生活もできますし、関連施設でしっかりと勉強すれば魔術も習得する事が出来ます。但し、こちらの世界は魔障という魔力の源が薄いので、こちらでは魔術は使えないでしょう」

 さらに委員会室が騒がしくなる。

 自分達も魔術が使える可能性が見えたからであろう。


「そして青く輝いた方は魔力係数81〜100。魔術の素質を秘めています。訓練次第では冒険者として十分に生活する事も出来ますし、秘薬という魔術の触媒さえあれば、こちらの世界でも魔術は使えます」

 この言葉は衝撃的である。

 巷にいる自称魔法使い達も、これで本物かどうか見極められるのである。


「それでは、希望の方はどうぞこちらへ。皆さんの魔力を計測して差し上げますわ」

「菅野官房長官の魔力係数は幾らほどですか?」

 山根議員が少し顔を赤くして問いかける。

「残念ながら32。ですがその数値がこの世界の人々の中で高いか低いかすぐに判明しますわ」

 次々と挙手する議員たち。

 そして委員長の指名で一人ずつマチュアの横まで来ると、水晶球に触れる。

 だが、殆どの議員は光ることさえしない。

 辛うじて数名の議員が赤く光る程度である。

「そうですねぇ。では、せっかく質問していただいたので、山根さんと申しましたか?どうぞこちらへ」

「私は別に必要ありません」

「ですが。質問した本人が確認しなくては、誰も納得しないのでは?」

 クスリと笑うマチュア。

 それに顔を真っ赤にして、山根はマチュアの横に立った。

「ふん。触れればいいのでしょう?何よこの程度‥‥」

――シーン

 全く反応しない。さ、

「あら、残念でしたわ。山根議員は魔力の才能がないようで。今回は分かりやすいように赤、黄色、青の三色に光るようにはしてありますが、才能によってはそれ以上の輝きも見えるかも知れませんね」

 そう説明すると、山根議員が自分の壇上に戻る。


「質問よろしいでしょうか?」

 野党議員が挙手して委員長に問いかける。

「山根議員どうぞ」

「では。今の説明ですと、青色以上の輝きはあるのですか?」

 その言葉に、マチュアは自らも水晶に手をのせる。

 すると水晶が銀色に輝いた。

「今の私は魔力係数が2000程。私達の世界の一般の人々の平均が60前後です。魔力係数101以上の方は白く輝きます。訓練次第では秘薬などの触媒も必要とせず、自力で転移門ゲートを自由に使う事も出来るでしょう」

 にこやかに告げるミナセ女王。

「では、そのような方がこの世界にはいるのですか?机上の空論ではなく。そのあたりをお答えください」

 挑戦的な目つきの山根議員だが。

「ええ。少なくとも私は一人確認しています。個人情報と言うのですか?それがあるのでその方については控えさせていただきますが」

 質問状を見ながら答えるマチュア。

 だが、そんな答えも質問もどこにもない。

「そ、それでは」

「山根くん。君の質問時間は終わったので下がりなさい。次、古泉君」

 後ろで挙手している細身の青年議員が手を挙げていた。


「それでは質問です。ミナセ女王の世界と国交を結んだ場合の我が日本国のメリットは?」

 今度は質問状にすらない問いである。


『あ〜ら、これがよくテレビで見ていたやつかぁ』


 心の中で笑いながら、マチュアは壇上に上がる。

「日本以外の国と国交を結ばれた場合のデメリットがどれ程のものかを考えて見ては?私たちの住む世界には、皆さんの世界では知り得ない資源が豊富にあります。私が独自に調べた事ですが。この世界のような公害もなく、緑豊かな土地があり、地下資源も豊富にあります。まだ私達自身も知らない未開の土地もある世界、それをメリットと捉えるかデメリットと捉えるかはご自由に」


 そう告げてじっと古泉を見る。

「具体的なメリットは?」

 まだ問いかける古泉だが、先程までの威勢はない。

「そのメリットを考えるのは貴方達では?先日私の手元に届けられた資料によりますと、私達の世界はあなた達にとっては、地下資源、水産資源、農産物、土地、全てにおいて未知の世界でしょう」

 空間からミスリルのカケラを取り出すと、それも、縁台に乗せる。

「これは私たちの世界でミスリルと呼ばれている魔法鉱石です。こちらの世界にはないレアアースの一種と思って頂けると良いかと思います」

「それが本物であるという証拠は?」

「これ、おいていきますので自由に分析してください。私の見立てでは、構造材への添加、電子材料や磁性材料、そして機能性材料全てに使用可能ですわ」

 すぐに池田担当官がミスリルを預かると、議員達に回された。

 一人一人がそれを手に取り、今まで見た事のない金属であると感じている。

「有難うございました」

 その答えに満足したのか、清々しい笑顔で頭を下げる古泉議員。


 そこから暫くはある他愛のない質問が続く。

 文化や風習、法律、世界、他国や技術など。

 それはゼクスやナタリー、ミヌエットが丁寧に説明してくれているので、マチュアは後ろの席で一休みである。

 特に種族についての質問では、それは趣味で聞いているだろうという内容のものが多く、あちこちで笑いが起こっていた。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 


 そして最後の方になると、慣れてきたのかきなりきわどい質問もやってきた。

――スッ

 一人の議員が手を挙げた。

 一瞬委員会室がざわついたところを見ると、どうやら今日質問する予定のない議員らしい。

「椎名君」

 委員長が指名すると、椎名と呼ばれた議員が壇上に立つ。

「社共党の椎名です。今回の異世界からの来訪ですが、見方によればこれは我が国に対しての侵略行為とも取れませんか、その事について返答をお願いします」

 突然の喧嘩腰の質問。

 これには委員会室も一瞬沈黙した。

「さて。私はここに友好的な話をしに来たと思っていますが?」

 そう返答するマチュアだが。

「質問の答えになっていません。明確な回答をお願いします」

 そう告げる椎名。

「そうですねぇ。では少しだけ。私の存ずる限りは、侵略行為とは、ある国家・武装勢力が別の国家・武装勢力に対して一方的にその主権・領土や独立を侵すこと。そう認識していますが。私達は、日本国を一方的に侵していますか?」

「魔法という存在、未知の力。それを突きつけておいて友好とは。貴方達は明らかに日本には必要ない存在です。どうぞ他国との国交でも結んでいただきたい」


『ははぁ。カリス・マレスが日本と手を組むと不味い国があるのか』


 そう考えると、この挑発行為も判らなくはないが。

 議員生命を駆けての言葉にも聞こえてくる。

「そうですねぇ。それが日本の真意でしたら、すぐにでも転移門ゲートを他国に移す事にしますが。幸いな事に、極秘裏に私たちに接触を求めて連絡していただいた国もいくつかある事ですし」

 そのマチュアの言葉には、椎名議員の後ろから怒声が響く。

 せっかくの和気藹々とした雰囲気を壊したとか、これからの交渉にヒビを入れたとか。

 だが、椎名議員は野次には耳を傾けない。

「そうして頂くと助かりますね」

「そうですか。でしたら、この国の官僚は無能というレッテルを貼られる事になりますね。私達が日本に来た時点で逮捕拘束するなり、自衛隊と言うのですか?それを用いて私達を排除すれば良かったのですよ」

「無能だと?」

「ええ、交渉相手が心を許し始めた時にそれをぶち壊す。先程の言葉は訂正させていただきますわ。無能は貴方です」

 キリッとした口調でそう告げるマチュア。


『あっちゃあ‥‥またはじめたよ。喧嘩を売られたらすぐに倍返しするんだから』


 ゼクスが顔に手を当てて天井を見る。

 そしてナタリーやミヌエットは、難しい単語はわからないが雰囲気で気まずい状態だと理解した。

「この私を無能だと?どの口が言うんだ‼︎」

 ついにマチュアに向かって怒鳴りはじめた椎名。

 たがマチュアは平然と一言。

「あら、誠に申し訳ありません。わがカナンの方針で『無礼には無礼で返す』というのがありまして。もっとも私の方針ですが‥‥この委員会とやらは、確かホウドウというもので国民全てが見ているのですよね?公の場で己の無能ぶりを公開してくれるとは、実に素晴らしい議員ですね」

 丁寧に話すマチュア。

「そうやって挑発している姿勢こそ、カナンという異世界の本質なのだろうさ。ここでの貴方の態度、いつか身を滅ぼす結果になるかも知れませんので」

 真っ赤になりながらも淡々と話す椎名議員。

「あら。それは私に対しての挑発ととって宜しいのですか?」

「別に構いません。わが日本国は、どのような脅しや侵略にも決して遅れを取る事はありませんので」

「宜しい。では、カナンの流儀でこの話をまとめさせてもらって宜しいでしょうか?」

 そう委員長に問いかける。

「流儀とは?」

「当事者同士の決闘ですが」

「我が国では決闘は禁じられているので、それは容認できません」

「成程。では、然るべき時が来たら、椎名さんには改めて‥‥ね」

 ニィッと笑うマチュア。


範囲指定ポイントセット恐慌ディブレッション‥‥』


ーーガタガタガタッ‼︎

「う、うわぁぁぁぁぁぁっ」

 その瞬間、椎名議員は壇上から逃げるように転がり落ちた。

 一瞬で全身をナイフで突き刺されたような感覚になり、思わず失禁したのである。

「椎名君を委員会室から出したまえ。清掃の為、10分の休憩とします」

 そう告げられて、マチュア達は一旦委員会室から外に出ると、控え室へと戻って行った。



誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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