カムイの章・その2 人外と神外と神の国
騎士の倒れている小屋の扉に近づくと、ストームはゆっくりと扉を開く。
中は囲炉裏にも火が灯されたまま、その奥にいる一人の女性以外は誰もいなかった。
「ふん、この小屋は囮ということか?」
「ウィルの剣聖ストームが相手だからね。これぐらいの事はしておかないとねぇ」
全身をぴっちりと覆うレオタードのような革鎧を身に着け、さらに腕や肩、足などにはパーツアーマーを組み込んでいる。
「なら話が早いな。あんた一体何者だ?」
「私の名前はアルベルタ。フォースロットの白銀騎士団の騎士団長を務めている。昼間にも言っただろう? 手合わせをお願いしたいとね」
そう告げると同時に、アルベルタは一気にストームに向かって間合いを詰めると、どこからともなく引き抜いたレイピアで素早くストームを貫く。
――ヒュンンンンンンンンッ
だが、残像を残してストームはサイドステップで躱すと。伸びきったレイピアに向かってミスリルソードを叩き込む。
――キィィン
レイピアの刀身が2/3に切断されると、アルベルタは素早く後方に下がる。
「ふふふ、さすがは先導者。いい腕をしていますね」
そのまま短くなったレイピアを構えると、アルベルタはオーラでレイピアの刀身を作り出した。
「騎士としては一流か。ここは諦めてくれると助かるのだけど」
「そうは行かないわよ。目的のものを回収しないと、国になんて戻れる訳がないじゃない」
――ヒュンッ
素早くレイピアを振って身構えるアルベルタ。
そのまま力一杯踏み込んでストームの胸部を貫こうとするが、やはりミスリルソードで軽く払われてしまう。
「そもそも、お前たちがあの武器を手にした所で、絶対に扱うことはできんぞ? それは分かっているのか?」
叫びながら斬りかかるが、アルベルタは防戦に切り替えたらしくストームの攻撃を全て受け流している。
「分かっているわよ。『竜神殺しの神槍』は、神に選ばれた者でなければ扱うことができない‥‥でしょう?」
――ザッ
素早く間合いを取ると、ストームは慌てて問いかける。
「ちょっと待て、あそこに安置されているのは『神殺しの神槍』じゃないのか?」
そのストームの言葉に、アルベルタはやれやれと言う顔をする。
「貴方は何も知らないのね。あの神槍は、『神』の名前を持つ者全てを殺す事が出来るのよ?もっとも、この世界では神竜くらいしか討伐対象ではないけれどね?」
「そう言うことか。なら、余計に気になる。使えないものを何故?」
改めて問い返すが。
「抑止力って分かる?」
「ああ。それがどうした?」
「あの槍はね?抑止力なのよ。ゼオン教の経典にある三つの厄災。『神竜の侵攻』『魔神の復活』『亜神の人類殲滅』。この三つに共通するのはすべて神なのよ」
笑いながら告げるアルベルタ。
「それで『神殺しの神槍』が必要か‥‥」
「そうよ。槍はね、殺すだけでなく傷付けた者を使役する事も出来るのよ。だからこそ、それは必要なのよ」
「尚更理解出来ないな。使えない事が分かると、それを持つ者を襲って来る筈だ。そんな事ぐらいは分かっているだろう?」
――カチャツ
楯とロングソードを構えるストーム。
だが、アルベルタはとんでもないことを告げた。
「使えるわよ。この私にだって‥‥それにね、このインカルシペを取り囲んでいるすべての国にも、一人ずつ使える者がいるのよ」
「それはどう言うことだ?あれは神に選ばれたものしか使う事が出来ない。そんなものが使えるのは、精々神ぐら‥‥」
そこまで告げて、ストームは瞬時に間合いを詰める。
「浮舟・無限刃っ!!」
――カキカキカキィィィ
素早く必殺の斬撃を叩き込む。
だが、そのストームの速度に反応したのか、アルベルタはオーラが流れている槍を高速回転し、その斬撃すべてを防ぎきったのである。
「そうか。貴様が亜神かよっ」
「ご名答。インカルシペを囲む5つの国すべてに亜神はいるわよ」
「そう言う事か。なら、あんた達が神槍を求めている理由もわかる。さっきの話の『亜神の人類殲滅』かよ!!」
――キィィィン
ミスリルソードを瞬時にカリバーンに持ち替える。
全身の鎧もアダマンタイトの聖鎧に換装すると、改めて構え直すストーム。
「いえいえ、それは私達ではないわ。私達の目的は先ほど話をした通り、『抑止力』よ。周辺の亜神はすべて敵対しているのよ。神界を追われた時にちょっと仲違いをしてね」
「そこまで聞かされて、はいそうですかと渡すと思うか?浮舟・無限刃っ!!」
――ガキガキガキィィィッ
「その攻撃は一度見た。亜神相手に同じ攻撃が二度も‥‥あら?」
高速回転していた槍が次々と切り裂かれ破壊される。
そのままストームは一歩踏み込むと、素早くアルベルタに向かってカリバーンを振り下ろした。
――ズバァァァァア
必死に躱そうとしたアルベルタ。
だが、それよりもストームの一撃は早かった。
「グッ‥‥」
アルベルタの左肩口にカリバーンの刀身がめり込むと。まるでバターを切るかのようにスッと肩口から腕を切断した。
「流石に早いか。だが、もうこれで終わりだな」
「ちょっと待って頂戴!!どう?私と取引をしない?」
傷口に手を当てて血を止めようとしているが、回復魔法は持ち合わせていないらしい。
「取引?」
「ええ、他国の四人の亜神の事を教えてあげる。得意技も弱点も全てね。だから私は見逃して」
「ふむ‥‥断る。目の前の悪を放置するのは出来ないからな」
「なんで?貴方は剣聖なのでしょう?正義の味方よね?」
「だったらどうした?」
「人を殺すのは正義なの?それは貴方の世界の法を犯すことになるわよ?咎人は法によって裁かれる。それが貴方のいた世界の法ではないの?」
アルベルタは知っている。
ストームが異世界の人間である事を。
ストームのいた世界では、人を殺すのは違法である事を。
そこさえ突けば、異世界人は動きが鈍る。
ニィッと弱々しく笑うアルベルタだが。
「そこなんだよなぁ‥‥」
スッとカリバーンを下げるストーム。
「俺の今のファーストクラスは英雄なんだよなぁ」
(勝った!!ここさえ切り抜ければ人間など‥‥)
――ズバァァァァア
アラベルタの体が真っ二つに切り裂かれる。
「な‥‥ぜ?」
死がアルベルタを包み込む。
そしてストームの告げた言葉に、アルベルタは恐怖した。
「俺にとっての正義とは、『法で裁けない悪を裁く』だ。この力こそ正義。俺はな、地球とのリンクが切れてこの世界の住人になった時にそうあるべきと考えたからな」
意識が消えていく。
アルベルタの体がどんどん白い塊となっていく。
「アルベルタといったな?相手が悪かったよ。マチュアが相手だったら勝てただろうさ」
――ボロッ
白い塊はやがて崩れ始め、塩になって散らばっていく。
「マチュアにとっての正義は、法と秩序を守るものだからな。まあ。その為なら何してもいいと思っているだろうけれどね‥‥それにな」
それだけを告げると、ストームは小屋の外に向かう。
「全てを守るのはマチュアに任せている。俺は、自分の手の届く所を全力で守るだけだ」
そう告げながらストームが小屋から出てきた時、外ではイァンクが小屋に軟禁されていた人々を助け終わっていた。
子供達は泣きながら両親に抱きつき、年老いたもの達は焚き火にあたって暖を取っている。
「ストーム、本当に助かった‥‥」
「いや、俺たちが来たからこんな事になったんだ、悪かったな」
そう告げながら頭を下げるが、イァンクは頭を左右に振る。
「月の巫女がやってきてインカルシペに向かうなら、我々はその命を差し出す覚悟はある」
イァンクの言葉に、周囲の男達も頷いている。
「そ、それはどうしてなんだ?たかが槍一本のために、集落の全てが犠牲になるんだぞ?」
「ストーム、それは違う」
イァンクは真剣な表情でストームを見る。
「月の巫女は槍を持って我々を暗き底から救い出す者だ。それがカムイの言葉であり、言い伝えである」
「だからって、死ぬのか?死ぬのは怖くないのか?」
「良き魂を持つカムイの民ならば、魂はインカルシペを通りカムイモシリで新しく生まれる‥‥だから怖くはない」
優しい笑みを浮かべて、イァンクが話している。
「だから我々は争いを好まない。イァンクの言う通り、我々は良き魂でなくてはならないから」
焚き火にあたっていた老婆がストームに語りかける。
「ストームさんなら分かるじゃろう?悪しき魂を持つものは生まれ変わってもカムイモシリに住むことは許されない。この軍隊を率いていた女性も元々はカムイの民だったのです」
そう告げられたストームは、慌てて小屋を見る。
ちょうど小屋の中から、大量の塩をカゴに入れて外に運び出しているところであった。
「なら、悪しき魂を持つものが現世で死んだらどうするんだ?」
「簡単なこと。そのものが二度と間違いを犯さないように、水の国に送るのだ。そこで穢れを祓うと、魂は再びカムイの女の腹に宿る」
カムイの民の転生の物語なのだろうとストームは思う。
それに、そう告げられると少しだけ気が晴れる。
「そうか。なら、俺はここにいない方がいいな。俺の知る知識なら、俺は『悪しき魂』が宿るんだろう?」
「いや、貴方は ルアンペ。カムイにやってくる悪しき魂を外に吹き飛ばす風の神様。貴方は貴方の思うままに生きなさい」
老婆はそう告げると、ゆっくりとストームに近づく。
――パンパン
そしてそっとストームを抱きしめる。
「イランカラプテ」
その言葉が、ストームの心の中に染み渡っていった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「スヤァ‥‥」
ストームがニシカムイから戻ってくると、絨毯の上でクッコロが丸くなって眠っている。
「マジか。結界があるから落ちないとはいえ、よく眠れるなぁ」
そう呟きながら、ストームはバックから酒の入っている甕を取り出すと、取り敢えず一杯飲む。
――グビッ‥‥
「ぷはー。酒の肴が欲しいわ‥‥さてと、少しだけ休むとするか」
そのままごろりと絨毯の上に転がると、日が昇るまで仮眠をとった。
「‥トーム、ストーム、朝ですよ!!」
「モッ‥‥もすとますきゅら?」
何やら判らん事を口ずさみながら、ストームはゆっくりと起き上がる。
「ファァァァ。よく寝たわ」
「村はどうなったの?私は急いで戻らないと」
「あ、終わった。全て終わらせた。後始末はイァンクに任せたから問題はない。という事で朝飯を食ったら、インカルシペに向かうとするか」
ずるっとバックから寸胴を取り出すと、まずは朝食を取る。
寸胴の中には熱々の豚汁、そして握り飯の入れてある竹の籠も取り出すと、ストームとクッコロは食事を取り始める。
「それで、昨日はどうなったの?」
「殆ど気絶させたり眠らせて縛り上げた。あの女性騎士だけは戦って‥‥今頃は水の国に送られている筈だ」
そう告げると、クッコロも視線を下に向けて黙ってしまう。
「熱いうちに食べないと美味くないぞ?豚汁は熱々だからこそ美味いんだ」
「そうね‥‥殺さない方法はなかったの?」
「相手はカムイモシリから追放されたカムイだ。だから塩にして水の国に送り届けた。悪しき魂はそうすれば良いのだろう?」
「そ、そうなの‥‥なら、神槍を狙っていた亜神はもういないのね?」
少しだけ笑顔で問いかけるクッコロだが。
「後四人だ。それでクッコロに問いたい。神槍を手に入れたら、どうする?」
「正しきものに届けます。神槍はそのものの魂と一つとなり、そのものが死するまで、そのものの力となります」
「成程なぁ。ならば、とっとと槍を取りに行くか」
後片付けを終えたストームは、そのままインカルシペに向かって飛んで行く。
一時間も経たないうちに、魔法の絨毯はインカルシペの外にある巨大な永久氷壁の近くまで到着する。
だが、嵐の壁が行く手を阻んでいるため、そこから近づくこともできない。
「さて、では頼むぞクッコロ!!」
一旦低空飛行で嵐の手前に着地すると、ストームはそうクッコロに話しかけたが。
「この嵐が収められる儀式は夜なのですよ。それまでは少し体を休めましょう」
「そうなのか?」
「はい。月の儀式というものを行わなくてはならないのです」
ふぅんと納得すると、ストームも一旦は絨毯の上で身体を休めようともう一度絨毯を広げたが。
「そこの者たち、どこの国のものだ?協定によりここより先に進む事は許されていない筈だ」
馬に乗った男が三人、ストームの元にやってくる。
装備からは何者なのかはわからないが、この山を狙っている何処かの国であろうと想像はつく。
「そうなのか?我々は冒険者だ。そんな協定など知らずにやってきた。お前たちはどこの国のものだ?」
そう問い返すストーム。
「我々はベルディー教導国のものだ。冒険者と言うのなら、カードを確認させて欲しい」
「ふぅん。クッコロ知ってるか?」
「ええ。油断しないでください。好戦的な国ですから」
ボソッと小声で呟くクッコロ。
そしてやってきた騎士にストームはカードを見せると、ベルディーの騎士達は慌てて姿勢を正した。
「こ、これは、先導者でしたか!!」
「このあたりはシュトラーゼともフォースロットの騎士たちが巡回しています。突然襲ってくる事もありますので気をつけてください」
「それでは良い旅を!!」
そう告げてから、三人は慌ててストームかろ離れていった。
「なんだありゃ?」
「あ、そうか。ストームさんが先導者だから、彼らは敬意を払ったのですね」
「はぁ?一体どういう事?」
「ベルディー教導国はですね、よく言えば武人の国なのですよ。武力が高いものほど高い地位を得る事が出来る。因みに、国を治めているのは先導者なのです」
「悪くいうと修羅の国か。さしずめ国民すべて冒険者ギルドに登録が義務付けられているとか?」
腕を組んで頷くストーム。
イメージはモヒカンがヒャッハーする世界のようである。
「成人したら義務です。まあ、若い時にギルドに登録してメキメキと頭角を現す人もいますし」
それならば、先ほどの反応も頷ける。
「まあ、日が暮れるまでは時間がある。どうする?」
「迂闊に人里に向かうと、昨日のように罪もない人達を巻き込むかもしれません。ここで待っていて構いませんよ?この結界もありますから暖かいですし」
ストームの体感では、外の気温はマイナス五度。
結界によって守られている絨毯の周囲は二十五度。
その誤差実に三十度である。
「そうか。なら少し高度を上げておこうか」
そのままスーツと弓が届かない程度に高度を上げて、そこで絨毯を固定する。
「それにしても、このあたりの国は一体幾つあるんだ?」
「大小合わせると30はありますよ。常にどこかで戦争をしたり、どこかの属国になったり。大きいのはベルディー教導国、フォースロット国、イズモ、神聖ファミリア、それとルーンスロット帝国ですね」
その名前にシュトラーゼは入っていない。
「シュトラーゼよりも大きい国があるのか」
「いえいえ、シュトラーゼは別物ですよ。このインカルシペの周りのという事です。シュトラーゼは隣国ではありませんが騎士を派遣して来ていますし」
腕を組みながらストームは暫し考える。
(予測ならベルディー教導国のトップは亜神だろうな。ならここで会う事はない。問題は残りの3つか)
「クッコロ、この辺りで一番近い国はどこだ?」
「この辺りですとイズモか神聖ファミリアですよ?」
それを聞いて、ふとストームは考える。
「クッコロが嵐の結界を解除すると、周辺の国は動くよな?すぐに永久氷壁の中に入る事が出来るのか?」
「それでしたら、氷壁の外に剥き出しになっている神殿があります。そこの部分の氷は殆ど溶けていると思いますので、そこから中に入る事は出来ると思いますよ」
「話に聞いた、氷壁が溶ける時期と関係していたのか。それでクッコロを捕まえて嵐の結界を解除すれば、内部に一番乗り出来るという事か」
その言葉にコクリと頷くクッコロ。
「そうなるとややこしいな。神殿の入口に向かっておいて、解除されたらすぐに飛び込まないといけない。けれど、恐らくは神殿のある位置には偵察隊か、もしくは互いを牽制しながら駐留している奴らがいると」
「はい。今からそこに向かうと、今宵結界が解除されるというのがバレてしまいます。ですので、神殿の裏にある裏門の部分のみを解除します」
ポン、と手を叩くストーム。
「それなら問題はないか。今のうちに移動するか?」
「日が暮れてからの方がいいでしょう。それまではゆっくりと待ちましょう」
後は時間が過ぎるのを待つだけ。
幸いな事に、あれ以降は誰もストーム達の元を訪れてはいない。
やがて日が暮れ始めると、ストームとクッコロは行動を開始した。
‥‥‥
‥‥
‥
すっかり日も暮れた頃。
「それじゃあ案内を頼む。神殿の裏っていうのがどこかなんて、俺は知らないからな」
「ええ。このまま壁伝いに右に向かってください。近くまで近づいたら教えますので」
「応」
ある程度高度を取りつつ、ゆっくりと移動するストーム達。
そして一時間ほど進むと。
「ここで大丈夫です。月明かりも見えますから、儀式を行いますね」
そう告げると、クッコロは絨毯の上で儀式を始める。
胸元の紋章を絨毯の上に置くと、目を閉じて言葉を綴り始める。
「‥‥近くに二人か。移動している所を見ると、ただの偵察だろうな‥‥」
静かにそちらを警戒するストーム。
だが、どうやらこちらには気づいていないらしく、気配が遠ざかっていく。
――キィィィン
クッコロの胸元につけていた飾りが輝き始めると、中天に輝く月からクッコロに向かって一直線に光が注がれた。
そして光はクッコロの胸元で反射すると、嵐の壁に向かって一直線に進んだ。
――ボゥゥゥゥゥ
光がぶつかった暴風の壁に丸い穴が開くと、月からの輝きが収まった。
「敢えて言おう!!絶対にバレた」
「ふぁ?」
やや意識が朦朧としているクッコロ。
だがストームは躊躇することなく絨毯で穴に向かって飛んでいく。
「あっちの方だ!!あの光はなんだ」
「イズモが協定を破ったのか!!」
「まさかとは思うが。急げ、奴らに先を越されるな」
などなど、彼方此方から叫び声が聞こえ、こちらに向かって大勢の人々がやって来る音が聞こえてくる。
「クッコロ、壁を抜けたらもう一度塞げ!!」
「つ、次の儀式まではまだ時間がぁ。魔力も足りないよう」
――ズザザザザァァァ
壁を抜けた先にある白亜の神殿。
その巨大な門の前にストームは立っていた。
「クッコロ!!それを開け!!『風の精霊よ、かの場所にで暴風を巻きあがらせろって』」
クッコロに指示を飛ばすと、ストームは穴の中に向かって風の精霊を放つ。
――ヒュゴォォォォォォ
穴の中にもう一つの嵐が吹き荒ぶと、外からは悲鳴と剣戟の音が聞こえてきた。
――キィィィ
「ストーム、開いたよ。すぐに閉じるから急いで」
「了解と」
クッコロが神殿に飛び込むと、すぐに門が閉じ始める。
そこにストームがバレンティンばりのスライディングを仕掛けると、ストームが抜けた直後に門が閉じられた。
「ふう。もう一年分ぐらい働いたぞ。そろそろ楽をさせてくれ」
周囲を見渡しながら、ストームがクッコロに話しかける。
だが、クッコロは正面の通路をじっと眺めているだけである。
「どうした?」
どう考えても様子がおかしい。
だが、クッコロは通路の先を指差すと、慌てて走り出した。
「ストーム、侵入者だ!!突然影の中から現れた!!」
「影からだと?しまった、忍者かよ」
慌ててストームも走り出すと、目の前の黒い忍び装束の人物を追いかけ始めた。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






