北方大陸の章・その10 二国会談という名の喧嘩でした
楽しかった晩餐会も終わり、マチュアとエンジは会場で最後まで残っていた。
アレクトー伯爵が自宅まで送ってくれるといっていたが、この後でまだ話し合いがあると説明すると丁寧に挨拶をして帰宅した。
「さて。ここからが正念場だねぃ」
『ええ。勝算はあるのですか?』
「あったらとっくにその手を使っているよぉ。無いからまず話を聞くだけだし。ちょっと気になることもあってねぇ」
『策は無いのですか。まさか実力行使とか?』
「それは最後の手段だよ。私と同等の賢者と、肉弾戦ではかなり自信のありそうな使徒クラスの魔族二人を相手にするんだよ?」
そう話をしているが、既に『白銀の賢者』の装備に換装してじっと待っている。
ならばとエンジも戦闘用の装備に換装すると、迎えが来るのを待っていた。
――カツーンカツーン
マチュア達のいる部屋に誰かがやって来る。
ゆっくりと扉が開かれると、真っ赤な仮面をつけたメフィストが室内に入ってきた。
「失礼します。アンダーソン大公の使いで参りました。王城の謁見室で待っていますので、こちらへ」
丁寧な物言いであるが、室内に入ってきた時から殺気が溢れている。
「あら、ありがとうございます。それで、貴方はただ私を迎えに来ただけかしら?」
椅子から立ち上がってメフィストの方を向くと、ゴキゴキと拳を鳴らすマチュア。
その動きに、メフィストも丁寧に頭を下げる。
「まあ、貴方が分かりやすい方で助かりましたよ。ここで貴方を殺してしまえば、大公やアーカムが余計な手間をかける事はありませんからね。それに、私が大公の側近に迎え入れていただけるかも知れませんから」
――スッ
と右手をあげるメフィスト。
その手の周囲に、数十本もの光の剣が浮かび上がると、一斉にマチュアに向かって降り注いだ!!
「全く。私に魔法は効かないってまだ分からないの?」
――パチーン
と指を鳴らすと、光の剣は一瞬で消滅する。
が、その影にあった闇の剣は、真っ直ぐにマチュアに飛んでいく。
「ハーッハッハッ。まさか影にまだ仕掛けてあるとは思わなかったでしょう!!」
嬉しさのあまり絶叫するメフィストだが。
――ガギィィィン
マチュアは飛んできた闇の剣を拳のワイズマンナックルで弾き飛ばし、一瞬で消滅させていた。
「まあ、見た事がなかったら驚いていたでしょうけれど。その技はファウストに見せてもらったから効かないわよ。光の精霊魔法と闇の精霊魔法の複合技。貴方強いわね?」
愕然とするメフィスト。
指パッチンで消せる魔法は一つの種類、次に消せるまでのタイムラグを見切っての攻撃だろう。
だが、その奥の手も武器で弾かれ消滅したのである。
ミスリルなどの魔法金属でもない限り、魔法に干渉することはできない。
それに魔法の速度に追いついて受け止めるなど、Sクラスの騎士でもなければ不可能である。
「馬鹿な。この前は、明らかに私の方が優勢ではなかったか!!こんな馬鹿な事があるか!!」
――ヒュゥゥゥゥゥン
メフィストの横に渦巻く炎が浮かび上がる。
やがてそれは巨大な焔の蜥蜴に変化した。
『キシャァァァ!!』
口から炎を吐きながら叫ぶ蜥蜴。
「これならどうだ!精霊界から召喚したフレイムサラマンダーだっ!!我が名メフィストにおいて命ずる、あの女を殺せ!!」
笑いながらフレイムサラマンダーに命じると、メフィストは素早く後方に飛んで周囲に結界を施した。
『さて。そろそろ手伝いますか?』
やれやれという感じでエンジがマチュアに問いかけるが。
「ご冗談を。あんたには後でアンダーソンを抑えてもらわないとならないんだから。ここは私が行く!!」
叫びながら走り出すマチュア。
その動きに触発されたのか、フレイムサラマンダーはすうっと息を吸い込むと、口から焔の息を吐き出した!!
――ゴゥゥゥゥゥッ
逆巻く焔がマチュアを覆い尽くし、焼き尽くそうと纏わりつく。
「燃えた‥‥燃えたぞ、ひゃーはっはっはっ!!」
結界の中で高笑いするメフィスト。
だが。
「うん、まあなんだ?ボルケイドの方が熱くて強いよなぁ」
焔が消滅すると、中から無傷のマチュアが姿をあらわす。
そしてサラマンダーに走って行くと、素早く頭に正拳突きを叩き込んだ!!
――ドゴォッ
一撃でサラマンダーの身体は後方に弾き飛ばされた。
「馬鹿な!!鉄をも溶かすサラマンダーの炎だぞ。何故ダメージを受けない!!」
それには結界の中のメフィストも驚いたが、フレイムサラマンダーはすぐに体勢を立て直すと、再びマチュアに襲いかかる。
「この防具はねぇ、ボルケイドの表皮で強化された耐熱処理済みなのよ。着けていれば装着者には熱のダメージは入らないの。溶岩の中だって泳いで見せるわよ」
まあ、泳ぐのは嘘だけど。
とボソッと呟くと、再びサラマンダーに向かって走る。
今度は体勢を入れ替えてマチュアの目の前でぐるっと回ると、尻尾で力一杯マチュアを引っ叩いた。
――バシィィィン
今度はマチュアが耐えきれずに後ろに飛ばされた。
壁に激突し、ぐったりとしている。
「それ見たことか!!人間風情が精霊に勝てるはずがないのだよ!!」
メフィストは嬉しさのあまり結界から一歩外に出るが、すぐさま中に戻った。
――ビクッ
メフィストが結界から出た時、フレイムサラマンダーはメフィストの方を凝視したが、すぐに見失ったらしくまたマチュアを見る。
その動きにマチュアが分からないはずが無い。
「ハハーン。なんだ、悪魔召喚と同じじゃない」
笑いながら体を起こすと、マチュアはフレイムサラマンダーを無視して結界に向かって走る。
その後方からはフレイムサラマンダーが走ってくるが、マチュアは結界の手前で止まると素早く韻を組み込む。
「魔術破壊っ!!」
――ガシャァァァン
光り輝く拳を結界に叩き込むと、半球形状の結界がガラスが割れたかのように砕け散る。
その途端、フレイムサラマンダーはマチュアではなくメフィストをターゲットと認識したらしく、素早く飛び込むとメフィストを丸呑みした!!
――バクッ
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
サラマンダーの体内で絶叫が聞こえる。
やがてフレイムサラマンダーは満足したのか、スーッと消えていった。
「あらら。ま、まあ、制御できない魔術を使った代償という事で」
『あいつに飲み込まれた時点で本当なら焼死してますよ。これは自業自得です。さて、では行きますか?案内がいなくなったので自力で行かなければなりませんが』
エンジがそう話しながら立ち上がると、マチュアはエンジとともに謁見の間に転移した。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
転移先の謁見室では、すでに椅子に座ってアンダーソンとアーカムの二人が待っていた。
満身創痍ではないが、既に一戦闘を終えたマチュアとエンジの姿に、少々驚いているようではあるが。
「あら、その様子だとメフィストは倒して来たのね?」
「イヤイヤ。自分で召喚したフレイムサラマンダーに食べられた。制御出来ないものを召喚するなと言いたい」
笑いながらマチュアは話しているが、アンダーソンはじっとマチュアを睨みつけている。
「それで、ここでどんな話をしたら良いのかしら?」
アンダーソンとは対照的に笑っているアーカムが、マチュア達に話しかけてきたので。
「単刀直入にいうと、ラグナ・マリア帝国には手を出すな。それと、あんた達の目的は一体何か教えて欲しいのだけど」
ズバッと切り出すマチュア。
これにはアンダーソンとアーカムも面を食らった顔になる。
「なんだ。問答無用で魔法でもぶち込んでくるかと身構えていたが、意外と冷静だな」
腕を組むアンダーソンがそう話すと、横のアーカムもウンウンと頷く。
「いくら私でも、相手の主張を聞かない限りは問答無用な事はしないわよ。で、さっきの話だけど」
「荒廃したメレスではなく、より豊かな領地を我々は求めている。だから、アスタロッテがこの身体の持ち主の命令で我々を召喚した時、これは好都合と乗っ取らせてもらっただけだ」
偉そうに告げるアンダーソン。
それにはアーカムも同意しているらしい。
「そこなんだよねぇ。メレスではいざ知らず、こっちの世界ではあんた達は食事取らなくてもいいのでは?」
「馬鹿を言うな。肉体を構成しなくては精神体の我々は意志を維持できなくなる。こちらの世界の法則には逆らえぬよ。だから食事も必要だし睡眠も取らねばならぬ」
「そうなると、それらを安全供給できる基盤が必要なのよ。わかるかしら?」
二人の言い分もわかるが、だからと言って国を乗っ取っていいのかと疑問を感じる。
「私のいた国の物語には、こんな言葉があるのよ。『所詮この世は弱肉強食、弱ければ死ぬ』ってね。それに則ると、別にあんた達のことをどうこうする必要はないんだけど、国の臣民全てを魔族化するのはどうよ?」
真顔で問いかけるマチュア。
「手駒は多いほうがいいのでな。ゼオン教というのは実に都合がいい。この肉体に眠る魂はな、より臣民を豊かな土地に導く事こそが使命と考えていたらしい」
「それで、近隣諸国をまとめあげ、実り豊かなウィル大陸に向かおうとしていたのよ」
そんな話をしているが、まだ何か裏がある。
マチュアにはそれが何かは分からないが、容認できない事であるとは理解した。
「人の世は人の世に任せた方がいいとは思わないのですか?」
「強いものが弱いものを導くのは道理。さあ、もういいだろう?」
アンダーソンがゆっくりと立ち上がる。
それに合わせて、エンジも立ち上がると楯を構えた。
「もう一度だけ。ラグナ・マリアに手を出すのなら全力で潰すわよ。後、この国で何をしても私は干渉しないけど、人間の魔族化だけはやめて欲しいわ」
「い・や・よ。どうしてもと言うのなら、力づくで私達を屈服させてみなさい。それがメレスの唯一不変のルール。あなた達が私達よりも強者ならば、私達はあなたの提案を受け入れてあげるわよ」
アーカムがそう呟くと同時に、マチュアとアーカムは素早く離れて自分達の深淵の書庫を展開する。
そこからは魔術の応酬。
お互いの魔術が次々と発動すると、今度はそれを解析し『却下』で消滅させる。
力が全く均衡しているので、致命傷どころか最初の一撃すら叩き込む事が出来なかった。
「くっ‥‥先を読んで魔術を発動してくるとは‥‥」
「フン。私のデータベースを大きく上回っていたとはねぇ。でも、私とあなたの最大の違いはこれよね‥‥」
アーカムが魔術を発動すると、マチュアの知らない漆黒の矢を形成した。
「魔族の固有魔術ですか〜。それは知らないわねぇ」
すかさず『却下』ではなくピンポイントのプロテクションでその矢を結界の手前で阻止したが、数秒でプロテクションを貫通してマチュアの深淵の書庫を破壊した!!
――ガシャァァァン
その衝撃で後方に吹き飛ぶマチュア。
だが、アーカムは攻撃の手を休めない。
「まだまだよ。これはどう?」
倒れているマチュアに向かって、こんどは差し出した右手から黒い稲妻を飛ばす。
「ライトニングボルトは直線のみ。躱す事ぐらい造作もな‥‥はうぁっ!!」
――バシィィィン
直線で飛んできた稲妻を、アーカムは鞭のようにしならせてマチュアを撃つ。
以前メフィストに仕掛けた技が、丸々とマチュアに返って来たのである。
「残念ねぇ。私はあなたの出来る事を全て行える。それに魔族のスキルも使えるのよ。けど、あなたは自分の知識しかない。貴方、もう詰んでいるのよ?」
クスクスと笑うアーカム。
だが、マチュアもヨロヨロと立ち上がると、ニィィィィィッと悪い笑みを浮かべた。
「貴方、私の出来る事全てって言ったわよね。なら、どこまで出来るのか試してみましょうか!!」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
マチュアとアーカムの戦闘が始まった時。
アンダーソンとツヴァイの戦闘も開始していた。
素早く大気中から剣を形成してツヴァイに斬りかかるアンダーソンと、それを楯で受け止めて返す刀で斬りつけるツヴァイ。
――ブシュッ
浅く斬りつけた傷からは真紅の血が噴き出す。
「ほう、やるなぁ。なら今度はどうだ?」
アンダーソンの肉体の彼方此方が隆起し、皮膚が裂けて盛り上がる。
肉体の魔族化が始まったのである。
――ヒュンヒュンッ
先程とは比べ物にならないぐらい高速で斬りつけてくるが、全てツヴァイは楯で弾き飛ばす。
これにはアンダーソンも驚いているが、何よりもツヴァイ本人が驚愕していた。
「全く。あの人はここまで私を強化したのですか」
魔族化したアンダーソンの動きが全て見える。
まるで恐怖を感じないのである。
それとは対照的に、アンダーソンは焦りを感じ始めていた。
「馬鹿な。この俺の攻撃が通用しないだと!!」
――ギンッガギンッ
力強く打ち込んでツヴァイを弾き飛ばそうとするが、ツヴァイはそれも軽々と避けたのである。
「まあ、あんた本気じゃないだろう?魔族の取り憑いた人間の魔族化なら、もう一段階変わるんじゃないのか?」
ジャスクード男爵の時も、ここからグレーターデーモンに進化した。
ならばアンダーソンも、更に上に変化するのではと考えたのだが。
「次の段階に進むと、元の体に戻れなくてね。今しばらくは、人の身体の方が都合がいい。それになぁ」
――ヒュウンッ
突然ツヴァイの足元に魔法陣が完成する。
ツヴァイの動きがガッチリと拘束され、身動きが取れなくなってしまった。
「な、何だと!!」
必死に力を込めるが、全くといっていいほど力が入らない。
すると、近くの窓辺でスーッと人影が現れた。
「対ゴーレム用の魔力封じですよ。あなたの波長はアーカムに教えて貰いましたから、それは貴方を止めるための結界です」
そう説明すると、黒いローブを身に纏ったアスタロッテがブツブツと詠唱を開始した。
「御苦労だアスタロッテ。良いかな?切り札というのは最後まで取っておくものだよ」
トントンと自分の頭を叩きながら、魔法陣の中で身動きが取れなくなっていると思っているツヴァイに近づいていく。
――スーツ
アンダーソンの足元が輝くと、禍々しく紅く輝く魔剣が姿を表す。
「クッ‥‥それは何だ!!」
「俺の分身の一つ。魂砕きの魔剣だ。これでトドメを刺されると、その魂は永遠に失われる。さらばだ」
そう説明すると、アンダーソンは下卑た笑いを浮かべながら魔剣を振り上げた。
――バギィイッ
だが。
その魔剣はアンダーソンの手の中で砕け散った。
一体何が起こったのか、アンダーソンにも理解できていなかった。
「まあ、あんたの言うことは正しいよ。切り札は最後まで取っておくってな!!」
窓辺から、着物姿の人物が姿を現す。
その手に不動行光を握りしめ、刃の部分からは更に光の刀身が伸びていた。
「貴様、何者だ!!」
「通りすがりのボディビルダーだ。しかし、魔族二人相手とは中々楽しい事しているなぁ」
笑いながらストームが姿を現した。
「ス、ストーム殿。なぜここに?」
「街の中を徘徊していたらマチュアのとこのジョセフィーヌとばったり会ってな。酒場で話を聞かせてもらったので、今日ここにやってきた‥‥ここからは俺が相手だが良いかな?」
――ガチャツ
刀身がさらに輝きを増す。
「いいだろう。ストームと言うと、ウィル大陸の剣聖ストームだな、相手にとって不足なしだ!!」
再生した魔剣を構えなおして、アンダーソンがストームと向き合う。
「ほう。ここまで強い相手は初めてだな。あんた名前は?」
ストームの額から汗が流れる。
相対しているだけで気力が削られていく。
「メレス七使徒のゼフォンだ。ストームとやら、貴殿の名前は我が魂に刻み込んでおこう!!」
――ダッ!!
とゼフォンとストームが同時に飛び出すと、すれ違いざまに一撃を叩き込む。
ストームの頬がざっくりと切られ、ゼフォンも右上腕に深々と傷を負う。
「その武器、ただの武器ではあるまい。精神体まで傷つけられるとは思わなかったぞ」
表情が苦痛に歪み、傷口を庇うように体勢を変えるゼフォン。
「これか?ノッブから貰った武器だ。あんたなら知っているだろう?第六天魔王波旬の名前ぐらいは」
「波旬だと!!ならばその武器は魔族殺しの短刀か」
「そんな名前は知らん。不動行光がこの武器の名前だ」
「やはりか。いいだろう、こちらとしても全力で戦える相手が出来ただけだからな」
――ガチャッ
再び構え直すと、ゆっくりと間合いを取りながらタイミングを計る二人。
次の一撃が勝敗を決すると、言葉にせずとも二人は理解した。
ゼフォンの魔剣はストームの頬を掠めただけだが、それでも体力がごっそりと奪われている。
そして不動行光で斬りつけられた傷は二度と塞がることなく、ゼフォンの利き腕の力を奪っていた。
「まさかこんな北の地で、お前のような強者と対峙出来るとは思わなかったよ。礼を言う」
「それは俺もだ。メレスではロクな剣士はいなかったからな……では!!」
「応!!」
――ズバァァァァァッ
瞬時に間合いを詰めるストームとゼフォン。
上段から斬り落としてくるゼフォンに対して、ストームは下段から斬りあげる形を取った。
何方か斬られてもおかしくない速度と間合いを制したのは。
――ドサァッ
ストームの右腕が肘から斬り落とされる。
大量の血が吹き出し、ストームは膝から落ちつつ右脇に手を伸ばし止血する。
「相討ちか。いい腕だな」
「抜かせ。今日の所はそっちに勝ちを譲ってやる」
ゼフォンは両腕が上腕部で切断されている。
ストームと同じく大量の血が床に溢れ、意識が朦朧としている。
――ダッ!!
すると、ガクッと膝をついて崩れるゼフォンの元にアスタロッテが飛び出してくる。
「ゼフォン様、いま傷を癒します!!」
素早く韻を組み込むと、両腕の傷口にかざす。
すると、それまでの出血が嘘のように止まった。
「もういい‥‥私は負けたのだ。敗者は首を差し出す、それがメレスのルールであろう」
ゼフォンの言葉に頭をブンブンと振りながら、今度は切断された腕を拾い上げると、一つずつ丁寧に接合し始めた。
「ストーム殿、助かりました」
ツヴァイもようやく結界から脱出できたのか、ヨロヨロとストームの元に歩いていく。
「よう。あんな結界如きで動けなくなるとはな。ご自慢の結界無効化はどうした?」
笑いながら自分の腕を接合するストーム。
「私の魔力にダイレクトに干渉する結界なんて無効化出来る筈がありませんよ。どうやってそれを知る事が出来たのか不思議でなりません」
頭を左右に振りながら、ツヴァイはマチュア達の方を振り向いた。
そこでも、マチュアとアーカムの戦いはデットヒートしていたのである。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。






