9.最後の課題はゴリラを倒すこと
「さ、最初の敵がこんなにデカくてやばそうってのはどうなんだよ!」
そう、本当にデカいのだ。名前の通り見た目はゴリラのだが、スケールが違いすぎる。全長は4メートルは優に超えていて、カンフーはよく分からないが恐らくカンフーらしき構えをとっている。……いや、笑うところじゃないんだろうけど、ゴリラがこーゆー構えとかすることないからなんだか不思議だな。
「ユキト、俺は戦闘とかしたことないから分からんが、武器的に前衛だ!だから、ユキトは後衛をたのむ!」
「わ、分かりました!で、でも、た、タツキくんは大丈夫なんですか!?」
いや、大丈夫なんかじゃないよ!今でも足の震えが止まらないよ!でもな、男にはやらなきゃいけない時があるってあの時やってたゲームの主人公が言ってたんだ!
「あぁ、やってやるよ!!!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
目の前のゴリラに向かって走りながら剣を横に構えた。そして、ゴリラの足に向かってその剣を振り抜いた。
シュッ
空ぶった。見事に空ぶった。
全力で振り抜いた剣は空を切りそのままの勢いで体勢が崩れる。
「……なん、だと!?」
このままだとまずい!……って、あれ?
目掛けていたところにはもう既にゴリラの姿はなく、すでに後退していたゴリラがこっちを見ている。
「あ、あれ?」
向こうからは仕掛けてこないのか?だとしたらどんどんこっちから仕掛けてやるぜ!
そのまま体勢を直してまたゴリラに向かって走り出す。
「今度は絶対に当ててやるぜ!!」
今度は目の前の倒れた木を踏み台にして跳びながら距離を縮める。
ん?俺ってこんなに身体能力高いのか。いや、ボックスのおかげだろうな。
そして、空中で剣を大きく振りかぶるとゴリラ目掛けて振り下ろした。
「チッ、また外したか?」
ゴリラは後退していたが、胸のあたりに微かに切られたあとがあった。ギリギリであたったらしい。
「しっゃああああ!!!今度は当たったぜ!!」
……って、あれ?なんか、さっきとゴリラの様子が違う気がするな。
「タツキくん!!後ろです!!」
「え?」
ドガッ
少し目を離した隙に後ろへ回り込まれ、横腹を殴打された。
そのまま吹き飛んで少し先の大木に体を打ち付ける。
「ぐはっ、」
く、くそっ。今ので死なないあたり、打たれ強さも強化されまくってるんだが、めちゃくちゃ痛い。肋骨二、三本いったかもな。
というか、向こうからも攻撃してくるのか。
「大丈夫ですか!タツキくん!!」
ユキトはゴリラから目を離さない様にしてタツキに呼びかける。
「あ、あぁ、俺は大丈夫……だと思う」
「タツキくんは一回そこで休んでてください!」
そう言い放ち、いつものおどおどした感じはあまりなく、まっすぐゴリラを見て弓をひく。
「氷の矢!!!」
その声とともに、複数の矢がゴリラ目掛けて飛んでいき、地面につくとそこが凍っていった。そして、上手い具合にゴリラの足にあたり、足止めすることができた。
「大丈夫ですか!タツキくん!」
そう言いながらこっちへ駆け寄ってくる。いつものおどおどした感じと違って今は全然違うな。
「……すげーじゃねぇかユキト!ほんっとに羨ましいやつだぜ」
「い、いや、そんなことないですよ、それより本当に大丈夫なんですか?」
「あぁ、ユキトが時間を稼いでくれたおかげで傷が治ってきたみたいだ」
いやぁ全く便利だな、ボックスの能力は!待ってれば傷が治ってくるなんて!もう痛くもなんともないぜ!
「よぉし、ユキトばかりにいい所見せられちゃあだめだな!今の内にあいつをぶっ倒してやる!!」
立ち上がると、ゴリラ目掛けて走り出した。今度はゴリラの後ろへ回り込み、身動きのとれないゴリラの横っ腹目掛けて剣を振り抜いた。
「お返しだ!このやろぉぉぉぉぉ!!!!」
シュパッ!
横に振り切った剣がゴリラの横っ腹を切り裂くと、血しぶきを出してゴリラは倒れ込んだ。倒れ込んだゴリラは数秒で砂になって消えた。
「はぁ、はぁ、や、やったぜー!!!!ついにやってやったぜ!!!」
「た、タツキくん!やりましたね!」
ユキトもこっちへ走ってきた。
「二人とも、いい連携だったね。最初はタツキが突っ込んで行っただけだったけど、ユキトのいい所を生かした攻撃で足止めをしたのはびっくりしたよ」
戦い終わった俺とユキトの元へジーナが近づいてきた。
「タツキも、最後の一撃、よかったよ」
「いや、でも、俺の一撃はユキトがいなかったら絶対に当たらなかった。ありがとな!ユキト」
「い、いや、そ、そんなことないですよ」
戦い終わったらまたおどおどモードに戻るんか!まぁ、いいんだけどね。
「それにしても、二人ともすごいよ。あたしはこのカンフーゴリラを倒すのにもっと時間がかかると思ってたから、二人は成長が早くていいね」
褒められるとなんか、照れるな。……あれ?今まで気づかなかったが、俺の剣が消えてる。ユキトは武器残ってるみたいだな。じゃあなんで俺のだけ消えるんだ?まぁ、そんなのはいいか。
「それと二人とも。よく聞いてね」
「なんだ?」
「は、はい」
ジーナは少し頬を掻きながら話始めた。
「実は、この空間、調整してなくて、現世でもここでも明日は学校みたいだから、急いで帰らなきゃいけないんだ」
「は?」
「と、ということは、い、今からもどるんですか?」
「うん。だから、腕貸して」
そう言うとジーナが空間に歪みをつくる。
「そ、そこに入るのか?」
「そうだよ?」
「わかった」
タツキとユキトは腕を差し出す。
次はちゃんと着地しないと、鏡の位置的にあの勢いで出てきたら階段に転げ落ちることになる。
「いくよ〜」
話し方が戻ってるな。と思いつつも来た時と同じように投げられる。
ドガンッ!
危機一髪で階段の手前に落ちるも地面にうつ伏せに落ちる。そして、あとからユキトが出てくると、自分の上に落ちてきた。
「グアッ!……い、痛てぇ。ゆ、ユキト!早く降りろ!」
「ご、ごごごごめんなさい!!」
そんな会話をしていると久しぶりに聞く声が耳に入った。
「タツキ、ユキト、修行お疲れ様っ!」
「フェイリー、今帰ったのか。おかえり、と、ただいま!」
「い、今帰りました。お、お帰りなさいです、フェイリーさん」
その後すぐにフェイリーの面持ちが真剣に変わった。
「それでね、タツキ、ユキト、大事な話があるんだ」
「なんだ?」
「な、なんですか?」
フェイリーが二人の目の前に来て言った。
「敵が動きだしたみたいなんだ。」
調子がよかったので、一週間経っていませんが更新しました。
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