12.今日は出だしからいろいろありすぎたな
ふと聞こえた声に振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
「今度は誰だ?」
敵が来て、立ち去ったと思ったら今度は女の子か。この子まで敵だったら俺はもう……
「あっ!リリー!こんなところで何やってるの?」
「何やってるのじゃないよ〜!敵の情報聞いてゾアを飛び出して行ったと思ったら、こんな大切なものを忘れていくなんて!」
「あのー、フェイリーの知り合いなの?」
二人の会話を遮って言うとタツキの顔を見てその少女は言った。
「私はフェイリーちゃんとゾアでメイドをやっているリリーって言います」
なぜ最初に気づかなかったのか分からないが、メイド服を着ている。薄い緑の髪を短くまとめていて、身長はフェイリーと変わらないが、なぜか少しフェイリーより大人にみえる。
「あ、そうなのか。知ってると思うが、上風竜鬼だ。よろしくな!」
「やっぱり、あなたがそうなんですねっ!今ゾアではあなたの話題でもちきりなんですよっ!」
そ、そうなのか。なんか、英雄になったみたいでなんか嬉しいな。
「それで、フェイリーは何を忘れたんだ?」
「あぁ〜そうだった!フェイリーちゃん、これないと寝られないでしょ?」
と言ってクマのぬいぐるみを出てきた。
「ちょっ、なんでそんなの見せるの!っていうか、なんでボクがそのぬいぐるみないと寝られないって知ってるの!?」
フェイリーはリリーからぬいぐるみを取ると、顔を真っ赤にしながら言った。
フェイリーって、ぬいぐるみないと寝れなかったのか。
「だって、夜寝る時必ずそのクマちゃん抱っこして寝てたし、メイドのみんな知ってたよ〜?」
フェイリーとリリーがそんな会話をしていると、ユキトとジーナが起きて来た。
「あれぇ〜?なんでリリーがここにいるのぉ〜?」
「た、タツキくん!ぶ、無事だったんですね、よ、よかったです」
「ユキト、ジーナ、もう平気なのか?俺はフェイリーのおかげでもう平気だ」
二人ともいつもどおりで安心する。
「あ、ジーナちゃん!久しぶりだね〜!ちょっと、フェイリーちゃんに届け物があって」
「あ〜、それでここにいるんだねぇ〜」
「そうだよ!それじゃあ私はもうそろそろゾアに戻らなきゃいけないから」
するとリリーが空間に歪みを作った。
いや、メイドだとみんなそれできんのか!便利だな。
「もう帰っちゃうの?」
「うん、向こうでまだ仕事が残ってるからね」
「そっか〜、じゃあまた今度〜」
「うん!ジーナちゃんもフェイリーちゃんも元気でね!あと、二人も頑張ってね!」
頑張ってねとこっちを見ながら笑いかけている。
「おう!ありがとな!」
「は、はい!」
「それじゃあまたね〜」
そう言うと歪みの中に入っていった。
「いろいろあったけど、みんな無事で良かった!」
「そうだな!」
「それじゃあ、元の空間に戻ろっか!」
フェイリーが話終えるとジーナがいくよ〜といって今いる空間全体を歪ませて元の空間に戻ってきた。
こっちの家は無事でよかったな。って、大事なこと忘れてるような……
「あっ、学校!!!」
「そうだった!」
そして時間を見ると時刻は8時25分。つまり残り五分しかない。
「ジーナ!空間魔法で俺たちを学校に連れて行ってくれ!」
「うーん、しょうがないな〜」
ジーナがまた空間に歪みを作るとフェイリーとタツキとユキトを中にぽんぽんと入れていった。
これに関しては何回やっても慣れないな。ユキトはずっと叫んでるし、フェイリーは涙目になってしゃがみこんでるし……って、フェイリーは空間移動できないのか???まぁ、なんでもいいか今はダッシュだ!
「フェイリー、早く立って走れ!ユキトももう叫ばなくていいから早く走れ!」
正門の前に放り出された3人は、タツキの声と同時に走りはじめた。
「いや〜、間に合ったな」
「そ、そうですね」
「はぁ〜、ボクは疲れたよ」
こうして学校には無事到着することが出来た。
そして放課後。
「はぁ〜、今日は出だしからいろいろありすぎて疲れたな」
「そ、そうですね。」
「もう帰ろ〜よ〜、ボク疲れたよ〜」
こういう時にジーナが家まで送ってくれたりしたらいいんだけどな〜。
って、こういう時って来ないんだよな……はぁ。
「帰るか!」
こうして1日が終わった。
明日からは朝から気をつけるか。
今回も短くなってしまったのですが、見てくれた皆様本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!