11.自分の知らない能力
足元は嫌になるくらいの鉄の匂いと、辺り一面に広がった赤黒い液体とともにぐちゃぐちゃになった肉の塊が今の状況を嫌でも知らせてくる。
なんでこうなった?どうしよう、このまま死ぬのか?痛い、熱い、苦しい、気が遠くなっていく。……やばい、このままだと気を失っちまう。どうする?どうすればいい?このまま楽になりたい。でもそうしたらそのあとはどうなる?
すさまじい勢いで自問自答をしている間に割り込むように声が聞こえる。
「タツキ!もう少し頑張れば、ほんの少し時間を稼げれば、ボクの魔法で治せるから。それまで頑張って!」
泣きながら呼びかけてくる声を聞いて、決心する。
……俺は、絶対に、
「こんなところでくたばってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
なんでもいい。どんな武器でもいい。今の俺に、いや……この状況を打開できる武器を。
「英雄伝!!!」
なんでもいい、どんな武器でもいい。頼む!この俺に力を!!!!!
「テンポウピボッソ!!!!!!」
それを唱えた瞬間空中に浮いてる敵に向かって数千本の槍が空から降り注いだ。
空中の敵はそれを炎を周囲に纏って防いでいる。
「な、なんですかこれは。ぐっ、このままでは、流石にこのワタシでも防ぎきれませんねぇ。あぁぁぁぁぁぁ!!!何故あなたは、ワタシの邪魔をするのです!」
だめだ、この状況を打開できるぐらいの武器を出せたってのに。もう、意識が……
「タツキ!タツキ!起きて!まだ死んじゃいやだよ!」
さっきと同じ泣きながら呼びかけてくる声が聞こえる。
目を開けると眩しい光とともに泣きながら俺の体に緑の光をまとった両手を当てているフェイリーがいた。治療してくれてるのか。
「タツキ!目が覚めたんだね!よかった、ほんとに良かった」
泣きながらフェイリーが抱き着いてくる。横を見ると、ユキトとジーナが転がっていた。
「そうだ!あいつは?ジーナとユキトはどうしたんだ!?」
「落ち着いてタツキ!あの敵はもういないよ。タツキがあの槍を放ったあと、そのおかげで隙ができてユキトとジーナが追撃を仕掛けに行ったんだけど、あの敵が周りに炎を放出しながら爆発して。二人ともそれに巻き込まれて。ボクは、ボクは何も出来なくて。」
まだ泣きながら話をしている。
「いや、フェイリー!落ち着けって!俺の事言えないぞ!それで、二人は大丈夫なのか?」
「うん。ボクの治癒魔法で直したから。今は寝てるだけだよ。」
「そうか、それなら良かった。」
フェイリーは俺と二人のことを1人で……
「ごめんな、フェイリー。俺が弱かったばかりに。」
「違うよ!タツキがいなかったらみんな死んでたんだよ?最初の攻撃もタツキが3人分の障壁を作ってくれたから死なずにすんだんだよ?」
「障壁?俺はそんなの作った覚えはないんだが。」
あのときは気づいたら瓦礫に足が埋もれてたし、何かする余裕はなかったはず。俺はどうやったんだ?
「そうだ、足は!?……治ってる。」
「ボクもギリギリだったんだよ。足はぐちゃぐちゃで出血もひどくて、それに、ものすごい高熱を出していたから。いくらボクでも生き返らせることは出来ないからね。」
そうだったのか、でも、怪我はあるけど、全員無事でよかった。
「それで、さ、俺は別にこのままでいいんだけど、」
「え?……あ、そう、だね。」
俺の体に抱きついていた体は瞬時に離れた。
少し顔が赤くなっているのが見えたが、さっきまでずっと泣いていたからなのかと思いつつ、今自分が生きているという実感と、全員無事ということを確認した。
「そんでさ、家壊れてるんだけど、これ直せるのか?それと、周りの住民は大丈夫なのか?」
「その辺はなんとかなるから大丈夫だよ!それに、ジーナが魔法で作った世界にギリギリ移動できたから、民間人は大丈夫だよ!」
いや、家ごと移動とかありなんだな。まぁ、民間人が無事ならいいけど。
だけど、今回の武器と言い、その前の障壁と言い、俺知らないことばっかりだな。
そんなことを話していると聞きなれない声が聞こえた。
「あの、ちょっといいですか?」
少し遅れましたが、来週はちゃんと間に合わせます!
これからもよろしくお願いします。