10.日常と絶望は紙一重
「敵?」
あぁ、そうだった、修行のことで頭がいっぱいだったせいで忘れていたが、真の目的はそこだった。
「そう、敵がこの辺りまで迫っているという情報が入ったんだ。まぁ、敵がきたとは言っても大人数ではないから対処のしようはあるんだけどね」
「敵って、俺のボックスを狙ってる奴らってことだよな……対処って、どうすんだ?」
「どうするって?戦うんだよ」
「おうそうか……っておい!修行終わったばっかりなんだぞ?それに、どんな敵かも分からないのにどう戦うって言うんだよ!!」
するとジーナが話に割り込むように話始めた。
「大丈夫、タツキもユキトも修行をしてるところを見る限り、戦闘のセンスはあるから。それに、戦うのは二人だけじゃなくてあたし達も一緒だから」
「え!?フェイリーとジーナって戦えるのか?」
「もー!馬鹿にしてるの?ボクはともかくジーナは、ゾアのメイドの中では最強ランクの戦闘力を持ってるんだよ!」
え!?ジーナってそんなに強いのか。見てる限りだとそんな風には見えないんだけどな。
「で、フェイリーは自分はともかくとか言ってるけど、本当に戦えるのか?」
「ボ、ボクは戦うのは専門じゃないけど、多少なら、大丈夫……たぶん!」
いや、最後のなに?多分とか一番怖いんだけど!!
「じゃあ、何専門なんだ?」
「ボクは基本的に回復専門だけど、一応弓使いのスキルを持ってるから、戦えるよ……たぶん!」
いやその多分ってのやばそうで怖いんだが。まぁ、フェイリーは回復専門ってことで、死にはしなそうだな。にしても、ジーナがそんなに強いとは思ってもみなかったな。
「フェイリーは一応弓使いって言ってたけど、ジーナは何の武器を使うんだ?」
一応って何!!ねー、一応って何?というフェイリーの言葉はほっといてジーナの話に耳を傾ける。
「あたしはダガー使いのスキルだよぉ〜。それと、風の使いのスキルを持ってるよぉ〜」
「風のスキルか……」
なんか、風とダガーっていう組み合わせ、聞くだけでだいぶ強そうだな。フェイリーは回復と弓で、ジーナは風とダガー、ユキトは氷と弓、俺は……ん??
「いやまてまて!!」
「どうしたのタツキ?」
声大きすぎたな、と自分で思うくらいの大声だったせいか一斉にこっちに視線が集まる。
「いや、俺以外みんなスキル持ってるけど、俺はなんのスキルなんだ?結局俺は本出せて、その本から剣出せるだけだけど、それだけなのか?」
「いや、ボクにはそのボックスが特別だということ以外何も聞いてないから、わからないよ」
「そ、そうか。自分で見つけるしかないってわけか」
もしかしたらそんなものないかもしれない。でも、信じて見つけるしかないな。
「あ、そうだ、そんなことよりも。これからの作戦を立てないと!」
するとジーナが提案があると言って話し始めた。
「まずはタツキ、フェイリー、ユキトはいつも通り生活してていいと思うよ」
「え!?それじゃあなんにも作戦になってないじゃんかよ!」
最後まで聞いてね、と言われ一度黙る。
「いつも通り生活していれば、敵はいつか襲って来る。そこで、あたしの作った世界にみんなが逃げ込む。そうすると敵は必然的に追い掛けてくるでしょ?」
「まぁ、そうだな、確かにその作戦はいいかも知れない」
「うん!いいねジーナ!そこで戦えばこの世界の住人には被害もなくなるからね!」
ん?思ったけど、ジーナはどうやって俺たちについてくるんだ?もしかして学校に入るとかじゃないだろうな。
「それで、ジーナはどうやってボク達についてくるの?」
ベストタイミング!いい質問したぜ、フェイリー!
「あたし?あたしは空間移動を使えるから、それでついて行くよ」
はぁ、よかった。学校行くとか言ったらどうしようかと思ったぜ。
「で、でも、僕たち、戦うには、ま、まだ、経験不足じゃないんでしょうか?」
「さっきも言った通り、タツキとユキトは充分戦闘のセンスがある。だから大丈夫」
「それに、ボクが聞いた情報では、ボックスの反応は弱かったから来たとしても下っ端だと思うよ?」
下っ端か……ってだから、そういうことは最初に言えよ!!って、いう気ももうないけどさ。
「まぁ、作戦はこんな感じでいいかな」
「いやいや、まてって。普通はこのあと敵の情報とかから相手の攻略法とか考えるだろ?」
「敵の情報?そんなの、近くにいるかいないかしか分からないよ?」
あぁ、そうか、期待した俺が馬鹿だったか。そうだよな、まぁ、分かりきっていたっちゃそうなんだけどさ。はぁ、なんか、今日は疲れたな。
「って、時間見たらもう0時じゃねーか」
「だってタツキが文句言うからー」
「って、俺だけのせいかよ!」
「あ!ユキト、大丈夫なのか?もう0時だけど、親とか心配するんじゃ」
「あ、あぁ、親は、えっと、このパラレルではいないみたいなので、ぼ、僕一人暮らしです」
……そうか、ユキトも俺と一緒で1回死んでるのか。なんで死んだかは聞いたことなかったな。まぁ、今は、いいか。
「あー、じゃあ良かったらユキト家泊まらないか?その、1人ってのも……な?」
「い、いいんですか?た、タツキくんの邪魔になっちゃいますよ」
いや、できればいて欲しいんだよな。男女比的にもそれで丁度いいし。ん?邪魔ってなんだ?何を思って邪魔って思ったんだ?まぁ、そんなことはどうでもいいか。
「ユキト、敵がいる以上ボクも家に泊まることに賛成だよ。それに、部屋も沢山あるから」
「そ、それじゃあ、お、お言葉に、あ、甘えて。」
「よしっ、これで決まりだな!じゃあ、明日に備えてもう寝るか!」
「そうだね、ジーナももう寝よ?……って、あれ?」
「あれ?ジーナどこ行った?」
ここみたいです、という声を聞いて1階まで降りてソファをみるとそこにジーナが寝ていた。
「むにゃむにゃ、もぉ〜、おなかいっぱいだよぉ〜」
「いつの間に下降りてたんだよ」
「まぁ、眠かったんだよ、ユキトと、タツキもお風呂入ったらすぐに寝た方がいいよ?」
「そうだな」
「は、はい」
そう言って、全員各自寝る支度をして、1日が終わった。
そして、朝。
「タツキ〜!もう朝だよ!」
う、うぅ、フェイリーの声を聞いて起きると時間はいつも通り5時……って!毎朝早すぎだろ!ん?ユキトももう起きてるのか。
「じゃあ、いつも通りジーナも遅起きで」
と、続きの言葉を発するよりも前に、普段はこの時間に聞くことのない声を聞いて遮られる。
「みんな、ふせて!!」
その声からはいつもの落ち着きやだらけた要素を全て抜き去ったような叫びだった。
その言葉を聞いたあと、体に響くような轟音とともに家が破壊された。目の前の景色は燃え盛る炎と瓦礫の山へと変わった。
「な、なんだ!?」
隣にはユキトとフェイリーが目の前にはジーナが武器を構えて立っていた。ジーナ、ユキト、フェイリーが武器を構えている先には道化師のような格好をした、骨と皮だけの様な体型の男が片手に炎、片手にステッキを持ちながら空中に浮いている。
その道化師のような男が片手の炎を消してその手で頭を抑えながら話始めた。
「うーん、見事に命中したと思ったのですが。対象は全員……ああああああぁぁぁ。なぜ、生きてるのですか?」
……っは!お、俺何やってるんだ?早く立ってみんなと戦わなきゃ。って、あれ?立て、ない。
そして、違和感を覚える自分の足をみると、そこにあるのは瓦礫でぐちゃぐちゃになった自分の足だった。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
なるべく週一以上と言っていましたが、二日に1回更新しているという……長くは続かないと思いますが、週一以上は更新するので、よろしくお願いします。