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番外 木島ユナ対Windows10

今忙しいからちょっとだけ待つんじゃよ。

 東京にある高級マンションの一室、白黒の調度品がシックな部屋でパソコンを操作する少女がいた。

 パソコンは二つのモニターを持つデスクトップPC。それのキーボードを叩き、黒い画面に白い文字を刻んでいく。少女は短い茶髪で前髪をヘアバンドで纏め、顔にパックを貼り付けながら鬼の形相でキーを打つ。中学の指定である芋ジャーの袖を捲り、戦闘体勢だ。

 この少女、木島ユナはアイドルグループ『サイバーガールズ』のメンバーである。ゲーマーのアイドルを謳い文句とするサイバーガールズだが、そのメンバーの大半はスマホゲーしかやったことのない様な人間。その中でもプログラミング技術を持つユナはゲーマーからの評価も高く、現在行われているサイバーガールズ総選挙でも注目株の一人だ。

「ぐぬぬぬ……マイクロソフトめ、見てなさい!」

 彼女が作っているのは、マイクロソフトのWindows10のアップデートを止めるソフト。

 最近、Windows10のアップデート強制が酷いと話題だ。消しても消してもゾンビが如く復活し、遂にメッセージの選択肢が『今すぐ』か『今夜アップデート』になる始末。

 とうとう拒否する選択ができなくなったのでバツボタンでウインドウ消せば悪さもすまいと思ったユーザーの油断を突き、ちゃんとメッセージボックスを次に進めてしっかり拒否しないとアップデートし始めるという『黙ってたらイエスって言ってると思うよ!』という法の暗黒時代もビックリな糞仕様に。

 ユナのパソコンは自作であり、OSも一番使い易いWindowsXPをサポート終了後も自力で不具合修正しながら使っていた。さらにPC本体もXP向けに調整してある。

 それが寝落ちしている間にウッカリ10にされてしまったのだ。急いで元に戻したが自力で施した不具合修正は水の泡。これを恐れて自動更新を切っていたのに、Windows10は易々と突破してきた。

「強制でOS変えたらどうなるかわかってないね。10だと動かないソフトもあるし業務中に更新始まったらどうすんの!」

 この間もアフリカのNPOが武装している密猟組織と戦っている最中にWindowsがアップデートし始めて危険な目に遭ったという話があった。

 ユナは自動で更新されたくない人のために、それを防ぐソフトを開発した。だが、Windowsを開発したマイクロソフトはそれを突破しようと必死だ。OS開発者権限でソフト消したり配布サイトをGoogle八分にしたりと激戦が続いている。

 幸いにして法的手段にマイクロソフトが出ないのは、この力尽くな更新がただでさえ批判されているからだろう。

「Google八分にされても問題無いし! ニコニコのブロマガとかツイッターにURL貼るし!」

 アイドル活動そっちのけなユナだが、事務所は黙認している。なにせ、世間のコンピュータ音痴にとってユナは救世主。サイバーガールズで高いプログラミング能力を有し、かつパソコンが苦手な人にもわかりやすく教えてくれる彼女はメンバーの中でも一般ウケがいい。

「第一みんなあんたらみたいなパソオタじゃないっての! 日本で市販されてるパソコンは初期装備のOS用に作られてるからただでさえアップデートが嵩むと重くなるのに! 最悪WindowsXPのパソコンからアップデートするとパソコン自体が動かなくなるっての! そもそもゲームによっては動かないものもあるから!」

 パソオタの皆さんはアップデートしない人々を『問題も無いOSなのに何が不満なんだ』と情弱扱いするが、ユナはそうしたオタクの悪い癖が無い。パソコンが苦手な人は急に操作性が変わると困惑するし、勝手にアップデートされると不安に思う。サイバーガールズの他のメンバーがパソコンを全く触れないのでそれはよくわかる。

 どんなOSでも公開初期は不具合が多いので『一番使い易いのはサポート終了直前のもの』と言われることもある。というかOSの質は問題ではなく、無理矢理更新しようとする姿勢が問題であることもユナはわかっている。

 パソオタとしてそうでない人々にもパソコンを楽しんでもらうために、ユナは今日もプログラミングをする。

「よし、これで絶滅タイムだ」

 とりあえず、今のところ仕組まれた更新プログラミングを拒絶出来るようにした。Windows10対策ソフトは定期的に新しい手口に対応させる必要がある。それを配布ページにアップロードして、SNSで宣伝して仕事終了だ。

 ユナはベッドに飛び込み、休憩する。さすがにOS本家本元との戦いは骨が折れる。ユナが学校とアイドルの片手間にやっていることを、メーカーは仕事でたっぷり時間を使いながらやっているのだから分が悪い。

「あー、何処かにだいたいの事は出来るけどパソコンに疎くて私に頼らないといけない、素敵な人はいないかなぁ……」

 こんな彼女も今や恋に恋するお年頃。理想の男性を夢見ながら、添い寝CDをイヤホンで掛けて眠る。MP3プレイヤーの類ではなく、ポータブルのCDプレイヤーを使うのがこだわりだ。


 彼女達、サイバーガールズの物語はもう少し先の話だ。


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