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番外 直江遊人&松永順誕生日祭

 ※直江遊人誕生祭&松永順誕生祭遅刻組

 前作から読んでいる人ならいろいろ知ってるとは思うけどね。

「チョコ、こんなに貰ってもなぁ……」

 この日はバレンタインデー。直江遊人は大量にもらったチョコを抱えて下校していた。毎年、バレンタインには結構な量のチョコを貰う遊人。こうなれば本気でホワイトデーのお返しを考えねばならない。

 両手の紙袋に満載されたチョコは大半が手作りのもの。料理人でもある遊人はそういうもの蔑ろには出来ない。手作りなら自分で食べるのが筋で、間違っても姉に押し付けてはいけないと思っていた。なんとも厄介な料理人の業というやつだ。

 その様子を遠巻きに見ていた人物がいた。ショートヘアにメガネの中学生であった。制服のセーラー服を野暮ったいロングスカートの丈さえ詰めずに着こなすその女の子は、物陰に隠れて機会を伺っていた。

(無茶しやがって……)

 中学生、真田理架はチョコを渡したと思われる女の子達の冥福を祈った。直江遊人は料理好きである。手作りチョコなど渡された日には、彼の料理魂に火を付けて、とても手作りには見えないクッキーでお返しという名のお礼参りをされること請け合いだ。

 本人に悪気は無いのだが、多少料理に自信があればあるほど危険といえる。いくら男女共同参画社会を訴えても、肝心の女性側に未だ『料理は女の仕事』という意識があり、男である遊人に超えられて本人にその気は無いのだがメンタルをパッキリやられることも少なく無い。

 その点、初めから敵わないことを理解しつつ手作りをしている理架はダメージが無い。

「誰だ?」

 遊人は進行方向に気配を感じた。理架も遊人から警戒心を感じて出られなかった。


 数ヶ月後 長篠高校


「そんなことがあってな」

 遊人はバレンタインのことを教室で足柄霞に話していた。なぜバレンタインの話になったたというと、霞が『0214』という数字を見せて、遊人に心当たりを聞いたからなのだ。

「そうか、遊人の誕生日だったのか」

「ん? そういえばなんでその数字が気になったんだ?」

 霞は納得した風であったが、遊人の方は何故彼女がその数字を持ち出したのか分からなかった。ピンポイントで自分の誕生日、それもなんだかパスワードチックなアレンジで出されたのでつい気になったのだ。

「いや、私の物だという端末のパスワードが一部これだったんだ」

 遊人の予想通り、それはパスワードの番号であった。

「ああ、やっぱり頭に0があると思ったらパスワードか。じゃあ、霞さんの誕生日かもな」

「パスワードと誕生日にどんな関係が?」

 霞はパスワードと誕生日の間にある関係性に、ピンと来ていなかった。遊人は彼女の記憶喪失がエピソード記憶のみならず、意味記憶にまで及んでいる可能性を考えた。

「パスワードって大抵、四文字からなんだ。すると、誕生日入れるとちょうどいいし忘れないんだ。八文字だったら西暦加えればいいし。まぁ今後それはやめとけ。不正アクセスを招く。そうだな、他には出生体重とかがパスワードだとメジャーかな」

「なるほど、これが……」

 霞は何かを言いかけて溜めた。遊人には、その理由がわからなかった。

(これは遊人の誕生日。そうか、英雄はきっと……)

 彼女の心は、未だ誰にもわからない。


 三月三日 東京都某大学


「進化とは、段階を踏んで起きるものである」

 大学の講義室で語るのは、中学生くらいにしか見えない少年であった。この授業は『人類進化論』、少年はホワイトボードを前にして、教科書を持たずに語る。

「なぜキリンの首は長いか。それは、高い場所にある餌を食べる時、首の長い個体が有利だからだ。だが首というのは伸ばそうと思って伸びるものではない」

 後期集中講義という、長期休みに授業を行う方式のためか人は少ない。だが、彼こそは知る人ぞ知る人類進化学の権威である。どう見ても、それなりの美少年ではあるが、二十歳にも満たないだろう少年にそんな功績がある様には見えないのだが。

「キリンの首の長さ、それは最初から動物園のアイドルを張れるほどのものではなかった。人間の手足が長いくらいの差でしかなかったのだよ。だが、その僅かな差が食物に有利不利を生んだ。動物というのは素直だ、自分の遺伝子を残すためには鮭の様に、他人の卵に自身の精子をかける様な恥も外聞も無い行為に走ることもある。つまり、恥と外聞こそが人間の本質とも言えるね」

 この時期に出てくる学生というのは、総じて真面目である。単位を得たいだけならば長期休暇に学校へ来ずとも、もっと楽な授業がある。そんな学生だからこそ、少年も朗々と話せる。

「人間が他の動物に無い特徴として、その知性がある。単に自身の生存ではなく、時に生物として子孫を残す本能さえ覆して……」

 少年が話を逸らすと、ブザーの様な音がした。それで少年は我に返り、話を戻す。

「話が逸れたね。つまりキリンは、自身の生存のため首が長い個体と子孫を残すことを求めた。そのうち、首が長い個体同士で子孫を残す様になった。遺伝子の中に首を長くする因子があり、そうすることでその因子が確実に受け継がれる様になった。そればかりか、同じ因子通しが交わり続けることで、本能がその性質こそ生存と繁栄に必須だと判断し、その因子を増幅させる。これが近親相姦を禁じる上で語られる『血が濃くなる』というやつだ。人間において多くの血を取り入れることが推奨されるのは、こうした因子の成長によって初めは少し突出した程度だった要素が生活の阻害要因にしかならなくなることを防ぐため、そして何より様々な病気に対抗するためだ。例えば今、とんでもない学歴社会だ。これは愚かとしか言いようがない。学歴を重視するあまり、『勉強が苦手だ』と思う原因である遺伝子が排除されている。ひょっとしたらこの遺伝子こそ、人類が対面する恐るべき感染症への対抗策になるかもしれないのにね。もしかしたら、その感染症とは、人間が神に近づくことを拒絶する大自然の働きかもしれない。このまま頭脳に特化した人間が頭脳に特化した者同士で繁殖を続けたら、いつか安いオカルト雑誌が描いた様な頭でっかちの宇宙人、リトルグレイが人の腹から生まれる時が来るだろう。ま、きっと僕らみたいなスタイルのいい人類はその頭でっかちに屠殺されてるか、次第に頭が大きくなっているから初めは誰も気付かず、高倉健の『トラック野郎』を観た時に旧人類との違いに気づいて愕然とするかだろうね。その時になって頭を小さくしようとしても無駄だよ。未来の優れるだろう医術でも、脳の詰まった頭を削るなんて無理だろうからね」

 少年が長々と話す中、ブザーが鳴り続ける。

「整形ほど遺伝子に対して、そして繁殖という超自然の行為に対する侮辱はあるまいよ。そんなことされたら、誰がどんな遺伝子を持っているかわからないではないか。僕も思春期らしいことを言うと、やはり自分の一族に必要な遺伝子は下半身に聞くのが一番だと思うよ。その本能さえねじ伏せ、顔を創り、子孫を残せない愛の形を貫く、それこそが人間の面白いところでもあるんだけどね」

 延々とブザーを無視して語り続ける少年に、金髪の少女が歩み寄る。茶色のブレザーを赤いリボンで彩り、チェックのプリーツスカートを翻して少年の肩を叩く。どこかの制服だろうか。

「順、時間なくなるよ」

 順と呼ばれた少年は、そこでようやく話をやめる。どうやら彼はよく脱線するらしい。金髪を伸ばしたこの少女が車掌をしないと、レールも意味がない。先ほどから鳴っていたブザーは、順のポケットに入っていたものを彼女がリモコンのスイッチを押して鳴らしていたのだ。

「ああ、すまんねエディ。で、この時間はどこまで進めるんだっけ?」

 金髪の少女、エディはプリントを手に確認する。メガネを直し、腕時計で時間も見る。

「『インフィニティ能力』の発見までやる予定だったよ。脱線でもう休憩時間だけど」

「時間なら言ってくれればよかったのに」

「脱線した話も好評だし、キッチリし過ぎるのも自重しないとね」

 二人は軽く話し、今後の進行を決めた。順の様な天才過ぎて常識に欠けるタイプが大学で授業をできるのは、腕がよくて優しくておまけに美人なエディの力添えがあってこそなのだ。

「では休憩にしよう。インフィニティ能力の発見については次の時間だ」

 順は一度講義を閉じた。去り際、エディが順の耳元でつぶやく。

「誕生日おめでとう」

「そう、ありがとう」

 淡白なやりとりに見えるが、この二人が誕生日で半狂乱になるほど浅い関係ではないことがよくわかる。


 直江遊人、そして松永順。この二人が交差する時、物語が始まる。

 何気に今回エディと理架が初登場。就活とかで更新遅れてスマンナ

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