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恋姫三國史  作者: 桜惡夢
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       肆拾陸


期待してはいなかった。

そう言えば嘘になります。

でも、現実問題としては、確率は四分の一ですから。

有り得なくは有りません。

寧ろ、引き当てたかった、というのが本音ですね。

だって──誰だろうと早く終わらせたいに決まってるじゃないですか。

私は嫌ですよ、こんなの。

…それはまあ、仕事だから頑張りはしますけどね。

好き好んでは遣りません。


ですが、それは飽く迄も、一般的な場合の話です。

私にとっても全く無意味な事では有りませんが。

それ以上に大事な理由が、私には有ったんです。

そう、私は示したかった。

私は特別なんだって。

示したかったんです。

私は──“持ってる”って示したかったんですよ!。


それなのにっ!。

それなのに…こんなのってあんまりにも普通過ぎて、面白味にすら欠けるという結果じゃないですか!。

どういう事ですかっ!。

せめて、何か一つ位っ!。

そう!、何か面白可笑しく吃驚ドッキリ摩訶不思議な何かが起きても良かったと私は思うんですよ!。

違う意味でも“持ってる”感じが出るのなら、贅沢は言いません!。

起きるだけで十分です!。

一発屋で構いません!。

その一発が物凄く印象的で記憶に残るのであれば──私は本望なのだから!。



「──嗚呼っ、天よっ!

何故、私を見捨てられたのでしょうかっ?!

何故っ、何故ですかっ?!」



地上にて膝を付き、天へと右腕を伸ばして問う。

返る答えは無いのだと。

そう判ってはいても私には問わずには居られない。

だって、“没個性”なんて結局は目立たないじゃないですかっ!。

私だって主役──とまでは言いませんけど、そこそこ目立ちたいんです!。

活躍したっていいじゃないですかっ!。

誰ですかっ?!、私に不遇な宿命を背負わせたのは?!。

天ですかっ?!。

天なんですかっ?!。

だったら衝きますよっ!。

衝き貫きますからねっ?!。

それが嫌だったら──私に微笑んで下さい!。

でも、それが嘲笑だったら赦しませんからねっ!



「…なあ、大丈夫か?

他に手が無いって事はさ、私にも判るんだけど…

これはちょっと…なぁ…」


「……私も判ってはいる

だが、此処は堪えて貰って頑張って貰うしかない…

酷な様だが、これしか…」


「……グスッ……何故だか涙が止まりません…」


「ほらほら、よしよ〜し…

鈴萌ちゃんは優しいですね

彼処の愛紗(鬼)さんとは、全然違いますよね〜」


「そうだそうだー!

優しさが足りないぞー!

だから、報告するなー!」


「──だとさ、愛紗(鬼)

どうするんだ?」


「決まっているだろ?

これも含めて言うだけだ

私は鬼らしいからな

容赦する理由も無い」


『しまったあーっ!?』



──とか何とか。

周りは騒がしいのですが。

今はそれ所ではないので、気にしません。

せめて──次こそは!。





「……あ〜…何だ、その…

これも、ある意味で言えば“持ってる”と思うぞ?」



ズグブシャアッ!!、と心を容赦無く貫く“言刃”。

翠さん、その言葉は慰めに為ってはいませんよ?。

寧ろ、止めです。


フラフラと私の頭も身体も力無く揺れています。

それはそうでしょう。

確率は四分の一。

決して、当たりを引くのは不可能では有りません。

それなのに──最後まで、残ってしまうだなんて!。

…それはまあ?、三度目で引いてしまうよりかは多少美味しい気はしますが。

それこそ、中途半端に運が無いだけですから。

最後まで残っていた方が、まだ増しです。

でも、複雑なんです!。



「そ、そうですよ!

えっと…あっ、ほ、ほら、“御約束”です!」


「あ〜…そうんだけどね

それは違うかな〜…」


「うん、それは無いね〜」


「──えっ!?、それって…え?、違うのですか?」


『うん、違うと思う』


「──ぅうわぁあぁぁああぁあぁぁんっっ!!!!!!!!」


「あらあら…よしよし」



溢れ出す涙を止められずに私は紫苑さんに抱き付く。

凪ちゃんは悪くない。

犯人(悪いの)は珀花さんと灯璃ちゃんです。


困った様な口調であっても拒絶したり意地悪したりはしないで受け止めてくれる彼女の包容力には脱帽。

とても頼りになります。

普段は妬ましい存在感も、今だけは頼もしい。

私の涙を、泣き顔を。

全てを誰にも見せる事無く包み込んでくれますから。

…ああでも、こういうのも妬ましいです。

きっと、これで雷華様にも色んな事を………むぅぅ…何でですかね。

急に怒りが湧いてきます。



「んっ…ちょっと、その…悪戯は止めて頂戴ね?」



“めっ!”と言うみたいに優しく後頭部を叩かれると瞬間的に顔は深く沈む。

それは柔らかくも弾力勘はしっかりと有り、温もりと匂いが優しく染み込む。

意地悪したくなる気力さえ萎えていってしまう。

これが──母性ですか。



「…はあ〜…巫山戯ている時間が惜しいのだがな…

良いのか?、此処からなら不参加でも遣れないという事は無いから始めるが…」


「ふむ…まあ、無理強いは良くないからな

私としては不参加でも全然構わない

寧ろ、一番の見せ場を自ら私達に譲ってくれるのなら有難いだけだからな」


「──っ!?」


「…はぁ…そうだな

子和様に誉めて頂ける機を得られるのだからな

我等としては僥幸だ」


「……?…ん、頑張る…」


「────っ!!??」


「では、そういう──」


「──ま、待って下さい!

遣りますからっ!

私が遣りますからっ!

私に遣らせて下さいっ!」


『はいはい、どうぞ』


「──え?、あ、あれ?」



ガバッ!、と紫苑さんから身体を離して振り向いたら皆さんが揃って手を挙げてヒラヒラと振っていた。

もう少し構ってくれたって良いじゃないですかっ!。




結局、愚痴る暇も貰えず、そのまま持ち場へと散って準備が整ってしまう。

こうなってしまっては今更文句も我が儘も言えない事位は判ります。

なので、渋々始めます。

この遣り場の無い気持ちは敵に打付けますから!。

覚悟して下さいねっ!。



「──突っ、貫っ!!」



都合、四度目となる掘削は手慣れた物です。

本来、掘削作業というのは細心の注意を払って行う物だったりします。

例え、同じ場所・地域でも位置や深度が違えば十分に注意し、配慮をしなくてはいけません。

今の私達みたいな真似は、絶対に遣ってはいけない事だったりします。

良い子は真似しては駄目、という事なんです。

私達が出来るのは氣を扱え雷華様の武具を有するから可能なだけなんですよ。

そんな私達でも、最低限の注意は払っています。

生き埋めは嫌ですから。

死ぬ時は暖かい布団の中、子供達・孫達・曾孫達にて囲まれて眠る様に。

それが私の理想です。


…コホン…それは兎も角、先程までの三度の掘削とは明らかな違いが、開始して直ぐに現れました。



「──狭いのに数で押そうだなんて最悪ですっ!」


「哈あっ!」


「えーいっ!!」



前方の敵は私が貫き。

後方の敵は流琉ちゃんが、私達二人の死角となる背は凪ちゃんが担当。

しかし、掘削坑を潰さない様にして手加減をしながら戦わなくてはならないのは苛々と鬱憤が溜まります。


因みにですが、敵さん達は此処から掘削済みの方には逃げられません。

愛紗さんと翠さんの武具の能力を使用して、坑道内に水気と冷気を充満させて、入ってきた瞬間に仕留める準備が整っています。

坑道外であっても、探知は出来ますからね。

決して逃がしはしません。

尤も、彼方等も逃げれない事を察しているからこそ、こうして攻撃してきているのでしょうけど。



「──ですが、これ位では今の私は止まりません!

止められません!

止めたいのなら──本気で掛かって来なさーいっ!」


「──ちょっ!?」


「──ええっ!?」



昂る感情に任せて叫べば、凪ちゃんと流琉ちゃんから驚きの声が上がりました。

何故、驚くんですか?。

この感じなら、勢いのまま一気に衝き貫くべきです。

此処で躊躇しては──



「……………あ、あれ?」



──と思っていた時です。

グォゴゴゴゴォッ!!!!!!、といった感じで坑道全体が──と言うか、大地自体が大きく揺れ始めました。

ツゥー…と冷たい汗が頬を背中を伝い落ちます。

そして、思い出します。

昔、雷華様が仰有っていた“口は禍の(フラグ)”の恐ろしさという物を。



「──てっ、撤退ーっ!!」






『きゃああぁあぁっ!!??』



私達は地面に飲まれる様に為りながらも諦める事無く貫き続けた結果。

悲鳴を上げながらも私達は生きて地上に脱出します。

まあ、その出た先が何故か“空中”だった事は、多分考えない方がいいのだと。

そう、本能が告げます。



『一体、何をしたーっ?!』


「──てへっ♪」



落下してゆく私達に向けて放たれた皆さんからの声に私達は顔を見合わせると、私は代表して、小さく舌を出しながら左手を握ると、軽く頭を傾けてから小突き“遣っちゃいました♪”と苦笑を浮かべて見せました──ってえええぇっ!!??、ちょっ!?、ひぅ!?、やっ、紫苑さん!?、秋蘭さん!?、射つのは止めてっ!。

反省はしてますからっ!。



「後悔はしていない、と」


「それは勿論…きゃあっ!?

不意打ちは酷いですよ?!」



そう言いながらも飛来した二矢を躱して、着地。

直ぐに敵(地震の元凶)へと振り向きます。

すると、其処には予想外の巨躯を持った存在。

多分、全長は10m程。

ええ、大きいですよね。



「…………?」


『………』



無言のまま愛紗さん達へと顔を向けると、眼差しにて“え?、これですか?”と訊ねてみれば、“そうだ”と頷かれました。

そして、顔を戻す。

視界に映るのは筋骨隆々な四脚を持った蝸牛。

ええ、蝸牛なんですよ。

ですが、あのヌメッとした身体は軟体感は全く無くてムッキムキッ!です。

“ムッフーンッ!”とでも鳴きそうな位にです。

一脚が約8mは有るかと。

太さは最小で3m、最大で5m近いでしょうか。

そんな身体の上部には頭が有る訳ですが…ええ。

何なんでしょうか。

何故か、牛顔なんですよ。

興奮して血走った真っ赤な眼差しをした、鼻息の荒い牛さんの顔です。

縦2m、横1m程。

その後頭部に“お下げ”の様な感じで、ちょこんっと殻がくっ付いています。

大体、30cm位の殻が。

…可笑しいですよね?。

殻が殻としての役目を全く果たしていません。




取り敢えず、倒さなくては話は進みません。

と言うか、他の選択なんて有りません。

遣る事は決まっています。



「──のは判りますが…

あの、これは罰ですか?」



皆さんが戦っているのに、私は愛紗さん・斐羽さん・流琉ちゃんと一緒に敵から離れた位置に居ます。

しかも、愛紗さんから私は“動くな”と言われて。

…はっ!?、それともこれは新手の虐めなんですか?!。



「此奴はお前の獲物だ

だから、仕留めるのは他の誰かではない

故に、私達は補助に回る

一撃で、衝き貫いてこい」



──疑って御免なさい!。

聞こえないし解らないとは思いますけど謝ります!。

そして、皆さん!、本当に有難う御座います!。

私っ、頑張りますから!。


──と、感動し、気合いを入れていると紫苑さん達の矢が一ヶ所を囲む様にして身体に突き刺さりました。



「──よし、準備しろ」



それを見た瞬間、愛紗さんから指示が飛びます。

直ぐ様反応して愛槍を構え回転を開始させます。

──が、ふと気付きます。



「──あの、彼処までって私はどう遣って──」



そう言いながら振り向くと愛器を振りかぶって此方を狙っている様な斐羽さんと流琉ちゃんの姿が。

ま、まさか…これはっ!?。



「──往って来いっ!!」


「ぉお鬼いぃいいぃいぃぃっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」



愛紗さんの合図によって、二人によって撃ち放たれた私は飛翔しながらも愛槍を構えて指定されていた的を外さずに捉え──穿つ。

飛び去りながら振り返れば崩れ去る敵の姿が。

どうやら、軍将陣(私達)の役目も完了した様です。

けど、酷過ぎますから!。



──side out。



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