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恋姫三國史  作者: 桜惡夢
371/915

        拾


その事を理解してしまうと他人という物が怖くなり、必要最小限の対話する事を以外を避ける様になった。

ただ、全く話をしないまま過ごしていると新しい事を知る事が難しくなった。

話を聞く為にも何とかして会話を成立させなくては。

その一心から彼是と考えて捻り出したのは人形遊びを元にした会話方法。


自分の声を変えて、人形が喋っている様に見せながら人と会話をする。

それ自体は簡単な事。

ただ、それでは自分が声を変えて話している事は誰の眼にも明らか。

それでは意味が無い。

その人形が生きている様に見えなくてはならない。

その為には人形が動く事が一番判り易い。

人形の主流は木彫り。

当然、動かすのは無理。

だから、少し高価になるが布地を使った人形を購入。

取り敢えず、最初は人形を両手で持って動かしてみて──無理だと判断。

一応、木彫りとは違うから手足や身体は動かせる。

しかし、どう見ても動きが不自然だった。

“それならば…”と人形の下半身を切り捨て、頭部と上半身だけにした。

それを右手に嵌めてみる。

親指と小指で人形の両手を動かしてみた。

動きは悪くはなかった。

でも“私が動かしている”事は隠せない。


棒を人形の中に差し込んで動かしてみるが、手よりも動きがぎこちない。

それにやっぱり手で動かす仕草を隠せない。

他にも色々と試してみたが納得出来無かった。

一番良かったのは糸。

自分の指と人形の部位とを繋いで動かすと中々に良い動きに見えた。

ただ、それでも人形を操る手の動きや糸が見えるので駄目だったけれど。


そんな中、ふとした事から考え方を変えた。

基本的に“人と同じ動き”というのは不可能なのだと気付いてしまえば簡単。

抑の問題点を忘れている。

人形が“生きている様に”見せる事だった筈。

それは人と同じ動きである必要はない。


そういう考えに至れば後は意外と早かった。

それまでに積み重ねてきた人形の動き方の試行錯誤の経験が活きる。

頭・両手・胴体を木彫りで造り、各々を布地で覆う。

胴体は中を空洞にしておき頭と両手の根元から伸びた糸を通して、外布を衣服を縫い合わせる様にして繋ぎ人形の型にする。

頭は人の顔の様にしながら左眼だけにする。

顔は白く、眼の奥は黒。

瞬きをする様に眼には蓋が上下する様にして、それを糸を使って動かす。

そうやって顔に“表情”を生み出す事にした。


出来た人形は自分の頭上に落ちない様に紐で括る。

判らない様に細い紐を使い髪に混じる色を選ぶ。

これは人形の糸も同じ。

そして伸びた糸は襟元から肩を通って両手の指へ。

糸の数は三本。

両手の小指が人形の両手で左手の薬指が目蓋。

自分の動きや仕草に邪魔にならない様に考えた結果。

そうやって、もう一人の私“宝慧”が誕生した。




“宝慧”が喋ると驚かれる事が大半だった。

しかし、実際に生きていると思ってくれるのは子供位だったりした。

それでも、一つの“芸”と思われたのか、話す相手は気にしなかった。

いや、寧ろ、面白がってか楽し気に話してくれた。


気が付いた時には私自身も恐怖心が薄らいでいた。

飽く迄、世間話の範疇ではだったけれど。


そんな私にとっての劇的な変化は彼女達との出逢い。

稟ちゃんと星ちゃん。

二人に出逢わなかったなら私はどうしていたのか。

どうなっていたのか。

あまり想像もしたくない。

ただ、その出逢いは決して美談ではなかった。






「──き、貴様っ!

まさか、妖術使いかっ!?」



そう言って私の鼻先へ向け手に持つ槍の切っ先を突き付けた女性。

その目を見た限り、冗談で言っている感じはなくて、明らかに警戒心を抱いての威嚇行動だと判った。

そして、私には彼女の槍を防ぐ術は無かった。

脳裏を過った“死”に対し私は少しだけ考えた。


もしも、旅に出なければ、自分はどうしていたのか。


返る答えは無い。

自分の中にも、無かった。

それは当然の事。

“もしも…”と考えても、その答えは出ない。

それは可能性に過ぎなくて全てが“未知”であって、“未確定”なのだから。


自分の死を前にしていてもそんな事を考えている自分自身には困ってしまう。

そんな事を考える位なら、この場を脱する術の一つも考えれば良いのに。


けれど、そうはしなくて、ただ静かにしていた。


今になって思えばあの頃の私は疲れ果てていたのかもしれない。

…いや、そうなのだろう。

自分を偽り続けている事、演じ続けている事に。


だから望んだのだと思う。

その──終幕を。



「ちょっ、ちょっとっ!

貴女は一体何をしているのですかっ!?」



そう言いながら慌てた様に槍の柄を掴みながら彼女の私の間に割り込んだ女性。

スラリとした長身なのだが腕っぷしの強い印象は全く受けなかった。

背中しか見ていないので、飽く迄も印象は。



「放せ、稟っ!

其奴は妖術使いだっ!」


「…………はぁ?」


「その娘の頭の上の人形が一人で動き喋ったのだぞ?!

妖術に決まっている!」



その言葉に私を見た女性は眼差しで訊ねた。

だから、私は答えた。



「おぅおぅ、姉ちゃん

一体何だってんだよぉ?」



それは、私の人生を変える掛け替えない出逢い。




大切な親友との別離。

決して辛くなかったという事は二人には言えない。

本当は、ずっと三人一緒に歩いて行きたかった。


でも、私達は分かれ、進む事を選んだ。


それは互いを尊重して。

だから、離れ離れでいても互いが親友である事だけは変わりはしない。


私も私の道を探した。

けれど、簡単に見付かる物でもない。

黄巾党が暴れていた時には旅も出来無かった。

あまりに暇で退屈で。

遠い日を思い出し、久々に“自分の世界”にたっぷり浸ってしまった。


気が付いたら、お金が底を突き掛けていた。

月日も何気に経過。

仕方が無いので仕事を探し住み込みで路銀を稼ぐ。

お金は落ちていませんし。


そうこうしていたら皇帝が崩御され、漢王朝の命脈は風前の灯になり、終焉。

呆気ないものでした。


そして、私の命脈もまた、呆気ない終わり方をしようとしていました。

路銀が底を突き、丸二日も何も食べずに水だけで凌ぎ街に辿り着いて──途中で力尽きてしまった。

そしたなら何故か猫さんが次から次へと寄って来て、私は埋もれていた。

誰の眼にも触れずに終わるというのも私らしいのかもしれないと思った。


──と、何やら話し声。

でも、猫さん達が多過ぎてよく聞こえません。


──が、匂いがしました。

それに反応して盛大に鳴く私の“お腹の虫”さん。

あまりの恥ずかしさからか私は気絶した振りをした。

出来れば本当に気絶したい所なんですけど。


すると、少しずつ身体から重みと熱が減っていく。

“誰か”が猫さん達の事を退けている。

そう理解するとどうしても緊張してしまう。



そして、はっきりと会話が聞こえた事で男性が一人、女性が二人と判った。

しかも保護してくれる様で有難い事です。

私は男性の背負われながら運ばれていく。



「お前は何かと行き倒れの類いに縁が有るな」


「あ〜…まあ確かになぁ…

否定は出来無いな…」



片方の女性の言葉に対して男性は苦笑しているだろう様子が窺えた。

でも、背負われながら私が感じるのは安心感。

そして、楽しそうな明るい雰囲気だった。



(…ふむ〜…これも何かの縁かもしれませんね〜…)



そう感じながら取り敢えず彼の背中に身を預けながら心地好い揺れに誘われて、静かに意識を手放す。


目が覚めた時、私はきっと“私の道”を知る。

そんな予感を抱いて。



──side out



 郭嘉side──


──十一月十四日。



「──という訳だ」


「そうですか…」



雷華様に呼ばれて執務室に赴いてみれば、聞かされた事は程翌──風の事。

二日前、孫家に行き倒れた所を保護され、その流れで仕える事にしたらしい。

何と言うか…彼女らしい。

そう思ってしまった。



「しかし、今の今まで表に出ていなければ宅の網にも引っ掛からなかったが…

まさか寝ていたとはな…」



何とも言えない様子で顔を俯かせた雷華様。

親友の事という事も有り、少々申し訳無くなる。

ただ…“夢遊癖”、とでも呼ぶべき彼女の一人遊びを知っている身としては特に害は無いので直す必要等も指摘出来無かった。

だが、今にして思えば長く寝過ぎるのは身体に悪い。

その点は断言出来る。



「…はぁ…まあいいか」



溜め息を吐き言われるが、何がいいのか訊きたい。

…べっ、別に嫉妬している訳ではありませんから!

あ、飽く迄も、軍師として事を把握しておこうという習慣と習性からです。

他意は有りません。



「けどまあ、稟が宅に居て趙雲は劉備、程翌は孫策…

見事に親友三人が三勢力にバラけたな…」



そう言って私の事を見詰め苦笑を浮かべられる。

“遣り難いだろ?”という言外の問い。

曾ての私であったならば、同じ様に苦笑をしているか平静を装って強がっていたかもしれません。

ですが、今は違います。


顔に浮かぶのは──笑み。

不敵で、不適な獰猛さ。



「それもまた醍醐味かと…

自身の優劣の証明、という訳ではありませんが…

今は二人と戦う事が有れば“愉しめる”かと」



そう雷華様を見詰めながら答えると、苦笑から一転。

ニィッ…と口角を吊り上げ獰猛な笑みを浮かべられ、僅かに目を細められた。

“獲物”を眼前にした様な視線に背筋がゾクッ…とし身震いしそうになる。

まるで自分自身が“捕食”されてしまう様に感じて、身体の奥が熱くなる。

…いえ、雷華様にでしたら何時でも何処でも私自身は構いませんが。


思わず出た、そんな本音が伝わってしまったらしく、雷華様が苦笑された。

今でも恥ずかしく思うが、それ以上に“流れと機”を活かす事を覚えた。

だから、此処は素直になり少しだけ甘える事にする。


抜け駆けでは有りません。

少しだけ運が良かった。

それだけの話ですから。



──side out



日も落ち、夜の闇が深まる中でも室内は明るい。

氣を源とする照明。

電気より長持ちで自然にも超優しい技術です。

何気に二千年以上先よりも優れた環境技術だよな。

マイナス要素が殆んど無い事もポイントが高い。



「稟・趙雲・程翌…

凪・于禁・李典…

泉里・諸葛亮・鳳統…

よくもまあ、縁の有る者が三勢力下にバラけてるな」



そんな照明を眺めながら、昼間の稟との話を思い出し何と無く呟いた。



「その様子だと“歴史”上では違うのかしら?」



ギッ…と寝台を軋ませて、仰向けになって寝転がった俺の身体の上に股がる様に乗って来る華琳。

まあ、“歴史”云々と訊く時点で華琳以外居ないが。



「“歴史”、なぁ…

まあ、違うって言うんなら違うのは確かだな…」


「はっきりしないわね…」



珍しく言葉を濁したからか少し不機嫌そうになる。

しかし、仕方が無い。

確かに“歴史”とは違う。

抑、この九人は全てが魏か蜀の所属だ。

内六人が魏の面子。

蜀としては数は同じなので単純に損をしているのは、宅って事になる。

それが呉に流れている。

違いとしては十分だ。


ただ、“歴史”上で各々に縁が有ったかと訊かれたら“定かではない”と答える事しか出来無い。

その縁が“この世界”故の物なのは確かだが。



「まあ、稟は愉しそうだし凪は既に李典に対してしか友情を抱いていない…

泉里に関しては二人に対し“一緒に学んでいただけ”としか思ってないしな」


「三者三様ね

まあ、当然でしょうけど」



そう言いながら俺の寝衣を脱がせに掛かる華琳。

右手を這わせながら左手は俺の頬へと伸ばし、身体をゆっくりと倒して重ねて、キスをしてくる。

俺の胸の上にて形を変える柔らかな果実。

今日は積極的ですな。



「昼間の事、気付かないと思ったの?」


「参考までに…何で?」


「“女の勘”よ♪」



それじゃあ、無理だな。

苦笑を浮かべ、華琳の頬に左手を伸ばし唇に重ねる。

夜はまだ、深まる。





光和八年・十一月時点での主要陣の成長状況。


 …成長

 ↑…成長・大

 ↑↑…成長・特

 ↓…縮小



◎雷華 174→185cm

◎華琳 153→162cm

    B↑/W↓/H↑


◇冥琳 173→175cm

    B/W↓/H-

◇泉里 161cm

    B↑↑/W-/H-

◇結  155→160cm

    B↑/W-/H

◇桂花 148→159cm

    B/W/H

◇雪那 169→171cm

    B↑/W-/H

◇螢  150→158cm

    B/W-/H-

◇稟  170cm

    B/W-/H

◇月  147cm


◆思春 158→164cm

    B↑/W-/H

◆紫苑 178cm

    B/W↓/H

◆葵  177cm

    B/W↓/H-

◆珀花 167cm

    B↑/W↓/H-

◆灯璃 166→175cm

    B↑/W-/H

◆蓮華 164→170cm

    B↑/W↓/H↑

◆秋蘭 171→173cm

    B/W-/H-

◆鈴萌 162→166cm

    B/W↓/H-

◆斐羽 176cm

    B↑/W-/H

◆彩音 165→169cm

    B/W-/H-

◆翠  168→174cm

    B/W↓/H↑

◆流琉 143→156cm

    B↑/W/H

◆斗詩 160→166cm

    B↑/W↓/H-

◆凪  156→162cm

    B/W-/H-

◆愛紗 163→168cm

    B/W-/H

◆恋  159cm



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