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恋姫三國史  作者: 桜惡夢
164/915

       肆


華琳が言った“願い石”を売っていた露店商が術者の可能性が高い。

ただ、少なくとも十年以上昔の事だから、いつ頃術を施行したかは判らないな。



「だけど“願い石”が鍵になっているとしたら此方に来る“天の御遣い”の数は多くなるんじゃない?」


「全部が全部、鍵としては機能する訳じゃない

それに“担い手”と成れる者は多くはない

世界の境界を超える程迄に強い意志を持つ者が何人も居る方が異常だ

そんな場合は世界その物が崩壊しかけているか…

世界が自ら望み呼び寄せているかだろう」


「…つまり、私にとっての“天の御遣い”は貴男で、他には居ない訳ね

そうだとすると他の二人も“天の御遣い”とは私達の様に“あの場所”で出逢い過ごしていたのかしら?」


「さあ…どうだろうな

同じ空間内には居なかったとは思うが…

仮に、同じ様な状況だったとしたら俺達同様に動いて然るべきだろう

それに仲謀を引き抜かれる事も有り得ない」


「…確かにそうね」



何よりも、孫呉・劉蜀共に中心的な家臣を失う事態は“予備知識”が無い証拠。

華琳でさえ最初は英傑達の名前を聞いて先に探し集め様としたんだ。

元の領地を失い力の弱った孫策や、仲間さえも居ない劉備ならば喉から手が出る程の情報だろう。

そして必ず利用する。

なら、呉の仲謀や公瑾達、蜀の漢升や孟起達が曹家に居る筈が無い。

少なくとも十年という時が有ったのだから。



「なら、他の二組は私達に比べて後手な訳ね…」


「絶対とは言えないがな

俺達程の下地造りは出来て居ないだろうな」


「“歴史”的に見たら?」


「孫策──孫家は幾らかのズレは出てるが本筋的には今はまだ沿っているな

劉備は元々乱世──時代が動き始めてからの台頭だ

そういう意味では現時点で無名なのは範疇だな」



水面下で動いていたのなら曹家と隠密衆の情報網上に引っ掛かってる筈だ。

それも無い事からも劉備の傍に居るのは義兄弟となる関羽と張飛くらいだろう。

或いは未だ出逢っていない状態かだ。



「どうするつもり?」


「取り敢えず孫策の方から当たってみる

泱州以外の噂に関する事や管輅について調べたいし、術者や術の事も有るしな」


「また数日空ける訳?」


「夕餉までには……多分、戻るつもりで──っん…」


「…ったく、明日以降でも大丈夫なら今日だけは早く帰って来なさい

皆心配してるんだから…」



断言出来無いでいると唇を塞がれ、そう言われた。

これは従うしかないな。




 Extra side──



「…に…ない…で…」


「…れ……ない…」


「…ね……が……」



沈んでいた意識を揺さ振る様に声が頭に響く。

…誰だ、朝から喧しい。

耳許で騒ぐなよ。

眠れないじゃないか。



(…………………耳許?)



愚痴っていた思考が停止。

抑、可笑しい。

俺は一人暮らしだから他に誰かが居る訳がない。



(ま、まさか…空き巣?)



住民が居るのに空き巣とは言えないのでは?、などと下らない事を頭の隅っこで考えながら薄く瞼を開く。



『……………』



青い──サファイアの様な綺麗な瞳が其処に有った。

我を忘れて魅入る程だが、不意に細まった。

同時に凄く嫌な予感がして身体中に悪寒が走る。



「──ていっ♪」



そんな可愛らしい声と共に身を包む温もり──布団が剥ぎ取られた。

僅かに遅れて全身に感じる季節外れの刺す様な寒さに思わず縮こまり──其処で自分がトランクス一枚だと気付いた。



「──ちょっ、何で裸っ!?

布団返してっ!?」


「えぇ〜?」


「何で拒否られるのっ!?

ってか誰っ!?」


「あははははっ♪」


「笑い事じゃねえよっ!

さっさと返せっ!」



布団を取り返そうと右手を伸ばすが、ヒラッと躱され一旦遠くが直ぐに届く所に戻ってくる。

で、また手を伸ばすが──という事を繰り返す。



「やれやれ…策殿その位にしてやったらどうじゃ?」


「そうですよぉ〜

このままだと話が進まないですからねぇ〜」


「それもそうね、はい」



少し離れて見ていたらしい二人──今気付いた──に注意されて漸く俺に布団を返してくれた。

見知らない女性三人の前でパンツ一丁とか…

どんな罰ゲームだよ。



「あ、そうそう

貴男の着てた衣服は此方が預かってるから」


「人拐いかっ!?」


「失礼ね、倒れてた貴男を拾──助けて保護したのは私達なのよ?」



…今、“拾った”って言い掛けたよな。

──というか、あれ?

この人──人達、何処かで見た様な記憶が…



「私は孫策、字は伯符よ

で、此方は武将の黄蓋

其方が軍師の陸孫よ

それで、貴男の名前は?」



青い瞳の女性──孫策だと名乗った彼女を改めて見て漸く気付いた。

“真・恋姫†無双”の呉の孫策──雪蓮だ。

それに祭さんと穏。

精巧な特殊メイクでもない限りは本物だと思う。




ただ、訳が判らない。

取り敢えず、右手で右頬を抓ってみる。

…うん、痛いな。



(…それじゃあこれって、現実な訳?

え?、それって俺は死んで転生トリップとか?

いやいや、“恋姫”内だと“天の御遣い”か…

つーか、何で俺が?)



──なんて、考えていたら両頬を抓られた。



「私の話、聞いてた?」


「ふぁ、ふぁい…

ふふぃふぁふぇん…」



素直に謝ると掴まれた頬が解放された。

ジンジン…と鈍い痛みが、更に現実味を増させる。



「姓は小野寺、名は祐哉

字は無くて歳は十九…」


「十九歳で字が無いの?」


「というより、俺の生まれ育った場所では字を付ける習慣は無いんだ」


「ふむ…変わっておるの」



そう言った祭さんの隣では知的好奇心を刺激したのか穏が目を輝かせている。

…あの性癖も実在するのか気にはなる。

でも、今はそれより──



「倒れてたって話だけど、正直何も覚えて無くて…」



そう言うと雪蓮と祭さんが原作と同じ様な状況という事を説明してくれた。

服や所持品を返して貰って原作みたいに携帯が有れば良いなと思ったが無くて、有ったのは財布だけ。

その中に入ってた免許証と御札と効果で何とか自分が異世界から来た事を信じて貰う事が出来た。



「管輅って名前の占い師が予言して、その通り貴男が私達の前に現れた…

貴男は“天の御遣い”か、そういう存在に成れるって事になる訳よ」


「…成る程ね」


「ほほぅ…中々に頭も回るみたいじゃな」



祭さんは感心してるけど、原作知識のお陰だからな。

生きて行く上では彼女達と一緒に居ないと絶望的。



「行く宛も、頼る宛も無い状況だからな

御輿役で衣食住が得られるなら何でも遣るさ」


「良い覚悟ね

でも、幾つか条件が有るわ

先ず一つ目、貴男の知恵を私達に役立てる事

二つ目、自分勝手に立場を言い触らさない事

三つ目、私に仕えてる武将や軍師達と、貴男から率先して交流を持つ事」



その後はゲームと同じ様に“口説いて、まぐわれ”と言われた。

判ってても実際に目の前で言われると驚くな。



「それじゃ、私の事は今後雪蓮って呼んでね♪」



そうして、雪蓮・祭さん・穏から真名を預けられた。

ただ、一つ気になったのは冥琳──周瑜が居ない事。

今直ぐには聞けない事だが遠くない内に判るかな。

色々と大変そうだ。



──side out



 Extra side──


気が付けば見知らぬ場所で三人の女性(一人は幼女)に囲まれていて、話を聞くと俺は“天の御遣い”という存在らしい。

少なくとも、この世界とは違う世界から来た事だけは確かだと思うけど。

だってさ、彼女達の名前が劉備・関羽・張飛だし。

俺が知ってる三人は男。

こんな可愛い女性じゃない事だけは確かだな。

で、現在近くの街に移動し空だった御腹も満腹になり本題へと話は戻る。



「北郷一刀様!

どうか御願いします!」



真っ直ぐな瞳を潤ませて、劉備は俺の手を両手で握り締めて見詰めてくる。

御輿役をして欲しい理由もよく判った。

それに、俺自身が何も出来無くても良いなら遣れない事もないと思う。

正直に言って、この世界にどうして自分が居るのかも何が起きたのかも判らない状況なのに、それを調べる方法は俺には無い。

それ所か何一つ判らない。

はっきり言って彼女達から離れたら途方に暮れる姿がくっきりと脳裏に浮かぶ。



(うん、確実に死ねるな)



となれば、彼女達の提案を受け入れる方が俺にしても最良なのかもしれない。



「…分かった

俺で良いんなら、御輿役を引き受けるよ」


「本当ですかっ!?」



満面の笑みを浮かべながら顔を近付ける劉備。

その際、フワッ…と鼻腔を擽った良い香り。

多分、劉備の香水──かは時代的に判らないんだけど自然と女性として意識して頬が、身体が熱くなる。



「あ、ああ…一宿一飯の…正確には一飯かな?

その恩が有るし…」



誤魔化す為に、それらしい事を言ったんだけど…

劉備が硬直した。



「………一飯の恩?」


「一飯の恩…」


「……はぁ……」



劉備が笑顔を引き釣らせ、張飛は申し訳が無さそうに俯き気味に呟く。

そんな二人を見て溜め息を漏らす小食だった関羽。



「え〜と…一飯って言葉、何か不味かった?」



その後、彼女達が無一文で“天の御遣い”を宛にして食事したと判り、言い訳もさせて貰えずに無銭飲食でボコボコにされ、皿洗いをしこたまさせられた。


皿洗いの後、店で公孫賛が義勇兵を募集している事と劉備の知り合いという事で向かう事になった。


その道中、劉備と張飛から真名を預けられた。

まだ関羽には認められてはいないみたいだけど。

“ご主人様”って呼ばれてちょっと嬉しいし。

一丁、頑張ってみるかな。



──side out




「──という感じだ」



何とか日没前には帰宅し、見て来た“天の御遣い”の情報・印象を華琳に話す。

序でに孫策・劉備の事も。



「無銭飲食で皿洗い、ね…

そんな輩に負けるだなんて屈辱でしかないわ…」



右手の拳を肩口まで上げてプルプルと震える姿からは一目で怒り具合が判る。



「負けてはいないからな?

それは“彼方”の話だ」


「…………はぁ〜…

それもそうね…」



一息吐き、どうにか怒りも抑えられた様だ。

消えた訳じゃないがな。



「それにしても大凡貴男の推測通りみたいね」



“天の御遣い”の存在に、広まっている噂に対しての民衆の認識具合や信憑度は“王”の影響力・支配力が反映されている領地な程に色濃く成っていた。

また三人の影響を受けない地域では噂話の域を出ず、信心する者は居ない。



「気になるのは孫策の所の“天の御遣い”だな

能力が有るとかではないが氣──感情の変化・動きが少なかったからな…

まあ、油断は出来無いが、要注意でもないが」


「私からしてみれば貴男の同類でさえなければ何でも構わないわ

でも、私達“王”が女性で“天の御遣い”が男性なら“願い石”の仮説も事実に近いのでしょうね」


「そうだろうな」



まだ術と術者、“管輅”に関しては調査中。

これ以上の事は判らない。



「しかしまあ、これは宛ら“パンデミック”だな…」


「それって確か…

伝染病等の世界的大流行を表す言葉だったわよね?」



良く覚えてたな。

感心しながら首肯する。

“此方”じゃ華琳以外には現時点では通じないな。



「範囲としては漢王朝内に留まっている規模なんだが効果的には疫病と同じだ

しかも治療方法が唯一つ…

“天の御遣い”自身による自己否定──或いは存在の認識の改修という一見して矛盾する方法しかないって辺りが特にな」


「術と術者の目的・意図が見えないと何とも言えない事でしょうね…

その辺も貴男に任せるしか私には出来無いけど…」


「任されるさ」



悔しそうに言う華琳に対し笑みを浮かべて返す。

気にするなと。



「私達はどう動くの?」


「孫家の近くには隠密衆を元々置いているが接触時は何故か離れていた…

術の強制力かもしれないが下手に近付けるのは危険と判断して指示したからな

当面は様子見だ」






姓名:小野寺 祐哉

   (おのでら ゆうや)

年齢:19歳(出現時)

身長:185cm

髪:黒髪、前髪は眉辺り

  後ろは首に掛かる位

  セットしてない

眼:黒

備考:

大学・教育学部の二年生。

ゲーム“真・恋姫†無双”プレイ経験有り。

早くに母親を亡くし、父子家庭で育った。

中1の時、父が再婚。

異母弟が二人出来た。

大学進学を機に独り暮らしを始めた。

その為、家事全般は一応は問題無く出来る。

但し、現代科学に依存。

中学・高校と陸上部所属で短距離走の選手だった為、足は早く、体力も有ったが大学進学後は止めている為低下・鈍っている。



出現時の服装:

◇白地に緑と黄色の横縞の ポロシャツ

◇グレーのアンダーシャツ

◇ダークグレーのジーンズ

◇白の靴下

◇黄緑色のスニーカー


所持品:

◇茶革の長財布

 千円札3枚、五百円1枚

 百円7枚、五十円1枚

 十円8枚、一円4枚

 その他ポイントカードや 会員カードが数枚

◇免許証



◆参考容姿

須賀京太郎【咲-Saki-】




姓名:北郷 一刀

年齢:17歳(出現時)

身長:176cm

備考:

容姿は原作と同じ。

高校三年生・帰宅部。

実家は剣道の道場で幼少期には祖父に無理矢理剣道をさせられていた。

しかし、両親の転勤に伴い中学に上がると共に実家を離れると止めた。

その後はダラダラと過ごし平凡な日々を送った為に、身体能力は普通の庶民にも劣っている。



出現時の服装:

◇フランチェスカの制服


所持品:無し




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