第1話 Thinking
美香子が携帯電話をもらったらしい。
メアドが欲しい。電話番号が欲しい。何としても欲しい。
いや待て、そのために何て頼む? 考えろ、考えるんだ俺……
「メアド教えてよ」――ストレートすぎるし、上から目線な感じがする。
「メールアドレスを教えていただけませんか?」――これは遜りすぎだろうか。
どうしよう…いいのが思いつかない……
「……登くん…?」
考え込んでいると、澄んだかわいらしい声が聞こえてきた。
振り返ると、腰のところよりさらに長い黒髪で、黒縁の丸眼鏡をかけている小柄な少女がいる。
そう、この美少女こそが美香子だ。
「……あ…あのっ!! …えっと…その……」
何か言おうとしている。よくよく見ると、顔が赤くなってるような……
「……メ……メールアドレスとか電話番号とか交換しませんかっ!?」
何と!! ついさっき俺が散々迷ってた言葉を言ってきた!?
「えっ!? あ、うん、いいよ!」
慌てながらも了解の返事を言い、携帯電話を取り出す。赤外線ポートを平行に向き合わせ、赤外線の送受信を行う。
ただそれだけの事なのに、何でこんなに緊張するんだろう。
「……ありがとうございます…」
「あ、えっと…どういたしまして」
ぺこりとお辞儀をして、美香子は走り去って行った。いつ見てもかわいいなぁ……あ、よく見たら後ろ髪の寝癖が直ってない。
まぁとにかく、第1関門はクリア!! 次は……
-続く-
男主人公と女主人公の視点を1話交替にします。
では、続きをお楽しみに……